ストライクウィッチーズ ~蒼空を舞う零の荒鷹~   作:鷹と狼

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第15話 502着任での腕試し

 

 

 

桜井洋介はノヴォホルモゴルイ港からペテルブルグ基地に移り、予定通り502に着任。

 

 

そして彼だけは隊長室でコルセットを着けた少女のラルとロスマンに尋問を受けていた。

 

 

「私はこの502部隊の隊長を勤めるグンドュラ・ラル、カールスラント空軍少佐だ。突如の緊急で扶桑艦隊の護衛、ご苦労だったな」

 

 

「そして、私はここの教育係を務めているカールスラント空軍曹長、エディータ・ロスマンです。あなたの活躍は501で聞いています」

 

 

「はっ!大変恐縮です。桜井洋介中尉です。よろしくお願いします!」

 

 

「さて、桜井中尉さっそくだがお前に訊きたいことがある」

 

 

ラルは笑みから表情を変え、キツい眼差しをした。

 

 

「…なんでしょうか…」

 

 

「君は一体何者だ?」

 

 

「…は?…どういうことでしょうか?」

 

 

「聞いた通りだ、私の部隊には扶桑のウィッチが配属しているが、その一人にお前の確認をしたが、扶桑海軍にお前の名前はなかった。他にもお前の501配属以前の原隊である302航空隊も存在しない。もう一度聞く、君は何者だ、桜井洋介中尉?」

 

 

隊長のラル以外のロスマンもキツい眼差しを送ってきた。

 

洋介はあの時の、ブリタニア501時代の尋問を思い出しながら口にした。

 

 

「確かに私は、扶桑海軍でも扶桑皇国国民のものでもありません。俺は大日本帝国海軍中尉、桜井洋介です」

 

 

「日本?どこだそこは?」

 

 

「聞いたことありませんね…」

 

 

二人とも首を傾げ、ロスマンが質問する。

 

 

「桜井中尉、その日本はどこにあるのですか?」

 

 

「異世界の国ですが、扶桑皇国と似た国です!」

 

 

「異世界!?あなたは何を言っているの!?」

 

 

「待て、先生。中尉、詳しく話してみろ」

 

 

洋介はこの世界に赴くまでの経緯を語った。

 

彼のいた世界ではネウロイが存在せず、人同士の戦争のことを。母国が敗戦、終戦後の戦いで機体と自身が損傷してこの世界に飛来。

 

 

そして、洋介の愛機がストライカーユニットに変化し、魔法力が覚醒し、この世界でただ一人のウィザードとして戦うことになったなどの経緯を語った。

 

 

「異世界か…信じられない話しだが、中尉の不明な点を考えると納得がいくな」

 

 

「そうですね…それと中尉。もう幾つか聞きたいことがあります。501の報告では人型ネウロイと接触したと書かれてますが、本当ですか?それについて詳しく聞きたいんですが」

 

 

「…ただ501については…今の言える範囲で伝えます。あの戦いで私は人型ネウロイが私に伝えた重要機密。異次元転移計画、通称ガリバープロジェクト」

 

 

「ガリバープロジェクト…!?」

 

 

ラルはこれ以上501の質問はしなかった。だが、ロスマンは個人的な質問を行った。

 

 

「中尉、あなたはウィザードであっても、年齢は二十歳なのですか!?」

 

 

「はい、なら試してみますか?」

 

 

洋介は腰のホルスターから南部十四年式拳銃を取り出して、ロスマンに渡した。

 

 

「いきます」

 

 

ロスマンは拳銃で数発発砲、洋介は魔法力を発動してシールドを晒し、防いだ。

 

 

「どうだ先生?」

 

 

「凄いです…桜井中尉、二十歳でもシールドを貼れるなんて…」

 

 

「ロスマン曹長、私に中尉は要りません。自由に呼んで下さい」

 

 

「では私もロスマンで桜井さん。これ、拳銃をお返しします」

 

 

 

「さて、桜井。あと1時間すれば夕食だ。お前の自己紹介は雁渕ひかりとその時にしようと思うんだが、構わないか?」

 

 

「はい、問題ありません」

 

 

「それじゃあ、時間になったらミーティングルームへ来てくれ。それまでは部屋で待ってろ」

 

 

「了解!」

 

 

 

洋介は502基地に用意された部屋で荷物整理を整え、そして写真を取りだした。

 

 

「雪、僕は頑張っていくゼョ。新たなる地で。」

 

 

 

時間が訪れ、ミーティングルームへと足を運んだ彼を待っていたのは、この部隊のウィッチたちとテーブルに並べられた温かい食事だった。洋介とひかりの分も用意されている。

 

誰もがひかりを含め、彼を珍獣でも見るかのような視線を送っており、司会はロスマンが務めた。

 

 

「扶桑から援軍の予定だった雁渕孝美中尉に代わって、妹のひかりさんが配属することになりました」

 

 

「雁渕ひかりです!姉の代わりにがんばります!」

 

 

「そして、元501の一員でブリタニア防衛、ガリア解放した世界で唯一のウィザード。桜井洋介さんです」

 

 

「日本海軍中尉、桜井洋介です。よろしくお願いします」

 

 

「ちっ…」

 

 

洋介とひかりが敬礼する時、その中に舌打ちするウィッチがいたが、ひかりが睨み気にせずに進んだ。

 

 

「私は戦闘隊長のアレクサンドラ・I・ポクルイーシキン。階級は大尉です。」

 

 

「ヴァルトルート・クルピンスキー。中尉だよ。伯爵と呼んでくれるかな」

 

 

「ん…?」

 

 

「伯爵…そんな偉い人が…?」

 

 

「この人の冗談には付き合わないでいいのよ」

 

 

「んん~酷いなぁ~先生~…」

 

 

ロスマンは二人に助言し、洋介は呆れた顔をした。

 

 

「(はは…だろうな…)」

 

 

「先生?」

 

 

「ジョーゼット・ルマール。少尉です。」

 

 

ジョゼは何か距離を取ったような挨拶をした。

 

 

「下原定子です。少尉です……///」

 

 

定子は洋介を見て赤面した。

 

 

「………………」

 

 

「おい、管野の番だよ…それに一人は上官だよ…」

 

 

「知るかよ…ふん!」

 

 

「むむ…」

 

 

ニパは注意するが直枝は聞く耳持たず、品定めをしているかのようにひかりと洋介を鼻で吸った。

 

 

「(おいおい…部隊内部の争いはあかんゼョ……トチコさんがいたらお玉で打たれるな…)」

 

「えっええ〜と…隣は管野直枝少尉。私は曹長のニッカ・エドワーディン・カタヤイネン。ニパでいいです。よろしくお願いします」

 

 

「はい!紹介は終わり、食事にしましょう」

 

 

洋介とひかりは席に着き、食事を始める。洋介はテーブルに並ぶ食事の味に舌を鳴らしながら、周りの質問に受け答えする。

 

 

「ねぇ、雁渕さん。ひかりちゃんと呼んでいいかな?あ、あれ…?」

 

 

「寝てます…」

 

 

「仔猫ちゃんはよっぽど疲れているんだね」

 

 

「ぷっくくく…」

 

 

「何が面白いんだ…」

 

 

管野はパンをかじりながら愚痴った。洋介は席から立ち上がり、彼女を背中に背に乗せた。

 

 

「僕が部屋まで運んで寝かせますよ」

 

 

「桜井さん、すみません」

 

 

洋介はひかりを部屋まで運び、ベッドに寝かせた。彼は戻って、食事を再開した。

 

最初に質問してきたのはニパだった。

 

 

「ねぇ、桜井さん。前は501にいたんですよね?イッルは元気でした?」

 

「イッル?あぁエイラか…元気だった。501でも楽しかったよ。…この料理美味しいな。誰が作ったんだ?」

 

 

「私です、中尉…///」

 

 

「下原少尉か、凄いな。僕も料理作れるけど、ここまで異国の料理は作れないな~」

 

 

「あ、ありがとうございます///桜井中尉も作られるのですか…? 

 

洋介に褒められ、少し照れたように言う。定子も洋介に質問した。

 

 

「まぁな、炊き込みご飯などの日本料理や中華料理とか」

 

 

「中華料理…?日本…?」

 

 

「桜井中尉!」

 

 

「なんですか、ポクルイーシキン大尉?」

 

 

「えっと、サーシャでいいです。ラル隊長やロスマン曹長から聞いたのですが、桜井中尉のいた世界はネウロイがいないのは本当ですか…?」

 

 

「はい、僕がいた…」

 

 

「おいってめぇ!」

 

 

「ん?なんだ?管野少尉」

 

 

「俺と模擬戦しろ!!」

 

 

サーシャが洋介に質問した時、賑わいを止めたのは管野直枝だった。

 

 

「ちょっと菅野さん!」

 

 

サーシャが注意するが直枝は止まらなかった。

 

 

「ふん、こいつが中尉だろうが上官だろうが、孝美の妹より信用できる訳ねぇーよ!日本なんて国は知らねぇ、そんな在りもしねぇ国の軍人だとか名乗った怪しい奴を信用できる訳ねぇだろ!だから俺と模擬戦しろ!お前もウィッチ、いやウィザードなら空で語れ!」

 

 

彼女の言い分に間違いはなかった。友軍の陸海軍の共同戦線でさえも信用することは難しい。

 

かつてのラバウル時代、ゲタバキ(フロート装備)の連中が信用できなかった。

 

そう思っていると、直枝の目は闘争心が溢れた目で彼を見ていた。彼女の目を見たら、昔の洋介に少し似ていた。

 

 

「…いいだろう少尉。本気を出せ、戦いはいつも真剣勝負だからな」

 

 

火花を散らし合い、一触即発の二人の間に入ったのはロスマン曹長だった。

 

 

「着任早々にこんなことを起こすなんて、まぁいいです。模擬戦を行うのであれば、書類申請をしてからにして下さいね。そして、私からの条件をお願いします」

 

 

「条件ですか…?」

 

 

「管野少尉との模擬戦時に、雁渕さんも見物させてください」

 

 

「わかりました」

 

 

「了解…おいっ!首洗って待っとけよ、ウィザード!」

 

 

そう言って直枝は食事を終え、出て行って行った。

 

 

「まったく…桜井中尉、初日でこんなことになってすみません」

 

 

戦闘隊長のサーシャが、直枝に代わって謝罪した。

 

 

「あっ、いいんですよ。ああいうのは、嫌いじゃないです。俺が前の世界で、精鋭部隊時代に彼女みたいな仲間がいましたよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「コアっ!!」

 

 

 

翌日、ひかりの部屋

 

 

あの時の記憶でひかりが目を覚ました。持って来た荷物の中に姉の孝美と自身の写真を取りだし、孝美に挨拶した。

 

 

「おはよう、お姉ちゃん!私、がんばるからね!」

 

 

基地の外周に直枝とニパ、軍刀を腰に携えた洋介が走っていた。

 

 

「寒くなってきたな」

 

 

「そうかな…?でも桜井さん早いや…」

 

洋介は走りながら基地から朝日を照らすペテルブルグを眺めた。

 

 

「いい朝日だ…ん…?」

 

 

洋介の前方に走りこむ人影が居た。

 

 

「おはようございます!」

 

 

「おはよう!雁渕ひかりさん、よく眠れたか!?」

 

 

「はい!えっと…名前は…?」

 

 

「桜井洋介、ウィザードだ!」

 

 

「あれ?雁渕さんと、ついてくるよ?桜井さんもう一週したんだ!」

 

 

「ふん...! 素人が俺たちのペースについてこれる訳ねぇ!」

 

 

そして直枝はペースを上げる。

 

ひかりに追い抜かれないように。洋介も上がり、突然ペースを上げた三人にニパはついていくことができなくなる。

 

そして、階段を上がり、基地で一番高い塔にたどり着いた。

 

 

「おい!てめぇ!」

 

 

直枝が大声を上げる。それに気づき二人が止まる。

 

 

「俺は認めないからな!お前なんかじゃ孝美の代わりは務まらねぇ!あいつと俺でネウロイの巣をぶっ潰すはずだったんだ!なのに…てめぇが弱えから…!」

 

 

「そうです…!」

 

 

直枝が繰り返し口撃にひかりも言い返す。

 

 

「私のせいで…私が弱いからお姉ちゃんは…でも頑張って絶対強くなります!」

 

 

「頑張るだけで強くなりゃ世話ねぇんだよ!今必要なのは即戦力だ!」

 

 

「やってみなきゃわかりません!!」

 

「いい加減にしろ!!二人とも、戦力が在ろうか無かろうが、共に戦う仲間じゃないか!!」

 

 

ヒートアップする口喧嘩は第3者の洋介によって止められた。そこに遅れていたニパも到着した。

 

 

「ちょっと二人とも、桜井さんの言う通り喧嘩はよそうよ。仲間なんだし…」

 

 

「仲間じゃねぇ!」

 

 

ニパがなだめようとするが、直枝にそれは逆効果だった。

 

 

「弱ぇ奴は他の奴まで危険に晒すんだ。仲間ごっこしたいならさっさと扶桑に帰れ!お前もだ、ウィザード!お前も俺が模擬戦で勝ったら、この基地から出て行け!」

 

 

「ちょっ、ちょっと管野」

 

 

そう言って直枝は行ってしまう。ニパが止めるがそれでも立ち止まらなかった。

 

 

「管野は口は悪いが、あいつはあれで必死なんだ…」

 

 

「わかってます…私がもっと強ければ…」

 

 

自分が弱いことに自覚があるらしく、ニパがフォローしてもそのことを気にしていた。

 

しかし、洋介にしても直枝の言い分は最もなところがある。

 

まともに戦えない兵士が戦場に出たところで、危険な目に遇うのはわかりきっていることでもある。

 

あの戦争で学徒出陣で学生が戦場に送られ、哀しくも、未来ある学生たちが散って逝った。 

 

そんな時、ニパが話しかける。

 

 

「ところで雁渕さんってマラソン選手か何か?」

 

 

「えっ?違います。いつもお父さんにお弁当届けてただけです」

 

 

「えっ?お弁当…?」

 

 

「確かに、凄いトレーニングだな。戦争がなければ、東京かロンドンオリンピックに出場していたかも知れないな…」

 

 

ひかりからの突拍子のない答えに驚くニパ。

 

洋介は笑顔で感心した。そんな時、突然変な音が鳴り響き、音の主はひかりだった。

 

それを聞いて洋介が微笑み、ニパが笑った。

 

 

「ははっ、昨日食べながら寝てたよね。もうすぐ朝食だし戻ろう?」

 

 

「あの、ニパさん、桜井さん!」

 

 

「ん?」

 

 

「なんだ?」

 

 

突然雁渕ひかりに名前を呼ばれて二人は反応する。

 

 

「ありがとうございます!仲間と呼んでくれて!桜井さん、あの時お姉ちゃんを助けてくれてありがとうございます!!」

 

その言葉を聞いてニパと洋介は微笑んだ。

 

 

「あぁ、僕も昨日配属したばかりだ!共に…」

 

 

「あっ!思い出した!」

 

 

「ん…?どうしたんだ?」

 

 

「桜井洋介さんって、世界初のウィザード!?前に扶桑の新聞で見ました!」

 

 

「え…?そうだったのか……恐らく片桐さんだな…」

 

 

洋介は異世界の日本=扶桑皇国で、自分の事が新聞に載ってたのを恥ずかしながら頬を掻いた。

 

 

一連の光景を見ている人たちがいた。

 

 

「基礎体力はありそうですね」

 

 

隊長室からラルとロスマンが先ほどの光景をみて、ひかりを分析していただった。

 

 

 

 

 

ミーティングルーム

 

 

「現在我々の前には重要攻撃目標だったネウロイの巣アンナ、南方にヴァシリーがあります。それに加え、今回白海にも出現しました。」

 

 

「また厄介なところに…」

 

 

朝食を終えた後、ロスマンからの説明にサーシャが困惑する。洋介も地図に記されているネウロイの巣を見て自身の手帳に記した。

 

 

「オラーシャを完全に分断する要塞線ができる。こりゃ厄介だ…」

 

 

「新しい巣を敵性目標『グリゴーリ』と命名する」

 

 

ラルの言葉によって、新たな巣はグリゴーリと命名された。そして、ロスマンの説明が進んだ。

 

 

「グリゴーリから出てくるネウロイの影響圏は急速に広がっており、このままでは補給が断たれ孤立します。そうなれば、我々は基地から退却を余儀なくされます」

 

 

「いや~参ったねぇ…絶体絶命じゃないか」

 

 

「そのためにも、我々は可及的速やかにグリゴーリを殲滅する必要がある」

 

 

クルピンスキーは軽く言うが、内容はとても軽いものではなかった。

 

ロスマンがグリゴーリ殲滅は絶対であると宣言する。その中で定子が手をあげる。

 

 

「あの、ネウロイの巣って倒せるんでしょうか…?」

 

 

「倒せる」

 

 

その質問に洋介が答えた。その言葉に全員が洋介を見る。

 

 

「俺が501の配属時に、ウィッチたち仲間と戦い倒した」

 

 

「だが、501にやれて我々にやれない訳がない」

 

 

「ふん!俺がぶっ潰す!」

 

 

直枝は手と拳を合わせて宣言する。

 

洋介は確かに巣の消滅を確認した。

 

あくまでウィッチたちと洋介はウォーロックの後処理で倒したに過ぎない。宮藤芳佳から聞いた戦いで、あれが正攻法だと無論考えておらず、一体どうしたらネウロイの巣を倒せるのかなどと想像がつかないのが現状だ。

 

そして、彼が独自に調査するネウロイの極秘、異次元転移計画=ガリバープロジェクトもまだ至ってない。

 

 

「雁渕」

 

 

「はっはい!」

 

 

ラルがひかりを呼ぶ。ひかりは立ち上がって大声で返事をする。

 

 

「お前は午後から訓練だ。それまで誰かに案内をしてもらえ」

 

 

「はい!…えっと」

 

 

「桜井は管野と模擬戦の前に、サーシャと先生にユニットを見せろ」

 

 

「はっ!」

 

 

ラルに予定を言われて返事する洋介とひかり。しかし、彼女は誰に案内をしてもらえばいいか困惑、周りを見る。

 

 

「じゃあ、ジョゼさんお願いできる?」

 

 

「えっ?あの、私はちょっと用事が…」

 

 

ロスマンに指名されるジョゼだが、彼女は都合が悪いらしく目を反らす。

 

しかし、洋介はジョゼの表情を見て、彼女がひかりを避けているのではないかと思った。

 

 

「そう…じゃあニパさんお願い」

 

 

「はい」

 

 

ロスマンはニパを指名した。

 

ニパは特に予定はないようなので、その任務を受けた。そんなニパを見て直枝は気に入らない様子だった。

 

 

「よし、各自勤務表通りに移れ」

 

 

「『はい!』」

 

 

格納庫前、洋介は直枝との模擬戦の前にロスマンとサーシャの指示により零戦64型のユニットを履き、訓練用の13ミリ機銃と軍刀鷹狼を装備して基地上空を飛行した。

 

 

「サーシャさん、桜井さんの64型ユニットの記録では1500馬力、速度は700以上ですが、それを軽く越えましたね」

 

 

「凄い…これが異世界の扶桑のユニット…」

 

 

「桜井さん、管野さんとの模擬戦をお願いします!」

 

 

「『了解!!』」

 

 

「さて、ウィザードの力を見せて下さい」

 

 

二人が舌を蒔いている時、上空で直枝が待機していた。

 

空に舞上がったら、身分や階級は関係ない。

 

戦闘機同士の戦闘、対地上対水上からの高角砲弾や対空機銃の弾幕の嵐によって散る可能性のある戦場。

 

第1次欧州大戦から始まった空中戦とは時に残酷なところであるが、パイロットの命と誇りが賭けられる。それはウィッチ同士での空戦も同じである。

 

 

「遅えぞウィザード!俺から逃げずに来たことを褒めてやるぜ」

 

 

「それはどうも!」

 

 

「『二人とも準備はいいですか』」

 

 

「問題無し!」

 

 

「あぁ」

 

 

洋介と直枝はユニットとトレーニング用の機銃を装備、彼女は彼が履いているユニットに気付いた。

 

 

「(あいつの零式、少し違う…それに国籍のマークも…)お前の零式は少し違うがなんだ!?」

 

 

「ん?これはこの世界じゃなくてな、俺がこの世界に飛来するまで一緒に戦った機体だ!」

 

 

「また異世界か、馬鹿馬鹿しい!!」

 

 

「何とでも言え、これは事実だからな少尉!」

 

 

「っけ!」

 

 

そう言うと菅野はそっぽ向いた。

 

 

「始め!」

 

 

ロスマンが模擬戦開始の合図を出した。空中停止から戦闘態勢に移った。

 

二人は激しい轟音を出しながら速度を上げる。直枝は照準を捉え、機銃を発砲した。

 

 

「喰らえ!…何!?」

 

 

直枝が照準で捉えた筈の洋介が消えた。

 

彼女の真下から洋介が速度を上げ接近、機銃を向けて発砲、直枝は機銃弾を浴びて被弾した。

 

洋介が使う海軍のパイロットが使用する「木の葉落とし」の改良、「逆鷹戦法」だった。

 

 

「ぎゃっ!」

 

 

「管野直枝少尉を撃墜成功!」

 

 

「畜生!!もう一戦だ!」

 

 

第2戦が開始、そして直枝は洋介の後ろをとって銃撃する照準も洋介の頭を捉えている。

 

 

「喰らえ!」

 

 

直枝は発砲、不思議なことに銃弾は洋介に当たらない。彼を避けるように弾が横に避けている。

 

 

「な!どうなっているんだ!」

 

 

地上から観戦しているロスマンとサーシャ。基地見物を終えたひかりとニパ、クルピンスキーは青空を舞台に、ひこうき雲を描く二人を見ながら思い思いに呟く。

 

 

「ナオちゃんの弾が当たってないね~」

 

 

「あれは…機体を斜めに横滑りに避けているわね…いい腕だわ」

 

 

「桜井さんのユニットが早い...! 管野から離れているよ」

 

 

「チドリよりも速い…」

 

 

「…やはり、資料は本当なのね…」

 

 

「資料…?ロスマンさん、彼について何か知っているのですか?」

 

 

「サーシャさん、彼が配属する軍歴を隊長と見たのですが、桜井さんのユニットの最高時速が750キロ。それに501での試験飛行では900キロを出したとか」

 

 

「750キロ!それに900って…」

 

 

「それに桜井さんの使い魔が鷹と何か関係あるのでは…」

 

 

速度を聞いてサーシャが驚き、昼食の知らせにきた定子が呟いた。

 

 

「そうなのかも知れない、鳥の使い魔は飛行能力が優れます。それに彼の国籍マークも扶桑の月と違い、赤い丸。彼は日の丸と言ってましたね…彼が異世界人ていうのもあながち嘘ではなさそうですね…」

 

 

ロスマンが舌を巻いているころ、上空で二人は回り巴戦になっていた。

 

 

「(ぐっ…少尉は俺と同じ格闘戦派か…)」

 

 

「(こいつ速い…射程に入らねぇ…)」

 

 

直枝が得意とする巴戦でも彼の背後に中々つけなかった。しかし、直枝が洋介の背後を取った。

 

 

「もらった!!」

 

 

そう言って引き金を絞った瞬間、洋介の姿が消えた。

 

 

「消えた!?もしかして下か!急降下して消えたのか!?」

 

 

直枝は左右上下を確認した

 

 

「どこだ!?どこに…?」

 

 

「ここだ…管野直枝少尉」

 

 

声を聴いて彼女は振り返ると、するとそこには距離1メートル位の洋介は軍刀を抜き、ニヤリと笑って刃物を首に向けていた。

 

海軍秘術の「左捻り込み」の改良型、海軍秘伝の大技、「燕返し」だった。

 

 

「管野直枝少尉、撃墜成功」

 

 

洋介の目の色が変わり、冷たい声が直枝の耳に入る。

 

そして、直枝は体験したことのない感情が沸くのだった。獲物を狙う鷹に睨まれるような感じだった。

 

人間としての本能が警報を鳴り、響かせていた。こちらの挙動を一切見逃さない、直枝はそう感じ取っていた。

 

今の洋介の眼は、あの戦争で戦った武人の目になっていた。

 

 

「く、くそ…くそっ!剣一閃…」

 

 

恐怖を感じた菅野直枝は、魔法を込めた右の拳で洋介を殴ろうとした。

 

 

「うわっ!?」

 

 

殴られる寸前に洋介は、瞬時に魔法を込めた左手で押さえた。

 

 

「なに!?」

 

 

「あ、…危ない…」

 

 

格納庫前で見物したロスマンが勝敗を宣言する。

 

 

「そこまでです!勝者、桜井中尉!」

 

 

その宣言を聞いた洋介と直枝は、地上の滑走路に着陸。降りた洋介の元にウィッチたちが集ってきた。

 

 

「凄いです、桜井さん。管野さんに勝つなんて」

 

 

「そんなことないさ、管野少尉くらいの強いパイロットはかつての部隊や敵さんにもうじゃうじゃいる。それに、2戦目の最後の少尉の技だが、俺の左手で抑えなければやられていた。それに戦場で油断は禁物、あれは引き分けだ」

 

 

「おい!」

 

 

すると、洋介の言葉を耳に入れた直枝がやってきた。

 

 

「あの2戦目が引き分けか、いつかもう一度お前に模擬戦を挑む。それまでネウロイにやられるんじゃねぇぞ!!」

 

 

「…承知した。どうだ菅野少尉、これで少しは俺が何者なのか理解してくれたか?」

 

 

笑みを浮かべながら洋介は直枝に問いかける。

 

仏頂面で直枝は黙り込んだが、ようようと口を開いて言葉を発した。

 

 

「…俺はおめぇが気に食わねぇ…色々と信じられねぇ事もある。でも、あんたの技量と手腕に関しては認めてやってもいいぜ」

 

 

「それは光栄だ、今後はこの一員として宜しく頼むよ」

 

 

洋介は直枝に微笑み、直枝はやや照れ隠しをしてそっぽ向いた。

 

 

「…次は負けねぇからな!中尉」

 

 

「こちらこそ。俺から少尉に一度だけの上官命令だ、俺の名前を好きに言え、少尉」

 

 

「俺も、管野でいいぜ。洋介」

 

そう言い直枝は右手を差し出す。

それを見た洋介も右手を差し出し、二人は握手を交わした。

 

それを少しはなれた格納庫からラルが合流、眺めて呟いた。

 

 

「ともかく、一件落着といったところか?」

 

 

「それを言うのはもう少し先になりそうですが、次は雁渕ひかりさんの番です。」

 

 

洋介は格納庫で、愛機の零戦64型を確認していた。 

 

 

「ふぅ…、お疲れだったな愛機よ」

 

 

「あの…お疲れさまです桜井中尉」

 

 

彼の背後から下原定子が訪問に来て、洋介は振り向いた。

 

 

「あ…下原少尉」

 

 

「あ…私は少尉は要りません…///」

 

 

「そうですか…なら僕も中尉は要りません」

 

 

「はい、桜井さん。ウィザードの戦いぶり、私は感激しました///」

 

 

「そんなこと、強くはありません。僕はこの世界にやってくる前はウィザードではない、唯の戦闘機パイロットです……」

 

 

「…桜井さん…あの、この基地の案内がまだですよね…わたしが案内します。隊長の許可は貰っています」

 

 

「それは助かります。なんせ昨日着任したばかりですから、少しでも基地のことを知って措かないといけませんからね」

 

 

 

洋介は整備を終えて、定子と格納庫から出て行き、彼女から基地の施設の案内をして貰った。

 

基地で洋介と二人きりの案内で、定子の胸が高鳴った。

 

 

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