乙骨憂奈は愛してる   作:I@an

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乙骨憂奈と実習

 

 

6.実習

 

憂奈と真希は五条に連れられある小学校に来ていた。

五条の話によると、この小学校では呪霊による児童の失踪が発生しているという。

憂奈と真希は呪いを祓い、子供を救出(死んでいたら回収)するよう命じられた。

「闇より出でて闇より黒くその穢れを禊ぎ祓え」

五条がそう唱えると、上空からインクが滴るように夜になってゆく。

「これは帳。君たちを外から見えなくし、呪いを炙り出す結界だ」

帳が降り切る前に五条はチラリと2人を見やる。

「そんじゃくれぐれも、死なないように」

憂奈のはじめての呪術実習が始まった。

 

「死って...そんなに危険なんですか禪院さん...」

「転校生、よそ見してんじゃねぇよ」

真希が呪具を構えた。視線の先には3体の呪霊がいる。

「それと、私を苗字で呼ぶんじゃねえ」

袋に手足が付いたような呪霊は、自身の身体の縫い目をこじ開けて言った。

「は...い...る?」

その言葉を皮切りにこちらに駆けてくる呪霊達。憂奈は咄嗟に里香を呼ぼうとした。

「おい、こんな雑魚相手に特級呪霊呼ぶんじゃ、ねえよ!」

一斬。真希が振るった呪具の凶刃が呪霊を祓う。

「ハッ、弱い奴程よく群れる」

「すごい...一振で」

 

 

校内に入った2人は連れ去られた子供を探していた。弱い呪霊達は影から様子を伺うのみで襲ってくる気配がない。強力な呪霊である里香がいるせいかと真希は推測した。真希はふと、特級呪霊である里香を使役する憂奈の階級は果たして何級なのだろうと疑問に思った。

「おい、お前何級だよ」

「えっ何級...?英検の話ですか...?」

「ちっげーよ。呪術師には四〜一の階級があるんだよ。」

「そうなんですね。...何を見ればわかります?」

「学生証」

「あ、あ、ちょっと待ってください...」

憂奈はもたもたと学生証を取り出し、それを真希が引ったくった。

憂奈の学生証を見ると、特級呪術師を示す「特」の字が記されていた。

(特級って......一級の更に上だろ。こんなん冗談でしか聞かねーレベルだろ!!)

真希は驚愕のあまり、憂奈が必死に名前を呼んでいることを気づけなかった。

「真希さん!うしろ!」

背後には巨大な呪霊が迫っていた。

 

呪霊が壁を突き破り、2人に襲いかかる。校舎の外に放り出され体勢を崩し、そのまま呪霊に飲み込まれた。

「クソ!!呪具落とした!!出せゴラァ!!」

真希の怒鳴り声で憂奈は目を覚ました。どうやら気を失っていたらしい。

その場所は薄暗く、壁や床がピンク色でぬるついていた。不気味な空間だ。

「ここは…」

「あの呪いの腹の中だよ。こんぐらいで気絶してんじゃねー」

と真希が答える。

「え、私達食べられたんですか!?」

「そうだテメエ呪いに守られてんじゃねーのかよ!!」

「えーん!ごめんなさい!里香ちゃーん!」

その時、憂奈の意識がぐるりと回る。

「ちょっと、憂奈をいじめないでよ」

不機嫌な里香が現れた。

「ここに来る前五条に縛りを結ばされたの。憂奈が私を呼ぶまでは表に出ないって。一応私は憂奈に使役されているってことになっているから」

里香は憂奈に危害を加える人間に容赦はしない(顔合わせの時のように…)。確かに使役している呪霊が気に食わない奴を全員ぶっ飛ばすようでは憂奈の責任問題になる。憂奈を第一に考えている里香のことだ。憂奈の保身のためにその縛りを結ばざるを得なかったのだろう。

「おいお前!此処から出ることは出来るか!?」

「簡単なことよ。でも私が倒しちゃっていいの?これは貴女と憂奈が任されたことでしょう」

ツンとした態度で里香は言った。真希は憂奈をいじめる(ように里香には見えている)ので嫌いだ。

「助けて」

そこに第三者の声が入った。真希と里香が声の発生源へ振り向くと、子供が2人いた。1人は意識を失っており、もう1人も随分憔悴しているようだ。

「お願い。コイツ死にそうなんだ」

弱々しい声は意識の内側に入った憂奈にも聞こえていた。

速やかに救出しなければ子供達の命が危うい。憂奈はあまり乗り気ではない里香を説得しようとした。その時、どさりと真希が倒れた。

「真希さん!?」

憂奈の意識がぐるりと回る。表に出た憂奈が真希に駆け寄った。真希の太腿を見ると傷があり、君の悪い目玉模様が浮かんでいた。

「この傷、呪い…?」

不安気な憂奈の様子を感じ取った子供が言った。

「そのお姉ちゃん死んじゃうの?ねえ、助けてよ!!」

死に怯える子供の声が、憂奈の心を奮い立たせる。憂奈の瞳に強い意志が宿った。それは、此処にいる全員を死なせないという強い決意だった。先ほどまで狼狽えていた少女はもういない。

「里香ちゃん、お願い!」

意識が反転する。

「任せて」

少女は笑う。

「そうやって何でも口に入れるから図体ばかり大きくなるのね。悪食もほどほどにしないと身を滅ぼすわよ」

里香は蠱惑的に笑ってみせた。それは蹂躙を楽しむ強者の笑みだ。

「猛毒だって気づいた時にはもう、遅いんだから」

憂奈の身体を起点に呪力が渦巻く。呪力は風を巻き起こし、呪霊の全身に巡っていく。

呪霊は自身の体に違和感を感じた。まるで腹の中を侵食されていくような―内側から食い破ろうとする強力な呪力を。

「ぐるじいぃ……!?」

呪霊の体が膨張していく。やがて膨らませすぎた水風船のように、パチン、と弾けた。

爆ぜた肉片が校舎の壁や運動場に飛び散り、辺りを赤く染め上げた。

 

帳が上がり、校舎の惨状が露わになる。

里香は辛うじて崩れていなかった屋上の一角に腰をかけ、ブラブラと足を揺らしていた。

「とんでもないな、祈本里香は」

五条は片手を上げ、

「随分と派手にやったじゃないか!」

と里香に声をかける。

里香は五条を見ると嫌そうな顔をして、べーと舌を突き出した。

 

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