ストライクウィッチーズ ~蒼空を舞う零の荒鷹~   作:鷹と狼

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第44話 ステラの経緯

 

 

 

真夜中

 

 

「……うん?」

 

 

芳佳は、目を覚ます。芳佳たちは一つの大きなベッドに4人で眠っており、横からはリーネとペリーヌの寝息が聞こえる。

 

芳佳はふと目が覚め、すぐには眠れそうになかった。

 

 

 

「あれ?」

 

 

もう一ヵ所のベッドにはステラと亜弥が眠っていた。

 

そばにある棚に置いてあるムスタングユニットの国籍はリベリオンに酷似しているが、変わった星マークだった。そして、ある写真を取って目にした。

 

 

「1943年…10月ハワイにて…写っているの…ステラさんとバッキーさん?」

 

 

「うん…なに見てるの…?」

 

 

「あっ…ごめんなさい…」

 

 

「ふふ…いいのよ…」

 

 

「わたしは宮藤芳佳です」

 

 

「芳佳、いい名前ね」

 

 

ふと目覚めたステラは簡素に自己紹介を聞いたあと、芳佳に語った。彼女はリベリオンのリトルトーキョー出身、扶桑とリベリオンのハーフウィッチであった。

 

写真に写っているステラとバッキー以外の人物たちは、この写真を最後に、45年に突入、フィリピンと東京上空、ハワイ、扶桑近海など、それぞれの場所で命を落とした。

 

 

「そうなんだ……ステラさんのお兄さん…ベルリンでお友達も…つらいことを聞いて…ごめんなさい…」

 

 

「いいのよ…いずれネウロイとの戦争が終わったら、…兄さんたちと友人が眠る場所に花を供える…」

 

 

「…だけどステラさん…洋介さんみたいだね…」

 

 

「洋介…?さて、明日も早いから寝なさい…」

 

 

「はっはい…」

 

 

芳佳は寝室に戻りながら疑問を感じた。

 

2、3月にそんな事件は聞いたことがなく、それ以上にこの45年7月以降は先の話になる。

 

 

「(もしかして…ステラさんは…)」

 

 

ベッドで再び寝ようとした芳佳だが、そこにある物が目に入った。

 

それは、ベッドに書かれていた文字だった。様々な国の言葉で書かれていたその言葉は、彼女には意味が分からないものだった。しかし一つだけ、芳佳にもわかるものがあった。

 

 

「く、クソババ…」

 

 

扶桑語で書かれているその言葉に芳佳は思わず頬を引きつらせる。しかし、その字を見てあることに気づいた。

 

 

「これ…坂本さんの字だ」

 

 

それは、芳佳が以前見た美緒の字にそっくりだった。そこから、これを書いたのが美緒だと芳佳は理解した。

 

 

 

 

 

翌日

 

 

 

 

 

亜弥は相変わらず菷に股がって、島上空を飛行する時

 

 

「きゃあ!?」

 

 

リーネは思わず悲鳴を上げる。そして、箒からずり落ちると、石橋の淵に摑まったままぶら下がりになる。

 

 

「うわーん!」

 

 

リーネは助けを懸命に求める。

 

 

「いっ…きゃっ…あっ…」

 

 

ペリーヌは箒が上下に動き、体がそれにガクガクと揺さぶられる。二人は昨日からあまり変わった様子が無かった。

 

 

「やれやれ…」

 

 

アンナはそう言って溜息を吐いた後、もう一人のウィッチを見た。

 

 

「…!」

 

 

リーネとペリーヌが箒に遊ばれている中、芳佳は懸命にバランスをとると、ゆっくりとだが飛行をしていく。

 

 

その様子には、アンナも少し感心した。

 

 

「おや、随分良くなったじゃないか」

 

 

「あ、ありがとうございます…!」

 

 

アンナの言葉に芳佳は答えるが、それでもまだ余裕がなかった。

 

 

 

何故、芳佳は急に上手くなったのか。それは昨夜にあった。

 

  

 

 

「箒と共に?」

 

 

「う〜ん、なんていうかね。箒に跨って乗るんじゃなくて、箒と一緒に飛ぶイメージかな」

 

 

 

芳佳が疑問に思う中、ステラが説明する。

 

 

「皆は箒に跨って浮くイメージがあるけど、そうじゃなくて箒と一緒に飛ぶの。箒だけじゃなくて、自分も飛ぶイメージで」

 

 

そう説明するステラに、芳佳は考える。確かにあの時は、芳佳は箒に跨って、箒だけが飛ぶイメージがあった。

 

 

 

「わかった、明日やってみる!」

 

 

芳佳がそういうと、ステラは微笑み返したのだった。

 

 

「ちょっと来なさい」

 

 

そう言って、アンナは全員を呼ぶ。

 

 

「あんた達全員、魔法力は足りているんだ。足りないのはコントロール。今までは機械がしてくれたものを、自分でコントロールしなくちゃ駄目なんだよ」

 

 

そう言って、アンナはリーネとペリーヌの箒を持ち上げる。

 

 

「ひゃっ!?」

 

 

「いっ!?」

 

 

「痛いのは、箒に体重が掛かってるからだよ。あの子なんか、もうコツを掴み始めてるよ」

 

 

そう言って、ハンナは芳佳を見る。

 

 

「いいかい?あんた達はストライカーユニットって機械にずーっと頼ってた。まずそれを忘れて箒と一体化するんだ」

 

 

「箒と一体化?」

 

 

アンナの言葉に、リーネは考える。

 

 

「箒に乗ろうとするんじゃなく、箒を体の一部だと感じるんだよ」

 

 

「体の一部…ですの?」

 

 

ペリーヌも考えた。

 

 

「そして、自分の足で一歩前に踏み出す。そんなイメージで魔法を込めるんだ。ちゃんとした魔女なら、簡単な事さ」

 

 

そう言って、アンナは堂々と助言する。

 

その言葉に、リーネとペリーヌ、そしてコツを掴み掛けていた芳佳が考える。すると、三人の魔法力は箒と共に一つとなる。

 

 

「一歩前へ…」

 

 

そして、全員が一歩を踏み出した。すると、

 

 

「やった!飛べた~!」

 

 

「私も飛べた!」

 

 

「飛べましたわ!」

 

 

「わっ!芳佳お姉ちゃん達、飛べたんだ!!」

 

 

「亜弥ちゃん!」

 

 

芳佳は先ほどまで掴み掛けていたイメージを完全に掴んだ。他の二人も、今までまともに飛べなかった状態から、こんどはしっかりとイメージを持って飛べるようになる。

 

 

空で遊んでいた亜弥も、三人を見て歓喜した。

 

 

4人がちゃんと飛べたことに感激する中、アンナはその様子をしたから見て納得したように微笑んだ。

 

 

「アンナさん」

 

 

「おや、ステラ。もう終わったのかい?」

 

 

「はい」

 

 

アンナの言葉に返事をしながら、ステラは足元のバケツを見せる。そこには、水がいっぱいになった水バケツがあった。

 

 

そして、ステラは空を見る。

 

 

「皆飛べましたね」

 

 

「やっと一人前だよ…全く、あんたに比べたらよっぽど手のかかる子だよ」 

 

 

そう呟き、アンナは箒に跨り4人の下へ行った。

 

 

「いつまで遊んでんだい?さっさと水汲みに行かんと、日が暮れちまうよ!」

 

 

「い、言われなくても行きますわ!」

 

 

『行ってきまーす!』

 

 

そう言って、4人は水汲みに向かった。

 

 

その様子を見ていたアンナの下に、ステラが箒に乗ってやって来た。

 

 

「昨日と全然違いますね」

 

 

「あんただろう。あの扶桑の若いのに何か助言したのは…」

 

 

「あちゃ~…駄目ですか?」

 

 

「…いいや」

 

 

アンナの質問を特に悪いと思った様子に、ステラは聞き返す。

そんなステラの様子に、アンナは一つ溜息を吐いてから、井戸に向かった4人の方を再び見る。

 

 

その後、4人はアンナから今日のノルマを認められたのだった。

 

 

夕方、芳佳たち4人はバケツでためた水をたらいに入れる。 

 

 

「まぁ、今日はこの辺でいいだろう」

 

 

「やった!」

 

 

「良かったね!」

 

 

「と、当然ですわ!このくらい!」

 

 

努力して集めた水を見て嬉しそうにそう言うのだった。

 

献立はアンナ特製の夕食。彼女の特製のシチューとパンとこの島で取れた新鮮なサラダだった。

 

 

「「「「 いただきま~す! 」」」」

 

 

4人はご飯を食べる。芳佳と亜弥がパンをちぎって食べ、リーネとペリーヌはシチューを食べる。

 

 

「「「「 美味しい~!! 」」」」

 

 

同時に叫ぶ4人。努力して何かを成し遂げた後の食事はどんな豪勢な料理よりもおいしいからそれはそうだろう。

 

アンナも自分の作った料理をおいしいと言われて思わず笑みを浮かべる。だが、すぐにきつい顔になった。

 

 

「食べたらさっさと風呂に入りな!」

 

 

「はい!」

 

 

そう怒鳴り込み、そして4人は食べ終わると食器を洗いものをしていたステラに渡して風呂に入りに行くのだった。

 

 

「~♪」

 

 

そしてステラは鼻歌を歌いながら食器を洗っている時だった。

 

 

「ステラ、後は私がやっとくから、あんたも風呂に入ってきな」

 

 

「は…は~い♪」

 

 

そう言われて、ステラはアンナに一礼をしてその場を後にするのだった。

 

 

「気持ちいい…」

 

 

「~♪」

 

 

芳佳は呟く。夕食をとった4人は集めた水を入れた風呂に入っていた。

 

一日の訓練を終えて入る風呂は、心の癒しであった。気持ちの良さに、亜弥は身体を横に倒しながら浸かっていた。

 

 

「でも、もう少しお湯が欲しいね」

 

 

「そうだね」

 

 

芳佳の言葉に、リーネが同調する。湯の量はステラの協力があったにも関わらず、二人の腰よりやや上辺りまでしかなく、体全体を温めるほどの量は無かった。

 

 

その時、芳佳はまだお風呂に入らずに海を見ていたペリーヌに気づく。 

 

 

「あれ?ペリーヌさん入らないの?」

 

 

「え?も、勿論入りますわ」

 

 

芳佳に呟かれ、ペリーヌもお風呂に入る。しかし、その声はどこか上ずっていた。

 

 

「ひゃあ!?」

 

 

「うわあっ!?」 

 

 

そして、ペリーヌはお風呂に入るが、突然驚きながら思い切りお風呂から出る。その声に宮藤たちも驚いてみると、ペリーヌは股のところを抑えていた。

 

 

「し、しみる~…」

 

 

ペリーヌは初日と二日目の最初に箒に股が擦れてしまい、その場所が赤くなっていた。そこにお湯が触れ、彼女に刺激を与えていたのだ。

 

 

その様子に、芳佳たちも驚いた様子で見る。 

 

 

「び、びっくりした…」

 

 

「大丈夫?ペリーヌさん…」

 

 

芳佳は純粋に驚き、リーネは心配した様子で見る。

 

 

「大丈夫?」

 

 

その時、4人の後ろから声がする。振り返ると、そこには体にタオルを巻いたステラが居た。

 

 

「あ、ステラさん」

 

 

「みんな、仲がいいね~♪あたしも入ってもいいかしら?」

 

 

「どうぞ」

 

 

「ありがとう」

 

 

そう言いステラはタオルを脱ぎ、芳佳の隣に座る。 

 

 

「ふ~…いい湯加減ね…やっぱり一仕事を終えて入る風呂は格別ね~……ん…?」

 

 

ステラは気持ち良さそうにそう言う、だが、何処となく視線を感じた。

 

 

「おぉ…リーネちゃんより…いや、シャーリーさんと甲乙着けがたい…///」

 

 

芳佳はステラの胸を見て、目をキラキラさせ、笑みながら小声で呟いた。

 

 

「ん?何か言ったかしら芳佳…?」

 

 

「い、いえ!なんにもありません!……ステラさんそのお腹…?」

 

 

「あっ…これは…」

 

 

「宮藤さん、亜弥さん?ステラさんに…お腹にてこれは…」

 

 

「これって銃弾の痕ですか?」

 

 

芳佳がそう言いながら亜弥は震え、リーネとペリーヌがステラの腹を見ると、そこには弾痕みたいな痕があった。

 

 

「え?あぁ、これね…これは…東南アジアのシンガポールで…敵機の機銃掃射を受けた…不名誉な傷よ…」

 

 

「東南アジア…?敵機…どんな敵と戦っていたの?」

 

 

「ステラさん、ちょっと失礼します!」

 

 

「えっ…亜弥?」

 

 

リーネとペリーヌはステラの言葉を聞いて震えた。

すると、亜弥は魔法力を発動して、右手で彼女の肩に接触、風呂場のみ景色が変わった。

 

 

「亜弥ちゃん!?これは…?」

 

 

「っ!…これは…シンガポール?」

 

 

ステラによる禁断の記憶が映し出された。

 

ステラは異世界の戦争で、リベリオン陸軍=アメリカ陸軍のP-51H型ムスタングの戦闘機パイロットであり、爆撃機B-24の護衛する任務に就いていた。

 

 

爆撃機の空襲目標は扶桑軍=日本軍が占領するシンガポール。

 

 

敵の陸地から高射砲、海に浮かぶ艦艇が対空砲や機銃が発砲。さらにフロート装備、尾翼に虎のマークが描いた二式水上戦闘機が迎撃に向かい、交戦する。

 

 

「…あいつは…ダンピールとラバウルのフロート戦闘機!今度こそ落としてやる!!」

 

 

 

激しい空中戦の末、照準を入れた時に敵機から手榴弾を投げ飛ばされ、爆発の影響で風防のガラスが半壊、敵機がステラの背後に周り込まれ、機銃を受けた。

 

 

腹部に被弾したステラの身体が衰弱、それでも愛機と共に飛行を続けた時、異次元の入り口に呑まれ、この世界のロマーニャ半島の海岸に不時着。

 

 

のちに、504統合戦闘航空団アルダーウィッチーズ隊長、フェデリカ・N・ドッリオ少佐に命を救われた。

 

ウィッチに覚醒し、愛機がストライカーユニットに変形した。

 

だが、魔法力があっても、飛行能力は曖昧。

 

竹井醇子の推薦により、この島に移されアンナの指導により、今に至っている。

 

 

「ステラさん…あの戦時…辛くなかったのですか…?」

 

 

「…辛くないと言えば嘘になるわ…あの戦争で惨めだったのが、…アメリカに住む移民2世とハーフは差別を受けた…危険な民族として烙印を押された…」

 

 

「でも、…なんで軍隊に…」

 

 

「両親を解放する為に…」

 

 

「両親の解放…?」

 

 

ステラは悲しくも、真剣な表情になった。

 

 

「あの1941年12月7日、日本…扶桑がハワイを攻撃した日から、アメリカ…リベリオンの目が変わり、扶桑系人とハーフが収容所に送られてた。当然、あたしと兄、母、あたし達を愛した父も一緒に檻へ、それから軍隊があたし達収容所の人間に募集の報せで、あたしと兄、バッキーと弟のトムは志願した。二世、ハーフ部隊は、太平洋と欧州に配属、他の部隊から白い目で見られても、裏切り者じゃないことを証明するために。ねぇ、亜弥ちゃんいいかしら?」

 

 

「あ…うん!」

 

 

ステラは亜弥に触れながら、彼女が携わった戦場が映し出された。

 

 

初陣が南太平洋のダンピール海峡、翌年は信頼する仲間たちとラバウルでの航空戦。

 

フィリピン戦で敵機と抗戦、シンガポールの空に落ちた。

 

憎しみ合う戦乱の時、幸せなことがあった。バッキーたち二世とハーフたちはハワイで信頼する白人上官の家に集い、人種問わずのパーティーが一番の思い出であった。

 

 

「さて、明日も頑張って風呂場の水を貯めないとね!」

 

 

「はい、ステラさんも!」

 

 

ステラは湯船から去った。

 

 

 

 

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