早朝
洋介と亜弥の親娘が起床し、芳佳とリーネがエプロンを付け始めていたところだった。
「おはよう芳佳、リーネ」
「芳佳お姉ちゃん、リーネお姉ちゃん。おはようございます」
「あ、洋介さん、亜弥ちゃん。おはようございます。今からご飯を作りますからね」
洋介と亜弥が二人に挨拶すると、芳佳たちは笑顔でそう言い、二人は椅子に座る。そして芳佳はご飯を作ろうと米袋を持つ。
だが
「あれ?」
妙に米袋が軽い芳佳が米袋を逆さにし振ってみると、米粒が一つ落ちるのであった。
「ん?どうしたんだ芳佳」
「洋介さんお米が…」
「米?…あ、一粒しかない…」
「ほんとうだ…お米がないね…」
「どうしよう…まだどこからも補給来てないよ?」
亜弥と洋介が米袋を覗くとさっきの一粒以外に米は入ってなかった。するとそこへ美緒がやってきて、芳佳は美緒に気付き声をかけた。
「坂本さ〜ん!お米無くなっちゃいましたぁ!!」
「え?一挙に全員集まるとは思わなかったしな…それは困った…」
それを聞いた美緒は困った顔をする。
「ということで、臨時補給を実施することになりました」
朝食の食堂で起きたことで、ミーナがそのことを聞き、臨時補給を行うことにしたのだ。
「大型トラックが運転できるシャーリーさんと、ロマーニャの土地勘があるルッキーニさんはまず決定とします」
「たまには基地の外に出たかったから、こんな任務は大歓迎だよ」
と、ミーナの指示で運転はシャーリーであり、ロマーニャが故郷のルッキーニが街を案内する意味ではこれは当然だった。
シャーリーもその任務を喜んで受け、横にいるルッキーニは年相応に飛び跳ねてはしゃいでいた。
「他に、宮藤さんとリーネさんも同行します」
「あの…私はやっぱり待機で…」
さらにミーナは、街に送り出すメンバーとして芳佳とリーネを指名する。しかし、リーネはすこし言いずらそうにではあるが、手を上げて自分は待機をすると述べた。
芳佳はどうしてかと思い、ミーナはそれを了承した。
「わかりました。では、宮藤さんお願いね」
「ミーナ中佐、リーネが行かないなら俺が行きます。物資は重いので力仕事もありますから」
「いいわ。では、桜井さんもお願い」
「了解です、ですが…もう一つお願いがあります」
リーネの空いた枠に洋介が入る。そして、洋介が言った側で亜弥が洋介の手を繋いだ。
「止める理由はないわ、行ってらっしゃい亜弥さん」
ミーナがそう言うと亜弥は笑顔を見せる。
「よかったな、亜弥」
「うん♪」
「洋介さん、亜弥ちゃんの仕草でわかるなんて…」
「さすがは、亜弥ちゃんのお父さんだね洋介さんは」
芳佳とリーネは小声で喋る時
「宮藤、亜弥。任務中は桜井かシャーリーの指示に従うようにな」
「「 はい! 」」
「では、欲しいものがある人は言ってください」
そして美緒は、芳佳と亜弥に命令をしっかり守るようにと言う。そして、ミーナは全員に何か欲しいものが無いかを聞いた。
「欲しいものか…新しい訓練器具とか…」
「はいはい…そういうのじゃなくて、皆の休養に必要な物よ」
美緒の言う欲しいものが完全にトレーニング系の物であったため、ミーナがそうじゃないと説明する。
「休養か…訓練をしっかりしてしっかり休む、重要だな」
「うーん、それなら訓練の後に士気を保つには風呂が必要だな」
「それ、湯船を買えって事ですか…?」
トゥルーデが休養と言う言葉に共感し、そして美緒が風呂が必要であると言う。
しかし洋介は、美緒がまるで湯船を買ってこいと言っているようにしか聞こえず苦笑いをする。
そしてミーナは溜息を吐く。
「はぁ〜…貴方達の頭って訓練しかないの?誰かもうちょっとまともなものを―」
「あの、私は紅茶が欲しいです」
ミーナが周りに助けを求めた時、リーネが手をあげて意見を出す。今まで出た物の中では一番まともだった。
その言葉に続いて、ミーナも意見を出す。
「そうね、ティータイムは必要ね。それじゃあ私はラジオをお願いしていいかしら?」
「カールスラント製の立派な通信機があるじゃないか?」
「ここに置くラジオよ。皆で音楽やニュースが聞けるといいでしょう?」
ミーナはラジオを注文する。確かに隊の中での娯楽は重要なので、その意見には誰もが賛成した。
芳佳は次々とウィッチたちのメモ帳に書き記した。
トゥルーデは妹のクリスに贈る服。
ペリーヌに関しては、頂いた給料と貯金をガリア復興財団に寄付し、リーネが注文した紅茶の他に花の種をお願いした。
エーリカは、トゥルーデに菓子から書き替え、目覚まし時計に変更された。
サーニャは猫の置物
エイラに関しては拘りと注文内容が多い枕。
洋介と亜弥の親子はトラックに向かって歩いていた。
「亜弥は、ローマで何を買うんだ?」
「あ、う〜ん…ローマのお店にきてから選ぶよ。亜弥は、ローマで映画の気分になりきるよ!」
「映画の気分?」
「うん、お父さんは…?」
「そうだな…珈琲とワイン。あとは502の…」
「桜井!!」
突然、別の通路からトゥルーデが現れた。
「なっ…なんだ!?」
「お姉ちゃん!?」
「私の二人の妹を、守ってくれ!」
「あ、あぁ…わかった…」
洋介は苦笑しながら彼女の要望に応えた。
洋介、亜弥、シャーリー、ルッキーニ、芳佳を乗せた軍用トラックはロマーニャの街へと向かうのであった。その時にリーネが心配顔で送ってくれた。
軍用トラックの運転席にシャーリーが操作し、助手席には洋介が居座った。
「なぁシャーリー、ローマまでどのくらい到着するんだ…?」
「そうだね、数時間ってところだ」
「そうか、ちょっと一眠りするから…ローマ郊外に近づいたら起こしてくれ…」
「ふふっ、OK!」
洋介は略帽を顔に被せ、一眠りした。
そして、シャーリーは目付きが変わり、レバーとアクセルを操作し、速度を加速させた。
数時間後
「うぇ~、ぎぼぢわるい~」
「…ん…よく寝た~…芳佳…?」
トラックの座席で芳佳はグロッキー状態にいた。
シャーリーの運転は、かなり乱暴で、芳佳には応えていた。
「皆、なんで平気なんですか~」
「運転してるのあたしだし」
「何度も乗ってるし!」
シャーリーとルッキーニのコンビはそう述べ
「洋介さん、あんな運転でよく眠っていましたね…」
「まぁな、戦闘機乗りで慣れているが、もっとひどいのに乗ったことある…」
洋介は少し欠伸をしながら応える。
ラバウル六勇士の金城幸吉の運転に比べれば、ましだった。
亜弥は平然としていた。
「小樽でアイヌの子供たちと、木の上で遊んでいた~」
「京都の鞍馬寺で鍛えた牛若丸か…」
そしてトラックはロマーニャの市街地に入った。
「芳佳、洋介、亜弥!ローマの街だよ!」
「え?」
ルッキーニの言葉に、三人は窓を覗くとそこにはきれいな街並みが見えた。
「うわぁ〜!!うわぁ〜!!すご~い!!」
芳佳は興奮して述べる。
「これは凄いな…」
「あれ?芳佳と洋介、亜弥はローマ初めて?」
「うん!あれ何?」
「あれは昔の闘技場だよ」
ルッキーニが地元を案内しながら自慢し、三人は初めて来たローマの街に興味津々だった。
そして芳佳が気になった建物などはルッキーニが一つ一つ説明する。
「あははは!芳佳、子供みたい!」
「日本…いや、扶桑の建物は基本木造って聞くから、こういう石造りの街が珍しんだな」
「ローマは歴史ある街だからな」
「へへ〜ん。そ、うでしょそうでしょ!」
ルッキーニは先ほどから目を輝かせてばかりの芳佳を見て笑う。洋介は芳佳が珍しく見る理由を言い、シャーリーも、芳佳と亜弥がこんなに驚くのも街を見ながら納得するので、ルッキーニは自慢げになる。
「ホント素敵な街だね!ルッキーニちゃんの生まれた街なんでしょ?」
「ふふ~ん、まあね!」
「アフリカでも、ローマの自慢ばっかりしてたからな~」
「だって」
膨れるルッキーニ。
「まぁシャーリー、ルッキーニがとても故郷を愛している優しいウィッチなんだな。」
「うん、洋介!そう言ってもらえると嬉しいよ♪︎」
そして、ルッキーニが案内した場所でトラックを止める。
「ここでいいのか?」
「うん、ここは大抵のものは揃ってるんだ」
そこは雑貨屋で、ここで皆の注文した欲しいものを買うのだ。
中に入ると、そこには食器や家具、衣類や食品などありとあらゆるものがあった。
「おお、似合ってるな宮藤」
「どれどれ?…いいな」
シャーリーは芳佳が自分のサイズに合うかを図っている洋服を見てそう感想し、芳佳の服を見る。
「いえ、これはバルクホルンさんに頼まれたやつです」
「えええ!?これ、あいつが…!?」
しかし、芳佳の説明を聞いてシャーリーは服を見ながらあり得ないと言った顔をする。そして、何を思ったのか突然お腹を抱えて笑い出した。
「あっははははは!いっひひひひひ!」
「違いますよ!これは妹のクリスさんが着るんです!」
「はっははははは!」
芳佳は懸命に言うが、シャーリーは相当ツボにはまったようだ。彼女の頭の中では、芳佳が今手に持っている服を着ているトゥルーデの姿が頭にあった。
「はぁ~…芳佳、メモを貸してくれ」
「あっ、はい!どうぞ」
洋介はそう息を吐くと、芳佳からメモを貰う。そして、他に必要なものは何かを確認して店内を見る。
「枕…枕…これか?えっと…赤ズボン隊…?なんじゃそりゃ、バッキーよ?」
そして、洋介はメモにやたら詳細に書かれていた注文品を見つけて籠に入れる。
「後は…おっ…」
他に必要なものは何かと探しているとき、洋介の目にある物が止まった。
ルッキーニは今、退屈している。理由は、自分が集めるものは集め終わったため、残りの人達が終えるのを待たされていたからだ。
「ふぁ~」
「ルッキーニさん」
「亜弥どったの?」
「うん、亜弥も欲しいものを買えたから」
「そうなんだ…ん?」
ルッキーニは欠伸しながら、年が近い亜弥とやり取りをしていると、窓の外を見た。
その時、ルッキーニの目にある光景が止まった。
それは、黒服でサングラスを掛けた男二人が、赤髪の少女の手を取って車に入れようとしている姿だ。よく見ると、少女は抵抗している。
ルッキーニはすぐさま店を出て、少女の元へ向かった。
「あっルッキーニさん、待って!」
亜弥もルッキーニの後を追うのであった。
「放してください!」
少女は抵抗をしている。しかし、黒服たちは少女を車に引っ張ろうとした。
「スーパールッキーニキーック!!」
その時、店から飛んでやって来たルッキーニが、男たちに向けてジャンプ蹴りをした。男はその蹴りを顔に食らい吹っ飛ばされ、そしてもう一人の男を巻き込んで倒れた。
「あああ、あの…」
「へへ~ん、いこ?」
「え?えええええ!?」
少女は倒れた男たちを見てアワアワする。しかし、ルッキーニが手を取って少女を懸命に男たちから放そうとする。しかし、少女はいきなりすぎて何のことか分からずに大声を出したのだった。
「あの…ごめんなさい!」
「ま、待て…ぐっ」
そして、亜弥はルッキーニに代わり、男たちにお辞儀しながら謝罪した。
倒された男たちは手を伸ばすが、力尽きてその場に気絶をしたのだった。