インカムから泣き叫ぶようにミーナが指示する。
洋介は編隊の前に飛び出て、小銃の銃口を人型ネウロイに向けて撃った。
ウィッチたちの距離から離れ、人型ネウロイは空中停止、攻撃してこなかった。
洋介が小銃の照準器に入れて留めを差そうにも人指し指が動かず、引き金が引けなかった。
「なぜだ!なぜネウロイが動かない…なんで指が動かないんだ…」
不審に思っていると、ネウロイが洋介に接近してきた。
「桜井!」
「待て、トゥルーデ!撃つな…」
小銃を下ろし、人型と向き合い静止する。
洋介の波導からは殺気が無く、洋介と人型の距離は1メートルもなかった。
暫く人型は洋介を眺めて、胸部からコアを露出、そして頭の中から声が聞こえた。
「ネウロイのコア…!?」
「(すみません…少しだけあなたを調べさせていただきます)」
「何だって!?…かはっ!!」
「桜井!?」
ネウロイのコアから太陽に匹敵する赤い閃光が放たれ、洋介は何かショックを与えられたかのように体が動かなかった。
「まさか、洗脳か…!?」
洋介の頭の中で何やら象形文字が浮かび、施設らしき光景を目の当たりにした。
「何だこれは!?…ここはどこなんだ!?…うぐっ!がはぁっ!」
洋介の身体から力が抜け、意識がなくなった。
それを目の当たりにしたトゥルーデが怒り、MG42を構えた。
「…おのれ…よくも桜井を…洋介を!!」
「トゥルーデ!!洋介に当たっちゃう!」
トゥルーデが放たれた弾丸が、気を失った洋介の左手からシールドを防いだ。
「あいつのシールドを!」
『邪魔をしないで…』
「「「 !? 」」」
バルクホルンたちは耳を疑った。
洋介の口が動いても、洋介の声ではなかった。機械的な変声で女性的な声だった。
「洗脳、されたのか…?」
「お願い、…私の…邪魔をしないで…」
それを最後に人型ネウロイは瞬間移動で消え、ネウロイの能力で支えていた洋介の身体が宙に放り出された。
「桜井!」
「洋介!」
「洋介さん、しっかりして!洋介さん!」
トゥルーデとエーリカは洋介を回収、彼の身体には力がなく、目蓋は閉じられたままだった。
「…こちらバルクホルン。…少佐と桜井中尉が負傷した。これより帰還する…」
洋介を回収したトゥルーデたちが基地に帰還するまで空気が重かった。
501基地 医務室前廊下
「坂本さん!しっかりして下さい!坂本さん!」
「少佐!返事をして下さい!少佐!宮藤さん!」
芳佳が治癒魔法を掛け、必死に治癒を施す。ペリーヌは美緒に懸命に呼び掛けながらも意識が、目を覚ます気配はない。
「…桜井さん…落ち着きなさい、宮藤さん」
その隣のストレッチャーには、同じく意識のない洋介が寝かされていた。
ミーナが静止して、男性医師と看護師が駆け付け、二人を医務室に連れて行く。緊急手術のランプが灯された。
「あ…」
「宮藤!?」
芳佳が魔法力を使い過ぎて、彼女はふらつき倒れた。
「芳佳ちゃん?大丈夫?芳佳ちゃん!」
リーネは目に涙を浮かばせ、立っていることしかできず。トゥルーデと芳佳の部屋まで運び、目が覚めるまで椅子に座っていた。
夕方
美緒は何とか一命を取り留めた。しかし、まだ予断を許さない。
美緒の寝るベッドの脇の椅子には、ペリーヌが座っていた。
ペリーヌの後ろには洋介が寝ているベッド。みんなと看病のために座っていながらサーニャが座っていた。
「(洋介さん…)」
「オーイ、交代ダゾサーニャ」
「エイラ…」
エイラがサーニャと交代の為に入室、医務室に心電図の機械音が鳴り響くとき、入り口の扉を明け、芳佳とリーネが入ってきた。
「っ!」
芳佳の姿を確認したペリーヌは椅子から走るように立ち上がり、芳佳の顔にビンタを浴びせた。その音で視線を芳佳たちに向けた。
「あなたのせいよ…何か言いなさいよ!」
「落ち着け、ペリーヌ!」
ペリーヌは芳佳を責め、エイラが間合いに入って止めようとした。
「芳佳ちゃんは魔法力を使い果たして…」
「あなたは黙ってなさい!」
「黙りません!」
「落ち着いてペリーヌさん」
「…」
「芳佳ちゃん!?」
芳佳は美緒に駆け寄り、再び治癒魔法を掻ける。今までより無言であって集中していた。
エイラのポーチから、一枚のタロットカードが洋介の寝ている布団の上落ちた。
出たカードは死神の正位置だった。
「…死神…縁起でもないな…エイラ…」
「「洋介さん…!」」
「「桜井さん!」中尉!」
今まで寝ていた洋介が身体を起こし、タロットカードを右手で掴んで見ていた。
「…桜井中尉、起きて大丈夫なノカ?」
「…あぁ、このタロット占いだが…あの、夜間哨戒のお守りの譲渡できなかったことで……おアイコだな」
「うるセェ、もう気にしてないゾ!」
「みんな…今の状況を教えてくれ…」
ペリーヌたちが洋介に今の状況を伝えた。
美緒が緊急で一命を取り留めて意識が不明、芳佳が治癒魔法を掻けていることだった。
「そうか…ぐっ…」
洋介がベッドから立ち上がろうとした時に転げ落ちた。
「桜井さん!」
「中尉っ何を!?」
「先生を呼んできます!」
「構うな…!」
ペリーヌとエイラが洋介を支え、サーニャとリーネが医師を呼びに医務室から出ようとしたところ、洋介が血相をつけて制止した。
「…構うな、僕は…中佐に報告することがある…大事なことだ……それに………腹が減った、何か食べるものと…僕の軍刀を……鷹狼はどこだ?」
「わかった…!」
「…軍刀を何に使うのですか?…まさか、…中佐を切り込みに…」
「…杖代わりだ…!」
「私が支えていきます!」
「サーニャがいくナラ私もいくゾ。刀を杖代わりでも物騒ダナ、…私たちが支えていくから」
「すまん…///」
洋介はリーネが食堂でシャーリーの缶詰めのスパムを持って食し、食後にエイラとサーニャに支えられながら医務室を出て、ミーナがいる執務室に向かった。
黄昏が執務室を照らす中、ミーナとトゥルーデ、エーリカの3人が芳佳の処理について談話を行っていた。
「中佐、ミーナ中佐!」
「「桜井」さん!」
「洋介!大丈夫なの…?」
「エイラ…サーニャ、ありがとう…後は大丈夫だ…ミーナ中佐、二人っきりでお願いします!」
「えぇ…わかった…!トゥルーデ、エーリカ!」
「わかった…行くぞ、ハルトマン」
「はいはい」
洋介はエイラとサーニャ、ミーナはトゥルーデとエーリカを執務室から退出させ、部屋の中で二人っきりになり、洋介は出現した人型ネウロイの件について報告をした。
「あの人型ネウロイですが、僕に教えてくれました」
「何ですって?…ネウロイが…?」
「そうです、異世界人の僕が来てしまったことは…ネウロイが重要な機密を、転移をした計画が存在すると…」
「…桜井中尉、その件については保留にします」
「何でですか!?確かにネウロイと戦い、欧州を奪回することは百も承知です!そのまま無闇に戦えば我々の…いや、この世界の未来がありません!」
「そんな事はわかっています!桜井中尉は私たちウィッチで大切な仲間、家族です…坂本少佐のように…美緒みたいに犠牲を出したくないの…だから、お願い…行かないで…」
ミーナの顔が険しくなり、人型ネウロイに関わることを取り止めることを宣告したが、彼女の左目から涙を流しながら懇願して、洋介に抱きついた。
洋介はまだ負傷した身であり、暫く医務室のベッドで休むことが第一の任務に就いた。
翌朝 医務室
それから、一晩に及ぶ芳佳の治癒の甲斐あり、美緒は目を覚ました。洋介も昨日に比べてかなり身体が回復した。
いつネウロイが襲来しても出撃可能だが、1日は安静にすることを医師に忠告を受けた。
「ん?あ…ああ!さか」
「し~…」
美緒は一晩看病して、そばで眠っているリーネとペリーヌ、洋介を指差した。
「よかった…」
「宮藤…ありがとう…」
美緒から感謝を受けた芳佳は少し顔を赤らめる。
坂本は窓の向こう、大空に眼を向けていた。顔を少し引き締め、芳佳に説いた。
「宮藤、なぜ撃たなかった?あのとき、お前はなぜネウロイを撃たなかった…」
「撃てなかったんです…」
美緒は芳佳の手を掴み、引き寄せる。
「人の形をしているからか?あれはお前を誘い込む罠だ…」
「でも、私あのとき、何かを感じたんです」
「ネウロイは、敵だ」
「…もし、私が撃っていたら、坂本さんも洋介さんも、こんなことならずに済んだんですか…?」
「芳佳…そういう話しじゃないだろう?」
洋介がいつの間にか起き上がっており、二人の話しを聞いていた。
「おはようございます坂本さん、芳佳。坂本さん、ご無事で何よりです。芳佳、一晩の看病お疲れ様」
「洋介さん!身体は大丈夫ですか…?」
「あぁ、医師から1日だけ出撃の停止を食らった。過程や規則はどうあれ、俺と少佐は生きて帰ってきた。それで充分だ」
洋介は二人の前で笑みを浮かばせた。
「でも…」
「芳佳は失敗をしたかもしれない、でも坂本さんを助けてそれでいいんだ。もし、自信が持てないなら、自分の行いが、その感じた何かが正しかったかどうか、その目で確かめ、貫く勇気も必要だ。」
「…」
「少なくとも、俺はそうする。悔いのない選択を!……と、言っても俺の父親の口癖だ」
芳佳はどこか納得していない表情だったが、ミーナに呼ばれて医務室から出て執務室に向かった。
芳佳は独断先攻、命令違反、上官を負傷させて敵を取り逃がした重罪により自室禁固を受けた。
リーネの計らいで浴場に行き、芳佳はシャーリーの胸元に抱き寄せ、埋まってニヤけて赤くなり、みんなの笑い声が響いても、彼女の気分は晴れなかった。
基地宿舎
「いいな、宮藤軍曹。必要な時以外は外出禁止だ」
芳佳の自室にはトゥルーデから鍵を架けられ、彼女はベッドにうずくまりながら悩み、考えていた。
「(どうして、誰も信じてくれないの?あれは間違い?…ううん、きっと違う…私、どうしたら良いんだろう…)」
芳佳は医務室で洋介に言われた言葉を思い出し、跳ね上がるように起き上がる
「(やっぱり、確かめたい)」
医務室で洋介は美緒と談話していた。
洋介は執務室から出た後、美緒とミーナが二人っきりになった時、扉に耳を傾けて聴く。
ウィッチの年齢は二十歳前後で魔法力が衰退、シールドを張れなくなることを、彼女は二十歳を越えていたためシールドが弱体していた。
「…坂本さんは随分、飛ぶことに執着しているんですね。俺のかつての隊長みたいですよ」
「…知っていたのか…しかし、お前は羨ましい。ウィザードの年齢が二十歳を過ぎても魔法力は衰えず、シールドも健在だな」
「そ、そんな…俺は魔法に関してよくわかりません…それに…あの時の夜、ミーナ中佐と話しているのが気になって、聞こえてしまって。すいません…」
「謝らなくていい…私は、まだ飛ばなくてはならないんだ。ウィッチに不可能はない!」
「ウィッチに不可能はない!…いいお言葉です。…しかし、宮藤芳佳のことですか…でも、もうあなたは…」
「桜井、お前は何のために飛んでいる?」
洋介の言葉を遮り、美緒が質問を問いかけてきた。彼は何て解答すればいいのか迷っていた。
「…わかりません…なぜこの世界に迷い込んだのか…幾つか知りたいです。俺は…この世界に来てしまった引き換えに…この世界を救いたい…」
「はっはっはっ!お前らしいな!!」
「うぅ…///」
美緒から笑われ、洋介は照れ気味になり、暫し沈黙の後、坂本が自らの質問に答えた。
「…私にとって、戦うことは生き甲斐だった」
「坂本さんはウィッチの中のサムライですね。…今までの俺は、ひたすらお国のために戦ってきました。一時は故郷に帰還して、幼馴染みと結婚して夫婦になりました」
「そうか…お前既婚者だったのか!?」
「…翌年に娘が産まれ、国と家族のために戦うと決めました。家族で過ごした期間は3日。俺は戦いの空に戻った後、妻は空襲で倒れ、意識不明に…そして戦争が終り、家族の元に帰れると思ったが…このウィッチの世界に来てしまいました…」
「そうか…気の毒なことを聞いてすまなかった…」
「いいんです!…この命がある限り戦い続け、この世界に骨を埋める覚悟です!」
「…そうか、お前もサムライだな!向こうの世界に未練はないのか?」
「無いと言ったら嘘になります。仮に戻っても、家族と一緒にこの世界に移住して来ますよ。それに、最近ミーナ中佐から妙な目で見られています…」
「はっはっはっ、そうか!それに、お前がいた世界の思い出話しが聞きたいな」
「いいですよ、お互いに語り合いましょう。ただし、激戦の話しは無しですよ」
洋介はお互いに坂本との思い出話を語った。
坂本美緒の思い出は、扶桑海事変の前後で仲間と最後の勝負で引き分けになり、恩師の刀を譲り受けて欧州に渡って、教え子と共に苦楽を共にネウロイと戦い、今に至ってきた。
桜井洋介は南太平洋の赤道祭で宴会。ラバウルでの拳闘大会の準決勝で敗退。釣り勝負で勝利。
そして、ストライクウィッチーズみたいな少数精鋭の名前ばかりのはみ出し部隊、ラバウル六勇士を結成。
母国で幼馴染みと結婚。翌年に娘が産まれ、感涙した。そして、語り合う時間が過ぎた。
いつの間にか眠り、雨が降る夜明け前に洋介は目覚めた。
「…!?これはっ!」
洋介は何かに気付き、格納庫に向かった。そこには芳佳とリーネがいた。
「芳佳ちゃん!」
「リーネちゃん…!」
「今度出て行ったら禁固処分では済まないよ」
「どうしても確かめたいの!」
「私、…ネウロイのことはわからない…でもね!芳佳ちゃんのことは分かる!諦めないところ、真っ直ぐなところ、…だから…私も一緒に行く!!」
「え?」
「直ぐに仕度するから!!」
「駄目、リーネちゃん!」
リーネがストライカーのラックに駆けつけようとした時、芳佳が制止した。
「…どうして?…私じゃ駄目…?」
「…違うの、…これは私一人でやるって決めたの…お願い…!」
「駄目だ!」
「「 !? 」」
光りのない影から、険しい顔をした洋介が出てきた。
「リーネの言う通り、勝手に行くのは許されんことだ!」
「洋介さん...! お願い、行かせて!」
「一人では無理だ、リーネの危険を措かせない代わりに俺が行く」
「「 え…? 」」
洋介が意外なことを述べ、二人は驚いた表情だった。彼は装備を軍刀と拳銃を整えながら説明した。
「芳佳、君が先に飛び立って行くその後、俺も出撃して君を追う、威嚇射撃を…」
「駄目です!絶対駄目!芳佳ちゃんに当たっちゃう!」
聞いたリーネは断固反対した。リーネの気持ちとしても、彼をこれ以上に殺させたくはなかった。
「仲間を助けるための演技だ、あくまでも万が一周囲から誤魔化すためだ、僕を信じろ!」
洋介の目は真剣だったため、リーネは後ろに下がり掛けた。だが、芳佳はなぜ付いて行くのか疑問に感じ、彼の前に立ちはだかり質問した。
「…洋介さん…何で…」
「…あのネウロイが教えてくれたんだ、…僕がこのウィッチの世界にやってきたことが…その真実を知るためにも僕は行く!」
「…わかりました…!」
リーネは無言で洋介と芳佳を抱き締めた
「早く帰って来てね…」
「うん…」
「ずっと、待っているからね…」
「うん」
雨の降る中、芳佳は単独で出撃。洋介は完全武装のままタイミングを見計らって、軍刀鷹狼と南部拳銃、四式小銃を装備したまま待機、そして時間がきて出撃した。
「桜井洋介、零式戦行きまーす!」
洋介は芳佳を追い、出撃して数十分。
基地からミーナからの通信が入った。連絡内容は宮藤芳佳の脱走、上からの指示で撃墜命令が下った。厄介なことだが、洋介の想定内だった。
「撃墜命令ですか!?」
「『えぇ、発砲を許可します!宮藤さんの拘束をお願い、私たちもあとで追って行きます!(全く、扶桑の魔女に続いて魔術師も…)』」
「…了解しました!…行くぞ相棒!!…ハックション!!」
医療室にいた坂本もくしゃみをした。
洋介はユニットの魔導エンジンの速度を上げ、雲が開いた先に日光が照らし、かつて遭遇した空域に芳佳と人型ネウロイを肉眼で目視、インカムを使用するも雑音が止まず、肉声が届くまで接近して呼び叫んだ。
「おおーい!!芳佳ぁっ!!」
「っ!?洋介さん!!」
「キュィィン!」
「待て!今はこんな装備しているが、君と戦うために来たんではない!!」
瞬間に人型ネウロイが片腕を洋介に向けてビームを発射した時、その間に芳佳が割り込み、制止する。
「待って!洋介さんは悪い人じゃないの!」
「…キュイン」
人型は突き出した腕を下ろし、洋介は両腕を上げ、戦闘の意思がない様に芳佳の隣に並び、人型と向かい合った。
「君、僕のことは覚えているか…?」
「………」
「そうか、よかった…」
芳佳が洋介の顔を覗くように見つめ、訪ねた。
「洋介さん…このネウロイの言っているのがわかるのですか!?」
「…わからん…ただ、僕の波導で感じる…」
「キュィィン」
「何!?…わかった。今度はお手柔らかに頼む。」
「洋介さん、何て!?」
「…私はあなた、宮藤芳佳と話す代弁者になって下さい。と…」
「代弁者…?」
人型の胸元からコアを洋介に見せ、赤い閃光が放たれた。
「ーっ!…ぐぁっ…ぎゃっ…」
「洋介さん!!」
余りにも眩しい光りを浴びて、洋介は苦痛な叫びを上げ、芳佳が止めに入ろうとするが、彼は片手で制した。
「洋介さん…!」
「『あなた方を待っていました。』」
「!?…洋介さん…洋介さんではない…」
『「私は、人の言葉を話すことができません。だから彼の身体を借りました』」
「か…借りた?」
ネウロイが洋介の身体を借りて、芳佳に代弁していた。どちらを見て交流するのか彼女は困惑する。
「『宮藤芳佳さん、私はあなたとこの方に伝えたいことがあります』」
「私に?」
「『はい、私たちの巣にご案内します』」
ネウロイは洋介を従えて、上空の黒い雲=ネウロイの巣方に向かった。芳佳は慌てつつも着いて行った。
「いた!みんな一緒にいるよ!」
芳佳の追撃に遅れたミーナ中佐以下トゥルーデ、エーリカ、シャーリー、ルッキーニが到着。
遠いところから洋介と芳佳を目視した。
「あいつが坂本少佐を!!」
「待って、よく見て!」
「洋介の奴どうしたんだ?」
「前にあった時と同じだ…また洗脳されたんだ!」
彼女たちからは、洋介がネウロイ側に従事、ネウロイの横に飛行して芳佳とネウロイの巣に入った。
「洋介と芳佳が中に入って行くよ!」
「なにっ!?」
ルッキーニの言葉を聞いて全員が見る。その光景を見て全員が唖然、今までの激戦で誰も近づくことができなかったネウロイの巣に、二人は易々と入ったのだ。
「入っちゃった…」
「誰も入れなかったのに…」
「奴らの罠か!?」
全員が口々に言うが、トゥルーデは最悪のことを仮定した。
それを聞いて真っ先にルッキーニは巣に向かって飛ぼうとした。
「芳佳!洋介!」
「待ちなさい!」
「中佐!?」
「…様子を見ましょう」
ミーナの突然の制止にみんなは驚くが、彼女はこの状況を黙って見ることにしたのだ。
一方、雲の廊下を抜け、巣の中心部らしき大部屋に出た。
「『こちらです、芳佳さん』」
ネウロイはドームの中央付近にある大きなコアのそばへと向かう。部屋の地面に当たる部分が、世界地図を表示する。丁度ガリアの位置にコアが点在する。
「これは…地球…?」
「『見せたいものはこれです』」
向かい合った芳佳とネウロイの周りに無数の画面が現れる。地球が表示され、大戦初期の映像が流れる。
欧州の地を、ネウロイが焼き払う光景だった。
「『これは、私たちが行ってきた許されるべきではない行為『侵略』です』」
また別のネウロイが映し出され、一人のウィッチも映し出された。
「坂本さん!」
「『あなたたちウィッチは私たちにとって脅威であり、興味深くもありました。』」
突然場面が変わり、戦場跡のクレーターの中にネウロイのコアが残っていた。研究所の施設らしきところが映され、そこには見たこともない物体と、先ほどのコアがガラスに閉ざされていた。
「『私たちがウィッチを知ろうとしているように、あなたたちが言うネウロイを知ろうとしていた…』」
芳佳が見た映像は、ついこの間の映像であった。
『ねぇ、私をからかっているの!?』
「私だ…」
「『もう1つ、重大なことがあります』」
「えっ!?」
「『この扱っている人が、私たち秘密裏の実験でこの世界に転送したことを…』」
「なんですって!?洋介さんがこの世界に…」
「『私は科学者の一人で、現在は頓挫していますが、実験研究を行っています。異次元転移計画、通称ガリバー・プロジェクト』」
「ガリバー・プロジェクト…」
「『そう、残念ながらこれ以上はわかりません。ウィッチを調べていくうちに、私たちの興味は人類そのものとへと移りました』」
「人類…」
「『そう、あなたたちが私たちを、私たちもあなたたちと分かり合い、願わくは共存したい』」
「私たち、きっといつか分かり合えるよ」
「『ありがとう、芳佳さん』」
人型は右腕を出して、腕の先に五本指を生成、その手を前へ差し出す。
「『握手していただきませんか?』」
「うん…」
ネウロイの手が、芳佳の手を握ろうとしたとき、その手が止まる。
「どうしたの?」
「『誰か…いや『何か』が来ます…!!』」
「えっ?」
「『ここにいて下さい!』」
人型は洋介ごと瞬間移動して、彼女は巣の外に出現した。
「さっきの奴だ!!桜井も一緒!」
「洗脳が解けてない!?」
「いない、やっぱり罠か!?」
「『逃げて下さい!!』」
「「「「「 !? 」」」」」
「『ここから逃げて下さい!!早く…!』」
「あいつ、なにを…?」
人型と洋介が、ミーナたちの背後に周り、驚いたトゥルーデとエーリカが機銃を向けるが、洋介がいて発砲ができなかった。
ネウロイが洋介の身体を使ってシールドを張った時、突如、ビームが着弾した。
「!?」
「なに!?」
「ネウロイが、私たちを庇った…!?」
「『早く逃げて下さい…逃げて!』」
それを最後に、洋介の身体の呪縛が解かれ、零式戦ストライカーが再起動して、意識が戻った。
「…はぁ…がはっ!?」
「よ…洋介、大丈夫!?」
「あ、あぁ…おいっ君!」
「キュィィン」
本日は長崎のピカの慰霊、黙祷を捧げます