ストライクウィッチーズ ~蒼空を舞う零の荒鷹~   作:鷹と狼

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第17話 極寒の再会 前編

 

 

 

洋介が502に配属してから数週間、毎朝欠かさずに剣術の鍛練をしている時に毎日何かの視線を感じた。

 

 

「またか…どこからの視線なんだ…?」

 

 

彼は軍刀を持って廊下を歩いている時にふと鼻に触れるいい匂いを感じた。

 

 

「いい香りだ…」

 

 

そういいながら洋介が炊事場に足を運ぶと、割烹着を着けている定子とその横で味見をしているジョゼがいた。

 

 

「おはよう。いい香りだな、下原さん…」

 

 

「桜井さん、おはようございます///ジョゼ、今日のつまみ食いそれで5杯目だよ?」

 

 

定子は洋介に頬が赤く染まり挨拶をしながら、ジョゼに少し注意する形で言う。しかしジョゼはその言葉に反論する。

 

 

「違うよ定ちゃん。これはつまみ食いじゃなく味見」

 

 

「はいはい」

 

 

「つまみ食いか、下士官時代に空母瑞鶴や航空隊でギンバイをやったもんだ」

 

 

 

「桜井さん…ギンバイって…?」

 

 

「糧食庫に忍び込んでつまみ食い、ばれたら責任者に罰としてバッターで尻をくらったな…」

 

 

「ヒィ……桜井さん…もしかして…わたしにバッターを…」

 

 

「…安心しろ、か弱いジョゼにバッターを与える訳にはいかん…」

 

 

洋介が手拭いで顔を拭いている時、ジョゼは内心ホッとした。その時、ジョゼの肩をうしろから触れる手が伸びる。

 

 

「ジョゼちゃん。僕にも君を味見させて欲しいな?」

 

 

「おいおい、クルピンスキーさん…」

 

 

うしろから掴んだのはクルピンスキーだった。洋介はそんなクルピンスキーの言動にあきれたように言う。彼女はジョゼから目標を洋介に変えた。

 

 

「なら、洋介くんを…」

 

 

「どうぞ。しっかり味見してください」

 

 

定子がクルピンスキーに鍋のスープを入れた小皿を出す。

 

 

「そりゃないよ~下原ちゃん」

 

 

そう言いながらも受け取るクルピンスキー。

 

 

「あの…///桜井さんもいりますか///」

 

 

「いや、朝食のお楽しみにさせてもらうからいいよ。さっきはありがとう。下原さん…顔が赤いな…」

 

 

定子は顔が赤らめ、洋介にも味見をするか聞くが、彼は美味しそうな香りのするスープを朝食のお楽しみにすることにした。

 

 

「おはようございまーす!」

 

 

洋介たちのうしろから声がする。振り返ってみると、ひかりが元気よく挨拶をしていた。

 

 

「おはよう、ひかり」

 

 

「おはよう、ひかりちゃん」

 

 

「おはようございます」

 

 

3人はそれぞれ挨拶をする。

 

 

「あの…私ちょっと用事が…」

 

 

「えっ、ジョゼさん…!」

 

 

しかし、ジョゼはひかりを見た瞬間、その場から逃げるように出ていった。ひかりが呼び止めるがジョゼはそのまま歩いて行ってしまった。

 

ひかりは今の光景を見て、ジョゼが自分に好かれていないと感じた。

 

 

「私、嫌われているのかな…?」

 

 

「違うんです!…ジョゼは…」

 

 

「とっても照れ屋さんなのさ」

 

 

定子が何かを言おうとするが、すぐさまクルピンスキーが言う。

 

 

「この僕の思いにも答えてくれないもんね~」

 

 

「…逆に答えたら驚きだ…」

 

 

洋介はクルピンスキーがまともな答えを言うと期待したために、がっかりしながら言った。

 

そして朝食が始まる時、ウィッチたちが席に着くがただ一つ、ジョゼの席だけは空席になっていた。

 

そこには食器が置いてあるため、既に朝食を取っていた証拠が残っていた。

 

 

「(ジョゼさん…一人で先に済ませてる)」

 

 

ひかりはジョゼに何か言おうと思っていたが、既に居ないことに少しがっかりしていた。

 

 

「このカーシャ美味しい」

 

 

「スープもうめぇ!」

 

 

ニパと直枝が朝食の味に舌鼓を打つ。定子がカーシャにはソバの実を使っていると説明をする。

 

 

「オラーシャではシチーって言うのよ。シチーとカーシャ、日々の糧。オラーシャの代表的な家庭料理です」

 

 

朝食に出ているシチーとカーシャについて、サーシャが説明を加える。ラルはその説明を聞きながら黙々とスープを口に運んでいる。

 

 

「下原さんって、オラーシャ料理も上手なんですね!」

 

 

「喜んでもらえてうれしいです。あの、桜井さんはどうですか...?///」

 

 

定子の言葉に、黙っていた洋介は反応した。

 

 

「…ん?あぁ、凄く美味しい。あの戦争末期で戦った、敵国ロシアのロシア料理がこんなに深い味わいとは…」

 

 

「ありがとうございます。///........……ロシア…?」

 

 

定子が洋介が言った単語が気になり何気なく聞く。502のウィッチたちは洋介が異世界から来たことが気になった。

 

 

「桜井さんがいた異世界はどんなところですか!?」

 

 

「ああっ、私も気になります。桜井さんの世界でネウロイはいないのですか!?」

 

 

定子の言葉にサーシャも反応した。だが、洋介はスプーンの動きを止めた。

 

 

「…あぁ、ネウロイはいません…今は話せませんが、必ず皆さんに話します…」

 

 

「はい、その時はよろしくお願いいします」

 

 

洋介の事情を知るロスマンがフォローしたため、みんなも聞く様子はなかった。ふと、ロスマンがひかりに聞く。

 

 

「それよりも、ひかりさんは何か作れるの?」

 

 

「お姉ちゃんの作る海軍カレーが好きです!」

 

 

「そんなこと聞いてんじゃねーよ!」

 

 

ひかりは自分が作れる料理ではなく、自分が好きな料理を言ったため直枝が間髪入れずに突っ込む。

 

 

「昨日の洋介くんの料理は美味しかったなぁ~」

 

 

「確かにあれはジューシーだったな、何て料理だった?」

 

 

「オラーシャ料理のペリメニに似ているわね」

 

 

「餃子だ。俺の世界で食べている中華料理だ。まだ昨日の余りがあるゆえに、万能に料理できる」

 

 

食卓が賑わう中、定子が何かを考えるように手元を見ているのに洋介が気付く。

 

 

「(何か悩み事か…)」

 

 

洋介は引っ掛かる様子だったが聞くことはなくそのまま朝食は終了した。

 

洋介はいつも通り格納庫で整備兵と愛機の零戦64型ユニットを整備、定子の行動が気になったのか、その最中に右手に傷を負い、整備兵が心配しににかけつけた。

 

 

「中尉、大丈夫ですか!?」

 

 

「…イイテ……あぁ、取り敢えず自室に戻って応急措置してくる」

 

 

洋介が自室に戻ると、部屋のドアが開いていた。部屋の中にはひかりとジョゼがいた。

 

 

「あっ洋介さん!」

 

 

「桜井さん…」

 

 

「ん…二人とも、何で僕の部屋に?」

 

 

「勝手に入ってすいません…」

 

 

洋介から見たジョゼの格好は頭に三角巾を巻いて、両手に水バケツとモップを持っていた。

 

 

「そうか、いつも部屋がピカピカに整理していた正体がジョゼだったのか!」

 

 

「あの、私…実家でペンションをやっています。だから、みんなの部屋のベッドメイキングなら出来るかなって…」

 

 

「どうも、ありがとう!」

 

 

洋介はジョゼが部屋を綺麗にしてくれていたと知り、感謝の礼を言う。ひかりは洋介の部屋を見渡し、机にあるものに目が行く。

 

 

「写真?」

 

 

ひかりは写真を拾い、写っている人物を洋介に尋ねた。

 

 

「洋介さん、この写真に写っているのは洋介さんと、この女性は誰ですか?」

 

 

「本当だ。桜井さんとお隣の女性は彼女さんですか…?」

 

 

「あ…いや、…そ……その人は……僕の妻だ…///」

 

 

「「 …え?えぇーっ!? 」」

 

 

洋介は赤くなりながら右頬を掻き、ひかりとジョゼは驚いた。

 

彼は異世界に来てからあまり既婚していたことは語らず。この502に転属してから初めてひかりとジョゼに話したのだった。

 

 

「洋介さん、結婚してたのですか!?」

 

 

「てっきりいないと思ってました!」

 

 

「いないのは余計だ…///」

 

 

「あっ!洋介さん!」

 

 

「あっ!待って!」

 

 

ひかりが血が出る右手を見て驚くが、ジョゼがすかさず止める。

 

 

「桜井さん、手を出してください。今治癒を掛けます」

 

 

「治癒を…?」

 

 

洋介が切った手を差し出すと、ジョゼがモップとバケツを下ろして血が出ている洋介の手に彼女の両手を翳す。

 

そしてジョゼが治癒魔法を掛ける。するとたちまち、手にできた切り傷が塞がりついに無くなった。

 

 

「これで大丈夫です」

 

 

「ありがとうジョゼ、おかげで助かった。君は治癒魔法が使えるんだね」

 

 

「ふぅ~…」

 

 

ジョゼは治癒を終えると、頭に手を翳す。ひかりはジョゼの顔が赤くなっているのに気づき話しかける。

 

 

「ジョゼさん、顔が赤いですよ?」

 

 

「本当だ、大丈夫か…?」

 

 

「治癒魔法を使うと、身体が少し熱くなるだけです。そ、それじゃあ…」

 

 

そう言ってジョゼは部屋から出ていく。そして、残されたひかりはー

 

 

「んで、ひかりはいつまでいるのかな?」

 

 

「あっ!すみません、失礼します!(あの女性…どこかで…)」

 

 

洋介に言われたひかりは気づき、慌てて部屋から出た。

 

 

そのあと、ウィッチたちがミーティングルームに集まり、グリゴーリからのネウロイ侵攻状況について説明があった。

 

 

現在、ネウロイはラドカ湖の北方で停止、湖の凍結が始まると一気に南下。ペテルブルグに侵入すると予想した。

 

凍結は12月のため、あと1ヶ月足らず。次の補給を待って新たな防衛網を構築せねばならないのだった。

 

 

「今日の定時偵察、当番はだれですか?」

 

 

ロスマンが聞くと、定子とジョゼが手を上げる。今日の定時偵察は二人が当番だった。そして、指し棒を地図に向けて説明をする。

 

 

「偵察範囲をラドカ湖北東、ペトロザヴォーツク周辺まで広げます。気づいたことがあったら全て報告してください」

 

 

「「 了解! 」」

 

 

ロスマンに言われて定子とジョゼは返事をする。そして、ロスマンは洋介とひかりの方向を見る。

 

 

「桜井さんは偵察隊の隊長として、指揮をお願いします」

 

 

「わかりました!」

 

 

「ひかりさんも同行しなさい。遠乗りの訓練にいい機会だわ」

 

 

「はい!」

 

 

ロスマンは洋介にひかりの経験を積ませようと、今回の出撃に同行するように指命、洋介は階級の順として指揮を執るのであった。

 

 

「俺が君たちの指揮を執るのか、よろしくお願いします」

 

 

「よろしくお願いします!」

 

 

「こちらこそ…///」

 

 

「よ、よろしく…」

 

 

洋介とひかりは定子とジョゼに同行の挨拶を伝えた。

 

しかし、定子は洋介を向いて微笑んで赤くなり、ジョゼはまた下を向きながら返事をした。

 

 

「(ジョゼ…何かひかりに引け目を感じて避けている?なぜ、…下原さんは僕を見て赤くなって…?)」

 

 

洋介はそんな二人の姿を見ながら考えながら、外套を着て出撃した。

 

 

 

 

 

 

 

ラドガ湖上空ー

 

 

 

 

 

「今日は晴れてて気持ちいね~」

 

 

「でも、寒冷前線が近づいているから夜には雪になるんだって」

 

 

「夕方までに戻るから大丈夫だよ。ですよね、桜井さん」

 

 

「…ん?…そうだな、敵さんが出てくる以外に無ければいいな…」

 

 

定子が洋介に話し掛けた時に、ひかりは接触魔眼のイメージトレーニングで手を振っていた。

 

 

「あの時確か…こうだったかな…?…触ったんじゃなく、ぶつかった…」

 

 

「雁渕さん…?」

 

 

「はいっ!」

 

 

「何やっているのですか…?」

 

 

定子はひかりの行動に気にかけて接近して訪ねた。

 

 

「(そうだ…接触魔眼のことは喋っちゃ駄目なんだ…)あっあの…体操してました~」

 

 

「(はは~ん…接触魔眼の練習か…上手く誤魔化したな~)」

 

 

 

ひかりは練習を体操と誤魔化し、洋介は薄々感づいた。そして、ひかりは定子に質問した。

 

 

 

「そ、そう言えば…下原さんは、扶桑のどこ出身なんですか?」

 

 

「広島の尾道です」

 

 

「尾道!?尾道といえば、坂道ですよね!わたし長崎の佐世保で…」

 

 

「なに、尾道…佐世保...…広島と長崎……ピカが落とされた場所やないか………」

 

 

二人の会話で、洋介は震えた。

すると、ジョゼが洋介の言葉が気になって側に寄った。

 

 

「………ピカ…?……桜井さん、なんですかそれ?」

 

 

「いや、何でもないよジョゼ…」

 

 

ジョゼの質問に洋介は誤魔化した。

 

洋介が異世界に転移する前の戦争末期、1945年8月6日広島に、9日の長崎に新型の原子爆弾が投下されて壊滅。夥しい犠牲者が出たとの情報を聞いたのだった。

 

その中にラバウル六勇士、厚木十三の妻の柚子が広島で、沖田新一郎大尉と金城幸吉一等飛行兵曹が長崎上空で被爆、戦死したのであった。

 

そして、定子とひかりが洋介に接近した。

 

 

「桜井さんは扶桑…えっと…異世界である日本のどこ出身ですか?」

 

 

「ん………俺か、兵庫の神戸出身だ…」

 

 

「神戸!?尾道と佐世保と同じ坂道があって、女性が憧れるお洒落な街じゃないですか!」

 

 

洋介の言葉にひかりははしゃぎ、興奮した。

 

 

「桜井さんは、その外套を着てお洒落な雰囲気を出すのですね」

 

 

「そんなことないさ下原さん、戦争でお洒落は無縁だ。俺はあの戦争で生きることに精一杯と言えども、多くの敵を殺した…俺は人間として恥ずかしい…」

 

 

「そうなんですか…それに……///前の501部隊の活躍は見事です。世界初のウィザードはどんな人かと思ったら、こんな人だったことは、わたしはよかったです!」

 

 

「あ、ありがとう………下原さんも、この502でも活躍しているな。前の第3艦隊の救援は助かった」

 

 

「そうですよ、下原さんも凄いです!」

 

 

洋介とひかりの言葉に、定子は下を向いた。

 

 

「そんな…私ってあまり部隊の役に立ってません…」

 

 

「そんな筈ないですよ!今朝の料理もみんな喜んでたじゃないですか!」

 

 

「確かに、あれは俺が母艦と基地時代、501時代より美味いものはない」

 

 

「料理なんて関係ないです…この部隊にいるからにはネウロイと戦って戦果を挙げないと…他の皆さんに比べたら、私なんてまだまだだめ…もっと頑張ってネウロイを倒さないといけないんです…」

 

 

「定ちゃんがだめなんてことはないよ!」

 

 

定子が暗いことを述べる中、ジョゼが渇を唱えた。

 

 

「ら…ラドガ湖を越えるわ。任務に集中しよう」

 

 

「そうね…」

 

 

「はい!」

 

 

「ジョゼの言う通りだ、今は戦うより生きることに執着しろ!」

 

 

「はっはい!」

 

 

湖を越えた後、雲が増えて雪が降ってきた。雪が降る中でも4人はペトロザヴォーツクに飛行した。

 

 

「寒冷前線の動きが早いようですね!」

 

 

「早く、偵察を終えて戻りましょう」

 

 

進むにつれて天候が荒れて吹雪が吹き、視界が悪化した。

 

 

「吹雪いてきましたけど、大丈夫ですか!?」

 

 

「平気です!」

 

 

「こっちも異常なし!もうすぐ引き返すぞ!」

 

 

「変だよ…そろそろペトロザヴォーツクの筈なのに…」

 

 

ジョゼが違和感を感じる中、ひかりが若干寒さに震え、洋介も南方暮らしで寒さに慣れていなかった。

 

 

「さ…寒い…」

 

 

「うぅ…俺も寒い…」

 

 

「街が見えました。…あれはっ!?」

 

 

「街が…」

 

 

定子と洋介が目の当たりにしたのは、凍りついたペトロザヴォーツクの光景だった。

 

4人は上空で停止、街を確認した。

 

 

「ペトロザヴォーツクが凍ってる…」

 

 

「どうして…こんな…」

 

 

洋介と定子は気配を感じた。

 

 

「雲の上にネウロイ発見!」

 

 

「確かにネウ公だ!赴くぞ!」

 

 

「え…?何も見えないですよ…」

 

 

「定ちゃんは、遠くの物を見る能力があるの!」

 

 

「行きましょう!!」

 

 

「はいっ!」

 

 

「下原さん、凄い能力だな!」

 

 

「あっ…いえ…///」

 

 

4人はネウロイが点在するところに飛行して雲を切り抜けた。

 

 

「あっ、いた!」

 

 

「こちらジョゼ、ネウロイ発見!502基地、応答願います!」

 

 

ジョゼがインカムで502基地に連絡した。だが、応答が無く雑音が鳴り響いていた。

 

 

「無線が通じない…桜井さん、定ちゃんどうしよう!?」

 

 

「今からこの空域を離脱する!」

 

 

「っ!離脱ですって!?」

 

 

「作戦を……下原っ!?」

 

 

「(私だって…)戦いましょう!」

 

 

洋介が決断を下した時、定子がネウロイに向かって飛行する。それに続いてジョゼとひかりもネウロイに向かって飛行、機銃を掃射した。

 

 

「君たち、何を!?」

 

 

「桜井さん!あなたが中尉と言えども、離脱の指示には従いません。ネウロイを倒さない限り戦います!!」

 

 

定子が洋介に反発、ジョゼは彼女が心配になって接近した。

 

 

「定ちゃん!無茶しない方がいいよ!」

 

 

「私だって502のウィッチよ!一つでも多くのネウロイを倒すの!!」

 

 

ネウロイがビームを撃ち出し、4人はシールドで防いだ。

 

 

「うわっ!」

 

 

「桜井さん、雁渕さんっ!?」

 

 

「大丈夫です!!」

 

 

「下原さん!今ならまだ間に合う、すぐに離脱して作戦を練り直すぞ!!」

 

 

「桜井さん、もう一度行かせてください!!…きゃっ…」

 

 

ネウロイが強風を扇ぎたて、油断した定子とジョゼは強風に吹き飛ばされた。

 

 

「定子!!…ぐわぁっ…」

 

 

「洋介さん!!…下原さん、ジョゼさん、洋介さんが…!!」

 

 

「このっ!!」

 

 

吹き飛ばされた定子が、彼女のユニットが洋介の頭部に激突して地上に落下した。

 

定子は無我夢中になり、機銃の引き金を引こうにも機銃が凍り付いて使用不能になった。

 

 

「なっ…機銃が」

 

 

「私もだよ定ちゃん!どうしよう!?」

 

 

「雁渕さん!?」

 

 

その瞬間、ひかりがネウロイに向かって飛行した。

 

 

「わたしの銃は凍ってません!やってみます!」

 

 

「雁渕さん!ダメェ!あっ…ユニットも凍ってる!」

 

 

「まさかっ!?あのネウロイが冷気を出して気温を下げてる!?雁渕さんっ戻って!!」

 

 

「…さ…寒い……」

 

 

ひかりはネウロイが放つ冷気を浴びて落下、定子とジョゼがひかりを止めようとした瞬間、2人のユニットが凍りつき停止して地上に落下した。

 

そしてネウロイは積乱雲に戻り、ペテルブルグの方向に進んだ。

 

 

「大丈夫!?ジョゼ…」

 

 

「うん…大丈夫、定ちゃんは?」

 

 

「うん、平気…雁渕さんと桜井さんは…?」

 

 

定子とジョゼは吹雪が吹き荒れる地上の激突寸前でシールドを張って防いだが、落下したひかりは積雪に激突して埋もれていた。

 

二人はひかりを救出したものの凍傷になり掛かり容態が悪化、指揮していた桜井洋介は行方不明になった。

 

 

「ど…どうしよう…私のせいよ…私がネウロイを倒すことに…拘ったから……雁渕さん……うぅ………桜井さん………」

 

 

「…む…」 パアァン

 

 

定子が自身の身勝手な行動に責任を押し付けた時に、ジョゼが平手で定子の左頬を叩いた。

 

 

「定ちゃん、自分を責めるのは後!!まず雁渕さんを助けて、何がなんでも桜井さんを探して助けなきゃ!!」

 

 

「そうね、ジョゼの言う通りだわ!」

 

 

 

定子が雪を掻いて穴を掘り、ジョゼが治癒魔法で凍結しているひかりを回復している中で洋介はー

 

 

 

「さ…寒い……下原……ジョゼ……ひかり……どこ…だ…」

 

 

 

定子の衝突で落下した洋介は、頭部が流血してたが三角巾で止血。

 

吹雪が吹き荒れる中で零式ユニットを背負い、四式小銃と軍刀を杖としてついて雪原を彷徨っていた。

波導で探すも、定子のユニットが頭部に激突したため能力が曖昧になり凍傷になりかかっていた。

 

 

「…陸軍さん………の……八甲田山事件…も……こん…なんだ……ろうな………………」

 

 

洋介は雪原に倒れ、意識が朦朧した。

 

 

「(もう、ここまでか…厚木隊長、沖田さん、虎雄、進次郎、幸吉、トチローさん……トチコさん…柚子さん…晴香さん……純子さん……姉さん………勇介………雪………亜弥………すまない……)」

 

 

「(なに弱音を吐いている)」

 

 

意識を失いかけた洋介の頭から話す声が聞こえた。

 

 

「…っ!?誰だ…!」

 

 

「(お前はこの世界にきて、家族を守りながら敵と戦うんだ!)」

 

 

「守るって、…僕の家族を守ることを…なぜだ!?」

 

 

洋介は起き上がり、背後には犬より倍大きい牙があり、巻いてない尻尾、狭い胸幅、長い前足の指、美しい毛並みで白銀の狼が立っていた。

 

 

「あれは…何かの本で読んだ…絶滅したエゾオオカミか…?…なぜ…だ…夢でも見てるのか…?ん…刀…?」

 

 

狼の足下に刀が置いてあった。よく見たら洋介の軍刀、鷹狼だった。狼が軍刀を口にくわえてその場を離れた。

 

 

「待て、…その…軍刀を…返せ…(なぜ、あの狼は歩いているんだ…?)」

 

 

エゾ狼は走らず、洋介の動きに合わせて歩いていた。しばらくしてエゾオオカミは止まり、鷹狼を置いた。

 

 

「はぁ…はぁ…っ!…あれは…少女…?…大変だ!!」

 

 

洋介は幽霊を見たような表情で狼が座っているところに雪に埋まった少女のところに駆けつけた。

 

 

「おいっ!!しっかりしろっ!!」

 

 

「…う…う…ん…」

 

 

洋介が掘り起こし、その少女を揺さぶり、擦りながら意識を確認する。

 

 

「…よかった…だが……ここじゃ…凍死する………危険だ…一刻も早く懐抱を…」

 

 

 

ワォオオオーン

 

 

 

エゾオオカミが遠吠えした方向には、ネウロイの戦闘で放棄したオラーシャのKV-2戦車があった。

 

 

「ロシア…いや、オラーシャの戦車か…助かった…おっと、その前に白樺の樹皮を……(幸吉から学んだことが、役立つとは)……」

 

 

洋介は急いで少女を抱きながら軍刀を携え、白樺の樹皮を確保して、エゾ狼と戦車に入りマッチで火を着けて暖を摂った。更に外套を脱いで少女に被せたせた時だった。

 

 

「(…っ!?なんだこの感触は…この娘…どこかで…どこだ…?…思い出せん…思い…)」

 

 

洋介は頭を傾げながらも思い出せず、疲労が出て女の子の手を繋ぎながら床に倒れながら魔法力を発動、力を注いだ。

 

エゾオオカミは二人に接触して囲んで暖めた。

 

吹雪がまだ吹き荒れる中、雪の鎌倉から定子とジョゼ、ひかりがストライカーユニットを担ぎ、戦車に近づいて側面ハッチを開けたら洋介と少女、狼がいるのに驚いた。

 

 

「さ…桜井さん!?」

 

 

「洋介さんだ…なんで…戦車の中に…」

 

 

「…なんで少女と…ひっ…狼がいるよ…」

 

 

「狼に構わず、二人を…」

 

 

定子が洋介と少女の肌に接触して確認すると、洋介の体温と魔法力が著しく低下していた。

 

 

「桜井さんは…この娘を助けるため魔法力を注いでいるのだわ…」

 

 

「下原さん!早く二人を助けないと…」

 

 

「定ちゃん!私が二人に治癒魔法を…」

 

 

「ちょっと待ってジョゼ!」

 

 

定子がジョゼの行動を制止させ、指示を仰ぎ出した。

 

 

「ジョゼはこの娘に治癒魔法をお願い、雁渕さんは白樺を…火の燃料の薪を…」

 

 

「わかりました!」

 

 

「わかった!…定ちゃんはどうするの!?…「なっ...!///」」

 

 

定子は気を失っている洋介の第3軍服等を脱がし、自身の軍服とズボン(競泳水着)を脱いで洋介の肌に接触した。

 

 

「(…凄い傷…お願い、洋介さん……私…私の言葉を聞くまで死なないでください!)」

 

 

定子は洋介の身体に幾つもの傷痕を見て驚いたが、願いながら強く抱き締めた。

 

 

 

 

 

 

502基地 ー 猛吹雪の影響で偵察していた4人の捜索が出撃が中止になり、命令があるまで待機が続いた。

 

 

 

夕食時、テーブルの食卓にどす黒いスープが並べてあった。

 

 

「なにこれ…?」

 

 

「スープですね…多分…」

 

 

「ヴゥ…」

 

 

ロスマンがスプーンでスープを注ぎ、口に運び入れたら顔が真っ青になった。そして、炊事場からエプロンを身に着け、お玉を持ったクルピンスキーが出てきた。

 

 

「どう、美味しいでしょう~♪先生ご自慢の食材で愛情たっぷり込めて作ったんだよ♪」

 

 

「なんですって!?きゃああぁ~!!」

 

 

ロスマンが炊事場を訪れた時、悲鳴が上がった。

 

 

「…わ…私が1年かけて…集めた貴重なオラーシャキャビアが……おのれ、偽伯爵~!!」

 

 

ロスマンがクルピンスキーに制裁する中、みんなはスープを口にした時に真っ青になった。

 

 

「な…なんだこれ…」

 

 

「やっぱり…下原じゃねぇと駄目だ…」

 

 

だが、ラルは無表情で何度もスープを口に入れた。

 

 

「さ…流石隊長…こんな時に冷静ですね…」

 

 

サーシャが感心し、ラルはスプーンを止めた。

 

 

「…不味い…」

 

 

502のウィッチたちはネウロイの戦闘どころか、こんな不味い食事を摂取したら絶命しかねない。

 

 

「そうだわ!」

 

 

突然、サーシャは思い出したような声を上げた。

 

 

「桜井さんが作り置きした餃子が残っていました!」

 

 

「そう言えばそうでした!」

 

 

「そうか、飢えずに済むぜ!」

 

 

「そうと決まれば、早速やろう!」

 

 

「…餃子…あぁ、…洋介くんが残したその餃子も、先生の愛情が篭った料理の中に…」

 

 

「な…なんだって…?」

 

 

鍋をかき混ぜると、中からドス黒く変色した餃子が出現した。

 

 

「「「 この、偽伯爵ーっ!! 」」」

 

 

「ひいぃぃー…」

 

 

ウィッチたちは洋介が作り余った餃子を食べる望みを掛けた時、クルピンスキーの一言ですぐに希望から絶望に変わった。

怒りのオーラが漂ったウィッチたちは、鉾をクルピンスキーに向けて制裁したのであった。

 

 

 

 




洋介が極寒で救助した娘は、一体何者なのか…?

後半へ続く
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