ストライクウィッチーズ ~蒼空を舞う零の荒鷹~   作:鷹と狼

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漫画家、松本零士先生のご冥福をお祈りします


第30話 再会の無情

 

 

「そっちに向かったぞ!!」

 

 

両目が回復した洋介は戦場に復帰。

 

 

ネウロイ出現の報を受けたブレイブウィッチーズは、出現地点に出向いていた。

 

 

「剣一閃!」

 

その掛け声と共に、直枝はネウロイの右翼付け根に拳を振り下ろす。

 

その攻撃により、ネウロイは表面の装甲と共に内部のコアが破壊され、その姿を光の破片に変えたのだった。

 

 

ひかりは真っ先にネウロイ撃墜をした直枝の元へ行く。

 

 

「やりましたね!管野さん!」

 

 

「ああ!お前もよくやったぜ」

 

 

「はい!相棒ですから!」

 

 

ひかりの言葉に、直枝は一瞬ドキッとした後胸元で腕を組み、「100年早い」と言う。

 

 

「えっ!?この前そう言ってくれたじゃないですか」

 

 

「言ってねえよ」

 

 

「言ってましたー!」

 

 

ひかりは言ったと主張するが、管野はそれを頑なに否定する。

 

そんな様子を、他のウィッチたちは皆で見ていたのだった。 

 

 

「アハハ、すっかりいいコンビだ」

 

 

「ちょっと妬けちゃうな」

 

 

ニパはその光景を見て少し微笑みながら言い、クルピンスキーは少し羨ましそうな感じで感想を零す。

 

他のウィッチたちも微笑みながら見る中、突然クゥという小気味良い音がする。

 

音源はジョゼだった。ジョゼはお腹を押さえながら定子に話しかける。 

 

 

「定ちゃん、お腹空いた~」

 

 

「じゃあ、帰ったらワッフル作ろっか」

 

 

ジョゼの言葉に、定子はおいしい提案を出す。それを聞いて、ジョゼは笑顔になる。

 

 

そして最後に、サーシャが締めくくる。 

 

 

「それでは帰投します。ニパさんが落ちる前に」

 

 

そう言って、サーシャはニパの方向をチラリと見る。ニパはニパで突然自分のことを言うと思わず焦る。

 

 

「うぇえ?最近減ったよね?」

 

 

「減ってません」

 

 

「あ、あれぇ?変だな…」

 

 

サーシャにピシャリと言われてニパは慌てて自分のユニットを見る。

 

 

洋介も、二パのユニットの方を見て言った。

 

 

「いや、今日は落ちないぞ」

 

 

「えっ?」

 

 

突然の言葉に、サーシャは思わずそんな声を漏らす。洋介は、ニパのユニットをじっと見た後、もう一度言った。

 

 

「うん。変な音とかしないし、多分落ちないな」

 

 

「ほ、本当ですか洋介さん?」

 

 

「あぁ、ユニットの調子が良い、雑音は感じられん。」

 

 

基本的に不確定なことを洋介はあまり言わないため、サーシャは基本的に彼の言動について信じることが多い。

 

 

そんな様子に全員が笑っている中、ひかりは遠方から聞こえるエンジン音に気づき、音のする方向を向いた。

 

 

「あれ?何でしょう?」

 

 

ひかりの言葉につられて、全員がウィッチの方向に向けて飛んでくる飛行機を見る。

 

機種はJu52、カールスラントの輸送機であった。

 

 

「あの機体は…」

 

 

ロスマンはその機体を見て、中に乗っている人物にどこか心当たりがある様子である。

 

そしてJu52はそのまま、502基地の方向へ飛来する。

 

 

「とりあえず、基地に帰投しましょう」

 

 

『了解』

 

 

サーシャの言葉で、全員が基地に向けて飛行を開始する。

 

 

「マンシュタイン元帥に敬礼」

 

 

ラルの言葉に、全員が各国それぞれの敬礼をする。洋介と亜弥も、自分の母国軍の敬礼をする。

 

502基地に帰投したウィッチーズは、すぐさまブリーフィングルームに集合させられた。

 

そして全員が部屋に入ると、なんとそこにはラルの他にもう一人いた。

 

カールスラント陸軍エアハルト・フォン・マンシュタイン元帥。そしてマンシュタインは全員の敬礼を確認した後、すぐさま首を小さく振り、洋介を目にした。

 

 

「君は、桜井洋介君か。世界初のウィザードで先の501でのブリタニア防衛とガリア奪還、502に転属しての活躍は耳にしているよ。」

 

 

「はっ、大変恐縮です」

 

 

「うむ、座ってくれたまえ」

 

 

その言葉に、ウィッチたち全員が席に着く。そしてマンシュタインは、ラルの方を向いた。

 

 

「突然すまないな、ラル少佐」

 

 

「いえ。それで、今日はどういった用向きで?」

 

 

ラルが聞くと、マンシュタインは正面を向いて説明を始めた。

 

 

「一部の者には内々に伝えていたが…ペテルブルグ軍集団によるグリゴーリ攻略のフレイアー作戦について、だ」

 

 

「ついに…」

 

 

マンシュタインの説明を聞き、ロスマンはついに覚悟をした様子で反応した。

 

 

そんな中、洋介と亜弥、ひかりはフレイアーが何のことか分からず小声でニパに聞いた。

 

 

「フレイアーって何ですか?」

 

 

「こっちの神様で、豊穣の女神って言われてるんだ」

 

 

「豊穣の女神にちなんだ作戦とは…」 

 

 

そして、マンシュタインは続けて説明する。

 

 

「補給路が回復し、士気が大幅に向上したことでフレイアー作戦の発動が正式に決定した。そこで、君たち502部隊にも当作戦への参加を要請する」

 

 

「いよいよか」

 

 

直枝はマンシュタインの説明を聞き、拳をつかみながらやる気になったように言った。

 

 

しかし、ラルは気になることがありマンシュタインに質問した。

 

 

「その作戦ですが、501ストライクウィッチーズがガリアを開放した例に準ずるのでしょうか?だとすれば、リスクが大きすぎると思われますが…」 

 

 

その言葉を聞き、眉を上げた洋介。

 

それは昨日にラルの元へ届いた資料に記載された、ウォーロックのことを言っているのだと理解した。あれを投入すると、連合軍側への被害が来る可能性の方が高い。

 

 

それについてはマンシュタインも理解している様子であった。

 

 

「ウィッチは耳も早いな。安心したまえ、ネウロイのテクノロジーは我らの手に余る」

 

 

その言葉を聞き、洋介は少し安心したように息を吐く。

 

 

「では?」

 

 

「作戦そのものはシンプルだ。現在ムルマンに集結中のペテルブルグ軍の戦力でグリゴーリを叩く。そうすることにより…」

 

 

「ネウロイの生産力を壊滅させる」

 

 

「そうだ。そして無防備になったグリゴーリ内部に侵入し、本体のコアを超大型列車砲で撃ち抜く」

 

 

その説明を聞き、二パと直枝は考える。

 

 

 

「超大型列車砲って、この前船で運んでたやつかな?」

 

 

「つーか、コアをぶち抜くったって、どうやってコアの位置を見つけるつもり…」

 

 

「あっ!!」

 

 

『!!』

 

 

ニパと直枝はコア特定方法を考え、ある答えにたどり着いた。

 

そして同時に、502のウィッチたち全員も何かを理解した。ただ一人、ひかりだけは理解していない様子であった。

 

 

「なお、グリゴーリのコアを見つける魔眼持ちウィッチも、既に選定済みである」

 

 

そしてマンシュタインの言葉を聞き、真っ先に立ち上がったのは直枝とニパだった。

 

 

「ちょっと待て!まさか、ひかりにそんな危ねえ真似させるつもりかよ!?」

 

 

「駄目です!駄目駄目!」

 

 

「えっ、私?」

 

 

ひかりは分かった様子で無かったが、直枝と二パはあまりにも危険すぎる内容に抗議をした。

 

他のウィッチたちも、三人の方向を向いていた。

 

 

「ついにバレちゃったか…」

 

 

「落ち着きなさい。管野さん、ニパさん」

 

 

「けどよ先生!こんなひよっこがネウロイの巣に突っ込んで無事で済むと思ってんのかよ!?」

 

 

 

直枝は指を指しながら問う。洋介も黙ってはいたが頷いていた。ロスマンの指導があったひかりであるが、接触魔眼は元々危険なうえに、ネウロイの巣はさらに激戦区となる。そんなところに新人のひかりを突っ込ませるなど正気の沙汰ではない。

 

 

「作戦開始まであと1ヵ月あります。その間に、私がひかりさんを育て上げれば何も問題はありません」

 

 

「残念だが、作戦決行は、これより7日後だ」

 

 

ロスマンがそう説明した時だった。マンシュタインから信じられない言葉が出たのは。

 

 

「はあ!?」

 

「7日後!?」

 

7日後という言葉に、管野とニパはありえないと言った様子で目を見開く。

 

ラルはおかしいと思い質問した。

 

「どういうことでしょうか?内示によれば作戦は1ヵ月後だったはずでは?」

 

 

「グリゴーリが動き出した」

 

「なっ!?」

 

「グリゴーリが…」

 

「動き出した…!?」 

 

そしてさらに告げられた真実は、ウィッチーズ全員を動揺させた。今までネウロイの巣は停止している者ばかりであり、巣そのものが動き出した例など無かったからだ。

 

 

「再び補給路を失えば戦線は一気に瓦解する。もはや悠長に1ヵ月も待っていられない。今しかないのだよ」

 

 

それを聞き、全員が黙ってしまった。

 

 

「あ、あの…」

 

 

「ふざけんな!」

 

 

ひかりが何か言おうとした時だった。直枝は大声で怒鳴った。

 

 

「やめろ!管野」

 

 

「いいや、やめないね!隊長こそ、ひかりをみすみす死なせるようなこんな命令断っちまえよ!」

 

 

「管野さん…」

 

 

大声で抗議する直枝に同調するように、他のウィッチたちも反対する。

 

 

「私も反対!仲間を危険な目になんて合わせられないよ!」

 

 

「他に何か手は無いのですか?」

 

 

ニパ、サーシャが言う。

 

 

「子猫ちゃんを一人で行かせるわけにはいかないよね」

 

 

「どうしても、と言うのでしたら…」

 

 

「私たちも一緒に行きます」

 

 

「俺もです、ひかりの固有魔法でグリゴーリのコアの確認まで、全力を持って護衛します!」

 

 

「わたしも、ひかりお姉ちゃんを守り為に務めます!」

 

 

「お前ら…」

 

 

「みなさん…」

 

 

クルピンスキー、定子、ジョゼ、洋介、亜弥も言う。ウィッチたち全員の総意に、直枝とひかりは思わず驚く。

 

 

そして、ひかりは立ち上がった。

 

 

「私やります!やって見せます!」

 

 

「バカかてめえ!何言って…」

 

 

「君たちは何か勘違いしてるようだが。この作戦、雁淵軍曹を使うつもりなどない」

 

 

『えっ!?』

 

 

ひかりの言葉に直枝は止めようとするが、ここでマンシュタインは新たに告げる。すると、ウィッチーズ全員がまるで予測していなかった言葉に驚く。

 

そしてマンシュタインは手元の時計を見る。

 

 

「そろそろか…」

 

 

そう言って、マンシュタインはブリーフィングルームの窓から外を見た。すると、窓の外から飛行音がしてくる。それは徐々に基地の方へと近づいてきていた。

 

 

「来たか」

 

 

「来たって…」

 

 

「ムルマンからここまで時間通り。流石と言うべきだな」

 

 

マンシュタインは満足したようにいった。そして洋介達は席を立ち、窓辺に立って外を見た。すると突然、謎の飛行物体が窓の目の前を通り過ぎて行くでは無いか。

 

 

「何?今の…」

 

 

「ウィッチ…だよね?」

 

 

ウィッチの姿に全員がその人物を探る。しかし、身近でその飛行を見ていた人たちからは、その飛行は見覚えのある物であった。

 

 

「あれは…!」

 

 

直枝は気づいたように反応した。その時だった。

 

ひかりは嬉しそうに顔を笑顔にしながら走り出した。

 

 

「ひかり?」

 

 

「ひかりさん?」

 

 

皆が何事かと思いひかりの名を呼ぶが、ひかりはそれを聞かずに無我夢中でブリーフィングルームを出て行く。

 

そして部屋にいたマンシュタインは、ラルに向かって言った。

 

 

「これで502も正しい形となるだろう。これまで現場の判断でよく頑張ってくれたな、ラル少佐」

 

 

「…恐縮です」

 

 

「では、失礼する」

 

 

そう言って、マンシュタインも部屋を出ていった。

 

そして部屋に残ったラルの横に、ロスマンと洋介が来る。

 

 

「とんだタヌキじじいだ」

 

 

「隊長の独断でひかりさんを502に引き留めた件は、お咎め無しのようですね」

 

 

「代わりに、少しばかり面倒なことになりそうだがな」

 

 

そして洋介がラルに質問した。

 

 

「ひかりの反応と言い、今来たのって…」

 

 

「ああ、あいつだ」

 

 

ラルの言葉に、洋介も納得したように頷いた。

 

 

そして基地の外、滑走路では今まさに、ひかりが空を見ながら走っていた。

 

 

「間違いない!あれは…あれは…お姉ちゃん!」

 

 

ひかりは喜びながら走る。自分の憧れであり、いつか共に飛びたいと願っていた姉、雁渕孝美が負傷から帰ってきたからだ。

 

 

そしてひかりは、姉の着陸した場所へ到着する。

 

 

「お姉ちゃん」

 

 

ひかりは自分の姉、孝美を呼ぶ。孝美は振り返り、ひかりを見た。

 

 

しかしその表情は、まるでひかりをこれから叱ると言った表情をしていた。そして、孝美はキツイ声で話し始めた。

 

 

「ひかり」

 

 

「お、お姉ちゃん…?」

 

 

「どうしてあなたがここに居るの?」

 

 

「えっ?」

 

 

ひかりはまるで驚いた様子で孝美を見る。

 

 

「あなたの本来の任地はカウハバ基地だったはずよ。それが何故ここに居るの?」

 

 

「そ、それは…」

 

 

ひかりは答えることができなかった。ひかりは負傷した孝美の代わりに502に来たことを、自分の口から言う事が出来なかった。

 

 

そして、孝美はさらに言った。

 

 

「ひかり。ここはあなたが居ていい場所ではないわ」

 

 

「お姉ちゃん…で、でも!私、扶桑にいた時より強くなったんだよ!チドリだってちゃんと乗れるようになったんだよ!」

 

 

「誰もそんなこと聞いてないわ」

 

 

そして孝美は、ひかりの横を通り過ぎて行く。

 

 

「すぐに荷物をまとめてカウハバに行きなさい。これは正式な辞令よ」

 

 

「そんな!」 

 

 

ひかりは振り返るが、孝美はそんなひかりを振り返ることなく、そのまま502基地へと行ってしまった。

 

 

「お姉ちゃん…」

 

 

残されたひかりは、ただ呆然と突っ立っていることしかできなかった。

 

 

 

 

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