ストライクウィッチーズ ~蒼空を舞う零の荒鷹~   作:鷹と狼

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第31話 妹対姉 魔眼対決

 

 

 

格納庫 ー

 

 

「孝美!やっと来たな。待たせやがって、コノヤロウ」

                

 

孝美が格納庫にユニットを止めると、502のウィッチたちは格納庫にやってきた。

 

直枝は孝美にそう言うと、孝美は直枝の様子を見て微笑んだ。

 

 

「相変わらずのようね、管野さん」

 

 

「ふん、そうそう変わるかよ。けど、お前の妹はなかなかやるようになったと思うぜ」

 

 

直枝の口からひかりのことを言われ、孝美は下を向いて黙ってしまう。

 

「…孝美?」

 

 

「いえ、なんでもないわ…」

 

 

直枝が気にするが、孝美はなんでもないと振り切って、ラルに話しかけた。 

 

 

「本日をもって、502統合戦闘航空団に着任しました、雁淵孝美中尉です。リバウ以来ですね、ラル隊長」

 

 

「ああ。久しぶりだな、孝美」

 

 

「本当に復帰できたんだ…」

 

 

「良かったね、ジョゼ」

 

 

孝美に言われて、ラルは返事をする。ジョゼは自分の治癒魔法で回復できなかった孝美が復帰をして502に来てくれたことに涙を浮かべ、その様子に定子はよかったと言った様子でジョゼに言った。

 

 

「……」

 

 

孝美の悲しげな顔を見た洋介は見逃さなかった。それに気付いた亜弥は口を聞いた。

 

 

「…………」

 

 

「…お父さん…どうしたの?」

 

 

「いや、僕の志帆姉さんの事を…あんな顔を…思い出してな…」

 

 

「姉さん…?もしかして、志帆伯母さんのこと…?」

 

 

「あの、少佐…この人達は…?」

 

 

孝美は洋介と亜弥に気付き、首を傾げ、その場にいたラルが紹介した。

 

 

「…覚えていないのか…まぁ無理もない。北海で航行する扶桑の第3艦隊を救った。501に所属した世界初の男性ウィッチ…いや、ウィザードの桜井洋介中尉と彼の娘、世界最年少のウィッチ、桜井亜弥だ」

 

 

「雁渕中尉。この場でお初となりますが、私は元501部隊隊員であり、502部隊隊員の海軍中尉、桜井洋介です。」

 

 

「わたしは桜井亜弥です」

 

 

「あなたが桜井中尉と亜弥さんですか。あの当時の艦隊への救援、ありがとうございました」

 

 

「いえ、私だけではありません。あなたの妹さん、ひかり軍曹の協力がいなければ、艦隊は海の底です」

 

 

「そして、わたしはひかりお姉ちゃんの妹分で…あれ…?」

 

 

洋介と亜弥の言葉で、孝美は深刻そうな顔をしていた。

 

 

「あの…雁渕中尉…?」

 

 

「あっいえ、なんでもありません…中尉は…それに、私は孝美の名前で結構です」

 

 

「そうですか…俺の名前は自由にどうぞ孝美さん」

 

 

「はいっ、えっと…洋介さん」

 

 

洋介が孝美と話していると、背後から定子が睨み妬いていた。

 

亜弥はこっそり脱け出し、直枝とニパと共にひかりを探しに行く。そして、格納庫の外で滑走路の先で突っ立っているひかりを見つけた。

 

 

「居た居た、ひかり~」 

 

 

ニパが声を掛けて駆け寄っていく。

 

 

「ねぇ、お姉ちゃん…?」

 

 

「どうしたのさ?こんなところで」

 

 

「待ちに待ってた孝美が復帰したってのによ 

 

 

直枝がそう問うが、ひかりは振り返らなかった。その様子に気づき、直枝は歩いてひかりの正面に立つ。

 

 

「…お姉ちゃん…」

 

 

「ひかり?あっ…」

 

 

 

そこにあったひかりの表情を見て、亜弥と直枝は気づいた。その表情は、先ほど孝美がひかりの話を聞いたときにしていたのと同じものだったからだ。

 

 

翌日、孝美はクルピンスキーと模擬空戦。結果は引き分け。

 

 

洋介は直枝と再び模擬空戦を始めた。そして、結果は洋介の勝利。

 

 

「畜生ぉ~!!…負けた~!!…洋介っ…もう一度、もう一度挑戦を受けさせろ!」

 

 

「全く、グリゴーリの討伐の前に、身体に障る。これで終了…!」

 

 

「うぅ…絶対に、ウィザードに勝ってやる!!」

 

 

滑走路 脇

 

 

「お父さん!はい、珈琲」

 

 

「ありがとう、亜弥」

 

 

洋介は基地の滑走路に着陸、亜弥から飲用しながら休憩している時、孝美が洋介の元に赴いた。

 

 

「洋介さん!」

 

 

「ん…孝美さんか…?」

 

 

「グリゴーリの攻略前ですが、ウィザードの洋介さんと模擬空戦をお願いします!」

 

 

「その必要はありません。孝美さんは素晴らしく、扶桑のエリートウィッチさんじゃないですか。ブランクの微塵がない以上、勝負の結果は決まっています」

 

 

孝美が模擬空戦の挑戦を宣告したが、洋介は断った。

 

だが、彼女はしつこく迫ってきた。

 

 

「洋介さんは敏腕のウィザードだと、クルピンスキーさんや管野さんから聞きました…是非とも…」

 

 

「…お断りします…!!」

 

 

「っ!?」

 

 

「孝美さんが、ひかりを追い出す理由を口にしたら、模擬空戦を受けて頂き構いません!!」

 

 

洋介が孝美にキツい言葉を呟き、兵舎に向かった。

 

 

その夜、孝美とひかりの故郷、佐世保の料理、皿うどんだった。

 

 

「なにこれ、美味しい~」

 

 

「皿うどんと言って、扶桑の郷土料理なんです」

 

 

「いや~綺麗で強くて料理も上手だなんて完璧だね孝美さんって…」

 

 

ジョゼとニパやみんなは皿うどんを堪能する中

 

 

「…」

 

 

「ひかり?」

 

 

「え?あ、そうですね…ごちそうさま」

 

 

ひかりはそう言って席を立って行ってしまう。

 

 

「あ…ひかり?」

 

 

ニパはそんなひかりを思う。

 

 

他のウィッチたちも、ひかりの様子がおかしいのに気づき、全員がひかりの方向を見る。ただ一人、姉の孝美を除いては。

 

 

「あの…洋…いえ、桜井中尉はどう…?」

 

 

孝美が洋介の席を見ると、食事や箸も着けず、本人の姿はなかった。

 

 

「…あの…亜弥さん…桜井さんはどこに…?」

 

 

「お父さんは、たぶん剣術の鍛錬です…」

 

 

「そう…」

 

 

 

洋介は外で鷹狼を構え、鍛練していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「何かちょっとおかしいんだよな」

 

 

その晩、サウナの中でニパが言う。サウナ内にはニパの他に、直枝、サーシャ、クルピンスキー、定子、ジョゼ、亜弥が居た。

 

ニパの言葉に、ジョゼが返事をする。

 

 

「何が?」

 

 

「ひかりのこと…どうも孝美さんを避けてるみたいなんだけど…」

 

 

「言われてみれば…仲の良い姉妹だって聞いてましたけど…」

 

 

そう、ひかりと孝美は本来仲の良い姉妹であると聞いているニパ達は、ひかりがまるで孝美を避けている様子におかしいと感じていたのだ。

 

 

「久々に会って緊張してるのかも?」

 

 

「そっかなー?それならいいんだけど…作戦も近いし」

 

 

ジョゼがそう言うが、ニパはどうも釈然としない。

 

 

そんな中、サーシャが全員にある告白をした。

 

 

「そのことですが…ひかりさんにはカウハバへの転属命令が出ているようです」

 

 

「え?」

 

 

『ええーっ!?』

 

 

突然のカミングアウトに、思わず驚くニパ達。そんな中、直枝は黙ってその話を聞いていた。

 

 

「待ってよ!どうしてひかりが居なくなっちゃうのさ!?」

 

 

「そもそも今の状況がイレギュラーであって、カウハバ基地が本来の配属先なんですよ」

 

 

そう、ひかりの本来の配属先はカウハバ基地。それをラルが黙って502基地に置いているのはおかしな話であり、この命令は当然起こりうることだったのだ。

 

 

「でも、次の作戦はすごく重要なんでしょ?二人一緒に戦うってのは駄目なの?」

 

 

「マンシュタイン元帥直々の命令です。残念ですが…」

 

 

「そんな…」

 

 

「サーシャさん、亜弥ちゃんはどうなんですか?まさか、最前線に…」

 

 

定子はサーシャに亜弥の配置を説いた。

 

 

「心配しないで下原さん、亜弥ちゃんは後方で衛生の任務に就かせます」

 

 

「そう、ですか…」

 

 

定子は内心ホッとした。

 

元帥直々となれば、この命令を変えることなど到底無理な話になる。

 

 

それを聞き、ジョゼと亜弥はしょんぼりとする。

 

 

「私、ひかりさんが居なくなるのはイヤだな…」

 

 

「わたしも…一人のお姉ちゃんが居なくなるのがイヤだな…」

 

 

「でも、これで良かったのかも…」

 

 

「え?なんで?」

 

 

定子の言葉の意味が分からず二パが聞き返す。

 

 

「うん。接触魔眼は凄く危険だから、命令通りカウハバに言った方が…」

 

 

「えーっ?ジョゼさんまで…」

 

 

ジョゼの言葉も一理ある。ひかりの接触魔眼は使いどころを間違えば命を落とす代物。

 

 

まだ後方にあるカウハバに移動した方が、ひかりにとっては平和になる。しかし、ニパはそれに納得しない様子であった。

 

 

そんな中、今まで黙って聞いていたクルピンスキーは、直枝に質問した。

 

 

「直ちゃんはどう思ってんの?」

 

 

「え?俺?なんで?」

 

 

「だって、ずっと言ってたじゃない。俺は孝美と一緒に戦うんだ!ってさ」

 

 

突然降られて訳が分からない様子だった直枝だが、クルピンスキーに言われて少し考える。そんな様子を、他の人達も直枝が気になり注目する。

 

 

「はっきりしてることは…戦場に必要なのは強え方だってことだ…亜弥の様なウィッチには、危険過ぎる…」

 

 

「…直枝お姉ちゃん…」

 

 

直枝の中では、亜弥の頭を撫でながらこれに尽きるのだった。

 

その頃、ひかりは基地の柱を登っていた。そこは以前、ロスマンに指導をしてもらった時に使った柱である。ひかりはそこを、以前のように両手に魔法力を這わせながら登っていく。その速さは、前よりも比べ物にならないぐらい速かった。

 

そしてひかりは、柱のてっぺんまで上り詰めた。

突然、下から声を掛けられひかりは見る。すると、なんと下から孝美が登ってくる。しかも、ひかりやロスマンのように柱に手を添えるのではなく、彼女は洋介の様に、足だけでまるで歩くように登ってくる。

 

 

そして、難なく柱のてっぺんまで登ってきた孝美にひかりは驚く。

 

 

「(流石は、エリートのウィッチだな…)」

 

 

 

鍛錬を終えた洋介は、柱の影に隠れながら目撃した。

 

姉妹のやり取りは喧嘩をしている様子だった。

 

 

「…姉さん……」

 

 

呟く時、柱から飛び地面に降下する。そして、慣れたように地面に降り立って行ってしまった。

 

 

「…」

 

 

残されたひかりは、ただ一人柱の上で黙ってしまっていた。

 

そして基地に戻っていく孝美は、途中で建物の柱にもたれかかっているラルに気づいた。

 

 

「ラル隊長」

 

 

「大事な妹を危険な目に遭わせたくないのだと、はっきり言ってしまえばいいじゃないか」

 

 

ラルは孝美にそう言うと、体をこんどは孝美の方へ向けた。

 

 

「妹をこの最前線から引き離す。それがマンシュタイン元帥との取引か」

 

 

「知っていたんですか?」

 

 

今回のひかりの転属命令は、孝美がマンシュタインとの取引の結果生まれたものだ。

 

孝美は、まだちぐはぐな自分の妹が最前線で戦うことを良しとしなかった。そこで、ひかりを502からカウハバへ正式に転属させることで、危険な最前線から遠ざけようと考えていたのだ。

 

それを知っているラルは、一つ疑問に思うことがあり、孝美に質問した。

 

 

「正式な辞令が出ているなら、何故そこまであいつを追い込もうとする?」

 

 

ラルは辞令があれば転属できるひかりを追い込もうとしている孝美の心境が知りたかったのだ。

 

 

そして孝美は、その質問に下を向きながら答えた。

 

 

「だってあの子は、ひかりは絶対にあきらめない子だから…。こうでもしないと…」

 

 

「フ…」

 

 

「本当は…本当はあの子を力いっぱい抱きしめたい。抱きしめて、強くなったねって褒めてあげたい。なのに私は、ひかりを傷つけることしか…」

 

 

孝美自身は、ひかりをちゃんと褒めてあげたいと思っていた。しかし、ひかりの我儘な性格を考え、自分を鬼にして最前線に戻らないようにしていたのだ。

 

 

その様子を見て、ラルは笑った。

 

 

「…姉妹揃って不器用なことだ」

 

 

そしてラルは、基地の外で立ったまま、口を開いた。

 

 

「そこで盗み聞きしてる奴、出てこい」

 

 

ラルがそう言うと、建物の奥の柱から洋介が出てきた。

 

 

「洋介中尉…」

 

 

「いや、盗み聞きするつもりは無かったですよ?俺は」

 

 

「最初から聞いていたんだろ?」

 

 

「はっ…最初からですけど」

 

 

そう言って、洋介はバツが悪そうにする。そう、実は彼は最初からラルと孝美の会話を聞いていたのだった。

 

そして、洋介はラルと孝美の側に寄った。

 

 

「孝美さん、俺の姉さんみたいに言うな…」

 

 

「洋介さんのお姉さん……」

 

 

「お前にも、姉がいたんだな」

 

 

「えぇ…それに弟もいます…」

 

 

 

 

 

洋介は、自身の経緯を話した。

故郷、神戸の洪水災害で両親を亡くした後、洋介は海軍の飛行予科練習生。弟の桜井勇介は陸軍幼年学校に志願した。

だが、猛反対したのは兄弟の姉、桜井志帆だった。

 

 

1938年 初夏

 

 

「ダメよ、二人が軍隊へ往くなんて!!」

 

 

「なに言っているんだ!戦争を反対して、赤十字の看護婦になった志帆姉さんに言われたくない。」

 

 

「そうだ、兄貴は予科練。俺は陸軍幼年学校に行く年齢だ!亡き父さんが言ってた、いつかこの国が危うくなると…」

 

 

「だけど……あんた達が……」

 

 

「…ごめん、姉さん…サムライだった先祖の血が滾る。この国を守るために!」

 

 

後日、決意を秘めた洋介と勇介は出征した。

 

 

翌年、世界大戦が勃発。戦時下で3兄弟は再会と別れ、弟は欧州へ留学して従軍、ベルリン攻防戦闘で命を落とし、姉は南方の島で行方不明になった。

 

 

そして翌日。グレゴーリ攻略のための偵察部隊が全滅した。その部隊を全滅させたネウロイとはこの前の補給輸送団の護衛任務の時、クルピンスキーと洋介が撃破したあのネウロイだった。

 

 

「バレンツ海のネウロイだと!?」

 

 

「そんなバカな!?あいつは僕たちが確かに倒したはずだ!」

 

 

「ですが、事実です」

 

 

納得のいかない様子の洋介とクルピンスキーだったが、ロスマンが正面に写真を張り付ける。するとそこには、洋介達がバレンツ海で戦闘した球体型のネウロイが映っていた。

 

 

そしてさらに驚くべきものが映り込んでいた。

 

 

「あのユニット...! 僕のだ!」

 

 

そう、写真の中の一枚に、クルピンスキーの履いていたユニットを取り込んだネウロイの写真があったのだ。それは、そのネウロイがあの時戦闘した球体型ネウロイであると決定づける証拠になっていた。

 

 

「コアを破壊したのに…何で!?」

 

 

「そう熱くなるな」

 

 

そう言って首を下げ考え出すクルピンスキーを、ラルが静止した。クルピンスキーが顔を上げて見ると、そこにはロスマンにコルセットを縛られているラルの姿があった。

 

 

それを見てクルピンスキーは戦慄した。

 

 

「隊長…?まさか!」

 

 

「お前達が倒しきれなかったのなら私が出るしかないだろう」

 

 

そう、ラルは自分が出撃する気でいるのだ。今まで洋介は502でラルが前線で戦っている姿を見たことがないため、ラルの実力をよく知らない。

 

しかし、ラルはこれでもエーリカ・ハルトマンとゲルハルート・バルクホルンと並ぶ、世界第三位の撃墜数を誇る、スーパーエースの一人なのだ。

 

 

そしてラルは孝美を見る。

 

 

「行くぞ孝美、作戦の肩慣らしにちょうどいい」

 

 

「はい」

 

 

「待ってください」

 

 

ブリーフィングルームの後ろから声がし、全員が振り返る。するとそこには、ひかりが立っていた。

 

 

「ひかり!」

 

 

「何をしに来たの?」

 

 

直枝は驚いてひかりの名前を呼ぶが、孝美はやはり鋭い目つきをしながらひかりに厳しく言う。

 

しかし、ひかりはそれに臆することなく進言した。

 

 

「私も戦わせてください」

 

 

ひかりの言葉に反応したのは、やはり孝美だった。

 

 

「あなたには無理だと何度言えば!」

 

 

「そんなのは、やってみなくちゃわかんない!」

 

 

孝美はひかりに言うが、ひかりはその言葉を聞かずに孝美を睨み返した。

 

両者互いに睨んだまま硬直する中、それを解いたのはラルだった。

 

 

「いいだろう」

 

 

「えっ!」

 

 

「ラル隊長!?」

 

 

ラルはニヤリとしながら許可をした。その言葉にひかりは顔を明るくし、孝美はありえないと言った様子でラルを見た。

 

そしてラルも、只では出撃許可を出さなかった。

 

 

「もしお前の接触魔眼が孝美に勝るようなら、どんな手を使ってでも502に置いてやろう」

 

 

「ホントですか!?」

 

 

ラルからの衝撃の提案に、ひかりは驚く。しかしそれは、都合のいい話ではない。

 

 

「ただし、その場合お前に変わってカウハバには孝美に行ってもらう」

 

 

「えっ!?」

 

 

そう、いずれは誰かがカウハバに行かなくてはならないのだ。ひかりが勝って残った場合、代わりに行くのは敗者となる孝美なのだ。

 

 

「もしお前が勝っても、孝美と一緒に戦うという望みは叶わない。それでもやるか?」

 

 

ラルはひかりに聞く。そして、ひかりは決意した。

 

 

「…やります!だって今の私は502の一員だから!」

 

 

「ひかり…」

 

 

「お前…」

 

 

ひかりの決意に、孝美と直枝は驚く。孝美は自分の妹が即座に決断をしたことに気づく。直枝はひよっこのはずだったひかりが、ここまで成長していることに。

 

 

そしてラルは、その様子に満足したようだ。

 

 

「上等だ。さあ、孝美はどうする?」

 

 

「…」

 

 

ラルに言われ、孝美もわずかに考える。そして、答えは決まった。

 

 

「いいわ。どちらがこの502にふさわしいか、はっきりさせましょう」

 

 

「うん、わかった」

 

 

孝美は、そんなひかりを迎え撃つことを選んだ。そして、両者の存続を賭けた勝負が始まるのだった。

 

 

「(ねぇ…お父さん……)」 

 

 

「亜弥、これは姉妹としてのけじめだ、手出し無用だ」

 

 

 

 

ーーーーーー

 

 

 

そして、502は出撃した。いつもは出撃をしないラルを含むフルメンバーのブレイブウィッチーズ。

 

そしてその先頭には、ひかりと孝美が並んで飛行、その後ろを、他のメンバーが編隊を組んで飛行していた。

 

 

そしてネウロイは撃墜された。

 

勝負の結果は僅かな差でひかりの姉、孝美の勝利に終わったのであった。

 

 

「コアへの指示だが、二人とも正確な位置を示していた。だが、孝美の方が僅かだが早かった。よって、命令通り部隊には孝美を残す。以上だ」

 

そして基地に帰投した後、ブリーフィングルームでラルが全員に向けて伝える。しかし、その席にはひかりの姿は無かった。

 

ひかりは、基地の滑走路に居た。滑走路の先端で、懸命に涙をこらえていた。

 

 

「うっ…うっ……」

 

 

ひかりは、涙を流したくなかった。自分で決めたことであり、そして敗北した。悔しい思いがあったが、決して後悔はしていなかった。

 

しかし、彼女の中に渦巻いていた思いは、ついに爆発した。

 

 

「うわぁぁぁぁん!うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!」

 

 

ひかりは滑走路の先でへたり込み、思い切り泣いた。大粒の涙は、次々と滑走路を濡らしていく。

 

自分の中に渦巻いていた思いは涙と共にグシャグシャになってしまい、もはやどうして泣いているのかすらひかりはわからなくなってしまった。しかしひかりは、大声で泣いていた

 

その様子を、ブリーフィングルームから出てきたウィッチたちは、静かに見守っていることしかできなかったのだった。

 

 

 

 

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