ストライクウィッチーズ ~蒼空を舞う零の荒鷹~   作:鷹と狼

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第49話 ローマの休日 後編

一方、シャーリーと芳佳は店の中にルッキーニと亜弥がいなくなったことに気付き、シャーリーたちは軍用トラックのほうへ行くが誰も乗っていなかった。

 

 

 

「あれ〜、車にもいないな…」

 

 

 

「さっきまでお店の椅子に亜弥ちゃんと一緒に座ってましたよね?」

 

 

「う~ん…ルッキーニに残りのお金全部渡しちまったからな~…」

 

 

「ええっ!?まだ食料買ってないですよ!」

 

 

「あいつ、どこに行ったんだ?」

 

 

「それよりも…ウップ…」

 

 

芳佳は洋介に振り向こうとした時、女性の胸部にぶつかった。

 

 

「あれ、芳佳?」

 

 

「うぅ~///…その声は、ステラさん!」

 

 

芳佳が至福な微笑みながらぶつかった相手は、以前島での特訓に付き合ったステラ・A・エヴァンスだった。

 

 

「おーいステラ!あれ、君は…?」

 

 

「あ、…バッキーさん!」

 

 

ステラのうしろから、連れ添いのバッキー・S・五十嵐が現れた。

 

 

「しばらくぶりだね芳佳、元気だった!?」

 

 

「はい、バッキーさんとステラさんも!」

 

 

「なぁ宮藤、この二人は誰だ?」

 

 

「シャーリーさん、この二人は504部隊に所属するウィッチとウィザードです」

 

 

「え…?えぇ~マジか!?すると…洋介と亜弥と同じ異世界人か…」

 

 

「芳佳さんの言う通り、俺はバッキー・S・五十嵐。アメリカ…いや…この世界では扶桑系リベリオンの大尉だ」

 

 

「あたしはステラ・A・エヴァンス。扶桑とリベリオンのハーフであり、中尉よ!バッキーと同じ、504部隊の隊員よ!」

 

 

「へぇ〜!洋介と亜弥以外のウィザードとウィッチを初めて見た!あたしは501のシャーロット・E・イェーガー、リベリオン陸軍大尉。シャーリーと呼びな、バッキーとステラ!」

 

 

「あぁ、よろしく。シャーリー」

 

 

「えぇ!よろしくね、シャーリー!」

 

 

バッキーとステラはシャーリーと握手した。すると彼女はステラのある部分を目にした。

 

 

「…なぁステラ、…あんたの胸なかなかだね~」

 

 

「そうかしらシャーリー、あなたには負けないよ~♪」

 

 

ステラとシャーリーが火花を散らしている時

 

 

「ちょっと待ってくださいお二人さん!」

 

 

「なぁ芳佳、あの洋介はどうしたんだ…?」

 

 

バッキーが指差すところ、芳佳とシャーリーがうしろを振り向くと

 

 

「おおーい、亜弥〜!どこに行ったんだ~?」

 

 

 

洋介は、幾つかの店の中や、路地裏のゴミ箱の蓋をあけて中をのぞき込んだり、あたりをきょろきょろしてうろたえる姿があった。

 

バッキーは芳佳から事情を聞くと、501の物資調達で仲間のルッキーニと亜弥は行方を眩ました。

 

 

「そうなのね…」

 

 

「「 だから、早く何とかしないと… 」」

 

 

「ところで、ルッキーニはどんな娘だい…?」 

 

 

洋介を始め、芳佳とシャーリー、バッキーとステラの4人は亜弥とルッキーニを探しに行くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

一方ルッキーニたちはどこかの公園の噴水場にいた。

 

 

 

「あ、ありがとうございました…あの…あなたたちは?」

 

 

 

少女がそう述べるとルッキーニが立ち上がり

 

 

 

「あたし?あたしは通りすがりの正義の味方フランチェスカ・ルッキーニ!!」

 

 

 

「桜井亜弥です」

 

 

 

「ルッキーニさんに亜弥さんですか…私はマリアといいます」

 

 

 

「マリアかよろしくね♪」

 

 

「ねぇ、マリアさん…さっきの黒服の方は…?」

 

 

「あ…あの方は…」

 

 

「わかった、あいつらはマフィアなんだ!」

 

「ま…マフィア!?」

 

「裏通りは危険だから気をつけてね~!」

 

 

ルッキーニはマリアに忠告する。

 

彼女から聞くとなんでも地元の人だがこのロマーニャを歩いたことがなく、街をうろついていたところさっきの男たちに絡まれていたとのことだった。

 

 

 

「そっか!じゃあ、あたしが案内するよ!」

 

 

「え?でも…」

 

 

「大丈夫。このルッキーニ様にお任せアレー!!亜弥も行こっ!」

 

 

「あっ!?うん!」

 

 

ルッキーニは亜弥とマリアを連れてローマの街を案内するのだった。

 

コロッセオに行ったり真実の口やトレビーノの泉などの歴史ある建物へ見物。

 

またヒスパニア広場で子供たちと一緒にジェラートを食べ、きれいな洋服で手を繋ぎながら歩き、豪華な食事を買ったり食べたりした。

 

そして、子供たちと別れるとルッキーニと亜弥は財布を逆さにし振る

 

 

「にゃはは…財布空っぽ…」

 

 

「亜弥も空っぽだよ、ルッキーニさん…」

 

 

と、三人で苦笑しあっていた。

 

 

「(お父さん、定子お母さんに何を買うんだろう…?)」

 

 

亜弥は頭を傾げ、考えていたのだった。

 

一方、シャーリーたちは喫茶店で休憩していた。

 

 

「あ~、全然見つかんねぇ~…」

 

 

「で洋介、少しは落ち着いたか?」

 

 

「ここでお茶でも飲んでいなさいよ、洋介さん」

 

 

「あぁ…面目無い、バッキー…ステラ…シャーリー…芳佳、いつらはどこ行ったんだ…」

 

 

「ルッキーニちゃんと一緒ならたぶん大丈夫だと思うんですが…」

 

 

「はぁ…ん…?」

 

 

芳佳の言葉で、洋介は落ち着くためにコーヒーを飲み、新聞棚に置かれてある新聞の記事に目を通した。

 

 

『第一公女、明日初公務 ロマーニャ公国第一公女マリア殿下は、明日の園遊会に出席。その場で、ラジオや新聞等のメディア向けのスピーチを行う予定 』

 

 

表面に大きく書かれその横には、その第一皇女らしき少女の写真が載っていた。

 

 

「(ウィッチと変わらない年齢なのに、公室や政治の事はわからんが、若いのに大変だな~)」

 

 

素直にそう思う中、芳佳とバッキーはケーキを堪能していた。

 

 

 

「シャーリーさん、洋介さん!これすっごくおいしいですよ!」

 

 

「おぉ~!旨いねぇ~」

 

 

「お前な~…」

 

 

「はい!」

 

 

自身がおいしいと絶賛したケーキを一口、シャーリーに向け、シャーリーは一口食べる。

 

 

「…っ!?…おお!すっげぇうまいな、これ!」

 

 

「でしょ~!」

 

 

「へぇ~!?あたしも!」

 

 

「ああ、すいません!このケーキ4つ…いや、5つ!」

 

 

「お願いします!」

 

 

シャーリーは近くを通ったウェイターに注文する。

 

 

「あ、ついでにこの珈琲もう一杯お願いします。」

 

 

 

その間にも、ルッキーニと亜弥と行動を共にしていたマリアは初めて見る光景ばかりなのか目を輝かせたりしていた。そして今、3人はローマで一番高い観光名所に来ていた。

 

 

 

「どおっマリア、亜弥!ここから見る景色が、私は一番好きなんだ!」

 

 

「美しい…」

 

 

「うん…キレイだね…」 

 

 

ルッキーニが自慢げに紹介する。

マリアと亜弥はルッキーニに言われて街を見ると、その光景にとても感激していた。そこからはローマの街の殆どが一望でき、人も小さく見えるほどの光景だった。

 

 

「私、家に帰らないでずっとここに居たいです」

 

「だったらいればいいじゃん!」

 

 

「そうだね」

 

 

「ふふっ、そうですね」

 

 

 

ルッキーニがそんなことを言うので、マリアは笑う。

しかし、マリアは笑った後に再び街に視線を落とすと、どこか不安そうな顔をする。

 

 

 

「この美しいローマの街を守ることが、私にできるでしょうか…?」

 

 

「え?」

 

 

「あっ、家から煙が!」

 

 

 

ルッキーニはマリアの言っていることが分からずに聞くが、マリアは家の屋根から煙が出ていることに驚く。

 

 

 

「食事の準備の煙だよ」

 

 

 

そんな風に驚くマリアに、ルッキーニが説明する。しかし、マリアはその家一つ一つをみると、おかしなことを言った。

 

 

 

「あの一つ一つが、民人の暮らしている家なのですね」

 

 

「…民人?」

 

 

「今まで知りませんでした」

 

 

「マリアさん…?」

 

 

マリアの不思議な言い方に、ルッキーニと亜弥は疑問に思う。

 

民人なんていう言い方をする人など、ルッキーニは今まで見たことが無い。しかし、ルッキーニはそんな事よりと、話題を変えた。

 

 

「ねえ、ホントは絶対見せたい景色がもう一つあるんだ!」

 

 

「それは是非見てみたいです!」

 

 

 

ルッキーニの新たな話題にマリアも食いつく。しかし、ルッキーニはここで表情を少し落とす。

 

 

「う~ん、今はちょっと…」

 

 

ルッキーニは今はその景色を見せることができないと言う。そんなルッキーニの姿を見て、マリアは特にがっかりした表情などを見せずに笑った。

 

 

 

「そうですか。では、またの機会にお願いします」

 

 

「うん!」

 

 

そんなマリアの約束の言葉に、ルッキーニも笑顔になり頷いたのだった。

 

その時だった。街全体に空気を吹き飛ばすような音が鳴り響く。それはローマに設置されたネウロイ警報だった。

 

 

「ネウロイだ!」

 

 

「大変!早く逃げましょう、ルッキーニさん、亜弥さん!」

 

 

 

マリアは亜弥とルッキーニの手を取って逃げるように言う。しかしルッキーニは動かず、マリアの方を向いて言った。

 

 

「あたし、行かなきゃ」

 

 

「え?」

 

 

 

ルッキーニの言葉にマリアはどういうことかと思う。

 

丁度その時、地上を走っているトラックから芳佳が顔を出してルッキーニを目視した。

 

 

 

「居た!シャーリーさん!塔の上です!」

 

 

「塔!?」

 

 

「ホントだ、ルッキーニ、亜弥!!」

 

 

 

芳佳の言葉に洋介は驚くが、シャーリーはルッキーニの姿を見つけると大声で呼ぶ。

 

 

その声に、ルッキーニと亜弥が気づいて柵を乗り超える。

 

 

 

「シャーリー!」

 

 

「危ない!」

 

 

「行かなきゃ!あたしウィッチだから!」

 

「えっ?ウィッチ?」

 

 

「亜弥、マリアをお願い!」

 

 

「わかりました!!」

 

ルッキーニはマリアに振り返って述べる。マリアはルッキーニがウィッチだという事に驚いた様子だった。

そして、ルッキーニは亜弥にマリアといる様に

指示し、ルッキーニは自分のかぶっていた帽子をマリアに投げ渡す。

 

 

 

「これ、持ってて!」

 

 

「あ、はい!って、ええっ!?」

 

 

 

マリアがそれを受け取ったと同時に、ルッキーニは屋根からジャンプをする。その高さにマリアは驚く。しかし、ウィッチであるルッキーニはそのまま屋根の上を滑りながら、マリアに話す。

 

 

 

「だからあたし、ロマーニャを守らなきゃいけないの!」

 

 

 

そう言って、ルッキーニは大ジャンプをした。

そして地面に降り立つと、トラックの荷台に積み込まれていたストライカーユニットに足を入れる。

 

魔法力を流し込み、魔導エンジンを回転させる。そして右手側に出た機関銃を手に取ると、そのまま垂直に飛翔した。

 

上空では、先に飛んでいた洋介達が待っていた。しかし、ルッキーニは真っ先に先頭に立ち、ネウロイに向かっていく。

 

そんなルッキーニをシャーリーが止める。

 

 

 

「先走るな、ルッキーニ!」

 

 

「でも…!」

 

 

「分かってる、だが一人じゃだめだ!」

 

 

ルッキーニはシャーリーに何か言いたげだが、シャーリーはちゃんと理解していた。シャーリーだけでなく、芳佳や洋介も分かっている。

 

 

「ルッキーニちゃんの故郷を守りたいのは、私たちも一緒なんだから!」

 

 

「皆で協力して、ロマーニャの街を守るぞ!」

 

 

「うん!ありがとうシャーリー!芳佳!洋介!」

 

 

 

三人の思いを知って、ルッキーニは笑顔で返事をする。

 

 

「おーい、洋介!!」

 

 

「芳佳!シャーリー!」

 

別の空域からベアキャットとP-51H型ストライカーユニットを履いたバッキーとステラが飛来した。

 

 

「バッキー!」

 

 

「おっ、ステラ!」

 

 

「あれ、あんた達は?」

 

 

ルッキーニは、飛来したバッキーとステラを尋ねた。

 

 

「俺はバッキーだ!」

 

 

「あたしはステラ、よろしくね!」

 

 

「うん、よろしく!!バッキー!ステラ!」

 

 

二人はルッキーニに簡素な自己紹介を済ました時、北部から3体の同型ネウロイが出現した。

 

 

「よし、芳佳は俺に付け!シャーリーはルッキーニを頼む!」

 

 

「はい!」

 

 

「了解!行くぞ、連携攻撃だ!」

 

 

「俺とステラはあいつをやるぞ!」

 

 

「えぇ!!」

 

 

芳佳が洋介に並び、ルッキーニがシャーリーに、バッキーとステラが並ぶ。

 

そして、六人は3体のネウロイに向かって飛行する。

 

 

ネウロイは六人に向けて攻撃をする。しかし、それぞれ回避をして攻撃を加えて行く。

 

その時、ルッキーニがあるものを見つけた。

それはネウロイの体の下から僅かに露出していたコアだった。

 

 

「あっ、シャーリー!コアが見えた!」

 

 

「よし!X攻撃だ!」

 

 

「わかった!芳佳、君はルッキーニとステラの方に行け!俺とバッキーはシャーリーと相手の気を向ける」

 

 

「はい!」

 

 

「OK!!」

 

ルッキーニの言葉に、シャーリーが作戦を通達、そして洋介とバッキーはルッキーニ護衛の為に芳佳とステラを移動させる。

 

芳佳とシャーリーがネウロイの上から攻撃を加えて行く。攻撃を受けて、ネウロイは洋介達にビームを撃つ。

 

 

 

「いいぞ!来い来い来い!」

 

「そのまま騙されろよ…」

 

 

 

ビームを回避しながら、洋介とシャーリーは続けて攻撃をしていく。これでネウロイの注意はルッキーニ達から離れた。

   

 

「ルッキーニちゃん!」

 

 

芳佳がルッキーニの名前を呼ぶ。

ルッキーニは自分の前にシールドを重ねて張ると、固有魔法『光熱攻撃』を行う。これで、ルッキーニはネウロイを貫くつもりだ。

 

しかし、ネウロイはルッキーニの行動に気づき、攻撃をルッキーニ側に変えた。

 

 

「気付かれた!」

 

「芳佳、ルッキーニを守れ!」

 

「はい!」

 

 

洋介の言葉に宮藤は返事をし、ルッキーニの前に立つ。そしてネウロイの攻撃を自慢の大きなシールドですべて防ぐ。だが

 

「あぁっ…しまった!!」

 

 

弾かれたビームが地上に落下、その先に亜弥とマリアがいた。

 

「…っ!あぁ…」

 

自分の命がここまでだと思った。その時、亜弥は魔法力を発動、シールドを展開し、マリアを護った。

 

 

「マリアさん、逃げて!!」

 

 

「亜弥さん、…あなたもウィッチ…!?」

 

 

「亜弥…あの少女は写真に写っていた…」

 

 

地上の攻撃を亜弥、空中で芳佳がすべて防いだおかげで、ルッキーニは動きやすくなる。そして、ネウロイのビームを避けながらルッキーニは急上昇をしていき、そしてネウロイに体当たりした。

 

 

 

「たああああ!!」

 

 

 

気合一発、ルッキーニはネウロイの体を貫いた。

 

 

「そこっ!!」 スパアァァン

 

 

洋介も、軍刀鷹狼でネウロイを切り裂いた。

 

 

「コアよ!ぶち込んで、バッキー!!」

 

 

「喰らえ!!」

 

 

ステラは機銃で表面を削り、彼女の固有魔法『コア探知』でバッキーに位置を知らせ、バッキーの機銃でネウロイのコアを撃破した。

 

それにより、三体のネウロイのコアは完全に壊れ、ネウロイはひかりの破片に変わったのだった。

 

 

 

「これが、亜弥たち501、504部隊のウィッチとウィザードです!」

 

 

「凄い…」

 

 

一連の光景を見ていたマリアは、ただその姿に凄いとしか言えなかった。その時、ルッキーニが空から降りてくる。

 

 

「見せてあげる!」

 

「え?」

 

「さっき言ってた、絶対見せたい景色」

 

 

 

そう言って、ルッキーニはマリアの体をお姫様抱っこすると、そのまま上空へ飛翔した。

 

 

「はわわ…」

 

 

「へへ〜ん!見て、マリア!これが絶対見せたかった景色だよ!」

 

 

 

マリアがだんだん上がって来る高度に驚く中、ルッキーニが下を向きながらマリアに言う。その声につられてマリアも見る。そして、目を輝かせる。

 

眼前には、ローマの街全てが一望できた。先ほどの塔の上よりもずっと高く、そしてずっと綺麗に映っていた。

 

そんな中マリアは、ルッキーニに質問した。

 

 

「…ルッキーニさんは怖くありません?」

 

 

「え?何が?」

 

 

「あんな恐ろしい敵と戦うなんて、怖くは無いんですか?」

 

 

 

マリアは、あんな恐ろしいネウロイと戦うルッキーニに、怖くは無いのかと思う。自分からしたら、あのような敵と戦うとなったら怖いと言ってしまうかもしれないからだ。

 

しかし、ルッキーニは違った。

 

 

「だって、ネウロイやっつけないとロマーニャ無くなっちゃうじゃん。皆の家とか友達を守るのが、ウィッチだもん」

 

 

ルッキーニはそうマリアに言った。ロマーニャ軍の問題児と言われている彼女も、ペリーヌと同じように祖国を愛している。だからこそ、彼女は祖国を守る為に戦うのだ。

 

そんなルッキーニを見て、マリアは微笑みながら言った。

 

 

「ノーブレス・オブリージュですか」

 

「え?マリアって難しいことばっかり言うね…」

 

 

「そうですか?」

 

ルッキーニとマリアがローマの空から景色を眺めている時、地上の広場でムっとした顔の洋介の前に亜弥が立っていた。

 

 

「…ごめんなさい」

 

 

亜弥が謝り、洋介は平手で亜弥の頭を叩き、撫でながら優しく抱きしめた。

 

 

「全く…心配…したぞ…」

 

 

優しく言うのだった。

 

そして亜弥は、まだ若き父親の彼の温かさに嬉しさを感じ、抱きしめるのだった。

すると、ルッキーニと飛んでいたマリアがやってきた。

 

 

「今日は、ありがとうございました」

 

 

「うん!また遊ぼうね!」

 

 

「はい」

 

 

「…殿下」

 

 

洋介はマリアの前で頭を下げ、右膝を地につけ、小声で話しかけた。

 

 

「私の亜弥…娘のことは、大変失礼しました」

 

 

「そんなことありません、私もとても楽しい時間を過ごせました…亜弥さん。先ほどは、ありがとうございました。あなたは命の恩人です」

 

 

 

マリアは亜弥に感謝を述べ、頭を下げた。

 

 

「亜弥は、その…ただ、必死でできることしただけ…」

 

 

「胸を張ってもいいんだぞ亜弥。お前が救ったお方は…」

 

 

「しー!」

 

 

マリアは口に人差し指を当て、わずかに微笑む。

 

その光景を見た洋介は、敬礼した。

 

 

「おっと、失礼しました…」

 

 

「では、私はこれで」

 

 

「うんバイバイ…」

 

 

「…スピーチ、がんばってください」

 

 

「…ええ」

 

 

 

ちょうどシャーリーがトラックのクラクションを鳴らした

 

 

 

「おーい、ルッキーニ!洋介、亜弥。そろそろ行くぞ!」

 

 

「ああ!今から行く!行くぞ亜弥」

 

 

「うん!」

 

 

洋介と亜弥はトラックに乗り、シャーリーがミラー越しに洋介たちが乗車したのを確認した後トラックが発進する。

 

 

「バイバイ、マリアー!またねー!」

 

 

「マリアさん、またいつか…」

 

 

二人が荷台から手を振る。

 

 

そして側から、ストライカーを牽引するジープが走行した。

 

 

「おーい、洋介~亜弥~!!」

 

 

「はぁーい!芳佳、シャーリー、ルッキーニ~!!」

 

 

「おっ!バッキー!ステラ~!」

 

 

 

「バッキーさぁ~ん!ステラさぁ~ん!」

 

 

「また、会おうな~!!」

 

 

洋介と芳佳、シャーリーとルッキーニ、亜弥は501基地。

 

バッキーとステラは504基地に帰投した。

 

 

 

マリアも振り返り、そして彼女の後ろには先ほどの黒服の男たちが立っていたのだった。

 

 

「ご迷惑をおかけしました」

 

 

二人に謝り、その二人とともにどこかへと帰るのであった。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 「うわあああん!ごめんなさーい!」

 

 

翌日、ルッキーニは両手にバケツを持たされて基地の外に立たされていた。原因は、食料調達のために持って行ったお金をルッキーニがマリアとの観光に全て使ってしまったことが原因だった。

 

 

 

「監督責任!…私にもあるな…共に反省しよう」

 

 

「すまん、ルッキーニ」

 

 

「今回ばかりは何も出来ない…すまんな」

 

 

 

美緒は監督責任と言うが、自分にも非があるなと言って歩いて行ってしまった。

そしてシャーリーと洋介は、ルッキーニの横を謝りながら歩いて行った。

 

そして、基地の中ではそれぞれの注文した物を渡し合っていた。

 

 

「はい、エイラさん」

 

「言ったものあったカ?」

 

「サーニャちゃんにはこれ」

 

「あ、ありがとう、芳佳ちゃん!」

 

 

芳佳がエイラとサーニャに注文されたものを渡す。そして芳佳は少し困ったように言った。

 

 

「もー、エイラさんって注文が多くって…」

 

「そ、そんな事無いゾ…!」

 

「エイラ、人にお願いするときはちょっと遠慮するものよ?」

 

「う~…」

 

 

サーニャに注意されて、エイラは少し立場が弱くなる。

 

そこに、洋介がやって来る。

 

 

「はいこれ、これは芳佳、こっちはエイラで、こっちはサーニャに」

 

 

「ん?何だ?」

 

「洋介さん、これは?」

 

洋介は三人にケースに入った何かを渡す。

エイラはそれを受け取るとケースを開けた。中に入っていたのは、狐のガラス細工だった。

 

そして、サーニャが中を見ると、そっちにもガラス細工、こちらは黒猫だった。

 

 

「これって…」

 

 

「ロマーニャの街で見つけたんだ。部隊の皆の分全部買ってきたんだ」

 

 

 

そう、洋介はロマーニャの雑貨屋で、動物のガラス細工を見つけたのだ。

ロマーニャで盛んになったガラス工芸品は、洋介の目を引き付けた。そして、洋介は自分のお金から皆の分をすべて買ってきたのだ。

 

 

「ありがとうございます、洋介さん」

 

「ありがとう、洋介さん」

 

「ありがとナ、洋介大尉」

 

「喜んでもらえて、よかったよ」

 

 

 

芳佳とサーニャ、エイラは洋介にお礼を言う。洋介は二人のお礼を聞けて、買った甲斐があったと言った様子だった。

 

そして、洋介はペリーヌの元にあるものを持っていく。

 

 

 

「ペリーヌさん、これ」

 

 

「なんですの、これは?」

 

 

「お花の種、この基地の周りにお花を植えたらどうかなって、リーネちゃんが」

 

 

「リーネさんが?」

 

 

ペリーヌはリーネが事の発案と知り驚く。

ペリーヌは、今回の件で一人だけ何も頼まなかった。そのため、リーネはペリーヌに少しでも元気になってもらおうと思い、花の種を頼んだのだ。

 

 

「はい。ペリーヌさんにお花の育て方を教えてもらおうと思って」

 

 

「ど、どうして私がそんなことを…」

 

 

「一緒に植えようよ!」

 

 

「教えてください」

 

 

二人の真っ直ぐとした言葉に、ペリーヌもあっさりと折れた。

 

 

「仕方ありませんわね」

 

 

そう言って、ペリーヌはお花の育て方を一つ一つ説明したのだった。

 

そして、皆はミーナの注文したラジオの前に並び、耳を立てる。

 

 

『…さて、本日初めての公務の場である、栄優会に出席されたロマーニャ公国第一皇女、マリア殿下からのお言葉です』

 

 

ラジオからは男の人の視界が聞こえてくる。そして、少し静かになると、次に女性の声が聞こえてくる。

 

 

『昨日、ローマはネウロイの襲撃を受けました。しかし、そのネウロイは小さな二人のウィッチの活躍で撃退されたのです。その時私は、彼女からとても大切なことを教わりました』 

 

 

全員が静かにラジオを見ながら聞く。

 

 

『この世界を守る為には、一人一人が出来る事をすべきだと、私も私が出来る事でロマーニャを守っていこうと思います』

 

 

そして、ラジオの向こう側に居るマリア殿下は、ある言葉を501のウィッチ達に送った。

 

 

『ありがとう、私の大切なお友達、フランチェスカ・ルッキーニ少尉、桜井亜弥さん』

 

「え?」

 

『ええええ!?』

 

 

衝撃の言葉に、ラジオを聴いていた全員が驚く。

 

何故、亜弥とルッキーニの名前が出たのかと誰もが思った。

 

 

「亜弥ちゃん…ロマーニャの皇女様と…」

 

 

「え…?」

 

 

「この国の人の友達になって、よかったね亜弥ちゃん」 

 

 

「リーネお姉ちゃん、サーニャお姉ちゃん…うん、ローマで映画の気分だったよ♪」

 

 

「映画?」

 

 

「ねぇ亜弥ちゃん、どんな映画なの?」

 

 

「うん、『ローマの休日』なの」

 

 

リーネとサーニャが亜弥に寄り添り、亜弥は笑顔になった。

 

 

『感謝を込めて、ささやかなお礼を501統合戦闘航空団に送ります』

 

 

そして、殿下の続けて言われた言葉と共に、基地の外で音がする。全員が見てみると、パラシュートによって投下された沢山の木箱があった。それは、マリア殿下がお礼として送ってくれた、補給物資の数々だった。

 

 

「お、重い…」

 

 

その補給物資の下では、外で立たされていたルッキーニが下敷きになってしまったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

504基地

 

 

 

「よし、出来た!」

 

 

「ねぇステラ、なにができたの?」

 

 

 

浴場から出たばかりのルチアナが、ステラが現像したばかりの写真を覗いた。

 

 

 

「こ…これはもしかして…!」

 

 

 

「さっきラジオで流れたロマーニャの皇女様と501、洋介と亜弥!?」

 

 

ローマの寺院をバックに、ルッキーニとマリア皇女を中心に501の芳佳とシャーリー、洋介と亜弥の親子。

そしてバッキーとステラが写る記念写真であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

オラーシャ ペテルブルグ 502基地

 

 

「みなさーん!洋介さんからの贈り物ですよ!」

 

 

「なんだって!?」

 

 

「洋介さんからの贈り物!?」

 

 

502部隊のウィッチ、雁渕ひかりの呼び掛けでウィッチたちが格納庫に集まり、ひかりとニパが木箱の蓋を開けた。

 

 

「おぉっ、ロマーニャの菓子だ!洋介、ありがてぇぜ!」

 

 

「これはロマーニャのぶどうジュースだ~♪洋介くん、ありがとう~♪」

 

 

直枝とクルピンスキーは笑みを浮かべながら歓喜した。

 

 

「柔なことをするな、桜井は…」

 

 

「ですが、桜井さんと亜弥ちゃんは元気そうですね」

 

 

隊長のラルとサーシャは僻みっぽく呟いたが、心では喜んでいた。

 

 

「あぁ」

 

 

「定ちゃん、これはトマトと海産の缶詰とパスタ。トマトとシーフードパスタができるね~♪︎」

 

 

「そうね、ジョゼ。…洋介さん、亜弥ちゃん…」

 

 

 

下原定子は笑みを浮かべながら、洋介と亜弥が写る写真を手にした、

 

 

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