読者の方々、よきクリスマスを
1944年、12月下旬ー
「うぅっ、寒みぃ~…ペテルザヴォーツク以来、身体が堪えるなぁ~…」
洋介は約2年半、年がら年中日が照らす暑い南方の最前線ラバウルとトラック諸島、フィリピンでアメリカ軍と戦闘を繰り返しながら暮らしていたため、寒さに慣れていなかった。外套を着用、軍刀鷹狼を帯刀して外に出た。
「川が凍結してる……流石は北の地だなぁ〜。…ん…亜弥…ひかり、ニパ、管野か」
桜井洋介の娘、桜井亜弥は第502統合戦闘航空団に配属、基地所属のウィッチたちの妹分になり。エディータ・ロスマン曹長の指導により、ひかりと共に日々指導を受けていた。
ストライカーユニットに関しては、ユニットには数に限り、洋介が非番の時に彼の愛機零戦64型ユニットを使用して練習をしていた。
ペテルブルグ基地付近の凍結した川にて亜弥、ひかり、ニパ、直枝がジャンケンして、魔法力を発動しながら橇を押しながら滑り楽しんでいた。
「凍結した川で滑りながら遊んでいるのか、楽しそうだなぁ~」
みんなが楽しんでいる時、亜弥の遊ぶ光景を見て微笑んだ時、夜が明けた。
そう思っていた時だった。洋介は橇の進んでいる先に薄くなっている氷があるのに気づく。そして同時に、後ろで押していたひかりがこけてそりから離れてしまい、そりはブレーキを失った状態でその地点に突っ込んでいった。
そして案の定、薄い氷は三人乗りの橇の重さに耐えきれず崩壊し、三人は冷たいネヴァ川の中に落っこちて行ったのだった。
「あらら~、大変だ」
割と呑気なことを言う洋介だった。
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「風邪?」
「はい。応急処置はしておきましたので、明日には熱も下がると思います」
食堂の席、ジョゼが説明する。
その後、洋介に引き上げられた3人とひかりはサウナに向かい暖を取ったものの、ひかりが熱を出してしまいサウナの中で倒れてしまった。そしてその後、ジョゼの治癒魔法による応急処置を受けて、現在に至るのだ。
「直ちゃんたち、ひかりちゃんを凍った川に落としたって?」
「落とされたのは俺らだ!」
クルピンスキーが茶化し、直枝は被害者は自分達だと主張する。
「あの…ウィッチってあんまり風邪とか引かないですよね…?」
「ん?そうなのか?」
ニパの言葉に洋介は初耳のため疑問に思う。しかし、その説明はロスマンとサーシャがした。
「ええ。ウィッチは魔法力で守られているから、怪我や病気に罹ることは珍しいわ」
「ただ、肉体的、精神的な疲労がたまると、ウィッチでも病気になることがあります」
「過労!?」
説明を聞き二パが驚く。そしてコップを両手で持ったまま下を向く。
「…やっぱり私が朝から連れ回したせいで…」
「それだけが理由じゃないわ。ひかりさんは元々魔法力が強くないの」
「最近、厳しい任務が続いたことが一番大きいと思います。もう少しこちらも考慮すべきでした」
「まぁ、全ての新人がここまで最前線で戦ってきたんだ。どう足掻いても疲れない方がおかしな話さ。しかしながら、亜弥も共に湖に落ちたものの風邪を引かないとは…」
「うん、わたしとお母さんは北海道の小樽に暮らして、アイヌの子たちと遊びながら足を滑って川とかに落ちて慣れちゃった」
二パの言葉をロスマンはそれが一概に言えないと言い、サーシャと洋介はそうなった原因となる点を挙げた。
亜弥に関しては思った以上にウィッチの精神力が強く、洋介は心底驚いた。
「なに、風邪程度で済んでよかった。それに、亜弥も無事でよかった。」
そんな中、ラルは表情を変えずにそう言い、カップの中の紅茶を飲む。
しかし、ニパはそれでもひかりが心配であり、カップの中の液体に映る自分の姿を眺めていた。
「ひかり…」
その時、台所から定子が鍋を持って現れる。
「お食事、出来ましたよ」
そう言って、鍋の中身をそれぞれの皿に分ける。
「下原ちゃん…なんだい、これ?」
クルピンスキーは定子が出した料理を見て質問をする。
他の隊員も、食べながらその料理を追求する。
「ニョッキに似てるわね…これ、ちゃんと煮えてる?」
ロスマンが食べながら言う。
「ピエロギ…じゃないよね?」
「具の無いぺリメニ?」
「うーん…?」
クルピンスキーとサーシャも言う。ジョゼはその料理を食べながら色々考えている。しかし、誰一人正解では無かった。
しかし、この答えは洋介と亜弥、直枝が知っていた。
「これ、すいとんか?」
「すみません。…今ある食材では、これが精一杯で…」
定子は申し訳なさそうに言う。
洋介は戦争末期、亡き妻雪の手料理で一度だけ口にしており、亜弥も戦後の混乱で竹の子生活で何度も口にしていたのであった。
そして現在、502基地は深刻な食糧問題に立たされているようだ。
その後、ブリーフィングルームに熱を出したひかり以外のウィッチが集められた。
「現在、ムルマン港からの補給が立たれた上に、先日の砲撃で弾薬や燃料の集積所と、食料貯蔵庫も破壊されています」
「…完璧な陸の孤島。…このままじゃ基地機能が崩壊するな…」
ロスマンが前に立ち説明をし、それに対し洋介が現状が続いた先のこの基地の状況を冷静に分析する。
ラルはロスマンに聞く。
「スオムスからの援軍は?」
「頼んではいますが、あちらも残っている補給線は北海経由の陸路のみで余裕がないそうです」
「現在補給線奪還作戦を立案中ですが、とにかく食料の備蓄が足りません」
サーシャが付け加えるように説明する。それを聞き横に座っていたクルピンスキーが肩を落とす。
「しばらくはずっとあれ食べることになるのかー…えっと…チントン?」
「「「 すいとんだ 」」」
クルピンスキーのミスに洋介と管野、亜弥がツッコむ。
「現状打開策はなし、補給が改善するまで待つしかないということか」
「明日は基地恒例のサトゥルヌス祭が予定されていますが…?」
「「(サトゥルヌス…?)」」
ラルがそう結論付ける中、ロスマンが聞く。洋介と亜弥が今の言葉で頭を傾げ、ラルの答えは決まっていた。
「今年の祭りは中止だな」
「えええええっ!?」
ラルの中止の言葉を聞き、驚いたのはなんとニパだった。ニパは立ち上がるが、周りがそんなニパを黙ってみているのを感じ、すぐに座る。
「あっ…いえ…なんでも、ありません…」
そうして小さくなるニパであった。
その後、洋介と亜弥の部屋にニパと直枝が訪れた。
丁度、洋介たちもサトゥルヌス祭に関して聞きたかった。このウィッチの世界は、12月下旬に始まるクリスマスであった。
「(クリスマス=サトゥルヌス祭。やるのはフィリピンのマニラ以来だな~)」
そして、亜弥も小学生になる前から母親の雪と戦没犠牲者会でよく楽しんだ。
「……介さん……洋介さん!」
「あぁ、すまないニパ。隊長の許可は?」
ニパの説明では、502基地に転属した洋介と亜弥。風邪で寝込んだひかりの為に少しでもサトゥルヌス祭を実行しようと宣言した。
但し、ラルの許可無しでの状況だった。
「ニパお姉ちゃん…わたしたちのために……」
「やろうとしても、物資がない状況で難しいぜ洋介。」
そう、この基地の物資が枯渇した状況でサトゥルヌス祭を実行するのは困難であった。
「はぁ~そうだな…」
洋介はため息をつきながら、部屋の戸棚から三個の缶詰を亜弥に手渡した。
「お父さん?」
「洋介さん?」
「洋介?これは牛肉の缶詰じゃねぇか!?隠し持ってたのか!」
「ははは…、ブリタニアで頂いたんだ。この缶詰を定子に渡してくれ。僕はちょっと、基地郊外に出掛けて食材を探して行きます。」
そう言って、洋介は軍刀と拳銃、格納庫で小銃を所持して森林地区へ向かった。
基地、食堂室ー
缶詰を持った亜弥は定子とジョゼに渡した。
「ありがとう、亜弥ちゃん!」
「亜弥ちゃんありがとう。ニンジンだけの食材じゃサトゥルヌスは出来なかったわ。」
ジョゼは亜弥を抱き締めた時、定子は膨れっ面になった。
「ずるいジョゼ、わたしも抱きしめたくて我慢しているのに~」
「ジョゼお姉ちゃん、定子さん。わたしもお手伝いします。」
亜弥は定子たちと食材の配膳を手伝った。
「ジョゼお姉ちゃん!またつまみ食い?」
「むぐっ……ごほっごほっ!これは味見だよ亜弥ちゃん……」
「お父さんがせっかくウィッチたちみんなにあげた缶詰を…これ以上食べたら、お父さんに言い付けてやる。」
亜弥がジョゼを指差した時、定子が抑えた。
「亜弥ちゃん、これはジョゼのやり方だから許してあげて。」
「うん…」
そう言って、彼女の配置に戻った。
「……ねぇ、定子さん。」
「なに?」
「お父さんのこと、好きなの…?」
「…っ!?///」
定子は亜弥の言葉に赤面した。洋介がこの基地に配属してから意識し、気づいているのは亜弥だけじゃなく、他のウィッチたちもわかっていた。
一方、森林地区で食材探しをしていた洋介はある投函された差出人不明の手紙の事について悩んでいた時ー
「(大木田虎三郎…何者だ…)ん?あれはクルピンスキー。何やってるんだろう」
そこには斧をもって首に何にか板をぶら下げているクルピンスキーがいた。
「おっ、洋介く~ん♪いいとこに来たよ、松の木切るの手伝ってくれ」
「ん…松の木っていうと…」
「うん実はね…」
クルピンスキーの話によると、自称19歳の女狐にやられ、その罰としてサトゥルヌス祭に使う松の木を探せるんだと、またロスマンにちょっかい出して制裁されていた。
クルピンスキーが切り、洋介がそれを運ぶ形となった。クルピンスキーは呑気にワイン飲みながら歩いてる。
「ぐぬぬ~重てぇ…てクルピンスキーさんも手伝え…」
「そんなこと言わない。これもひかりちゃんの為なんだから。それに後でカワイ子ちゃんも紹介するし」
「いや、結構…///」
洋介は遠慮しがちしながら基地に帰投した。それと同時にロスマンに目撃された。
「ニセ伯爵さん。あなた仕事をほっぽて、男性に押し付けて何やってるのかしら?」
ロスマンに会った。笑ってるけど目は笑ってない顔であった。
「これは先生。洋介君が自主的にだね…」
「……本当なんですか?桜井中尉」
ロスマンがそう洋介に言う、そのことでクルピンスキーは心の中でヒヤヒヤした。
「ええ、私が松の木を運び、クルピンスキーさんはその代わり森でキノコや木の実集めなどの食糧調達とかを手伝ってもらってました」
「そ、そうなんだよ先生~」
「では、その食料はどこにあるんですか?」
「ここにあります。キノコはまだありませんが…」
そう言い洋介は集めた食材をロスマンに譲渡した。
「二人とも、ご苦労様」
洋介は松の木を格納庫前に設置するとー
「うわぁ!?」
格納庫内部での突然の出来事に悲鳴を上げる。そして、大きな土煙を上げた先に、4人の人影が見えた。
「ん…?ニパと管野、サーシャさん、ひかり?」
「いやー、やっと運んでこれたよー。いっちばんでっかい奴採ってきたからねー」
「おい…主に運んでたのは俺だ…」
この大きな木を運んできたのはクルピンスキーと洋介。そしてクルピンスキーは入口の所にいるひかりに気づき大声を出す。
「あ!ひかりちゃーん!見て見て~♪」
「わあ!中尉だめー!」
「まっまて、言うな!」
ニパと洋介はクルピンスキーが声を掛けたのに気づき、慌てて止める。しかし、その努力空しくクルピンスキーは口を開いた。
「ひかりちゃんの為のツリーだよ」
「あちゃー…」
「中尉のバカ…」
「だからあれほど言ったのに…」
クルピンスキーがばらしてしまい直枝とニパ、洋介は頭を抱える。洋介に至っては、ひかりに遭っても「資材集め」と誤魔化すようにくぎを打っていたのに言ってしまったことで、両手を頭に抱えてうずくまっていた。
「私の…ための…ツリー…?」
「わぁあ、ほら、やっぱり寝てないと」
しかしひかりはその言葉を聞いた後、突然体をぐらりとしてしまい、慌ててニパが体を支えた。
その後、ニパはひかりを部屋に連れてベッドに寝かせた。
「私のためにお祭りですか?」
「うん。今中尉がロスマンさんと洋介さんと一緒においしいキノコを採りに行ってるから、楽しみにしてて」
ひかりにニパが説明する。
その後、クルピンスキーは注意が足りなかったことで情報漏洩をしたということで、洋介とロスマンと共に懲罰としてキノコ採りに行ったのだった。
それでしばらく3人で森の中を探してみるとキノコを発見した。
「おっ!美味しそうなキノコ発見!」
基地、ひかりの部屋ー
「お祭り…私も大好きです」
ひかりもお祭りが好きであり、ニパの話を聞いて楽しみにしている。
「祭りって、人と人との心を繋ぐ不思議な力があると思うんだ。だから、ひかりにもサトゥルヌス祭を楽しんでもらいたくて」
「ありがとうございます…ニパさんって優しいんですね」
ひかりの言葉に、ニパは照れる。
「え、いや、そろそろキノコ届いてるかな!ちょっと見てくるね!」
そして、照れ隠しで部屋から出て行くニパ。そして、二パが食堂に着いたとき、それは起きていた。
食堂のキッチンには、亜弥、ロスマン、定子、ジョゼの4人が居た。しかし、なぜか全員机にひれ伏していた。
ニパは様子がおかしいと感じ、全員に声を掛ける。
「ど、どうしたのみんな!?」
「このキノコを料理したら…」
ロスマンは懸命に何かをこらえながら、スープ皿に入っているものをニパに差しだす。ニパがそれを取り出し中身を見ると、びっくりしたように反応した。
「これってワライダケじゃん!なんでこんなのを…」
そう、スープの中に入っていたキノコはワライダケだったのだ。そして、食べている人全員が今、懸命に笑いをこらえていたのだ。
そして、事の成り行きを定子が話し始める。笑いをこらえながら。
「クルピンスキーさんが絶対おいしいって…くくっ」
「えー!?」
ニパが驚く中、後ろから声を掛けられる。
「二パ君ごめん…せっかくの祭りを台無しにして…ぐっひゃっひゃっひゃっ!」
「ぷっ…あっはっはっはっはっ!」
そして謝罪をするクルピンスキーではあるが、笑い声が完全に台無しであり。笑い声に包まれて亜弥も我慢できずに笑い出した。
そして、不は連鎖する。突然、基地内に警報が鳴りだした。
『中型ネウロイ一機、基地に接近中!』
索敵兵により、ネウロイの接近を知らせる報告が来る。
「こんな時にネウロイだなんて!」
ニパはそう言いながら急いで格納庫に走る。
そしてニパは中にいる三人を呼ぶ。
「洋介さん!管野!サーシャさ…」
「だーっはっはっはっ!!」
「ふふ…ふふふ…」
「あっはははははははは!!」
しかし、既に遅かった。スープを飲んでしまった直枝とサーシャ、そして洋介はワライダケの力に伏してしまっていた。
「こっちもかよ…」
『ニパ、聞こえるか』
「隊長!」
その時、ここでニパに希望が舞い降りる。なんと無線でラルがニパを呼んでいるではないか。
『出撃できるのはお前だけだ、頼んだぞ』
「了解!」
そしてニパはユニットを履きMG42機関銃を持つ。その時、後ろから声がする。
「ニパさーん!」
「ひかり!?」
なんとひかりが格納庫入り口から入り、そしてひかりはその足でユニットのところに向かっていた。
ニパはそれを見て静止させる。
「ワタに任せて!絶対に来ちゃだめだからね!上官の命令だよ!」
「えっ!?…了解」
ひかりはニパに上官命令を言われてしまい立ち止まる。その時だった。ネウロイの攻撃で被弾、格納庫入り口に燃えるツリーが倒れてくる。
「あっ!ツリーが!!」
「くそっ!よくもー!!」
ひかりがツリーの惨状を見てショックを受ける中、ニパは塞がった格納庫入り口の隙間から離陸をし、そして上空のネウロイに向かう。
『敵の発見が遅れたのは、何らかの能力が原因だと思われる。十分に注意しろ』
「了解!隊長はまともでよかった…」
指示を受け返事をしたニパは、唯一無事だと思われるラルの様子に心強さを感じた。
しかし、実際は違った。
「ぐっはっはっはっはっはっは!」
部隊長室内、ラルの笑い声が響き渡っていたのは当人以外知らなかったのだった。
基地上空でたった一人稼働可能のウィッチであるニパが中型ネウロイと交戦。
戦闘の最中、ネウロイの機影が忽然姿を消失。別の角度から確認してネウロイを発見。再交戦に突入、銃撃するも弾詰まりを起こし装弾不能に陥った。
「何でこんなについてないんだよ!!」
ひかりは集中攻撃を受けている二パの様子を心配し悲鳴を上げる。ニパは自分の幸運の無さがここで出たことに対して最悪だと思った。
万事休す、と思われた次の瞬間。攻撃を受けているニパの後方から、数発の大型弾頭が飛来する。 そしてその弾頭はネウロイに向けて全弾命中した。
「えっ!?」
「誰が撃ったの!?」
空に上がっているのはニパだけである。それなのに、後ろから攻撃が来たことに二人は驚いた。
そしてネウロイはその攻撃にコアを露出し、居てられなくなったのか、再び急旋回をする。
「コア、確認」
逃げるネウロイにニパのいる場所から違うところから弾丸が飛んでいき、ネウロイのコアに命中。そしてついに、ネウロイはその姿を光の破片に変えたのだった。
「一体、何が…?」
二パは目の前の不思議な光景にただ呆然とする。その時、ニパは後ろから声を掛けられた。
「よー、ニパ」
ニパは呼ばれて振り返り -そして最大級の歓喜の顔をした。
「あー!!イッル!!」
「へへーん」
なんとそこに居たのは、ユニットと機関銃を持ち、サンタクロースの格好をしたエイラだった。
さらにそれだけでは無かった。
「敵、撃破確認。オールグリーン」
「サーニャさん!」
「お久しぶりね、ニパさん」
エイラだけでなく、今度はサーニャも現れるではないか。ユニットにフリーガーハマー、そして彼女もエイラと同じようにサンタクロースの格好をしていた。
「えっ?誰?」
ひかりは上空に居る人物が誰か知らずにポカンとする。
「エイラ!サーニャ!!」
「501のリトヴャク中尉とユーティライネン少尉…」
「なんだ?あの派手な服」
すると、ひかりの後ろに先ほど格納庫に居た三人が出てくる。
洋介はエイラとサーニャの姿を見て大きく目を開く。冷静に何故ここに居ると言った様子で、直枝は赤い服装をしている二人が気になる様子で同じように見る。
「管野さん、サーシャさん、洋介さん。もうおかしくないんですか!?」
「おめー、喧嘩売ってんのか!?」
「私達、食べた量が少なかったから」
「はっはっはっは~…しかし、エイラとサーニャが来るとは思わなかった。しかし、久しいなぁ~」
ひかりがなかなかに失礼なことを言うので直枝はジト目でひかりを見る。そしてサーシャは原因を説明し、洋介はまだ笑いつつも、再びサーニャたちを見る。
その後、502の格納庫内ではサーニャ達によって運ばれた物資を下ろしていた。
「わぁ!ハムです!」
「こっちはりんごジャムだ!」
下原とジョゼは補給物資の中に食料の姿を見つけて嬉しそうにする。
「こっちは弾薬に武器…よかった。これで基地の機能麻痺の心配は無くなったな…」
もう一つの箱の中身を見て洋介はホッとしたように息を吐く。
そんな中、ニパはある箱の中身を見て目を輝かす。
「あっ!ひかり見てー!」
二パは横にいたひかりに箱の中身を見せる。すると、ひかりは目をキラキラさせてその中身を見た。
「わぁ!」
そしてその後、格納庫内に大量のろうそくが並べられる。エイラとサーニャの持ってきてくれた補給の中にあったろうそくを並べたのだ。
二パは横に立つひかりに聞く。
「どう?ひかり」
「すごくきれいです…」
ひかりは目の前の光景に心を奪われる。ひかりだけでなく、502の隊員たち全員がその光景を見ていた。
「先生もキノコ採ったのにさ…なんで僕だけ…」
と、格納庫の端っこでぼやく者がいた。首から下に看板を掛けたクルピンスキーだ。看板には『私は破壊活動をしました』と書かれており、洋介はその姿を見て「予科練とラバウル時代を思い出す」と、心の中で震えていたのだった。
「スオムス軍より、502基地への補給任務、完了しました」
サーニャがラルに書類を渡す。ラルはそれを受け取った。
「確かに受領した」
「向こうも苦しいと聞いたけど…」
ロスマンは502だけでなくスオムス方面も補給がきつい状況であると聞いていたため、補給状況が気になりサーニャに聞く。
「エイラ達スオムスのウィッチが、ニパさんを助けるんだってかき集めたんです」
しかし、サーニャはこれがスオムスウィッチ達による厚い支援であると説明したため、周りもそれに納得した。
「助かりました。リトヴャク中尉、ユーティライネン少尉」
「いやー、そんな大したことはー」
サーシャに代表して礼を言われエイラは大したことじゃないと言う。しかし、その笑顔から感謝の言葉は届いた様子であった。
そして、補給によって無事にサトゥルヌス祭を開くことができた502は、テーブルに豪華な料理が並べられた。
「おい、雁淵」
「はい」
直枝がひかりを呼び出す。ひかりは何だろうと思い返事をすると、彼女の目の前に一つの人形が渡される。
「わぁ…可愛い」
「マトリョーシカっていうオラーシャの人形よ」
サーシャが説明を加える。ひかりが受け取ったのはオラーシャ人形であるマトリョーシカである。
「お前にやる」
「ありがとうございます!」
「それ、真ん中から開くのよ」
直枝からもらい喜ぶひかり。そしてサーシャは、マトリョーシカの秘密をひかりに説明する。サーシャの説明通りにひかりが開くと、今度は中に一回り小さなマトリョーシカ人形が出てくる。
「わぁ…!」
「まだ開くんだよ」
ニパがさらに説明を加える。そう、マトリョーシカ人形は開けると中に小さな人形が入っているのだ。
そしてその言葉の通りひかりは人形をさらに開けると、今度は中から直枝の木彫りの人形が出てきた。
「わぁ...! 可愛いブタ!」
「犬だ…」
「お父さん!」
「亜弥、これは…?」
洋介はその光景で笑みを浮かべた時、亜弥は洋介に手のひらサイズの紙包みを差し出した。
「わたしからのプレゼントです。」
「亜弥、こ…これは?」
洋介が包みを開けると、それは日本海軍少佐の階級の襟章だ。
洋介は悟った。あの占守島の戦いにて行方不明になった後、二階級特進に昇進した。
「どう?お父さん?」
「ありがとう、亜弥。しかしながら、僕が少佐の階級を受け取ったら軍規違反になるゼョ」
「あ……そんな…」
その言葉で亜弥は落ち込んだ。
「でも、僕は亜弥からのプレゼントは凄く嬉しいぞ」
「お父さん!」
その言葉で表情は明るくなった。
そんな中、クルピンスキーはこそこそと隠れながら四つん這いで歩いていく。
「匂う…匂うぞ…」
そしてクルピンスキーは輸送ソリで送られた物資の木箱のところに行く。
「僕を呼んでるこの香り…おっ!」
そしてクルピンスキーは木箱の中をあさると、その中から一本の瓶を取り出した。
「君かー!シャンパン君!」
クルピンスキーは中から出てきたシャンパンを見て喜ぶが、すぐさまそのシャンパンに別の手が伸びる。
「あぁ、隊長!?」
「これを振ったら楽しくなるかな?」
「なると思います」
シャンパンを手に取ったラルはロスマンに聞くと、ロスマンは賛同する。すると、ラルはシャンパンを横に振り始めた。
「あぁー…」
クルピンスキーがその姿を見て悲痛な声を上げるが、ラルはそのままシャンパンのコルクを指で弾いた。すると中からシャンパンが噴水のように舞い上がる。
シャンパンの中身は格納庫内の蝋燭の光を反射しキラキラと輝く。
「わぁ…綺麗…」
「うん!」
「せっかくのシャンパンがぁ…」
ひかりたちがその光景に見とれ、クルピンスキーはシャンパンが飲めずに嘆く。
そんな中、洋介とサーニャ、エイラの三人は少し離れたところでその様子を見ていた。
「ちょっと心配してたんだけどナー」
「ニパさんのこと?」
「うん。あいつ502で浮いてんじゃないかって…」
「そんなことは無いぞ、ほら…」
そう言って洋介は二人の方を見る。それに続いてサーニャとエイラがニパを見ると、ニパはひかりたちといっしょに笑っていた。
「な?」
「心配ないみたいね」
「うん。心配して損した。ん…?」
洋介とサーニャに言われ、安心したようすのエイラ。そして、二人は洋介の背後に隠れる少女の亜弥に気づいた。
「あら、こんにちは。」
「なぁ洋介中尉…アンタのうしろに隠れている少女は誰なんだ?」
「あぁ、初対面だったな。この娘は亜弥、僕の実の娘だ。」
「「 え…えぇ~!? 」」
エイラとサーニャは驚いた。洋介の説明では、彼の戦時から9年後、例のネウロイ極秘計画の影響でウィッチの世界に彷徨い、そして、使い魔と契約してウィッチに覚醒した。
「そうだったんだ…」
「そうだったんですね。えっと…よろしくね亜弥ちゃん」
「はい!よろしくお願いします。お二人はお父さんから聞いています。」
亜弥はエイラとサーニャに打ち解け、その光景を見た洋介は微笑んだ。
「ふふっ、姉妹みたいだ…あ、そうだ…」
そう実感している時、あることを思いだした。
「サーニャ、君に手紙がある」
「手紙ですか…?」
「もしかして、アンタがサーニャにラブレターカ…!?」
洋介がサーニャに手紙を渡そうとした時、エイラが洋介にドス黒いオーラを放ち、睨んでいた。
「違う違う…この基地の俺に宛てられた手紙だが、もう一つの内容がサーニャに渡してくれとの内容だ…」
「……」
「サーニャ…?」
サーニャは手紙に書かれた内容を読むと、両目から涙を流した。
「お父さま…お母さま…よかった…ありがとうございます……」
彼女は手紙と同封された写真を手にしていた。
洋介は格納庫から出て、寒くありつつも夜空を見上げた。
「…雪…勇介…澪さん…志帆姉さん…家族でクリスマスをしたかったな…」
「洋介さん!」
「ん?定子か…なにしに…ムグッ…///」
定子は洋介の略帽を取って、口を重ねた。
「///…定子っ!……」
「洋介さん…あの…すみません…突然こんな事を…///」
洋介は一旦、彼女と顔の距離から離れた。
「あの、定子…メリーサトゥルヌス……///」
「…洋介さん…///」
そして、洋介も定子と熱い口付けを交わしながら、思考が停止した。そして、それに気づいた502のメンバーは全員、格納庫の扉からその光景を見て驚愕の顔をする。
「ああー!///』