桜井洋介の娘、桜井亜弥がウィッチの世界、502基地にきてから数日。亜弥はラルとロスマン、父親の洋介から尋問を受けた。
亜弥から聞き出した経緯としては、洋介が行方不明になってから9年後の1954年からやってきた。
母親の雪が亡くなるまでの間に洋介を探すために北海道に移住、亜弥と慎ましく生活をしていた。
母親が亡くなったショックで父親の短剣を持って家を飛び出し、友のエゾオオカミひびきと猛吹雪に遇い、このウィッチの世界に迷い混んだ。
ウィッチの世界にきた亜弥ですら信じられない事態であった。
「信じられないが、…桜井洋介と同じ異世界…それに未来から…」
「そうですね…ねぇ、亜弥ちゃん。どうやってこの世界にきたのか覚えているの?」
「わかりません…ひびきとただ走ってきたこと以外、…覚えていないです…」
亜弥は哀しい顔をしながらロスマンの顔を合わせられなかった。
ラルは亜弥に近付いて、少し微笑みながら手でそっと頭を撫でた。
「亜弥、父親の桜井洋介がいるこの基地はお前の家だと思って暮らしても良い」
「隊長…!?」
「…いいのですか…?」
「その前に、新しい衣服と健康診断をやってもらう。桜井、連れて行け」
「はい、行こうか亜弥」
「うん」
「失礼します!」
洋介は亜弥を連れて隊長室から退出した。
「隊長、私はひかりさんの指導とあとで…隊長…?」
「…ふっ…私に妹ができた♪」
ロスマンが見た光景はラルは微笑みながら紅茶を飲んでいた。
洋介は亜弥に基地を案内する前に定子とジョゼ、菅野の元に行き、服装の調整を頼んだ。
「出来たわ」
「ふぅ、こんなもんだな!」
亜弥の服装は、定子と直枝がまだウィッチ候補生時代の赤いセーラー服。
そして、亜弥の希望でスカート(ベルト)とスパッツ風のスク水。そして洋介みたいな略帽を作った。
「似合っているぜ、亜弥!」
「うん亜弥ちゃん、似合っているよ!」
「本当に!?ジョゼお姉ちゃん!直枝お姉ちゃん!どうもありがとう!」
「はぁ~亜弥ちゃん、可愛い~!!///」
「ぶはっ!」
定子は亜弥に強く抱き締めた。
「あぁっ!もうっ亜弥ちゃん!小さいです!可愛いです!たまりませんっ!」
定子は亜弥に抱き着いて幸せそうな顔をしていた。そして洋介は小声でジョゼと直枝に話した。
「なぁ管野、ジョゼ…定子のあれは…?」
「あぁ、あれは下原の病気だ…」
「そうそう、定ちゃんのくせなの…」
「(やれやれ…頭が痛いゼョ…)」
洋介は飽きれつつ、定子の行動は「小さくてカワイイもの」に目がなく、抱きつくくせがあった。
直枝からの聞いた話しでは直枝とロスマンが定子に抱きつかれた犠牲者だった。
そして暫くして定子は正気に戻り、亜弥は開放された。そして定子はジョゼと任務に戻った。
「じゃあね、亜弥ちゃん」
「う…うん…定子さん、ジョゼお姉ちゃん!」
「はわぁ~可愛い~///」
「はい、定ちゃん。今は任務に戻りましょうね~!桜井さん、あとはよろしくお願いします。」
「あ、あぁ…行こうか、亜弥」
「うん、お父さん」
再発した定子はジョゼに羽交い締めを受けながらその場を離れ、洋介は亜弥に502基地を案内した。
ミーティングルームや食堂、そして格納庫に行くとロスマンがひかりを指導を行い、サーシャはニパに説教と正座、ユニットの整備を行っていた。
頭を怪我したニパは固有魔法は超回復で回復。
サーシャの固有魔法は映像記憶の能力でニパのユニットを整備していた。
亜弥は好奇心旺盛で、ニパとサーシャに興味を示して近づき見物した。
「ニパお姉ちゃん、サーシャお姉ちゃん。凄いウィッチだなぁ~」
「あははは~」
亜弥に褒められたニパは嬉しく笑っていた。
だが、サーシャは亜弥に対して目を細くして睨んだ。
「亜弥ちゃん、ウィッチになった娘は良いことばかりではないのよ…」
「わたしはウィッチになったことは後悔していません。逆になったことはうれしいかったよ亜弥ちゃん」
「そうね、中には複雑な心を持つウィッチもいますがサーシャさん、戦闘隊長であるあなたの力は、出来れば修理以外で活用して欲しいものね」
「すみません…」
ロスマンが彼女に戦闘隊長として指摘、注意を受けてサーシャは複雑な気持ちであった。
その頃ペテルブルグの市街、北東部にある監視施設が砲撃、破壊された。ブザーが鳴り、ラルの指示でニパを除く動けるウィッチとウィザードが出撃した。
「『状況は?』」
「目撃した兵によると、砲撃は一発目ペテルブルグ外周に撃ち込まれたと思います」
「くそっ!街の近くにまで来やがったか!」
直枝が怒りを顕にしていた。
ペテルブルグの絶対防衛線のラドガ湖が凍結した影響でネウロイの侵入を許していたのであった。
ラルはサーシャに戦闘の指揮を委ねることになった。
「こ…これより手分けして周辺区域の探索を始めます!ラドガ湖方面を重点的に探ってください!」
「「「了解!!」」」
その頃、基地の格納庫に残されたニパは
「…サーシャさん…私はいつまでこうしてればいいの……?……し……痺れ………」
正座で足が縺れ倒れた時、ニパのユニットのカバーが開いた。
「あ……あれ……?」
「ニパお姉ちゃん!………お姉ちゃんのユニットのカバーに……文字……?」
502基地のウィッチたちは目を拵えながらペテルブルグ郊外上空を探索。
洋介と定子、ジョゼの班はネウロイの影すら見当たらなかった。
「『こちら桜井、下原、ジョゼ班。ポイントA異常無し!』」
「『ポイントB、異常無いぜ!』」
「『了解、帰投して下さい。』」
「『えっ!?まだネウロイを見つけて無いですよ!』」
「『ネウロイ探索は、これより陸上ウィッチ部隊へ引き継ぎます。』ロスマンさん、雁渕さんを先に戻って下さい。私、は最後にもうひと回りしていきます。」
「了解、戻りますよひかりさん!」
「あっ!はい!」
サーシャを除く、502ウィッチたちは基地に帰投した。
洋介班ー
「定子、何かあったか…?」
「いえ、なにも……」
「そうか、…僕の波導にも異常はない…定子、ジョゼ。基地に帰投する!」
「「 はい! 」」
夕暮れ、ネウロイの再攻撃により貯蔵庫が破壊された。
502基地 会議室
「ちっ……監視所の次は貯蔵庫か……」
直枝は苦虫を噛んで惜しんでいた。
「物資が不足気味な時に貯蔵庫がやられたのは痛いな」
「すいません…私が油断したばかりに、ネウロイを獲り逃がしました…」
「失敗は誰にでもありますよ。ははは!」
そう、サーシャが単独行動の時に砲台型ネウロイを目撃、攻撃時に雪原の中へ見失ったのであった。
彼女が悔やむ時にニパが励ました。
「今回も、撃たれたのは一発のみ。ペテルブルグから、88キロ地点の雪原に潜んでの長距離ピンポイント砲撃です。」
「驚いた。こいつじゃ一流の砲撃手だね~」
ロスマンの説明にクルピンスキーが言う。
洋介も今回ばかりはクルピンスキーの言葉に同調した。
「全くだ。んでもって、狙っている位置は全て重要施設…まるで観測でもしているみたいだな…(沖田さんと幸吉の零観みたいに)」
「いかにネウロイであろうとも、これほどの長距離からピンポイントで直撃させることは不可能です。ですが…」
そう言って、今度はラルが口を開く。
「観測班から、砲撃前標的となった施設から微弱な電波が発信されたという報告が上がってきた」
「えっ?」
「どういうことですか?」
ラルの言葉にどういうことか分からず定子が聞いた。
「つまり、砲撃を誘導するマーカーの役目を果たすネウロイがいるという事よ」
「じゃあ街の中に…その、ネウロイが?」
「そうとしか考えられないな、しかしネウロイも、知恵を持った戦術を考えたことだ…」
ロスマンの説明を聞きジョゼがまさかという風に聞くが、洋介が代表して言い、他の全員が黙っているためそれは肯定とみなされた。
「そこで部隊を二つに分ける。エディータ・クルピンスキー・管野・下原・ジョゼは砲撃ネウロイを捜索し、発見次第撃破」
そしてラルが今回の撃退にウィッチ達を分散してそれぞれ各個撃破する作戦に出た。
「サーシャ・桜井・ニパ・雁淵は街に侵入したマーカーネウロイを発見し、こちらも撃破せよ」
そして洋介は第二班に選ばれた。
「二人はオラーシャとスオムス出身だ、土地勘があるだろう」
「でも、私は南部の生まれでこの街のことは…」
「まぁ、お前ならなんとかなるだろう」
「そんな他人事みたいに…」
ラルの言葉にサーシャは気を落とす。洋介も流石にラルがそんな他人事のように言うので思わず肩を落とした。
「私がついてますよサーシャさん!一緒に頑張りましょう!」
「えぇ…」
ニパがサーシャに向けて励ましの言葉を言うが、サーシャとしては気が気では無く、洋介も「ニパがついてるって言ってもなんか不安なんだよな…」と思ったのだった。
余談だが、定子は洋介との班と外されたことを残念そうな顔をしていた。
翌日、二手に分かれて基地を出発し、洋介達マーカーネウロイ撃退班はペテルブルクを飛行していた。
「いやぁ…ラル隊長はああいってたけど、街には小さい頃に一度買い物に来たぐらいで、本当は土地勘とかあんまりないんだよね」
と、自信なさそうに言うニパに洋介は内心大丈夫かと思う。
「へー、何買ったんで…うわぁ!」
と、よそ見をしながら飛行していたひかりは、目の前に建物の尖塔が迫り、慌てて回避をしたひかりはバランスを崩す。
「大丈夫ひかり?」
「なんとか…」
「はぁ…」
「余所見をして墜落するなよ…」
二パが心配して駆け寄り、サーシャと洋介はそんな危なっかしい動きのひかりを見て互いに心配になる。
その時、ひかりはサーシャに話しかける。
「あの、サーシャさん!」
「はい?」
「サーシャさんはこの街に詳しいんですか?」
ひかりは二パの言葉を聞いてからサーシャがこの街に詳しいのか気になり質問した。
しかしサーシャの答えはひかりの思いにあまり期待できるものでは無かった。
「昨日も言ったけど、私は南部の生まれだから…この街には祖母が疎開する前に住んでいたらしいけど…」
「じゃあ大事な街ですね!」
「え?」
サーシャの説明にニパが割り込んで言う。
「頑張ってネウロイから守らなきゃ!」
「…どうせ無人なのだから、街を防衛する意味はありません」
しかし、ニパの言葉に対してサーシャの言葉は冷たかった。
「え?でもおばあちゃんの家が…」
「私自身何の思い出もありません。そもそも、この街に祖母を訪ねたことなど、一度もないのだから…」
「サーシャさん…」
サーシャの言葉にニパはショックを受ける。
「無人の街を守るよりも、ネウロイを倒すことこそウィッチの責務です」
「そ、そんな…」
「くれぐれもつまらないことに気を取られ、直したばかりのユニットをまた壊さないでくださいね」
「はい…」
サーシャのきつい言葉にニパは黙ってしまう。
しかし、今まで黙って聞いていた洋介が口を開いた。
「…街を守るのも大切な事だと思いますよ大尉」
「えっ?」
突然の言葉に思わず驚き洋介を見るサーシャ。
横にいたニパとひかりも洋介の方を見ると、洋介は真剣な眼差しをしながら下の街を見ていた。
「疎開している人達が無事に戻ってくるようにネウロイから守り、そして街を解放する。ウィッチの大切な役目だと俺は思うぞ?」
洋介の真顔の言葉に全員が黙ったままになる。
彼の世界の故郷である神戸も、水災害で両親が亡くなり、戦時の空襲で焼かれた。
しかし、その沈黙はあっという間に破られた。突然、ラルの言葉がインカムに流れる。
『第二貯蔵庫付近より、謎の電波の発信を観測班がとらえた。至急向かってくれ』
「了解!」
ラルが無線で緊急電を伝える。その言葉に全員が表情を引き締め、そして急行した。
洋介達が到着したときには、第二貯蔵庫は滅茶苦茶に破壊されていた。砲撃ネウロイの攻撃によるものだ。
「間に合わなかった…」
「そんな…!」
ニパとひかりはネウロイの攻撃阻止が間に合わなかったことにショックを受ける。
「第一斑、砲撃ネウロイは発見できたか!?」
『駄目です、見つかりません!』
「散開して!まだ近くにマーカーネウロイが居るかもしれない!」
『了解!』
洋介は砲撃ネウロイ攻撃班に無線を飛ばすが、ネウロイの位置を特定できなかった。
サーシャはまだネウロイが離脱していないと考え第二班の散開を命令する。
そして洋介たちは散開する。
「くそ…何処に居る…って!」
と、低速で空中停止をしていたニパがよそ見飛行をして何かにぶつかる。
「痛てて…もう、ついてないな…」
そう言いながらニパは自分のぶつかった銅像を見る。その時だった。
突然、銅像は形をぐにゃりと変形をさせ、そして形を変形、ついには黒と赤色だけになる。
「いた!化けてた!」
ニパはそのネウロイに発砲しながら報告をする。それを聞き洋介達もネウロイの姿を確認した。
「擬態能力を持つネウロイ!?」
「化けたネウロイだと!?」
「追います!続いて!」
サーシャの指示で逃げるネウロイの追走劇が始まった。
ネウロイはペテルブルクの街中を飛行、その行動は高速で離脱したと思ったら突然路地に入ったりと、不規則な動きをしていく。
サーシャは先頭に立ちネウロイを追う。
それに続いて洋介、しかしその後ろをついてきていたニパとひかりは、突然のきつい軌道に付いていけず、店の看板や道に置かれていた木箱に激突してしまう。
「もう!何してるの!」
サーシャは後ろを見ながら二人に注意をする。
対するサーシャは後ろを向いた状態でも激突する事無く華麗に飛行する。流石にその芸当は洋介でも厳しく、彼は後ろを一瞬見ただけであり、声を掛ける余裕はない。尤も、彼はネウロイの方に必至なだけもある。
その後もネウロイとの追いかけっこは続く。サーシャと洋介が機関銃で銃撃をするが、ネウロイはそれを狭いペテルブルクの道ですいすいと回避をする。ネウロイの方は自身の攻撃手段が無いのか、機関銃の攻撃に対して反撃してこない。
しかし、その動きは徐々に激しくなってくる。ネウロイは狭い路地をまるで隙間を縫うように移動していく。その動きに先頭で追いかけるサーシャは見失うことなくついていけるが、サーシャの後ろをついてきていた洋介、ついにネウロイの位置を把握できなくなってしまい、サーシャが行く道をついていくのでやっととなってくる。
「くそっ…サーシャさん、こっちはこれ以上追跡できん!上からネウロイを確認します!」
「わかりました!」
洋介はサーシャのように迷わず移動できないと判断をし、街を上から見る形で追跡することにした。
洋介は自身が上から観測する形で見ようと思い街の上に上昇し、街を見下ろす洋介。
しかし彼はここで判断を失敗したことを知る。
「よしっ…なにっ!?」
最初こそ大通りのような広い場所を飛行していた洋介だが、ネウロイを追いかけていく内に狭い路地に入っていったため、上空から確認すると建物の影に隠れて道はほとんど見えなかった。
おまけに周辺の建物は高さが同じの物が密集して並んでいるため、場所を把握しようにも困難になってしまった。
その結果、上空から波導で探すつもりが、ネウロイを感じても建物が邪魔になる結果になり、洋介は後悔した。
「(くそっ…建物がこんなに密集して迷路みたいだ、ネウロイを感じても建物が邪魔だ…厚木隊長の手腕と沖田さんと幸吉の能力があれば…)」
一方、唯一追跡していたサーシャはマーカーネウロイの動きに追いて行っていた。
そしてサーシャはネウロイが次に移動するであろう一に先回りすることにした。
「ここだ!」
そして一つの路地に迷いなく入った時、サーシャはある違和感に気づいた。
「…あれ?何で私、こんなに迷わず飛べるの?」
サーシャはそう思いながらも、正面に出会うネウロイに向けて発砲をする。それを受けてネウロイはすぐ脇にあった路地に入り、サーシャはそれに続いて路地に入る。
そして、サーシャは先ほどの違和感を更に感じることとなった。
「…えっ!?」
突然、自分の目の前に景色がフラッシュバックする。それは、小さい少女が今自身がネウロイを追いかけている道を走っている姿だった。そしてサーシャはその少女が誰なのかを知っていた。
そして、そのフラッシュバックした景色に気を取られてしまい、ついにサーシャもネウロイを逃してしまった。
サーシャは周辺をもう一度確認しネウロイを探すがその姿は無く、仕方なく高度を上げる。
そしてそのサーシャにひかりとニパ、洋介が駆け寄ってくる。
「サーシャさん!遅れてごめん!」
「すまないサーシャさん!上空からネウロイを追いかけるのを失敗した」
「ネウロイは!?」
ニパと洋介はそれぞれの謝罪の言葉を並べ、ひかりはネウロイが何処に行ったかを尋ねる。しかし、サーシャはそれよりも気になることがあった。
「私、この街を知っている…?」
サーシャのつぶやきを聞き、聞いていた三人は首をかしげたのだった。
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「解析班によれば、砲弾はネウロイの体組織より生成されたもので、一日に三発が限界だと思われます」
「とりあえず、今日はもう安心か。とは言え、街に潜伏するマーカー役のネウロイが擬態するとは…また面倒だな」
隊長室内にロスマンの分析の言葉が報告され、ラルは厄介ごとだと言う。
あの後、ネウロイを発見することは出来ず、もう二発の砲弾を街に許してしまい、あえなく帰投しサーシャとロスマンは部隊長室に来ていた。
ラルはサーシャの表情が優れないのを見て声を掛ける。
「どうした?サーシャ」
「い、いえ。すみません、自分が仕留めてさえいれば…」
サーシャは自分がネウロイをしとめることができず街に続けて被害が出たことに、自分があの時に倒していれば、と後悔していた。
「まぁ、そういう時もある。明日も頼むぞ」
しかしラルはそんなサーシャに責任を押し付けることなく、明日も頼むと励ましの言葉を述べた。その晩、サーシャはサウナの中、昼間に見た光景を考えていた。
「あの時のあれは…」
ネウロイを追いかけているときにフラッシュバックした景色。あれは自分の固有魔法で記録したものだと考え、サーシャは魔法を使う。
しかし、いくら思い出そうとしてもその景色は思い出すことは出来なかった。
「(…やっぱり、過去にあんな景色を記録した覚えはないわ。けど、なんで街のことをあんなにはっきり…?)」
サーシャは何故か疑問に思い考え――そして首を振った。
「(何を考えてるの?街のことよりネウロイを倒すことの方が先決よ!)」
そう言って、自分に暗示をかけてサウナを出る。
そしてサーシャは格納庫に入ると、そこに意外な人物が見えた。
「ニパさん、亜弥さん?どうしたのこんなところで?」
そうしてサーシャはニパと亜弥のところに行くと、二人は何故か狼狽える。
「サーシャお姉ちゃん!」
「それ、私のユニットでしょ?」
「なな、なんでもないよ?」
そう言う二パだが、サーシャは二人の向こう側に自分のユニットに書かれているあるものに目が行った。
「なっ、なにこの落書き!?」
そこにはサーシャのユニットの整備開閉扉の内側に、謎の物が描かれていた。それは確かに落書きに見えるものだ。
「あの、これは…」
「亜弥さん、悪戯にも程があります!確かにニパさんには厳しく当たることもありましたが…だからと言って、こんなこと!」
サーシャは悲しそうに二パに訴える。
ニパは懸命に弁解をしようとする。
「待ってよ!違うんだ、これは…」
「私だって別に好きで厳しくしているわけじゃないのに!でも、私は戦闘隊長だから皆のことを…」
「サーシャお姉ちゃん、これはニパお姉ちゃんの心ばかりのお礼です!」
「お礼?」
「亜弥の言う通り、それを分かっているから、ニパも恩返しをしたかったんだ」
サーシャはそんな二パに目に涙を浮かべながら言うその時だった。
サーシャとニパのいる位置と反対側のユニットの位置から声がし、二人は振り向く。
そこには、自分のユニットを手で整備している洋介の姿があった。尤も、ニパは最初から共にいたため分かっていたが、サーシャは洋介の存在に気づいていなかったため驚いたように見ていた。
「洋介さん…」
「桜井さん、どういうことです…?」
「二パは自分のユニットに、サーシャさんのお守りの言葉が書かれていたのを見て、自分もお返しにそこにテントウムシの絵を描いたんだ」
「て、テントウムシ?」
洋介にそう言われてサーシャは自分のユニットに描かれているテントウムシを見る。
形は不格好ではあるが、背中に七つの黒丸に、足が六つ。言われてみればテントウムシの形をしている。
サーシャはそれを聞いて二人に聞いた。
「ほ、本当なの?」
「え?う、うん…」
二パが返事をする横で、洋介が油まみれの手を手拭いで拭きながら説明し始めた。
「欧州でテントウムシは幸運を運んでくる縁起物、ニパは部隊のことを思ってくれているサーシャさんに幸運がやってくるようにとテントウムシをお返しで描いたのさ…まぁ、ニパの絵心が無いのが誤解の原因だったがな」
「洋介さん、それは酷いよ!第一、最初から説明したらこんな誤解が生まれなかったのに!それに亜弥ちゃんのアイディアなんだから~」
「な…何だって…亜弥の!?いや、だってサーシャさんの存在に気づいてない様子だったもんで…」
洋介は説明の後に絵のことを言い、言われたニパはへこみながら反論するが、彼は愛娘である亜弥のアイディアと聞いて困惑する。
サーシャは洋介で自分の存在が無かったことに対するショックを受けへこんでいた。
そんな光景を見ながら、サーシャは涙を一つ、静かに零した。それは悲しいからでは無かった。部隊の皆に、自分の思いがしっかりと届き、そして逆に、自分のことを思ってくれている仲間がいるという嬉しさの表れだった。
「…バカ」
目の前でへこんでいる二人に向けて、サーシャは一言、そう呟いたのだった。