ロマーニャ ある小島
「ん…よいしょっと…」
一人の女性が、井戸の水を汲み上げいた。
「この世界に来て6ヶ月。このイタリア…いや、ロマーニャの気候は相変わらずね~」
汲み上げたバケツの水を別のバケツに移し、取っ手を箒に潜らせ、飛行する。
「さぁて、水をタンクに入れないと、クソババアにどやされる…」
第504統合戦闘航空団 アルダーウィッチーズ
短期配属する桜井洋介大尉と亜弥軍曹、当部隊のウィザードのバッキー・S・五十嵐大尉は、ヴェネチア上空に滞在するネウロイのコミュニケーション作戦『トライヤヌス』の説明とを受けていた。
「(確かに、この作戦で連合軍は無駄な犠牲を出さずに済む、そして…敵さんのガリバー計画のことも…)」
作戦に備え、午前中は文学、午後はユニットを履いて飛行に移った。
「イタリア…いや、ロマーニャの空は、暖かくていいな…つい前の極寒のオラーシャで戦っていたのが嘘みたいだ……」
洋介は非武装でユニットウォーミングアップをしながら飛行している時
「洋介~!!」
「んっ!バッキー!」
洋介の20キロ先に飛行しているのが、ベアキャットのユニットを履いているバッキーだった。
そして、バッキーの使い魔は鷲であった。
「なぁ洋介!もう一人、ウィザードのお前とやってみたいことがある!!」
「やってみたいって、なんだ!?」
「チキンレースだ!!」
地上、滑走路
「おーい、フェル隊長~!」
「なに〜?ルチアナもうすぐ亜弥ちゃんと買い物に行こうと……」
「洋介さんとバッキーさんが何かをやるつもりですよ!」
「お父さん、バッキーさん…なにを…?」
上空ー
「旋回するのは、左か右のどっちだ!?」
二人は互いに高速で接近、2000メートルまで接近した。
「当然、左だ!!」
ギュイイィィン
二人は互いに背を向けて、左に急旋回した。
「ひゃー!凄いよ隊長~!!」
「本当に凄いですよ…洋介さんとバッキーさん…」
「凄いわねぇ〜!流石は世界でただ二人のウィザード!」
「(わたしも、あれほどのユニットを扱えるウィッチになりたい…)」
赤ズボン隊は拍手喝采し、亜弥は内心で機動力と強いウィッチになることを心から決心した。
「しかし洋介よ~、一発でチキンレースができるのはあんた凄いなぁ~!」
「まぁな、長い間飛行機乗りをしてきた勘だ。この飛行曲芸はいつからやっているんだ?」
「あの戦時でだ、隊長や弟のトムと訓練飛行が終わった後にしょっちゅうやっていた。」
「弟…?あぁ、マニラのBARで会ったな、弟も戦闘機パイロットだったのか…」
洋介はある程度の記憶を思い出した。
フィリピンを巡る戦地のマニラのBARにて、一時のクリスマスでバッキーの上官、隊長ランスロー・W・アイリッシュとトム・M・五十嵐と共に、厚木十三と沖田進次郎と呑み交わした。
「弟さん、あの世界で取り残されてたままだが
、元気か?」
「……俺の弟、トムは……行方不明に……」
「あっ…そうか…済まない……」
バッキーと弟のトム・M・五十嵐はF6Fヘルキャツトに搭乗、沖縄を巡る戦艦大和の戦いにて、爆雷撃部隊の護衛を務めた。
桜井洋介と沖田進次郎の零戦64型。彼の兄、沖田新一郎と金城幸吉の零観は大和を護る為に戦った。
激戦の最中、トムは進次郎に撃墜された。九死に一生を得たトムは、恐怖に悩まされ戦闘機に乗ることはなかった。
その後、哨戒部隊に転属。ウィリアム・J・スパロウ少佐と従軍看護婦シャルロット・F・トラインのPBY-5カタリナに搭乗した。
そして、終戦まで生き延びた。だが、9月17日枕崎台風で遭難、彼らは行方不明になった。
「いいんだ洋介、行方不明ならどこかで生きている」
「そうか…」
洋介とバッキーは滑走路に着陸した。すると
カアアァン
「「 痛てぇ~ 」」
「あんな飛行曲芸、他のウィッチたちも真似したら、下手すると空中衝突するわよ二人とも?」
「「 す、すいません…… 」」
洋介とバッキーは、口が笑っても目が笑っていない醇子の鉄拳制裁を受けていた。
ヴェネツィア上空 トラヤヌス作戦戦闘空域
桜井洋介と娘の桜井亜弥、バッキー・S・五十嵐を先頭に後ろから504の赤ズボン隊とアンジェラのウィッチたちや研究員を乗せたJU52輸送機。
その護衛のロマーニャ空軍戦闘機MC.202フォルゴーレも飛行する。
そして今、ベネツィアにあるネウロイの巣元へと辿り着き、そして相手側が現れるのを待つ。
すると、ネウロイの巣の真下から出現。
「来た!」
「あれがフランス……いや、ガリアに現れた人型のネウロイか……」
去年の9月、ガリア共和国に現れた人型ネウロイと同じ個体に酷似していた。
そしてネウロイの巣の下、洋介と亜弥、バッキーと竹井醇子大尉、そして人型ネウロイが向き合う。
「どうやら、上手くいきそうだな!」
「ああ、……」
作戦は成功に思えた。
だが
「…っ!?なっ」
すると洋介の固有魔法である波導がとあるところに表示された。その場所は亜弥と人型ネウロイがいる場所でその予測線の大きさは二人がすっぽり入るぐらいの大きさだった。
「亜弥、人型っ!危ない!!」
「キュイ!?」
「わっ!?」
「大尉!いったい何を!?」
なりふり構わず、洋介は二人の腕を取り乱暴に引っ張る。
そしてその瞬間。二人が先ほどまでいた場所に極太のビームが照射された。
「あ………間一髪だ……」
「ネウロイのビームがネウロイを……!?」
「…まさか…あれは」
「キュイイイ!?」
醇子と亜弥が驚き、そして人型ネウロイに表情はないが、驚いている様子だった。
「あれは…」
見上げると上空には、今まで見たことも無い巨大な巣が出現し、小さいほうの巣を飲み込んでいた。
その新たに現れた巨大な巣はまがまがしいオーラを発していた。
「一体…何が…」
「えっ…!?お父さん、早くこの場所を離脱しないとまずいよ!」
亜弥は人型の通訳として洋介に述べる、彼女の顔から見て相当恐ろしく感じる。
「なんだって!?…わかった!竹井大尉、撤退命令を今の我々で何とかできる相手じゃない!!」
今回の任務はヴェネツィアに滞在するネウロイのコミュニケーションが任務。
そのためその任務に参加する研究員も巻き込み、504のウィッチたちの武装も護衛程度の弾薬しか積んでいない。もしここで交戦が始まれば全滅する可能性がある。そのためにもこの空域を離脱する必要があった。
「わかったわ!作戦は失敗!繰り返す、作戦は失敗!全員この空域を離脱せよ!」
竹井醇子大尉の言葉に従い、まるでクモの子を散らすように逃げる。
研究グループを乗せた輸送機も、撤退命令に従って逃げ始めた。
「そうと決まれば…」
「あぁ、バッキー…一丁やるかぁ……」
洋介とバッキーは互いに機銃を構え、戦闘を整えた時にアンジェラが制止する。
「桜井大尉、バッキー大尉!先に行け!ここは私たちに任せろ、お前たちと亜弥、そのネウロイを基地に連れて行くんだ!」
「ですが!」
「俺もだ...みすみす仲間を見捨てる訳ができない!」
「早く行け!今この二人、亜弥とネウロイを守れるのはお前らだけだ!だから早くいけ!」
「っ!…すまない」
504たちの任務は、ネウロイとのコミュニケーション実験から、人型ネウロイの保護へと移った 。アンジェラの言葉に二人は頷き、洋介は亜弥、バッキーは人型ネウロイを連れて安全区域まで逃げるのだった。
「フォーメーション・アブレスト!!攻撃開始!!」
醇子の指示で、フェルナンディアとアンジェラ、ルチアナとマルチナは戦闘配置に就いた。
「よし!みんな!あの4人がこの空域を脱出、市民の避難が完了するまで何としても…こかで食い止めるわよ!!」
「「「「 了解っ!! 」」」」
「ザ…緊急通信、少佐応答願います!」
『オッケー、聞こえているわよ』
「人型ネウロイとの交流実験は失敗…新たに現れた巨大な巣に以前の巣は潰され…新たな巣から巨大なネウロイが多数出現、現在応戦中です」
『そっか…結局最悪の形になっちゃったわね…』
「桜井大尉とバッキー大尉、亜弥ちゃんは以前の巣の人型ネウロイと共に基地に向かっています!」
『それはそれで仕方ない…今からでも最善を尽くさないとね』
「はい、まずはヴェネツィアから市民の避難を。それにどうもネウロイの動きがヴェネツィアとは別の方向に向かっているものも見受けられます」
『その方向は?』
「504基地…あの4人です」
醇子はフェデリカに状況を報告する。
こうして504部隊による殿戦が始まったのである。