元ネタは「はだしのゲン」の場面を私流にアレンジしました
1945年1月 ペテルブルグ基地
第502統合航空戦闘団は新年を祝った。
基地内で飲食や遊戯など楽しみ、ウィッチの世界でただ一人のウィザード、桜井洋介と娘の亜弥はその場で正月らしく、扶桑のウィッチたちと遊技の羽根つきで楽しんだ。
「それっ!」
「あ〜っ負けちゃった〜!ひかりお姉ちゃん」
「ふふふ。はい、亜弥ちゃんの顔に墨を塗るよぉ~♪」
塔の下でひかりと亜弥が戯れている時、洋介と定子、直枝はその光景を見ていた。
「二人は楽しくていいですねぇ♪」
「みんな、まだ子供だな~♪」
「そう言う洋介だって、子供みたいに楽しんでいるじゃあねぇか!」
「…ははは、管野に返す言葉がねぇな」
洋介の言葉で直枝に突っ込まれた時、エイラとサーニャがやってきた。
「洋介さん、皆さんー!」
「オーイ!ワタシたちも混ぜてくれ~♪」
「あぁ、いいとも!」
その場で、扶桑の文化ならではの羽根つきで楽しんだ。
正午ー
「あ~正月ってのは旨いものを食う以外、ヒマだな~」
「そうですね…買い物に行こうにも相変わらず市街地は無人、私たちがネウロイの巣を撃退するまで難しいです」
洋介と羽根つきの遊戯で楽しんだウィッチたちは廊下を歩きながら娯楽がヒマで仕方なく呟いた。すると、直枝が洋介に尋ねた。
「なぁ洋介、何か楽しいことないかぁ?」
「ん、そうだなぁ~…正月の娯楽は凧上げ…には女性のイメージがない…せめて…」
「せめて…?」
「映画くらいあれば……」
「…映画…サーシャさんの魔法能力じゃ無理がありますし…」
「……わっ…」
「…亜弥っ!?」
亜弥は廊下で躓き、魔法力を発動した。固有魔法は影分身だが、もう一つ隠れた能力が開花した。
「うわっ!?」
「なんじゃこりゃ!?」
「…これは…扶桑…?」
「…いや…違う…これは日本だ…!」
躓いた拍子に一部廊下の景色が変わった。
壁、床、天井を同時に映像を投影する。その景色は扶桑であり扶桑ではなく、洋介と亜弥がいた日本の小樽だった。
「ここが、洋介さんと亜弥ちゃんの異世界の扶桑、日本!」
「わあぁ!凄くおしゃれなお店」
「あれが小樽運河か…ちょっと見てくる~♪…がはっ!?」
「管野さん、大丈夫ですか!?」
扶桑のウィッチたちからして見れば、世界と国名が違えど同じ母国。
目を輝かせた直枝は見物しようとした先で廊下の壁にぶつかった。景色は果ての先まで続いているものの、中身は狭い廊下であった。
「ん…これは…?」
「あっ」
廊下で隊長のグンドュラ・ラルと遭遇、彼女はミーティングルームにウィッチたちを招集させ、亜弥の隠れた能力を披露した。
「…凄い…」
「へぇ〜。これが洋介君と亜弥ちゃんの国か~♪」
「ああっ!あそこのお店の食べ物、美味しそう~♪」
「ジョゼ待った!見た目が広くても、元は狭いミーティングルームにいるから壁にぶつかるぞ!」
「えぇっ!?ちょっと残念だなぁ…」
ジョゼは直枝の説明を聞いて、残念そうな顔をしていた。
「ねぇ亜弥ちゃん、これはいつの時代なの?」
「はい、先生。これは1954年の小樽です。」
ロスマンからの質問を聞いた亜弥は答えた。
「と、言うことは今から9年後の世界!?」
「9年後の異世界の扶桑…活気があり、みんなお洒落な格好して、ハイカラな建物ばかり。基地の市街地でも、こんな活気が戻ってくれたら…」
「サーシャさん、戻ってくるよ。ワタシたちがネウロイを倒したら、街の人たちが戻ったら、この街の人たちの様に笑顔が戻るよ。」
「ニパさん…」
サーシャが呟いた時に、ニパが励ました。サーニャが亜弥の肩に手を置いた。
「ふふっ♪亜弥ちゃん、凄い能力ね」
「サーニャお姉ちゃん。えっ!?」
「これは…!?」
亜弥がサーニャに手を重ねた時、景色が変わった。
サーニャの夜間哨戒の任務やブリタニアの501団所属時代の活動が写し出された。
これは芳佳と洋介があの人型ネウロイの巣に入った時と同じ状況だった。
「もしかしたら、亜弥ちゃんの記憶だけじゃなく、他の人物の記憶を写し出されるのかしら…?」
「凄いねぇ~これは♪サーシャちゃんの能力より凄い!」
「ん…?」
「あっ…いや…あはは…」
クルピンスキーの言葉でサーシャが睨んできた。彼女は冷や汗を掻いた。
「面白そうだな。誰の記憶にする?」
ラルは面白そうに言う時
「はぁーい!僕、洋介君の記憶が見てみたいな~!」
クルピンスキーが手を挙げて言った。
「お、いいなそれ!」
「おい、ちょっと待って!何で俺なんだ!?」
「だって、洋介君って向こうの世界の話、全然してくれないし」
「確かに、少し興味がありますね」
クルピンスキーの発言に直枝やサーシャがそういう。
「わかりました…あの…わたしもお父さんの戦時のことが知りたい。良いですか?」
「…はぁ……まぁ、いいよ。いずれにせよ、みんなに話さねばならんことだ。」
洋介が亜弥の手に触れた時、辺り一面景色が変わった。
そこは日本国内、北海道の小樽から移動して南方の九州、鹿児島の市街地。
「洋介さん、ここは?」
「ここは、…九州の鹿児島だ……」
「鹿児島っ!?わたしの佐世保に近い!」
1945年4年中旬、沖縄戦の真っ只中の鹿屋基地所属時代ー
桜井洋介が少尉の時代、敏腕の戦闘機パイロット、下士官の沖田進次郎一等飛行兵曹を付き添いながら、側車付きバイクで知人の実家を訪問して基地に帰投していた。
「やっと虎雄さんの荷物を送り届けてよかったですね、桜井さん」
「そうだな…内地に帰国して、それまでの間に戦場に従事して、今に至るまで生きているのが奇跡だ…」
「おれたちは厚木隊長の命令があってのことです!」
「…進次郎…あぁ…」
「助けてくれぇ~!!」
「「 !? 」」
バイクの走行中、青少年の悲鳴が聞こえた。
「なんだっ!あの声は!?」
「行くぞ進次郎!」
「はい!!」
洋介と進次郎は側車ごと路地に突入、悲鳴が上がったところに向かった。
「くっひっひっひっ!」
「た、助けて~!」
キキーッ 「やめろ!なにやっとる!?」
洋介が見た光景は、海軍第二種軍服を着用した士官の少尉が短剣を抜き、民間の青少年を襲っていた。
「貴様、なにしておるか!?」
「…助けて下さい…この人が僕を…」
「ヒック…護衛戦闘機隊のパイロットか~…おれが短剣で…志願兵の手足を切り刻むところだ~邪魔するな!」
少尉が酒で酔いしれ、短剣で目の前の志願兵を切り刻もうとしていた。
「やめろ!そんなことやったら…軍法会議だ!」
「黙れぇ!護衛戦闘機パイロットになにがわかるのか!おれが貴様を切り刻んでやる~!」
士官が標的を志願兵から洋介に変更、短剣を向けて襲い掛かった。
「桜井さん!」
「この野郎~!」
「くっ!」
洋介は素早く軍刀鷹狼を鞘から抜き、短剣を弾き跳ばした。
「なっ~!?」
「大人しくしろ!!」
「…ぐ…はっ……」
洋介は酔いしれた士官を、鷹狼の峰で腹部を打ち、気絶させた。
「桜井さん、大丈夫ですか!?」
「進次郎、俺よりも志願兵を!」
「はい。君、大丈夫か?」
「…はっはい…」
「熊井少尉っ!」
別の路地から士官が赴いた。
「君は?」
「はっ!海軍少尉、中山進です!」
「俺は海軍少尉、桜井洋介です」
「沖田進次郎、海軍一等飛行兵曹です!この志願兵が怪我をしています。傷の手当てを!」
「…うぅ…かすり傷です…」
「近くに知り合いの旅館がある。そこで手当てをしよう」
「す、…すみません…」
「桜井少尉、お手数おかけしますが、こいつもお願いします」
「わかりました。俺がこの士官に暴行した責任があります。ですが先に志願兵を側車で」
「わかりました!」
洋介は進次郎と共に志願兵の中岡浩二を側車に乗せ、中山少尉が指定する旅館へ運んだ。
その次に、中山と熊井を旅館に運び、案内された部屋で、中岡を手当てしながらひと休みした。
洋介が気絶させた彼の名前は熊井大二郎。学徒出陣の少尉だが、何事もなかったかの様に居間で眠っていた。
「中山、酒はまだか?」
「あぁ、熊井!この旅館に迷惑を掛けるな!」
熊井は起き上がり、襖を開けて廊下で叫んだ。
「やいやい女将〜!はやく酒を持ってこんかぁ~っ!」
「(ふん、酔っ払いのキチガイめ)」
洋介たちは内心で、嫌味を感じた。
「やい、女将〜!!貴様ら酒を持ってこんと罰が当たるぞ!!このわしは特攻隊員!まもなく死んでいく軍神さまだぞ!」
「「 特攻隊だって!? 」」
「そうです。おれとあの熊井は5日後には爆弾を抱えて、沖縄の敵艦に突っ込んで死ぬんです…」
「5日後に……」
洋介と進次郎は彼らにゾッとした。
フィリピンの特攻隊の出撃以来、日本に帰投しても硫黄島の戦いに続き、この鹿児島の鹿屋まで特攻隊の最前線基地に指定された。
「お待たせしました!このところ酒が手に入らなくて…特攻で死んでいく中山さんたちのために必死に探してきたんですよ…」
「うるさい、早く持ってこい!」
「すまん、女将」
酒を盆に載せた旅館の女将が入室しても、熊井の態度は変わらず徳利ごと酒をガバ飲み、中山が代わりに謝罪した。
「ふーっ、畜生!5日後には好きな酒も飲めなくなるんだ……やいっヒヨコ、そこの戦闘機パイロットも飲め!」
「……わかった、例え特攻隊員でも生死を共にする戦友だ。進次郎」
「はい、盃を頂きます」
洋介と進次郎は熊井の誘いを受け、志願兵の浩二は遠慮した。
「ぼ、僕は飲めません…」
「きさま、軍神のおれの酒が飲めんのかっ」
「飲んでやれ、責めてみんなと酒を飲み交わして死ぬことを忘れたいんだ」
「(いやだ、あんな奴の酒なんか…)」
「お前も今におれと熊井の様になる時がくるんだ、戦争が続いている限りな」
「「「 …………………………… 」」」
中山の言葉を聞いて、洋介たちは盃を持った手が止まった。
「ヒヨコっ、戦闘機パイロット!きさまらは大馬鹿だ!!」
「いらんお世話だ…」
洋介と進次郎は言葉に出来ず、浩二が内心感じた。
「だいたい人間は老人から死んでいくのが当たり前だ。そ、それがおれたち若い者が先に死んでいく……なんで戦争を起こして命令ばかりしているジジイが生き残るんだ、間違っとる!お、おれは死にたくない!まだまだやることはいっぱい残っているんだ……」
「熊井、もうやめろ…」
「畜生!戦争したけりゃ、戦争を始めたやつらだけが無人島でやりやがれ!」
そう盃を投げて怒鳴り散らす。彼らの内容は大学の実験室で残してきた研究をやり遂げることを悔いていた。
1943年10月2日、彼ら大学生は学徒出陣で戦場に駆り出される命令が下された。
10月21日、東京近郊の77校が神宮外苑競技場に集まり壮行会が開かれた。こうして大学生は戦場へ戦場へと追われていった。
熊井と中山は飛行機乗りを志願、海軍霞ヶ浦航空隊基地で厳しい訓練に耐え、飛行兵になった。
45年1月、鹿屋基地ー
「かしら~中!」
熊井たちパイロットが司令に敬礼。
「これより、神風特別攻撃隊の志願を募る。戦局はますます厳しくなっておる。必殺の爆弾を抱いて敵艦にぶち当たり、戦局を逆転してくれ。志願兵は一歩前へ出ろっ!」
特攻隊員に志願するパイロットは一歩前に出た。だが、熊井は前に出ず、司令と志願するパイロットに睨まれた。
「この隊には女の様に腐った臆病者がいるのう。国のために、命を捨てられないとは情けない」
彼、熊井大二郎は死ねない理由があった。身寄りのない年取った母親の面倒を誰がみるのか、そして、結婚する日を待っている夏子さん。
彼は結婚して、孫を抱くのを楽しみに生きている母親のために死にたくなかった。
「志願だが、無理には進めんが日本男児として情けないのう。みんな自分を捨てて国を守るために進んで志願したのに」
「熊井少尉、志願するであります!」
みんなに睨まれ、司令の言葉に惑わされ、一歩前に出て志した。
その夜、士官室で家族写真を観ながら涙を流し、酒を浴びる様に飲んだ。
「(おふくろ、夏ちゃん。許してくれ…幾ら生きたくてもまわりが死ぬようにするんだ…)おふくろ~許してくれ~…夏ちゃん、許してくれ~~」
3月26日、沖縄の慶良間諸島。
4月1日、沖縄本島にアメリカ軍が上陸を開始。
沖縄周辺のアメリカ艦隊を撃滅するために、特攻隊の出撃命令が下された。
特攻隊は戦う機銃やいらない装備を外され、生きてかえれることはない。
燃料は片道分、胴体には重い爆弾を括り着けてあった。
「武運を祈るぞ」
「はっはい!(別れの盃だ、…おれも今日で最後か…)」
熊井は上官から酒を盃に注がれ、喉に流し飲み干した。
「剣神隊、行ってまいります!」
「たのむぞ!」
「出撃!」
「(おふくろ~夏ちゃん、さようなら…許してくれ~)」
「発進!」
爆装の零戦に搭乗。轟音を唸り、滑走路を蹴って大空へ飛び立った。
「…………むっ、このコースはおれの家の上空を飛ぶぞ!……ああっ!」
熊井が上空から見た光景は、家の畑に母親と婚約者の姿を目の当たりにした。
「……おふくろ……夏ちゃんだ……おふくろ~夏ちゃん~」
熊井は編隊を離れ、単独で実家の上空で旋回飛行した。
「おーい、お母さーん!夏ちゃーん!」
地上で畑仕事をしていた二人は激しい爆音ゆえ、熊井の声は聞こえなかった。
「『熊井少尉、なにしとるか!?編隊にもどれ!』」
「うう…いやだ…おれは死にたくない…お母さんと夏ちゃんを残して…死にたくない…お母さーん、夏ちゃーん!!」
無線を聞いた熊井は涙を流し、操縦桿の先端を頭に付けて命を惜しんだ。
「もう、1時間も飛んでいるわお義母さん」
「なんで上空を飛び続けるのかしら…?」
「うぅ…お母さん…夏ちゃん…っ!?しまった燃料が!」
熊井機が一瞬飛行バランスを崩し、燃料計器の針が0を指していた。燃料をなくした零戦が墜落してきた。
「こっちに落ちてくる!」
「きゃああっ!」
墜落した熊井機は畑に不時着、熊井は負傷しながらも操縦席から脱した。その二人は彼を見て驚愕した。
「あぁっ!大二郎!」
「大二郎さん!」
「ううぅ…お、お母さん…お母さん……お、おれは怖い~~死ぬのが怖い~~」
熊井は母親と婚約者を抱きしめながら命を惜しみ、涙を流した。
負傷した熊井は基地に引き返され、海軍病院の病室に移された。
「熊井少尉、きさまは海軍航空隊の面汚しだ恥をしれ恥を!」
「天皇陛下の大事な愛機を無駄にして、なんとお詫びできるか!人間の代わりはいくらでもいるが、飛行機の代わりは無いんだぞ!」
「きさまと一緒に出撃した仲間はみんな突っ込んで死んだんだぞ、臆病者め!」
「傷が治ったら直ちに出撃、はやく死ね!わかったか熊井少尉!馬鹿者!」
「ううぅ…」
母親、婚約者は熊井のために非国民のレッテルを貼られ、近所から責められて泣いているそうだった。
「おれがなぜ悪い、人間として素直な気持ちでいただけなのに……」
「く…熊井さん…」
熊井の回想で洋介たちは涙を流した。洋介もフィリピン決戦前に、雪と結婚したばかりであった。フィリピンから日本に帰国した時、雪から電報の知らせで妊娠したと聞いて喜び、戦場で戦い、生きて帰ることを誓ったのであった。
「ヒヨコ、生きろよ。生きておれたちの出来なかった自由に行動のできる…好きな女と結婚して家族と楽しく過ごせるそんな世の中を創ってくれよ。人間にとって、一番幸せなんだ。」
熊井は浩二に向けて良き未来を創るように忠告した。そして、浩二は盃を手にした。
「熊井さん、お酒ください」
「飲むか?」
「熊井さんのお酒、もの凄く美味しいです」
「こいつめ」
浩二は進次郎と同様に未成年であり、飲酒。苦かったのか涙した。
「ヒヨコ、どうしても予科練に入隊したいのか。入隊するにはまだ遅くはない、手足をアダにすれば命は助かる」
「ぼくは、どうしても入隊しなければなりません。広島の親姉弟のために往かなければ…」
「馬鹿たれ、勝手にせいっ!おい、戦闘機パイロット!飲むぞ!」
熊井は浩二の前にそっぽ向き、洋介たちと酒を飲むことを再開した。
「熊井さん、中山さんのご武運を祈ります。」
浩二は部屋を出て、鹿屋基地へ向かった。洋介も酒をほどほどにして鹿屋基地に戻った。