ストライクウィッチーズ ~蒼空を舞う零の荒鷹~   作:鷹と狼

13 / 65
第11話 突き詰めた真実

 

 

 

インカムから泣き叫ぶようにミーナが指示する。

 

 

 

洋介は編隊の前に飛び出て、小銃の銃口を人型ネウロイに向けて撃った。

 

ウィッチたちの距離から離れ、人型ネウロイは空中停止、攻撃してこなかった。

 

洋介が小銃の照準器に入れて留めを差そうにも人指し指が動かず、引き金が引けなかった。

 

 

「なぜだ!なぜネウロイが動かない…なんで指が動かないんだ…」

 

 

不審に思っていると、ネウロイが洋介に接近してきた。

 

 

「桜井!」

 

 

「待て、トゥルーデ!撃つな…」

 

 

小銃を下ろし、人型と向き合い静止する。

 

洋介の波導からは殺気が無く、洋介と人型の距離は1メートルもなかった。

 

暫く人型は洋介を眺めて、胸部からコアを露出、そして頭の中から声が聞こえた。

 

 

「ネウロイのコア…!?」

 

 

「(すみません…少しだけあなたを調べさせていただきます)」

 

 

「何だって!?…かはっ!!」

 

 

「桜井!?」

 

 

ネウロイのコアから太陽に匹敵する赤い閃光が放たれ、洋介は何かショックを与えられたかのように体が動かなかった。

 

 

「まさか、洗脳か…!?」

 

 

洋介の頭の中で何やら象形文字が浮かび、施設らしき光景を目の当たりにした。

 

 

「何だこれは!?…ここはどこなんだ!?…うぐっ!がはぁっ!」

 

 

洋介の身体から力が抜け、意識がなくなった。

 

それを目の当たりにしたトゥルーデが怒り、MG42を構えた。

 

 

「…おのれ…よくも桜井を…洋介を!!」

 

 

 

 

「トゥルーデ!!洋介に当たっちゃう!」

 

 

トゥルーデが放たれた弾丸が、気を失った洋介の左手からシールドを防いだ。

 

 

「あいつのシールドを!」

 

 

『邪魔をしないで…』

 

 

「「「 !? 」」」

 

 

バルクホルンたちは耳を疑った。

 

洋介の口が動いても、洋介の声ではなかった。機械的な変声で女性的な声だった。

 

 

「洗脳、されたのか…?」

 

 

「お願い、…私の…邪魔をしないで…」

 

 

それを最後に人型ネウロイは瞬間移動で消え、ネウロイの能力で支えていた洋介の身体が宙に放り出された。

 

 

「桜井!」

 

 

「洋介!」

 

 

「洋介さん、しっかりして!洋介さん!」

 

 

トゥルーデとエーリカは洋介を回収、彼の身体には力がなく、目蓋は閉じられたままだった。

 

 

「…こちらバルクホルン。…少佐と桜井中尉が負傷した。これより帰還する…」

 

 

洋介を回収したトゥルーデたちが基地に帰還するまで空気が重かった。

 

 

 

 

501基地 医務室前廊下

 

 

 

「坂本さん!しっかりして下さい!坂本さん!」

 

 

「少佐!返事をして下さい!少佐!宮藤さん!」

 

 

芳佳が治癒魔法を掛け、必死に治癒を施す。ペリーヌは美緒に懸命に呼び掛けながらも意識が、目を覚ます気配はない。

 

 

「…桜井さん…落ち着きなさい、宮藤さん」

 

 

その隣のストレッチャーには、同じく意識のない洋介が寝かされていた。

 

 

ミーナが静止して、男性医師と看護師が駆け付け、二人を医務室に連れて行く。緊急手術のランプが灯された。

 

 

「あ…」

 

 

「宮藤!?」

 

 

芳佳が魔法力を使い過ぎて、彼女はふらつき倒れた。

 

 

「芳佳ちゃん?大丈夫?芳佳ちゃん!」

 

 

リーネは目に涙を浮かばせ、立っていることしかできず。トゥルーデと芳佳の部屋まで運び、目が覚めるまで椅子に座っていた。

 

 

夕方

 

 

美緒は何とか一命を取り留めた。しかし、まだ予断を許さない。

 

美緒の寝るベッドの脇の椅子には、ペリーヌが座っていた。

 

ペリーヌの後ろには洋介が寝ているベッド。みんなと看病のために座っていながらサーニャが座っていた。

 

 

「(洋介さん…)」

 

 

「オーイ、交代ダゾサーニャ」

 

 

「エイラ…」

 

 

エイラがサーニャと交代の為に入室、医務室に心電図の機械音が鳴り響くとき、入り口の扉を明け、芳佳とリーネが入ってきた。

 

 

「っ!」

 

 

芳佳の姿を確認したペリーヌは椅子から走るように立ち上がり、芳佳の顔にビンタを浴びせた。その音で視線を芳佳たちに向けた。

 

 

「あなたのせいよ…何か言いなさいよ!」

 

 

「落ち着け、ペリーヌ!」

 

 

ペリーヌは芳佳を責め、エイラが間合いに入って止めようとした。

 

 

「芳佳ちゃんは魔法力を使い果たして…」

 

 

「あなたは黙ってなさい!」

 

 

「黙りません!」

 

 

「落ち着いてペリーヌさん」

 

 

「…」

 

 

「芳佳ちゃん!?」

 

 

芳佳は美緒に駆け寄り、再び治癒魔法を掻ける。今までより無言であって集中していた。

 

 

エイラのポーチから、一枚のタロットカードが洋介の寝ている布団の上落ちた。

 

出たカードは死神の正位置だった。

 

 

「…死神…縁起でもないな…エイラ…」

 

 

「「洋介さん…!」」

 

 

「「桜井さん!」中尉!」

 

 

今まで寝ていた洋介が身体を起こし、タロットカードを右手で掴んで見ていた。

 

 

「…桜井中尉、起きて大丈夫なノカ?」

 

 

「…あぁ、このタロット占いだが…あの、夜間哨戒のお守りの譲渡できなかったことで……おアイコだな」

 

 

「うるセェ、もう気にしてないゾ!」

 

 

「みんな…今の状況を教えてくれ…」

 

 

ペリーヌたちが洋介に今の状況を伝えた。

 

美緒が緊急で一命を取り留めて意識が不明、芳佳が治癒魔法を掻けていることだった。

 

 

「そうか…ぐっ…」

 

 

洋介がベッドから立ち上がろうとした時に転げ落ちた。

 

 

「桜井さん!」

 

 

「中尉っ何を!?」

 

 

「先生を呼んできます!」

 

 

「構うな…!」

 

 

ペリーヌとエイラが洋介を支え、サーニャとリーネが医師を呼びに医務室から出ようとしたところ、洋介が血相をつけて制止した。

 

 

「…構うな、僕は…中佐に報告することがある…大事なことだ……それに………腹が減った、何か食べるものと…僕の軍刀を……鷹狼はどこだ?」

 

 

「わかった…!」

 

 

「…軍刀を何に使うのですか?…まさか、…中佐を切り込みに…」

 

 

「…杖代わりだ…!」

 

 

「私が支えていきます!」

 

 

「サーニャがいくナラ私もいくゾ。刀を杖代わりでも物騒ダナ、…私たちが支えていくから」

 

 

「すまん…///」

 

 

洋介はリーネが食堂でシャーリーの缶詰めのスパムを持って食し、食後にエイラとサーニャに支えられながら医務室を出て、ミーナがいる執務室に向かった。

 

黄昏が執務室を照らす中、ミーナとトゥルーデ、エーリカの3人が芳佳の処理について談話を行っていた。

 

 

 

「中佐、ミーナ中佐!」

 

 

「「桜井」さん!」

 

 

「洋介!大丈夫なの…?」

 

 

「エイラ…サーニャ、ありがとう…後は大丈夫だ…ミーナ中佐、二人っきりでお願いします!」

 

 

「えぇ…わかった…!トゥルーデ、エーリカ!」

 

 

「わかった…行くぞ、ハルトマン」

 

 

「はいはい」

 

 

洋介はエイラとサーニャ、ミーナはトゥルーデとエーリカを執務室から退出させ、部屋の中で二人っきりになり、洋介は出現した人型ネウロイの件について報告をした。

 

 

「あの人型ネウロイですが、僕に教えてくれました」

 

 

「何ですって?…ネウロイが…?」

 

 

「そうです、異世界人の僕が来てしまったことは…ネウロイが重要な機密を、転移をした計画が存在すると…」

 

 

「…桜井中尉、その件については保留にします」

 

 

「何でですか!?確かにネウロイと戦い、欧州を奪回することは百も承知です!そのまま無闇に戦えば我々の…いや、この世界の未来がありません!」

 

 

「そんな事はわかっています!桜井中尉は私たちウィッチで大切な仲間、家族です…坂本少佐のように…美緒みたいに犠牲を出したくないの…だから、お願い…行かないで…」

 

 

ミーナの顔が険しくなり、人型ネウロイに関わることを取り止めることを宣告したが、彼女の左目から涙を流しながら懇願して、洋介に抱きついた。

 

洋介はまだ負傷した身であり、暫く医務室のベッドで休むことが第一の任務に就いた。

 

 

 

 

翌朝 医務室

 

 

 

 

それから、一晩に及ぶ芳佳の治癒の甲斐あり、美緒は目を覚ました。洋介も昨日に比べてかなり身体が回復した。

 

いつネウロイが襲来しても出撃可能だが、1日は安静にすることを医師に忠告を受けた。

 

 

「ん?あ…ああ!さか」

 

 

「し~…」

 

 

美緒は一晩看病して、そばで眠っているリーネとペリーヌ、洋介を指差した。

 

 

「よかった…」

 

 

「宮藤…ありがとう…」

 

 

美緒から感謝を受けた芳佳は少し顔を赤らめる。

 

坂本は窓の向こう、大空に眼を向けていた。顔を少し引き締め、芳佳に説いた。

 

 

「宮藤、なぜ撃たなかった?あのとき、お前はなぜネウロイを撃たなかった…」

 

 

「撃てなかったんです…」

 

 

美緒は芳佳の手を掴み、引き寄せる。

 

 

「人の形をしているからか?あれはお前を誘い込む罠だ…」

 

 

「でも、私あのとき、何かを感じたんです」

 

 

「ネウロイは、敵だ」

 

 

「…もし、私が撃っていたら、坂本さんも洋介さんも、こんなことならずに済んだんですか…?」

 

 

「芳佳…そういう話しじゃないだろう?」

 

 

洋介がいつの間にか起き上がっており、二人の話しを聞いていた。

 

 

「おはようございます坂本さん、芳佳。坂本さん、ご無事で何よりです。芳佳、一晩の看病お疲れ様」

 

 

「洋介さん!身体は大丈夫ですか…?」

 

 

「あぁ、医師から1日だけ出撃の停止を食らった。過程や規則はどうあれ、俺と少佐は生きて帰ってきた。それで充分だ」

 

 

洋介は二人の前で笑みを浮かばせた。

 

 

「でも…」

 

 

「芳佳は失敗をしたかもしれない、でも坂本さんを助けてそれでいいんだ。もし、自信が持てないなら、自分の行いが、その感じた何かが正しかったかどうか、その目で確かめ、貫く勇気も必要だ。」

 

 

「…」

 

「少なくとも、俺はそうする。悔いのない選択を!……と、言っても俺の父親の口癖だ」

 

 

芳佳はどこか納得していない表情だったが、ミーナに呼ばれて医務室から出て執務室に向かった。

 

芳佳は独断先攻、命令違反、上官を負傷させて敵を取り逃がした重罪により自室禁固を受けた。

 

リーネの計らいで浴場に行き、芳佳はシャーリーの胸元に抱き寄せ、埋まってニヤけて赤くなり、みんなの笑い声が響いても、彼女の気分は晴れなかった。

 

 

 

基地宿舎

 

 

 

「いいな、宮藤軍曹。必要な時以外は外出禁止だ」

 

 

芳佳の自室にはトゥルーデから鍵を架けられ、彼女はベッドにうずくまりながら悩み、考えていた。

 

 

「(どうして、誰も信じてくれないの?あれは間違い?…ううん、きっと違う…私、どうしたら良いんだろう…)」

 

 

 

芳佳は医務室で洋介に言われた言葉を思い出し、跳ね上がるように起き上がる

 

 

「(やっぱり、確かめたい)」

 

 

医務室で洋介は美緒と談話していた。

 

洋介は執務室から出た後、美緒とミーナが二人っきりになった時、扉に耳を傾けて聴く。

 

ウィッチの年齢は二十歳前後で魔法力が衰退、シールドを張れなくなることを、彼女は二十歳を越えていたためシールドが弱体していた。

 

 

「…坂本さんは随分、飛ぶことに執着しているんですね。俺のかつての隊長みたいですよ」

 

 

「…知っていたのか…しかし、お前は羨ましい。ウィザードの年齢が二十歳を過ぎても魔法力は衰えず、シールドも健在だな」

 

 

「そ、そんな…俺は魔法に関してよくわかりません…それに…あの時の夜、ミーナ中佐と話しているのが気になって、聞こえてしまって。すいません…」

 

 

「謝らなくていい…私は、まだ飛ばなくてはならないんだ。ウィッチに不可能はない!」

 

 

「ウィッチに不可能はない!…いいお言葉です。…しかし、宮藤芳佳のことですか…でも、もうあなたは…」

 

 

「桜井、お前は何のために飛んでいる?」

 

 

洋介の言葉を遮り、美緒が質問を問いかけてきた。彼は何て解答すればいいのか迷っていた。

 

 

「…わかりません…なぜこの世界に迷い込んだのか…幾つか知りたいです。俺は…この世界に来てしまった引き換えに…この世界を救いたい…」

 

 

「はっはっはっ!お前らしいな!!」

 

 

「うぅ…///」

 

 

美緒から笑われ、洋介は照れ気味になり、暫し沈黙の後、坂本が自らの質問に答えた。

 

 

「…私にとって、戦うことは生き甲斐だった」

 

 

「坂本さんはウィッチの中のサムライですね。…今までの俺は、ひたすらお国のために戦ってきました。一時は故郷に帰還して、幼馴染みと結婚して夫婦になりました」

 

 

「そうか…お前既婚者だったのか!?」

 

 

「…翌年に娘が産まれ、国と家族のために戦うと決めました。家族で過ごした期間は3日。俺は戦いの空に戻った後、妻は空襲で倒れ、意識不明に…そして戦争が終り、家族の元に帰れると思ったが…このウィッチの世界に来てしまいました…」

 

 

「そうか…気の毒なことを聞いてすまなかった…」

 

 

「いいんです!…この命がある限り戦い続け、この世界に骨を埋める覚悟です!」

 

 

「…そうか、お前もサムライだな!向こうの世界に未練はないのか?」

 

 

「無いと言ったら嘘になります。仮に戻っても、家族と一緒にこの世界に移住して来ますよ。それに、最近ミーナ中佐から妙な目で見られています…」

 

 

「はっはっはっ、そうか!それに、お前がいた世界の思い出話しが聞きたいな」

 

 

「いいですよ、お互いに語り合いましょう。ただし、激戦の話しは無しですよ」

 

 

洋介はお互いに坂本との思い出話を語った。

 

坂本美緒の思い出は、扶桑海事変の前後で仲間と最後の勝負で引き分けになり、恩師の刀を譲り受けて欧州に渡って、教え子と共に苦楽を共にネウロイと戦い、今に至ってきた。

 

桜井洋介は南太平洋の赤道祭で宴会。ラバウルでの拳闘大会の準決勝で敗退。釣り勝負で勝利。

 

そして、ストライクウィッチーズみたいな少数精鋭の名前ばかりのはみ出し部隊、ラバウル六勇士を結成。

 

母国で幼馴染みと結婚。翌年に娘が産まれ、感涙した。そして、語り合う時間が過ぎた。

 

いつの間にか眠り、雨が降る夜明け前に洋介は目覚めた。

 

 

「…!?これはっ!」

 

 

洋介は何かに気付き、格納庫に向かった。そこには芳佳とリーネがいた。

 

 

「芳佳ちゃん!」

 

 

「リーネちゃん…!」

 

 

「今度出て行ったら禁固処分では済まないよ」

 

 

「どうしても確かめたいの!」

 

 

「私、…ネウロイのことはわからない…でもね!芳佳ちゃんのことは分かる!諦めないところ、真っ直ぐなところ、…だから…私も一緒に行く!!」

 

 

「え?」

 

 

「直ぐに仕度するから!!」

 

 

「駄目、リーネちゃん!」

 

 

リーネがストライカーのラックに駆けつけようとした時、芳佳が制止した。

 

 

「…どうして?…私じゃ駄目…?」

 

 

「…違うの、…これは私一人でやるって決めたの…お願い…!」

 

 

「駄目だ!」

 

 

「「 !? 」」

 

 

光りのない影から、険しい顔をした洋介が出てきた。

 

 

「リーネの言う通り、勝手に行くのは許されんことだ!」

 

 

「洋介さん...! お願い、行かせて!」

 

 

「一人では無理だ、リーネの危険を措かせない代わりに俺が行く」

 

 

「「 え…? 」」

 

 

洋介が意外なことを述べ、二人は驚いた表情だった。彼は装備を軍刀と拳銃を整えながら説明した。

 

 

「芳佳、君が先に飛び立って行くその後、俺も出撃して君を追う、威嚇射撃を…」

 

 

「駄目です!絶対駄目!芳佳ちゃんに当たっちゃう!」

 

 

聞いたリーネは断固反対した。リーネの気持ちとしても、彼をこれ以上に殺させたくはなかった。

 

 

「仲間を助けるための演技だ、あくまでも万が一周囲から誤魔化すためだ、僕を信じろ!」

 

 

洋介の目は真剣だったため、リーネは後ろに下がり掛けた。だが、芳佳はなぜ付いて行くのか疑問に感じ、彼の前に立ちはだかり質問した。

 

 

「…洋介さん…何で…」

 

 

「…あのネウロイが教えてくれたんだ、…僕がこのウィッチの世界にやってきたことが…その真実を知るためにも僕は行く!」

 

 

「…わかりました…!」

 

 

リーネは無言で洋介と芳佳を抱き締めた

 

 

「早く帰って来てね…」

 

 

「うん…」

 

 

「ずっと、待っているからね…」

 

 

「うん」

 

 

雨の降る中、芳佳は単独で出撃。洋介は完全武装のままタイミングを見計らって、軍刀鷹狼と南部拳銃、四式小銃を装備したまま待機、そして時間がきて出撃した。

 

 

「桜井洋介、零式戦行きまーす!」

 

 

洋介は芳佳を追い、出撃して数十分。

 

基地からミーナからの通信が入った。連絡内容は宮藤芳佳の脱走、上からの指示で撃墜命令が下った。厄介なことだが、洋介の想定内だった。

 

 

「撃墜命令ですか!?」

 

 

「『えぇ、発砲を許可します!宮藤さんの拘束をお願い、私たちもあとで追って行きます!(全く、扶桑の魔女に続いて魔術師も…)』」

 

 

「…了解しました!…行くぞ相棒!!…ハックション!!」

 

 

医療室にいた坂本もくしゃみをした。

 

洋介はユニットの魔導エンジンの速度を上げ、雲が開いた先に日光が照らし、かつて遭遇した空域に芳佳と人型ネウロイを肉眼で目視、インカムを使用するも雑音が止まず、肉声が届くまで接近して呼び叫んだ。

 

 

「おおーい!!芳佳ぁっ!!」

 

 

「っ!?洋介さん!!」

 

 

「キュィィン!」

 

 

「待て!今はこんな装備しているが、君と戦うために来たんではない!!」

 

 

瞬間に人型ネウロイが片腕を洋介に向けてビームを発射した時、その間に芳佳が割り込み、制止する。

 

 

「待って!洋介さんは悪い人じゃないの!」

 

 

「…キュイン」

 

 

人型は突き出した腕を下ろし、洋介は両腕を上げ、戦闘の意思がない様に芳佳の隣に並び、人型と向かい合った。

 

 

「君、僕のことは覚えているか…?」

 

 

「………」

 

 

「そうか、よかった…」

 

 

芳佳が洋介の顔を覗くように見つめ、訪ねた。

 

 

 

「洋介さん…このネウロイの言っているのがわかるのですか!?」

 

 

「…わからん…ただ、僕の波導で感じる…」

 

 

「キュィィン」

 

 

「何!?…わかった。今度はお手柔らかに頼む。」

 

 

「洋介さん、何て!?」

 

 

「…私はあなた、宮藤芳佳と話す代弁者になって下さい。と…」

 

 

「代弁者…?」

 

 

人型の胸元からコアを洋介に見せ、赤い閃光が放たれた。

 

 

 

「ーっ!…ぐぁっ…ぎゃっ…」

 

 

「洋介さん!!」

 

 

余りにも眩しい光りを浴びて、洋介は苦痛な叫びを上げ、芳佳が止めに入ろうとするが、彼は片手で制した。

 

 

「洋介さん…!」

 

 

「『あなた方を待っていました。』」

 

 

「!?…洋介さん…洋介さんではない…」

 

 

『「私は、人の言葉を話すことができません。だから彼の身体を借りました』」

 

 

「か…借りた?」

 

 

ネウロイが洋介の身体を借りて、芳佳に代弁していた。どちらを見て交流するのか彼女は困惑する。

 

 

「『宮藤芳佳さん、私はあなたとこの方に伝えたいことがあります』」

 

 

「私に?」

 

 

「『はい、私たちの巣にご案内します』」

 

 

ネウロイは洋介を従えて、上空の黒い雲=ネウロイの巣方に向かった。芳佳は慌てつつも着いて行った。

 

 

「いた!みんな一緒にいるよ!」

 

 

芳佳の追撃に遅れたミーナ中佐以下トゥルーデ、エーリカ、シャーリー、ルッキーニが到着。

 

遠いところから洋介と芳佳を目視した。

 

 

「あいつが坂本少佐を!!」

 

 

「待って、よく見て!」

 

 

「洋介の奴どうしたんだ?」

 

 

「前にあった時と同じだ…また洗脳されたんだ!」

 

 

 

彼女たちからは、洋介がネウロイ側に従事、ネウロイの横に飛行して芳佳とネウロイの巣に入った。

 

 

「洋介と芳佳が中に入って行くよ!」

 

 

「なにっ!?」

 

 

ルッキーニの言葉を聞いて全員が見る。その光景を見て全員が唖然、今までの激戦で誰も近づくことができなかったネウロイの巣に、二人は易々と入ったのだ。

 

 

「入っちゃった…」

 

 

「誰も入れなかったのに…」

 

 

「奴らの罠か!?」

 

 

全員が口々に言うが、トゥルーデは最悪のことを仮定した。

 

それを聞いて真っ先にルッキーニは巣に向かって飛ぼうとした。

 

 

「芳佳!洋介!」

 

 

「待ちなさい!」

 

 

「中佐!?」

 

 

「…様子を見ましょう」

 

 

ミーナの突然の制止にみんなは驚くが、彼女はこの状況を黙って見ることにしたのだ。

 

一方、雲の廊下を抜け、巣の中心部らしき大部屋に出た。

 

 

「『こちらです、芳佳さん』」

 

 

ネウロイはドームの中央付近にある大きなコアのそばへと向かう。部屋の地面に当たる部分が、世界地図を表示する。丁度ガリアの位置にコアが点在する。

 

 

「これは…地球…?」

 

 

「『見せたいものはこれです』」

 

 

向かい合った芳佳とネウロイの周りに無数の画面が現れる。地球が表示され、大戦初期の映像が流れる。

 

欧州の地を、ネウロイが焼き払う光景だった。

 

 

「『これは、私たちが行ってきた許されるべきではない行為『侵略』です』」

 

 

また別のネウロイが映し出され、一人のウィッチも映し出された。

 

 

「坂本さん!」

 

 

「『あなたたちウィッチは私たちにとって脅威であり、興味深くもありました。』」

 

 

突然場面が変わり、戦場跡のクレーターの中にネウロイのコアが残っていた。研究所の施設らしきところが映され、そこには見たこともない物体と、先ほどのコアがガラスに閉ざされていた。

 

 

「『私たちがウィッチを知ろうとしているように、あなたたちが言うネウロイを知ろうとしていた…』」

 

 

芳佳が見た映像は、ついこの間の映像であった。

 

 

『ねぇ、私をからかっているの!?』

 

 

「私だ…」

 

 

「『もう1つ、重大なことがあります』」

 

 

「えっ!?」

 

 

「『この扱っている人が、私たち秘密裏の実験でこの世界に転送したことを…』」

 

 

「なんですって!?洋介さんがこの世界に…」

 

 

「『私は科学者の一人で、現在は頓挫していますが、実験研究を行っています。異次元転移計画、通称ガリバー・プロジェクト』」

 

 

「ガリバー・プロジェクト…」

 

 

「『そう、残念ながらこれ以上はわかりません。ウィッチを調べていくうちに、私たちの興味は人類そのものとへと移りました』」

 

 

「人類…」

 

 

「『そう、あなたたちが私たちを、私たちもあなたたちと分かり合い、願わくは共存したい』」

 

 

「私たち、きっといつか分かり合えるよ」

 

 

「『ありがとう、芳佳さん』」

 

 

人型は右腕を出して、腕の先に五本指を生成、その手を前へ差し出す。

 

 

「『握手していただきませんか?』」

 

 

「うん…」

 

 

ネウロイの手が、芳佳の手を握ろうとしたとき、その手が止まる。

 

 

「どうしたの?」

 

 

「『誰か…いや『何か』が来ます…!!』」

 

 

「えっ?」

 

 

「『ここにいて下さい!』」

 

 

人型は洋介ごと瞬間移動して、彼女は巣の外に出現した。

 

 

「さっきの奴だ!!桜井も一緒!」

 

 

「洗脳が解けてない!?」

 

 

「いない、やっぱり罠か!?」

 

 

「『逃げて下さい!!』」

 

 

「「「「「 !? 」」」」」

 

 

「『ここから逃げて下さい!!早く…!』」

 

 

「あいつ、なにを…?」

 

 

人型と洋介が、ミーナたちの背後に周り、驚いたトゥルーデとエーリカが機銃を向けるが、洋介がいて発砲ができなかった。

 

ネウロイが洋介の身体を使ってシールドを張った時、突如、ビームが着弾した。

 

 

「!?」

 

 

「なに!?」

 

 

「ネウロイが、私たちを庇った…!?」

 

 

「『早く逃げて下さい…逃げて!』」

 

 

それを最後に、洋介の身体の呪縛が解かれ、零式戦ストライカーが再起動して、意識が戻った。

 

 

「…はぁ…がはっ!?」

 

 

「よ…洋介、大丈夫!?」

 

 

「あ、あぁ…おいっ君!」

 

 

 

 

「キュィィン」

 

 

 

 




本日は長崎のピカの慰霊、黙祷を捧げます

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。