ロマーニャ 501基地上空
「えぇーい!!」
ダダダダダダ バシュッ
「ぎゃっ…!」
「なっ...!? 勝者、亜弥!」
桜井亜弥による自己紹介の翌日、彼女は零式54型ストライカーユニットを履いてルッキーニと模擬空戦を実行、左捻り込みで勝った。
滑走路で父親の桜井洋介とトゥルーデ、エーリカは双眼鏡で見物、驚いた。
「凄い...! ねぇ洋介、亜弥は……本当にロスマン先生の元で鍛えたの…?」
「あぁ、俺が502所属時代、僅か曲芸飛行ができるほど成長したが…先生曰く…驚いていた」
洋介が502時代、亜弥がエディータ・ロスマンの指導を受けたにも関わらず、僅か数日で成長したことに冷や汗を掻いた。
「それにしても…ウィッチに覚醒して…その僅かに空に…ネウロイと戦ったなんて…凄い成長ぶりだね!」
「…いずれ……ハルトマンを越えるエースになるかもな……」
「ん……トゥルーデ…?」
「いや、なんでもない……」
トゥルーデは小声で呟きながら亜弥を誉めつつ、その場を去った。
その午後、坂本美緒少佐の指導の下で、洋介も含め芳佳たちと一緒に訓練をした。
しかし
「「「 はぁ…はぁ…はぁ… 」」」
ペリーヌとリーネ、芳佳の三人は最初のウォーミングアップで、基地周辺の10周ランニングの3週目でばてていた。
「どうしたんだ三人とも、桜井より4周遅れているぞ!」
「明らかに体力不足ね…」
「オラーシャの前線で戦っていた桜井はともかく、あの三人はブリタニアの戦いの後、軍から離れていたからな…半年以上のブランクだな…」
ミーナと美緒は困惑した顔で呟く。
「昨日の飛行訓練でもあの三人は問題が多かったぞ」
芳佳たちは何度も接触衝突など問題が多く、このまま実戦に出すのは危険だった。
美緒は三人の所に向い、指示を出した。
「宮藤、リーネ、ペリーヌ!お前たちは基礎からやり直しだぁ!」
「「「 は、はい! 」」」
「あの…坂本さん!」
「どうしたんだ、亜弥?」
亜弥が美緒の側に立ち、進言した。
「わたしも、芳佳お姉ちゃん達と一緒に訓練へ行かしてください!!」
「っ!何を言うか亜弥、お前は優れたウィッチだ、緊急にネウロイが襲来したら、一人でも戦力になるウィッチが必要だ」
「強いウィッチになりたいのです!」
「…なに…はっはっは!!…そうか、わかった!」
4人はとあるところに修行しに行くことになったのだった。
4人はストライカーユニットでとある場所に向かっていた。すると、小さな小島が見えてくる。ただその小島はヴェネツィアに行くための石橋がかかっていた。
美緒から預かった指定場所の地図をペリーヌが見る。そこに書かれた地図の目的地は先ほどの小島を指していた。
「……あそこですわ」
そう呟き、4人はその島に向かって降下する。降りると、変哲もないのどかな自然があり、その中で遠くに一つの家がポツンっと立っていた。4人は周囲を見渡す。
「本当にここが訓練所なんですか?」
「少佐から頂いた地図だとここで間違いありませんわね」
「ごめんください~!」
リーネの言葉にペリーヌは地図を見ながらそう呟く。四人の目的地はウィッチの訓練所。
亜弥が挨拶しても、しかしどんなにあたりを見渡しても訓練所らしきものは見当たらなかった。
「誰もいないよ……あっ!」
「どうしたの芳佳ちゃん?」
「あそこに人がいるよ」
芳佳が指を指したところに、手伝人らしき人物が歩いていた。
「あの人に訊いてみよ。もしかしたら訓練所の場所知ってるかもしれないし」
「そ、そうですわね……」
そう言い4人はその人物のところに向かいそして声をかける。
「ん…何?」
声をかけられた人物は振り返り答える。その人物は金髪の長い髪に青色の瞳をした女性だった。
変わったことに彼女は女が着るズボン姿じゃなく、亜弥の様なベルトを履き、シャーリーの様な陸軍軍服を着ていた。
「すみません、ちょっと聞いてもいいですか?」
「はい、何を訊きたいの?」
「あの、ここいら辺にウィッチの訓練所があるって聞いてきたのですが…」
リーネがそう言うとその女性は目を細める。そして4人にこう聞き返す。
「もしかして……501のウィッチさん達ですか?」
その言葉を聞き二人は驚くがペリーヌが質問した。
「あ、あのもしかしてあなたアンナ・フェラーラさんの関係者ですか?」
アンナ・フェラーラとは、歴代のウィッチ達の多くを育てて来たという有名な訓練教官のことで、4人が会いに行く人物だった。
「ええ、そうだけど?あなたたちのことは、あなたの上官やアンナさんから聞いているわ」
「あ、あの…あなたは?」
「あたしはここでアンナさんのお手伝いをしているのよ。そういえば、くそば…アンナさんを探しているんですよね?」
「そうですわ。行方をご存知で?」
「えぇ、アンナさんでしたら……」
彼女が指一本を上に向ける。4人は上を見上げると丸い何かが落ちてくるのだった。
「「「「 うあああああああっ!!? 」」」」
4人は驚いて急いで避ける。落ちてきた物の正体はデカい盥だった。
「あ~らら…あともう少しでチャップリンのコントが見れたのに…」
4人に聞こえない声で彼女がそう呟く
「ネウロイ!?」
振り向きざまに、ブレン軽機関銃を向けるペリーヌ。
だが
「誰がネウロイだ!」
落ちてきた盥から声がする
「ひゃっ!喋った!」
「どこを見てるんだい上だよ上!」
「上?」
怒鳴り声が聞こえ、4人は上を見るするとそこには箒にまたがって宙を飛んでいる一人の老婆がいた。
「一人を除き、挨拶もなしにうちの庭に入るなんて、近頃の若いもんは躾がなってないねぇ」
「あ、こんにちは!」
彼女は亜弥を褒めつつも、やれやれっという風に首を左右に振る時、芳佳は慌てて挨拶する。
「おかえりなさい。アンナさん。お客さんが来ているわよ」
「おや、ご苦労だねステラ。で、あんたたちは?」
「あ、あの…もしかしてアンナ・フェラーラさんですか?」
「そうだよ」
リーネがそう尋ねると老婆は不機嫌そうにそう言う。すると芳佳が彼女の前に赴いた。
「私達、坂本少佐の命令で訓練に来たんです!ここで合格をもらうまでは帰るなって言われました!」
芳佳が真剣な目でそう述べると、アンナはめんどくさそうにため息を吐く。
「はぁ……とりあえず、その足に履いてるもん脱ぎな。ステラ、ユニット置き場の場所、案内しておやり」
「はぁーい!じゃあ、4人ともついてきて」
「は、はい!」
4人は彼女についていき、しばらくして納屋に、 そこで4人はユニットを脱いで干し草の上に置く。
「あ、あの。案内してくれてありがとうございました」
芳佳が案内してくれた少女にお礼を言う
「いいよ、お礼なんて。あたしはこれから水くみに行ってくるわ。それよりもあなたたち訓練を受けるのでしょ?」
「は、はい」
「アンナさんの訓練は厳しいから頑張ってね」
そう言い4人の肩をたたき、納屋から出ようとする。すると
「あ、あの!」
「何?」
すると芳佳が呼び止める
「まだ名前を聞いていなかったので、そのできればでいいんですけど名前を教えてくれませんか?」
芳佳がそう訊くと
「あたし?あたしはステラ・A・エヴァンス。よろしくね♪」
そう、彼女は答えるのだった。
「…バケツ?」
修行に来た芳佳たち、そして修行してくれる訓練教官こと、アンナ・フェラーラに出会い、修行を付けてもらうことになった。しかし納屋の外に出て待っていると、アンナがやってきて4人に渡したのはバケツだった。
「あ、あの…これは?」
「じゃあまず、アンタ達には今晩のお料理とお風呂の為に、水を汲んできてもらおうかね」
「水汲みですか?」
「えっと……」
芳佳は井戸を探すが、それらしきものはなかった。
「井戸ならあっちだよ」
アンナが指を指した方向は、遥か先。石橋を渡った向こう側にある崖の上に小さな井戸があった。
「ええっ!?あんな遠くに……」
「あんな所から水を……」
「うわぁ……」
「なんであそこに……」
「ここは海の上だからね、水が出るのはあそこだけさ」
そう言われ、4人は困った顔をする。するとリーネが何か思いついたような顔をした。
「あっ!でもストライカーを履けば!」
「あっそっか!」
「あ、それいいアイデアですわリーネさん。ストライカーで飛んでいけばあっという間ですわ!」
「だけど、この練習で簡単過ぎる……」
4人は、納屋においてあるストライカーを取りに行こうとしたが、アンナに阻止された。
「誰がそんなの使っていいって言ったんだい?ほれ、これを使うんだよ!」
「て、まさか?」
「「 箒? 」」
「菷……もしかして……!」
4人は驚いてそう言う。するとアンナは四本の箒を渡す。
一方、アンナが指定した井戸にて
「これで良し…全く、あのくそババアは人使いの荒い…それにこの世界に来て半年。早いわね…兄さん、ヴェン、アイリッシュ隊長、マリー、アリシア…パウラ……シャルロット…トム…スパロウ機長…キャサリンさん…エミリーちゃん…エマちゃん…パンサー…」
ため息をつきながら、あの戦時と戦後で命を落とした者の名前を呟き、バケツを手に取るステラ。
「バッキー…504で大丈夫かな…」
ステラはアンナが住む小屋のある方向を見る。
「……さて、あの4人、うまくできてるかしら?」
一方、芳佳たちは、箒にまたがり魔法力であがろうとした、しかし
「痛い…」
「食い込む…」
「ぐぅ…」
芳佳、リーネ、ペリーヌは悲痛な声を出す。
アンナから渡された箒にバケツを掛けて跨った三人は、箒に乗りながら浮き上がる。
しかし、自身にかかる負荷により三人は浮きあがることしかできず、その場で立ち止まったままである。
「うわっ!?」
「うわあ!」
そして、芳佳とリーネは大きくバランスを崩す。ペリーヌだけが唯一体制を維持しているが、彼女もその状態から動くことができない。
「いつまで地面をうろうろしてるんだい!さっさと飛んでいかないと、晩御飯に間に合わないよ」
アンナはそう言って、手を一回たたく。すると、全員の箒が動き出す。
芳佳とリーネはその場でぐるぐると回転をし、芳佳はそのまま上に飛んでいく。
リーネは回転に耐えられずに振り落とされる。ペリーヌは前に後ろに流されるように動き、制御が効かずに落ちた。
そんな三人の姿を見て、溜息を一つ吐いた。
「はあ…全く情けない。これで魔女とは片腹痛いね…」
そう言って、リーネに近づくアンナ。
「あんたは無駄にでかいものつけてるから、バランスが取れないんだよ」
「きゃあ!///」
アンナは述べながらリーネの胸を掴む。その行動にリーネは思わず驚き、顔を赤くする。
上空に打ち上げられた芳佳は、箒に懸命に掴まりながらぐるぐると回される。
「うわああああ!」
「いつまで回ってんだい?」
「箒に聞いてください!」
そんな芳佳にアンナは聞くが、芳佳は振り回されたまま呟く。
そして彼女は目を回してしまい、手を放して地面に落ちた。
そんな中、ペリーヌは懸命に姿勢制御を行っていた。
「ほお、中々やるね」
「こ、これくらい…ウィッチとして当然…ら、楽勝…ですわ…」
アンナに返答するペリーヌ。だが、その表情は強張り、声は上ずっていた。
そんな中、アンナはまるで意地悪く呟く。
「そうかいそうかい」
彼女は箒をつんと触る。すると、姿勢を懸命に整えていたペリーヌはバランスを崩す。
「ぐぅ…う…す、擦れる…」
ペリーヌも箒から脱落したのだった。
三人の無様な様子に、アンナは溜息を吐きながら空を見上げると、菷に股がって飛行する亜弥の姿があった。
「凄〜い!これこそが本当の魔女!」
「ん…あの娘は魔法の制御が一段と優れているねぇ〜!それに、あんた達には永遠に合格がやれそうにないね」
「そ、そんな…」
「いまどき!ウィッチの修行に箒だなんて時代遅れにもほどがありますわ!」
ペリーヌは文句を言って、箒を投げ捨てた。
「おや?もう音を上げたのかい」
「ペリーヌさん…」
「アンナさん!」
リーネはそんなペリーヌに困った顔をするが、芳佳は違った。彼女はアンナの名前を呼んで質問した。
「あの、私も知りたいです。こんな修行で本当に強くなれるんですか!?」
「あんた、強くなりたいのか?」
「はい!」
「何故だ?」
芳佳の言葉に、何故強くなるのかアンナは問う。芳佳は、アンナの問いに答えた。
「私!強くなってこの世界を守りたいんです!強くなって、ネウロイからこの世界を守りたいんです!困っている人達を守りたいんです!」
「芳佳ちゃん…」
芳佳の言葉に、他の皆も釘付けになる。彼女の真剣な眼差しは、その答えに嘘偽りが無いという証拠だった。
「……見ておいで」
アンナは手本を見せるため箒にまたがり、飛んで行った。
「あ、アンナさん……?」
「行っちゃった……」
「ふん!もう戻ってこなくて結構ですわ!」
空に飛んでいる亜弥と三人はしばらくポカーンと見ていると、しばらくしてアンナが戻ってきた。
すると、水のたっぷり入ったたらいを吊り下げて。それを見た芳佳たちは驚く
「わぁ、こんなにいっぱい!」
「こ、これを一人で!」
「すごいです!」
「で、でもアンナさん。これで本当に強くなれるんですか」
「信じられないかい?けどね、あんたたちの教官だってここで訓練して一人前の魔女になったんだよ」
「え、教官って……」
「坂本少佐が?」
「ああ、あの子は素直な子でねえ。最初っからあたしのこと尊敬して一生懸命練習したもんさ、お陰で見事な魔女に成長したってわけだ?それにほかの奴らだってみんな素直で私の指導を受けたもんだよ」
アンナが胸を張って、自慢を促した。
「よく言うわよ……寝室部屋に書かれてあった。世界各国のウィッチたちの罵倒の声はなんなのよ……」
「わぁ!?す…ステラさん、いつの間に!?」
芳佳の背後に、呟きながら大きなバケツを二つ持ったステラがいた。
「ステラ…何か言ったかい?」
「いえ、何も…それよりアンナさん。水汲みが終わりましたので、あたしは夕食を作ります。メニューは何にしますか?」
「ああ、ご苦労だね。それと夕飯のメニューはお前に任せるよ」
「わかりました。では…それとあなたたち。あなたたち4人はまだ修行初日なんだから、できないのは当たり前。頑張りなさい。」
「あ…はい…」
ステラは芳佳たちを励まし、小屋に戻った。
「…アンナさん、ステラさんって…」
「あいつかい?さあね〜半年前にロマーニャに、後に新設した504部隊に配属されたけど、魔法能力が曖昧なウィッチ。見た目と名前からして扶桑とリベリオン人らしいけどそれ以上のことは知らないね‥…まったく不思議な子だよ」
アンナはステラのほうを見て語った。
「そうですか…504っ!…バッキーさんがいる部隊…」
芳佳もステラの後姿を見てそう言う。すると
「あ、あの……坂本少佐が使われていた箒って?」
ペリーヌがアンナに訪ねて訊く
「さっきアンタが投げたやつだよ」
「えっ!?あれがっ!?」
さっき投げた箒が敬愛する坂本美緒が使用した箒だと聞くと、ペリーヌはすぐさま投げ捨てた箒を手にした。
「こ、これが坂本少佐がお使いになった箒ぃ~っ!」
ペリーヌは頬をつけながらそう言う。
「なんだいありゃ?」
それを見たアンナは、頭にはてなマークを出したような顔をしてそう呟く。
その後、亜弥を除く芳佳たちは何度も練習したが結局、井戸までは行けずただ宙に浮きコントロールするのがやっとの状態で訓練初日が終わった。