ストライクウィッチーズ ~蒼空を舞う零の荒鷹~   作:鷹と狼

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第28話 ブレイクウィッチーズ

 

 

 

 

「管野さんはそこに正座!」

 

 

格納庫内、直枝はサーシャに正座をさせられていた。

 

 

「う~…」

 

 

「あ~あ…」

 

 

直枝は正座をさせられて膨れる。

 

その様子を、格納庫入口の扉の影からニパとひかり、そして直枝を救助して、帰還した洋介と亜弥の姿があった。

 

 

整備兵は直枝のユニットを点検し、そしてサーシャに報告した。

 

 

「インテークから入ったネウロイの破片のせいで、魔道タービンが破損したようですね」

 

 

「管野さんも中尉になったんですから、もっとユニットを大事にしてください」

 

 

 

そう、今回正座させられたのは、直枝が新型ユニットである紫電改を壊したことから始まる。

 

新ユニットを渡された5人は、慣熟訓練を行っていた。その時に、ネウロイと遭遇してしまい交戦状態に入ったのだ。

 

ネウロイは防御型であり、銃弾が通りずらかったため、洋介が軍刀の鷹狼で斬ろうにも、直枝が出しゃばり固有魔法を使いネウロイに突っ込み、そしてネウロイを貫いて消滅させた。しかしその結果、直枝はユニットを壊してしまったのだった。

 

 

サーシャが注意をするが、直枝はあまり反省した様子は無かった。

 

 

「階級なんて関係ねえ!ネウロイをぶっ倒せばそれでいいだろ!」

 

 

「はぁ…ひかりさん、亜弥ちゃん!」

 

 

「は、はい!」

 

 

「なんですか…?」

 

 

突然サーシャに言われて、ひかりと亜弥は慌てて返事をする。

 

 

「あなたたちはブレイクウィッチーズなんて言われちゃダメですよ」

 

 

「ブレイク…ウィッチーズ?」

 

 

聞きなれない単語にひかりはハテナを浮かべながら説明を聞いた。

 

 

「まず、そこのニパさん」

 

 

サーシャがニパの方を見る。

 

 

「わ、私は壊さないよ!壊れるんだ!」

 

 

ニパは必死に訴える。しかし、彼女の不運さはある意味狙っているのではないかと思えるほどである。

 

 

「それから、管野さん」

 

 

「ふん!戦果は上げてんだろ。ブレイク上等だ!」

 

 

直枝に至っては戦果が上回ってるのだから、ブレイクしたって別に構わないだろうと、堂々と反省の色は無し。

 

 

「そして、療養中のクルピンスキーさん」

 

 

流れたのか、彼女はこの時「はっくしょい!」と、くしゃみをしていたのだった。

 

そして、洋介が締めを括った。

 

 

「まぁ、そう言うわけだ。補給が来たばかりだから、ひかりと亜弥もユニットを壊さないようにな」

 

 

「は、はい!」

 

 

「うん、お父さん!」 

 

 

そう言う洋介に返事をするひかりと亜弥。

 

しかし実は彼以外知らない事実として、洋介は501にいる時に、ネウロイ化した空母赤城、ウォーロックとの戦いでユニットを1回壊して、502では観測ネウロイとの戦いにて、損傷を受けた。

 

ユニット消耗具合を知ってからは、出来る限り壊さないよう努力をしていたので、実際の所はあまり偉そうに言えないのが現実であった。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「直枝お姉ちゃん、大丈夫…?」

 

 

「すまない亜弥、イテテ…まだ痺れが収まんねぇ…」

 

 

 

その日の夜、直枝はしびれる足を引きずりながら、亜弥が彼女を支えながら廊下を歩いていた。

 

その痛みに苦痛の表情をしていた直枝であるが、ふと目の前に人影が見える。

 

 

「?」

 

 

よく見てみると、それはひかりだった。

 

 

「ひかりお姉ちゃん!」

 

 

「雁淵…こんな時間にあいつ…?」

 

 

ひかりが歩いていった方向は格納庫であった。直枝と亜弥はひかりが何故この夜中に格納庫に向かうのか気になり、付いていく。

 

そして格納庫を覗くと、ひかりは自分のユニットの前で膝を抱えてしゃがんでいた。

 

 

 

「チドリ…あれから連絡が無いんだけど、お姉ちゃん大丈夫かな…?」

 

 

 

ひかりは愛機のチドリに聞く。その言葉は、格納庫で見ていた直枝が出て答えた。

 

 

「心配すんな。孝美は簡単にくたばる奴じゃねえ」

 

 

「管野さん」

 

 

ひかりは直枝に気づき立ち上がる。そして直枝はひかりに説明した。

 

 

「孝美はハンパなくつええからな。呉の海軍学校で初めて会った時、俺の相棒はコイツしか居ねえって思ったぜ」

 

 

「管野さんの相棒…それって、私じゃダメですか!?」

 

 

 

ひかりは、自分が直枝の相棒になれるか真面目に聞く。その言葉に直枝は驚く。

 

 

「はぁ!?おめえが!?100年早えんだよ!」

 

 

「じゃあ、どうすれば相棒にしてくれます?」

 

 

直枝に言われるが、ひかりはそれでも食い下がらない。

 

 

「そんなの簡単だ」

 

 

そして直枝はそれに対して堂々と言った。誰でもわかる単純なことだ。

 

 

「強くなればいいんだよ。孝美のようにな」

 

 

その言葉を聞き、ひかりはチドリをなでながら話す。

 

 

「お姉ちゃん言ってました。ネウロイを倒して世界に平和を取り戻したら、チドリと一緒に旅をしたいって」

 

 

「孝美らしいな」

 

 

ひかりの言葉を聞き、直枝はそれから孝美っぽさを感じた。

 

 

そしてひかりは直枝に質問した。

 

 

「管野さんの戦う理由って何ですか?」

 

 

ひかりは直枝が何故戦うのか気になり質問した。それに対して、直枝は堂々と宣言した。

 

 

「決まってんだろ!どっから来たかわかんねえ変な奴らに好き勝手やられてムカつくじゃねえか!」

 

 

「フフッ、管野さんっぽいですね」

 

 

直枝の言葉に、ひかりは直枝らしいと感じた。

 

しかし、直枝はひかりを指差し、そのための決断も宣言した。

 

 

「だがな!その為には強くならなくちゃいけねえ!今よりもっともっとな!」

 

 

「ええっ!?直枝さんは今でもすごく強いじゃないですか!」

 

 

直枝がさらに高みを目指すことを聞き、ひかりは驚く。今でも十分強い彼女であるから、それよりもさらに強くなるとはこの時考えもしなかったのだ。

 

しかし、直枝にはある引け目を感じていた。

 

 

「ダメだ!洋介やクルピンスキーの方がずっと強えぇ。けど、絶対俺は奴らより強くなって、ネウロイを全滅させてやる!一秒でも早くな!」

 

 

そう、直枝は以前の模擬空戦で勝負した洋介、この間の戦闘で、単独で戦うクルピンスキーを見て、現実を突きつけられてしまった。上には上がいる、それを理解してしまった直枝は、今のままではまだだということを実感したのだ。

 

その言葉を聞き、ひかりは背筋を伸ばして手を上げ、宣誓をした。

 

 

「はい!私も一緒に頑張ります!」

 

 

「ばーか、お前の力なんて当てにしてねえよ!宛にしているのは、妹分の亜弥だ!」

 

 

 

そう言って、直枝は亜弥を贔しながら歩いて行ってしまった。ひかりはそんな直枝の方を見て、

 

 

「いーっだ!」

 

 

 

と、言ってやるのだった。

 

 

 

 

「グリゴーリ攻略に向け。まず、ペトロザヴォーツクに向かっているネウロイを排除しろ、との軍司令部からの命令だ」

 

 

翌日、ブリーフィングルームに集められたウィッチ達は、ラルから命令を下された。

 

 

「ペトロザヴォーツクって、この前…」

 

 

「せっかく取り戻したのに…」

 

 

ひかりと二パはこの間開通させた補給線が、再び脅かされていることを知り衝撃を受ける。

 

 

「ということは、このネウロイを倒さない限り…」

 

 

「また補給が止まっちゃう…」

 

 

「そんな!クルピンスキーさんが怪我までして守ったのに!」 

 

 

定子とジョゼの言葉に、ひかりはこらえきれずに声を出す。

 

 

「要は倒せばいいんだ。そうだろ?ラル隊長」

 

 

「ああ、その通りだ」

 

 

しかし、直枝は堂々とラルに聞く。それに対して、ラルも無論だと言わんばかりに簡潔に言う。

 

そして洋介達は出撃する。その中、零式54型ユニットを履いた亜弥の姿があった。彼女は直接実戦に出さず、遠距離からの見物のみの任務だった。

 

そんな中、ニパは直枝の雰囲気の違いに気づく。

 

 

「今日の管野、少しピリピリしてない?」

 

 

「一秒でも早く、ネウロイを倒したいんですよ!」

 

 

「何で?」 

 

 

ひかりは昨晩のことを聞いていたため、すぐさまその答えを言うが、二パは何故そうなのか知らないためひかりに聞く。 

 

 

「(実戦で場数を踏むんだ。倒して倒して、強くなってやるぜ!)」

 

 

直枝は今、自分のパワーアップの為に闘志を燃やしていた。そんな直枝に気づき、サーシャは忠告をする。

 

 

「管野さん。新型のユニットにも慣れたからって、あまり無茶しちゃだめよ」

 

 

「ああ、わーってるって」

 

 

サーシャの忠告を受ける直枝ではあるが、直枝の内面にはまだメラメラと燃える闘志があった。

 

 

「…………」

 

 

「どうしたの、お父さん…?」

 

 

「いや、管野の闘志だが……、初陣時代を思いだす……」

 

 

「ねぇ、お父さん…教えてね…初めての戦い…」

 

 

「いずれは話…ん…?」

 

 

「ネウロイ確認!まだ動きはありません」

 

 

突然、定子の遠距離視が、飛行をしているネウロイの姿を捉えた。そしてその言葉に、誰よりも反応したのは直枝だった。

 

 

「管野一番!出る!」

 

 

そう言って、直枝は先陣に立ちネウロイに向けて飛行する。それに続くように、他のウィッチ達も出撃していく。

 

その行動に気づいたのか、ネウロイは回頭をし、ウィッチ達の方向を向く。

 

 

「みなさん!距離を取って!」

 

 

「先手必勝!このまま突っ込む!」

 

 

サーシャはその行動に警戒をし、全員に散開を命令する。しかし、直枝はその命令よりも先にネウロイに突撃を刊行する。

 

しかし、ここでネウロイは今までの沈黙から一変、こんどは直枝たちに攻撃をし始める。その攻撃は今まで戦ってきたネウロイとは桁違いであり、全員がシールドを張らざるを得なくなる。

 

 

「ぐっ…」

 

 

「う…きゃあっ!」

 

 

「ひかり!」

 

 

皆それぞれシールドで守る中、ひかりはそのエネルギーを抑えきれずに弾き飛ばされる。

 

直枝はそんなひかりにまたかという。

 

 

「ったく…何やってんだあいつは!」

 

 

「蜂の巣をつついたみたい!」

 

 

「これじゃあ攻撃する暇が無いよ!」

 

 

定子とジョゼは、この攻撃の嵐に防衛で手いっぱいになる。他の皆も、攻撃に回れずにいた。

 

そんな中、ロスマンはネウロイの行動パターンを見て、あることに気づいた。

 

 

「この攻撃パターン…もしかしたら!」

 

 

そう言って、ロスマンはネウロイの攻撃を避けながら急上昇をする。そして、手に持つフリーガーハマーで狙いを定め、攻撃をする。フリーガーハマーのロケット弾は、そのまま飛翔していき、ネウロイの後部に直撃した。それと同時に、ネウロイの攻撃は止まった。

 

 

「やっぱり!コアだわ!」

 

 

「なるほど、あのネウロイはコアを守る形で攻撃をしていたのか!」

 

 

「ロスマン先生、さすが!」 

 

 

誰よりも先に気づいたロスマンに、全員が流石と言う。

 

 

「管野さん!」

 

 

「おう!任せろ!」

 

 

そして、直枝とサーシャが前衛に立ち、ネウロイに接近していく。ネウロイはそれでも攻撃の手を緩めず、ウィッチ達に強烈な弾幕を放ってくる。

 

 

「なんて弾幕なの…っ!?」

 

 

ロスマンはネウロイの攻撃にそう零すが、その時に彼女はある物を見てしまった。

 

彼女が気付いた先には、洋介が居た。ネウロイに向けて飛行している洋介であるが、その飛行はいつもよりキレがあり。攻撃を回避しているには、固有魔法の波導で次々と回避した。

 

 

「凄い…これが、お父さんの戦い方…」

 

 

洋介の戦い方を見物する亜弥は恐れながら唾液を飲んだ。

 

 

だが、その空域で戦っていた洋介は手こずっていた。

 

 

「(くそっ!なんて弾幕だ…まるで…マリアナ海戦のVT信管だ!!)」

 

 

ロスマンは頭の中で一つの推測を立てた。

 

そしてサーシャと直枝はネウロイに向けて接近していく。しかし、弾幕の濃さに自由に接近ができない。

 

 

「管野さん!一旦距離を取って!」

 

 

「問題ねえ!このままいける!」

 

 

「管野さん!」

 

 

サーシャが命令をするが、直枝はそれを振り切ってネウロイに接近していこうとする。サーシャがその行動を止めようとするが、それでも直枝は止まらなかった。

 

 

「(クルピンスキーと洋介は大型ネウロイを一人で倒したんだ。俺だって…!)」

 

 

そして接近していく直枝であるが、突如ネウロイは攻撃パターンを変更し、先ほどまで弾幕のように撃っていたネウロイであるが、突如その攻撃を収束させる。そして、収束したネウロイの攻撃は、まるで巨大なトンネルのように管野に向かっていった。

 

 

「!?」

 

 

直枝はその攻撃に急いでシールドを張る。しかし、そのエネルギーは今までの比ではなく、直枝は後ろにノックバックされる。

 

その隙を、ネウロイは逃さなかった。ネウロイは先ほどの収束攻撃をもう一発放った。

 

 

「管野さん!」

 

 

「!!」

 

 

サーシャが直枝を呼ぶが、直枝はその攻撃に対処できない。その時だった。

 

 

なんとサーシャが直枝に突撃をしていき、サーシャを突き飛ばした。弾き飛ばされた直枝はネウロイの攻撃の射線から抜ける。しかし、そこにはサーシャが取り残されてしまった。

 

 

「間に…合え…!!」 

 

 

その時だった。サーシャの目の前に、なんと洋介が飛んできた。

 

そして洋介はサーシャの盾になる形で、ネウロイの攻撃の前に立ち、シールドを張る。

 

しかし、ネウロイの攻撃は生半可なものでは無かった。

 

即席で張ったシールドは強大な攻撃を受けきれず、洋介は後ろに飛ばされてしまう。そしてそのままサーシャにぶつかってしまうと、ウィザードのシールドをネウロイの攻撃が僅かに超えてしまう。そして超えた攻撃でサーシャのユニットの破片が洋介の両目の目元に付着した。

 

 

「ああああ!!」

 

 

「きゃあああ!!」

 

 

そして、二人はバランスを崩して墜落していく。

 

 

「サーシャ!」

 

 

「洋介さん!」

 

 

「お父さん!!」

 

 

墜落していく洋介とサーシャを、直枝とひかりが追いかけていく。そして、直枝はサーシャを、ひかりと亜弥は洋介を空中で掴むことに成功した。

 

 

「サーシャ!おい!サーシャ!!」

 

 

「うっ…」

 

 

直枝は懸命にサーシャを呼ぶ。サーシャは頭から血を流しているが、痛みを感じて僅かに呻き声を出す。

 

 

しかし、洋介よりサーシャの方が危険だった。

 

 

「洋介さん!!」

 

 

「お父さん!!…しっかりして、お父さん!!」

 

 

「大丈夫だ…ぐ…痛てぇ~…目をやられた…」

 

 

そしてブレイブウィッチーズは、ウィッチ1、ウィザード1名の負傷を出し、作戦中断。帰還したのだった。

 

ネウロイの戦闘による負傷を受け、洋介とサーシャは治療を受けていた。

 

治療には治癒魔法を持つジョゼが加わり、両目の怪我の具合が酷い洋介が拒否し、サーシャから治療を受けていた。

 

治癒魔法をサーシャにするジョゼ、その横には定子が付き添いでジョゼの汗を拭っていた。

 

そしてしばらくの時間治癒魔法を続けていくと、計器のバイタルが安定していく。

 

 

「心拍が安定した。こちらはしばらく大丈夫だ」

 

 

「はぁ…」

 

 

医師がそう言うと、ジョゼは治癒を止める。

 

その後、洋介も治癒魔法を掛けられた。元々の魔力の高さから、その目の回復に繋ぐことができた。

 

そして彼女は洋介だけでなく、まだ負傷していたサーシャにも治癒を掛けていかなければならない。ジョゼはすぐさまサーシャの治癒を開始する。しかし、サーシャより軽傷であった分、その時間は先ほどよりは短い時間で彼女のバイタルは安定した。

 

 

「こちらも心拍が安定した。もう大丈夫だ」

 

 

「ふぅー…」

 

 

医師の言葉に、ジョゼは治癒を終えて一息を吐く。

 

いつも治癒を加えている時は一人だけのことが多いのに対し、今回は二人、それも二人共がかなりの怪我を負っていたため、顔はいつもより赤く火照っている。

 

 

「良かったね、ジョゼ」

 

 

「うん」

 

 

「洋介さん、よかったです。」 

 

 

「あぁ、定子、ジョゼ。ありがとう!」

 

 

そんなジョゼに定子は言葉を伝え、ジョゼもそれに返事をしたのだった。

 

定子は両目の見えない洋介を看病して、手を握るのだった。

 

 

その後、亜弥は洋介の病室に赴いた。

 

 

「…お父さん…」

 

 

「おぅ、亜弥か!この通り、目がやられても元気だぜ!」

 

 

その日の夜、ウィッチ達は食事を取っていた。しかし、その席には病院に居たクルピンスキーだけでなく、本日負傷した洋介とサーシャの席も空いていた。

 

 

そんな中、病室から戻った亜弥、ひかりは直枝の様子に気づいた。

 

 

「管野さん?」

 

 

「直枝お姉ちゃん…?」 

 

 

亜弥ひかりの言葉に全員が直枝を見ると、彼女は下を向いたまま食事にあまり手を付けていなかった。

 

直枝は、今日の二人の負傷のことについて大きな責任を感じていた。

 

 

「俺のせいだ…俺が無茶したばっかりに、あの二人が…」

 

 

「管野の責任じゃないって」

 

 

そしてラルは食堂の席に座るものに命令を下した。

 

「明日、あのネウロイに再攻撃を掛ける。それまで各自、十分体を休めておけ」

 

 

そして、食事を終えた直枝は、医務室に向かった。部屋に入ると、手前から2番目のベッドにサーシャ。

 

彼女は頭に包帯を巻いていており、洋介は両目に包帯を付けていた。見た目で重症なのは洋介だった。

 

そして直枝は椅子を持ってきて、サーシャの眠るベッドの横に座った。その時、ひかりが医務室に入ってきた。

 

 

「管野さん」

 

 

「雁淵か…何だ?」

 

 

「サーシャさんと洋介さんのことが気になって…」

 

 

「洋介なら、下原と亜弥が看病している」

 

 

ひかりが振り向くベッドでは、洋介が食事を摂るにも、定子と亜弥の手助けでスプーンを口に入れていた。

 

 

「おいおい、定子…僕は赤ん坊じゃ…ムグ…」

 

 

「ふふふ〜ダメですよ洋介さん。その怪我で私と亜弥ちゃんがいなければ、食事もまともに出来ないじゃないですか」

 

 

「そうそう、いつも戦ってくれているから、暫くはわたしと定子母さんに頼ってよ!」

 

 

「あ…あぁ…///」

 

 

そう言って洋介は病室にいるみんなの前で赤面、ひかりはベッドに眠るサーシャを見る。その時だった。

 

 

「…うん…?」

 

 

先ほどまでベッドで寝ていたサーシャが瞼を開けたのだ。そしてサーシャは自分の傍にいる二人に気づく。

 

 

「管野さん…ひかりさん…」

 

 

「サーシャ!」

 

 

「サーシャさん!」

 

 

「サーシャお姉ちゃん!」

 

 

直枝とひかり、定子と亜弥はそんなサーシャに驚き声を上げる。そして、サーシャはどこか安心したように話し始めた。

 

 

「管野さん…あなたは無事だったのね」

 

 

「ああ、おかげでこの通りピンピンだぜ」

 

 

「よかった…」

 

 

「でも、桜井さんが…」

 

 

「サーシャさん、俺はこの通り無事だ」

 

 

サーシャは両目を包帯で巻かれ、負傷した洋介の姿を目の当たりにした。

 

すると、彼女は固有魔法を発動、映像記憶でネウロイの戦闘に、サーシャが落とされた時に洋介が救助の際に敵のビームでサーシャのユニットが損傷、飛び散った破片で洋介の両目が負傷した。

 

「桜井さん!…うぅ…ごめんなさい…ごめんなさい!私なんかの為に両目を……」

 

サーシャを助ける為に、洋介の両目が負傷した責任で彼女は頭を下げ、謝罪した。

 

「僕は軍人として失格だが、人間としてやる事をした。…それに、目を負傷したのは二回目だ」

 

 

「「「 二回目!? 」」」

 

 

「亜弥、お前の能力を」

 

 

「あ……はい!」

 

 

洋介は少しでも戦闘の参考になる為に、亜弥を招き、右手を彼女の頭に手を伸ばした。

 

病室の景色が、かつての北方の千島列島の占守島上空、オラーシャ=ソビエトロシア軍との戦いで不慣れな敵機の戦闘で片目を負傷、そのまま魔女の世界へ迷い込んだ。

 

その光景で人間と戦ったことのない、ウィッチ達と亜弥は青ざめた。

 

 

「相変わらず…洋介が経験した戦争はおっかねぇ…サーシャ、洋介済まねえ、あの時、俺一人で突っ込んでいかなければ…」

 

 

そんな中、直枝は再び自分にその責任を感じ取ってしまい謝罪の言葉を出す。しかし、そんな言葉にサーシャと洋介は怒らなかった。

 

 

「それが管野さんらしさなのよ。だから、あまり自分を責めないで」

 

 

「管野の戦いに誰も悪いなんて言うやつはいないさ」

 

 

「サーシャ、洋介…」

 

 

二人の言葉に直枝は驚き顔を上げる。怒るだろうと思っていただけに、予想外すぎて驚いたのだ。

 

そして、サーシャは直枝に言う。

 

 

「あなたなら、きっとあのネウロイを倒せるわ。だから、頑張って」

 

 

「!…ああ、ぜってー俺がぶっ倒す!」

 

 

サーシャの励ましの言葉に、直枝は決意を新たに返事をする。

 

 

「ひかり、君も頼むぞ」

 

 

「はい」

 

 

直枝の横に居るひかりに励ましのエールを送り、ひかりは大きな返事をする。しかしそんなひかりに、直枝が言う。

 

 

「でしゃばんじゃねえぞ!」

 

 

「はい!」

 

 

「うふふ」

 

 

「ふっ…」

 

 

直枝の言葉に、ひかりは真っ直ぐと返事をする。そんな様子に、サーシャと洋介は微笑む。その中

 

 

「お父さん、わたしもあのネウロイと戦いたい!」

 

 

「「「「 え!? 」」」」

 

 

亜弥の言葉でウィッチ達は言葉を失った。

 

 

「亜弥ちゃん、危険よ!!」

 

 

「そうよ、亜弥ちゃん!ネウロイの戦いは生易しくないわ!訓練をしているあなたにはリスクが高過ぎる…痛っう…」

 

 

定子の言葉にサーシャも賛同した。だが、現状として戦力が不足しているのは事実だった。

 

そして、一人のウィザードがベッドから立ち上がった。

 

 

「亜弥、ネウロイと戦いたいのなら、僕と特訓するか…?」

 

 

「お父さん……はい!」

 

 

「無茶です、桜井さん!!」 

 

 

「そうですよ!医師の診断で数日は入院しないと……」

 

 

定子は洋介の手を繋ぎ、制止した。

 

 

「わかっている。目が回復するまで、空へ飛ばん。この時だけ、亜弥と特訓させてくれ。一刻も、この世界で平和を掴める為に」

 

 

「…洋介さん……」

 

 

両目が見えない洋介は固有魔法を発動、波導を利用して、夜中の滑走路に赴いた。

 

二人の親子は木刀を構えた。

 

 

「…お…お父さん……」

 

 

「亜弥、ロスマン先生から聞いたが、飛行法はひかりより優れているのは、凄いことだ。だが、ネウロイを仕留めるには道具でも技術でもない。俺は君が子供とは思わん。これからネウロイと戦うウィッチとして、全力で掛かってこい!!」

 

 

「はい!!」

 

 

亜弥も固有魔法を発動する。彼女は父親の洋介に向かい、頭部に木刀を振りかざすも、寸止められ、薙ぎ倒された。

 

洋介の両目の視覚がやられ、包帯で巻かれているにも関わらず。見えているかのように、動きは俊敏だった。

 

 

「亜弥、研ぎ澄ました戦意で、俺の身体のどこかに少しでも刃を打てば、実戦に出されることを、隊長に伝えてやるぞ!」

 

 

「はい!!」

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「先ほど入った情報では、昨日のネウロイはこの地点から殆ど動いていないようです」 

 

 

翌日、ブリーフィングルームでロスマンが地図に描かれたバツ地点を指す。

 

 

「このネウロイを排除できなければ、再び補給路は立たれ、我々は飢え死にだ」 

 

 

「そんなぁ…」

 

 

「腹が減っては戦は出来ません」

 

 

ラルが続けて言った言葉にジョゼたちは困った反応をする。

 

 

「クルピンスキーさんやサーシャさん、洋介さんの為にもあのネウロイをやっつけましょう」

 

 

「当たりめぇだ!これ以上好き勝手させてたまるかよ!」

 

 

 

ひかりの言葉に同調するように直枝が言う。この補給線を確保しなければ、502は事実上の壊滅を辿っていくことになる。

 

それを回避するためには、このネウロイを撃墜する未来しかなかった。

 

 

しかし、ここで問題が2つある。

 

 

「管野、このメンバーではお前が最上位の中尉となるが…」

 

 

「うえっ!?俺が戦闘隊長かよ!?」

 

 

ラルに言われて直枝は驚く。そう、負傷している三人はそれぞれ階級が大尉と中尉であり、その不在の中で一番上の階級は中尉昇進をした直枝に回ってくるのだ。しかし、彼女はまだ中尉になりたてで現場指揮を経験しておらず、いきなり現場指揮を行えと言っている状況である。

 

だが、ラルもそんな直枝にいきなり戦闘隊長をさせるわけにはいかないため、対策を考えていた。

 

 

「いや、現場の指揮はエディータに任せる。それで構わんな?」

 

 

「ああ、わかった」

 

 

ラルの言葉に素直に従う直枝。ロスマンは階級こそ下であるが、前線戦闘経験は直枝より多い。この状況ではそのほうが最善であると直枝も理解した。

 

 

「不足の戦力を補う為に、桜井亜弥も出撃させる」

 

 

「はい!!」

 

 

顔の頬にガーゼを貼られた亜弥が返事をする。

 

そう、昨晩の訓練で父親の洋介の左頬を掠めた。

早朝、洋介は上官のラルに、亜弥の対ネウロイの出撃を渋々と許可させた。

 

無論、彼女たちは猛烈に反対したが洋介の墨付きである、愛刀の鷹狼を帯刀していた。

 

 

「隊長、俺は亜弥の出撃は絶対に反た…なっ!?」

 

 

目に止まらない速さで亜弥は抜刀、直枝の前髪一本を切り裂いた。

 

 

「お姉ちゃん、直枝お姉ちゃん…いや…管野中尉!今だけの出撃で、お父さんの仇を獲りたい!」

 

 

「亜弥…足引っ張んなよ!」

 

 

そして作戦を立て、直枝達は出撃をする。向かう先は無論、ネウロイが飛び続ける地点。

 

 

しばらく飛行をしていくと、定子の遠距離視が昨日のネウロイを捉えた。

 

 

「30km前方にネウロイ確認!まだこちらには気づいていません」

 

 

「ここで分かれましょう」

 

 

『了解!』

 

 

ロスマンの指示で、ひかりと直枝、そして二パの三人は散会していく。そう、今回の作戦は前回と違った。ネウロイの特性は前方の火力が高く、後ろのコアを守る形になっている。そのため、ロスマンとジョゼと下定子、亜弥の四人はネウロイに先に接敵し、注意をひきつける。そして注意が四人に向かったところを見計らい、残りの三人は後ろから攻撃を仕掛けるという作戦に出たのだ。

 

そして、別れた三人の中で直枝は、ひかりとニパに話す。

 

 

「ニパ!雁淵!俺達で絶対に決めるぞ!」

 

 

「はい!」

 

 

「うん!」

 

 

その決意に、ひかりとニパも返事をする。

 

そして直枝達と別れたロスマン達は、ネウロイに接近をしていく。

 

 

 

「攻撃開始!」

 

 

 

ロスマンは合図とともにフリーガーハマーを向けて攻撃を開始する。

 

定子とジョゼが手に持つ機関銃を向けて引き金を引く。その攻撃に気づき、ネウロイは体の正面を向ける。

そして攻撃を開始する。

そして亜弥も、初めての実戦で機銃を構え、発砲した。

 

 

「直枝お姉ちゃん達…頼むわよ」

 

 

亜弥は攻撃を懸命に耐えながら、今回の作戦の要である管野達に祈るのだった。

 

その頃直枝達は、ネウロイの後方に移動していた。その時、ネウロイが赤い光線を出している姿に気づく。

 

 

 

「始まった!」

 

 

「行くぞ!」

 

 

「はい!」

 

 

直枝の声と共に、全員がネウロイに向けて接近をしていく。そして接近していく中で、ひかりは気づく。

 

 

「ホントだ。全然撃ってこない」

 

 

そう、ネウロイはひかりたちが接近しても攻撃を全然してこない。そのおかげで、三人はすんなりとネウロイの後方に接近することができた。

 

 

 

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