早朝 501基地 滑走路
「はぁ…はぁ…」
洋介はいつもの様に、軍刀鷹狼で鍛錬をしていた。
基地のはずれのところに居る人影を見つけた。それは坂本美緒の姿であり、彼女は海に向けて手に持っていた刀を振るうと、そこから海面が大きく揺れ、そして基地から地中海に向けて一直線のビームのように波が広がっていく。
「坂本さん…な…なんだあれは…?」
洋介がそんなことを思っていた時、新たに人影が一つ増える。
なんとそれは芳佳の姿だった。
「ん……あれは芳佳か…」
食堂
「お~う、洋介!」
「おっはよ〜!洋介!」
洋介が一番乗りで食堂へ入ると、シャーリーとルッキーニが洋介の方を向いて挨拶をする。
「あれ?今日はシャーリーとルッキーニが当番?」
「そうよー!今日のメニューはズッパ・ディ・パーネとボンゴレビアンコだよ!」
洋介が聞くとルッキーニが答える。
洋介が厨房の方を覗くと、そこにはパンのスープと二枚貝を使用したパスタがあった。
「へぇ~…旨そうだな~♪麺か……」
その間に、他のメンバーも続々と食堂へとやって来る。
そして、集まったウィッチたちが食事をとり始めた頃、遅れて芳佳が食堂へやって来た時に洋介が声を掛ける。
「おはよう芳佳、早起きだったのに来るの遅かったな」
「え?」
「すまないが、基地の外に居たのを朝見たぞ」
芳佳は驚く中、洋介は基地の外に居たのをしっかりと見ていたため、遅かったことに意外だと思っていたのだ。
そして食事は進んでいくが、芳佳は下を向いて何か考え事をしていたのか、小さく返事を返した。
「うん…」
「?」
その反応に全員が不思議に思う。代表してリーネが聞く。
「どうしたの、芳佳ちゃん?具合でも悪いの?」
「え?ううん、大丈夫。どこも悪くないよ」
リーネの言葉に芳佳は顔を笑顔にして返事をする。
「だったら食え、たとえ腹が減ってなくてもだ。エネルギーを摂取しない奴が有事の際、まともな戦闘ができると思うか?」
「は、はい…」
トゥルーデの言葉に芳佳は肩を小さくしながら返事をする。
「エネルギーって…」
「あー、もう。朝っぱらから軍人の説教なんて聞きたくないよ~」
そんなトゥルーデの言葉に厨房に居たシャーリーは苦笑いをし、トゥルーデの横に座っていたエーリカはうんざりしたような顔をする。
「おいハルトマン!それがカールスラント軍人の言葉セリフか?」
「また始まった…」
「いいか?ここはブリタニアと違って戦力が全然足りないんだ。我々の任務は今まで以上に重いんだぞ!」
エーリカは耳にタコができるようであるが、トゥルーデの言っていることも正しい。
ロマーニャの軍隊は他国の軍隊に対して練度の低さが露見しており、ブリタニアに比べると圧倒的に戦力不足が否めない。そのため、ウィッチ一人一人の責任は以前より重いのだ。
しかし、洋介はそんなトゥルーデに言った。
「…なあトゥルーデ、それは分かるが前にも聞いたぞ」
「いいや桜井、これは大事なことだ」
「だがな、何度も言っていたらうんざりして逆効果になるぞ」
洋介とトゥルーデが言い合いになる。
基本中立立場の洋介は仲裁役などを行う立場であるので、珍しい姿でもあった。
「ねぇ、お父さん、お姉ちゃん!ちょっと…」
「頂きます!」
その時、二人が言い合いをしている向かい側で亜弥が止めようとした時に大きな声がする。
見ると、芳佳が目の前のボンゴレビアンコを食べ始めていた。
その表情は、先ほどの暗いのから一転して今度はなにか明確な目標が生まれたようでもあった。
その様子を見て、それぞれポカンとしたり、安心したように笑顔になったりなど様々な顔をしたのだった。
そして、食事を終えた者たちはそれぞれの仕事に移る。芳佳は、リーネとペリーヌ、亜弥と共に空戦訓練を行っていた。
まず初めに、芳佳とペリーヌが訓練を行う。この二人の性質は完全に異なっていた。
ユニットは加速と格闘戦に優れた零式と、高速域の性能が高いVG.39bis。
「(速い…あの子、前より速くなってる)」
ペリーヌは飛行しながら、芳佳の変化に気づく。加速をしていく芳佳の動きが以前よりも速く感じたのだ。零式は元々の加速にそれは、芳佳が以前よりも魔法のコントロールが上手くなり、ユニットの使い方を熟知した証拠であった。
「でも、スピードなら私の方が上ですわ」
そう言って、ペリーヌは手に持っていた模擬戦用機関銃を構える。
いくらパイロットの技量が上がっても、ユニットの差は変わらず。そのため、ペリーヌは徐々に芳佳との距離を詰めていく。
「貰った!」
ペリーヌは芳佳を完全に照準器内に捉え、そして引き金を引こうとした。
その時、芳佳の姿が突然照準器内から消えた。ペリーヌは一瞬だけ驚くが、左後方を瞬時に見る。
見ると、そこにはペリーヌの後ろに回り込もうとしていた芳佳の姿があった。
左捻り込み、美緒が得意の戦術、洋介もあの戦争で身につけ、以前の芳佳はブリタニアで、亜弥も最近身につけた空戦技術である。
芳佳は感覚で、この技を自分の物にしていた。
「でも、まだまだですわ!」
ペリーヌはそう言って、離脱にかかる。
しかし、芳佳の零式は旋回性能と加速に優れているため、ペリーヌの後ろについて照準するだけの余裕が生まれた。
芳佳が完全にペリーヌを模擬戦用機関銃の照準器に捉え、そして引き金を引くだけになった。
「うわっ!?」
芳佳は引き金を引いた。
それは、驚きの声と共にだった。そして、芳佳から放たれたペイント団は回避軌道をするペリーヌから離れたところを飛んでいった。
「(外した?この距離で?)」
ペリーヌは思わず驚く。距離にして200メートルも無く、ペリーヌを照準器に捉えていたのにもかかわらず芳佳は外した。はっきり言って、殆どあり得ないことであった。
そして芳佳は、何故かバランスを崩していた。
しかし、ペリーヌはそのチャンスを逃さなかった。すぐさま芳佳の後ろに回ると、照準をしっかりと定めた。
「もらいますわ!」
「うわっ!?」
ペリーヌの放ったペイント弾は正確に芳佳に飛んでいき、芳佳のユニットに直撃、ユニットをオレンジ色に染めた。
その瞬間、リーネが手に持っていた笛を吹く。
「勝負あり!ペリーヌさんの勝ち!」
「まあ、このくらい当然の結果ですわね」
リーネの言葉にペリーヌが堂々と言う。しかし、内心で芳佳に後ろを取られたことに関しては僅かに気にしている様子であった。
「(変だな…?急に力が抜けたみたい…)」
一方芳佳は、先程のことについて不思議に思っていた。
先程たしかにペリーヌを捉えたのに、彼女は急に力が抜けたかのような感覚に襲われたのだ。
「宮藤さん!」
「は、はい!」
突然ペリーヌに呼ばれて芳佳は意識を慌てて戻す。
「何をぼさっとしていますの?あと二戦行きますわよ」
そう言って、二人の模擬戦は再開した。
しかし、残る二つの試合も芳佳はペリーヌに敗北した。
いつもの芳佳なら負けるにしても、ペリーヌにある程度肉薄する戦いをするようになっていた。だが、今日に限っては肉薄どころか動きそのものが不安定であった。
「(なんでだろう…上手く飛べない…)」
芳佳は内心焦っていた。アンナとの特訓で飛行は明らかに成長していた。しかし、ここ一番で全然思い通りの飛行をしてくれない。
「芳佳お姉ちゃん…」
「三戦全敗…芳佳ちゃんらしくないよ…」
「ちょっと宮藤さん、訓練だからって手を抜かないでくださる?それとも私では本気を出せないと?」
亜弥とリーネは純粋に芳佳の様子を心配し、ペリーヌは芳佳に問う。
しかし、芳佳も意図して手を抜くことなどしていないとわかると、目を細めてペリーヌは地上へ降下していった。
その様子を、基地から見ていた美緒は変だと思いながら見ていたのだった。
別のバルコニーのところで洋介もその模擬戦を見ていた。
「いつもの芳佳らしくねぇな…それにあのストライカーの不調…もしかして」
洋介がそう呟くのであった。
「そうか、ペリーヌもそう感じたか」
「はい。今日の宮藤さんの動きは絶対変でした。いつものキレが無いというか…」
美緒はペリーヌの言葉に同意するように言った。ペリーヌはその後、訓練から離脱したわけではなく、美緒に訳を説明しに行ったのだった。
すると、美緒も地上で見ており、芳佳の様子をおかしいと感じていた。
「わかった、報告してくれてよかった」
「え?いえ、私は…その、戦力低下につながる要因は一つでも排除しなくてはと思っただけで…」
美緒に礼を言われてペリーヌは少しタジタジになりながら答える。しかし、ペリーヌもなんだかんだ言いながら美緒の様子を心配していたのだった。
そして、美緒は整備班に芳佳のユニットの点検を行うように指示する。
空中で見ている限りでは、芳佳の履いている零式が原因であると思った。
「異常なしだと?」
しかし美緒は、整備兵からの言葉に聞き返すことになった。
「はい、全ての項目をチェックしましたが、異常はありませんでした」
「魔道エンジンもきちんとオーバーホールしています。一応、念のためにオイルとプラグは新品に替えましたが…」
整備班からの報告では異常なし。
つまり、ユニットに対して特に問題点が無いのだ。
「と、なると……本人の問題か…」
「失礼します!それしかありませんね坂本さん、健康が悪いのか…あるいは…」
「桜井、…あるいはっというと?」
美緒の背後で洋介が格納庫に赴き、言葉に首をかしげる。
「まあ、ともかくその話はあとで、今は芳佳が健康かどうかチェックする必要があります」
「そうだな…わかった。桜井、すまぬが私の部屋で待ててもらえないか?」
「え?あ、はい…」
美緒がそう述べると、彼女は芳佳を呼びに行く。
するとすれ違う時ー
「(ん?なんだ。この禍々しい感じは…」
洋介は美緒の背中に刺してある日本刀を見た。
聞いた話によると、美緒が自ら作った刀である。
洋介はその刀は美しくて妖しく、何か不吉で違和感があった。
「…気のせいであればいいが…ん…整備兵…」
「はい、何ですか大尉!」
「ストライカーユニット内部のこの部品はなんだ…?」
「それ…?あぁ、これはですね…」
暫くして洋介は、美緒の部屋に向かうのであった。
坂本美緒の部屋
「桜井です、失礼します!」
洋介は扉をノックして入室する。
畳が敷かれた和式の部屋であり、何も飾られていない質素な部屋であった。
洋介は無人の部屋に座り、美緒を待った。
「…父さんの部屋にいるみたいだ……」
洋介はそう呟いている
「待たせたな、桜井」
美緒が入って来た。
「いえ、坂本さん、芳佳の健康状態はどうだったんですか?」
「ああ、いたって健康で問題はなかった」
「そうですか坂本さん、芳佳はどうなるんですか?」
「不調の原因がわからない以上、戦場に出すのは危険だ。だから宮藤には基地での待機を命じた」
「そうですか…」
洋介は深く頷いた。
そして美緒は自分の刀を刀置きに置き、彼の前に座った。
「それでなんだが桜井。お前、宮藤の不調について何か思い当たることがあるのか?」
洋介に訊き、彼は一呼吸おいて
「まだ、確実な証拠はありません。これは俺の推測なのですが、宮藤は…芳佳の魔法力が高すぎるんじゃないでしょうか?」
「魔法力が高い?」
「はい。坂本さんも知っての通り芳佳の魔法力は大きく、魔法陣を見てもそれがわかります。しかも彼女は日に日に成長していて魔法力も強くなっています。そのため通常のストライカーユニットでは彼女の魔法力を抑えきれずリミッターが発動し彼女の思うような飛行ができないんじゃないかと俺は思うのです…」
そう言い、洋介は美緒に芳佳の不調の原因の一説を言う。
彼女は腕を組んだ
「ん〜私は最初、宮藤の魔法力が急に消えたと思っていたが、いまだに健在だったからな。確かに言われてみればその可能性は高いな…と、すると桜井もしもそれが原因だったら何か解決策があるのか?」
「俺は医者ではないんですが、おそらく今のユニットでは芳佳に合いません。彼女の魔法力を受け止めることができるユニットが、以前のブリタニア時代のユニットか、俺と亜弥の高性能ストライカーユニット必要なのですが…」
「起動には膨大な魔力を必要とするユニットか…今のところ難しい話だな…ん?そう言えば確か…」
「なんですか坂本さん」
「いや、こっちの話だ気にしないでくれ」
「そうですか…それと坂本さん一つ訊いてもいいですか?」
「ん?なんだ?」
美緒が首をかしげると、洋介は彼女の刀の方を見る。
そして洋介は今朝から聞きたかったことを聞いてみることにした。
「…その刀…普通の刀と違う感じがするのですが…」
洋介がそう訊くと
「ああ、烈風丸のことか?あれのことがわかるのか?」
「烈風丸?ええ、これでも俺は海軍軍人であり剣士ですから、何となくですが…」
洋介は幼い頃、弟の勇介と共に父親のもとで剣術修行をいやというほど鍛えられていた。刀については若干、あの刀は他の刀とは違う感じがした。
「なるほど、実はあれは私が魔法力を込めて作った刀なんだ」
「…なるほど、それでなにかが違ったのですが…」
「そう言うことだ。でもなんでそんなことを聞いたんだ?」
「あ、いえ。なんにもありません、ただ単に気になっただけですから。では俺はこれで失礼させていただきます」
「そうか、すまんな時間を取らせて」
「いいえ、では」
洋介はそう言い、敬礼しながら美緒の部屋を後にするのであった。
「それにしてもあの刀…坂本さんは魔法力を込めたと言っていたが…」
洋介から見るとその刀には魔法力以外の者も見えたような気がした。
そのことを美緒に訊こうとしたのだが、これ以上は野暮だと思い止めたのだった。
「あの刀…何事も起きなきゃいいのだが…なぁ父さん…なんで亡くなったあとで僕に鷹狼、勇介に狼虎をくれたんだ………」
ツルッ ガキイィィン
「がはっ……」
洋介が足を滑らせ、気絶した。
だが、洋介は夢を見た。幼い頃、神戸の生田川の近く、父親が経営する道場で剣術を鍛えていた。
「…はぁ…はぁ~…」
「…兄ちゃん…父ちゃんの指導…一段と厳しいね…」
「あぁ…勇介…」
数時間前 ー
「一着!」
「くそ~、また兄ちゃんに負けた~!」
洋介と勇介の兄弟は、競走しながら一足早く道場に入場した。
「なぁ勇介…ふふふ~」
「へへへ~うん、兄ちゃん……」
二人は道場の掛け軸の下に飾ってある二本の刀が架けてあった。それが桜井家の家宝、鷹狼と狼虎。
「兄ちゃん、いつ見ても凄い刀や」
「あぁ、凄い…ん…あれは……」
洋介は壁に飾ってあるゴーグル付きの帽子と、変わった衣服とゴーグル付きの帽子を被ったメンバーの集合写真であった。
ガツウゥゥン ガツウゥゥン
二人は鉄拳を受けた。振り向くと、父親の桜井佐助が背後にいた。
「この、馬鹿たれ!!この部屋と家宝の刀を触るなと、何度言えばわかるんだ!!」
「「 ごめんなさい… 」」
「お前ら…罰として、素振り500、町内を10周だ!!」
「「えぇ~!」」
「それ以上文句があるなら、倍にするぞ!ついでに道場の床磨きをしとけ!!」
「「 はっはい〜! 」」
洋介と勇介は、父親の佐助の指示で、いつも以上の鍛錬を受けた。
夕方
「はぁ…はぁ…やっと終わ…た…」
「うん…お腹…空いたね…兄…ちゃん…」
二人は罰として道場で竹刀の素振りをし、町内のランニングが終わり、最後に道場の床を雑巾で磨きを終え、木の下で休んでいた。
「洋介、勇介!」
「「 はっはいっ〜! 」」
親子兄弟で家に帰宅した。
「ただいま帰ってきたぞ~」
「お帰りなさい、お父さん!」
「あなた、お帰りなさい」
「松乃、志帆。ご飯おくれ~!」
「はいはい~」
母親の松乃と姉の志帆が作った蕎麦と天ぷらを、食した。
「あぁ~旨い…」
「く…くく…」
「掴め…ない……」
佐助は道場の生徒の指導を終え、摂取する中で洋介と勇介は、箸を掴んでも天ぷらを掴むことができなかった。
「いいか洋介、勇介。あの刀、鷹狼と狼虎は決して手を出すな」
「父さん…」
「なんで…?」
「…あの刀は、戦争が起こらない限り絶対に手にするな…」
「父さん……父さん…あの写真に写っている人たちは…?」
「あの写真か、…お前が強い剣客に成長すれば、いずれ話す…」
「……うん」
両親は後の神戸水災害で命を落とし、三姉弟は生き延びた。
洋介は海軍、勇介は陸軍へ志願し、残った姉の志帆は、朽ち果てた道場で二本の刀を回収 した。
1942年12月、洋介は激闘の南太平洋海戦から生還し、階級は一等飛行兵曹から飛行兵曹長に昇進した。
広島の呉軍港で陸軍下士官となった勇介、
従軍看護婦となった志帆と再会。
呉 旅館
「洋介、勇介」
「「 はい 」」
「これを、渡す時がきたわね…」
志帆は桐の箱から鷹狼と狼虎を取り出し、言葉を告げた。
「いい?この鷹狼と狼虎を所持するには約束して、命ある限り生きて帰ってくるのよ。」
「「 はい! 」」
志帆は二本の刀、鷹狼と狼虎を洋介と勇介に渡し、二人は鞘から数センチの刃を出し、鞘に納めると同時に音を鳴らした。
「(…父さん……)」
「…懐かしいな……父さん…母さん…姉さん…雪……僕は今生きているのは…この鷹狼が生かしてくれてるのかな…?」
基地上空で、ペリーヌは亜弥と模擬空戦を展開していた。
「亜弥さん!わたくしは一切手加減しません、わ!」
ペリーヌが飛行中ブレン機銃を向けてペイント弾を発砲した時、亜弥は左旋回で回避、ペリーヌの背後に周り九九式機銃を発砲、ペリーヌのユニットに命中させ、撃墜した。
「亜弥ちゃんの勝利!」
「やった~!」
「亜弥さん、また上げましたわね……」
その夜、格納庫では芳佳が箒に乗って魔法力を注いで飛ぶ練習をしていた。すると
「誰だ?」
誰かが芳佳に声をかける。芳佳が驚いて振り向くと
「芳佳ちゃん?」
「宮藤か、何やってるんだ?」
芳佳に声をかけたのは夜間哨戒のため格納庫に来ていたエイラとサーニャであった。
「へ~箒で訓練か…そう言えば私の近所にも箒で飛ぶ、ばあちゃんがいたな…」
「でも、どうしてこんな時間に?」
サーニャが芳佳にそう訊くと彼女は暗い顔をした。
「あ、あのね…サーニャちゃんやエイラさんは急に飛べなくなったことってある?」
「芳佳ちゃん飛べなくなったの?」
「え!?そうなのか宮藤!?」
芳佳の言葉日二人は驚き、心配そうな顔でそう訊くと芳佳は首を横に振った。
「う、ううん!飛べないわけじゃないんだけど…」
「なんだ…びっくりさせんなよ……」
エイラがそう言った瞬間後ろの方から物音が聞こえた。
「誰だっ!?」
エイラはそばにあったバケツを取り、物音がした方にバケツを投げる。
するとカーンっと何かがぶつかる音がし悲鳴が上がる。そして
「ちょっと!なにをなさるんですか!!」
ペリーヌが頭をさすりながら出て来た。
「ぺ、ペリーヌさん!?どうしてここに?」
「べ、別になんでもないですわよ。ちょっとお手洗いに…」
顔を赤くしそっぽを向く。すると彼女の頭には大きなたんこぶがついていた。
「たんこぶ…」
「あははは!」
「あなたのせいでしょ!?」
その後、芳佳はペリーヌのたんこぶを治すべく治癒魔法をかけた。
そしてペリーヌのたんこぶは引っ込み治し、回復させた。魔法力が無くなったわけではなかった。
「おっ!治った治った!」
「魔法力は大丈夫みたいね」
「良かったな宮藤」
「ちょっと、人の頭で実験しないでくださる!」
「…でもなんでうまく飛べないんだろう」
「きっと疲れが溜まっていているんだよ。寝て起きたら治っているんじゃないか?だからさゆっくり休めよ」
「うん…」
エイラの言葉に芳佳が頷き、エイラたちは夜間哨戒のために部屋に戻るのであった。
だが、芳佳はその後こっそりと浜辺の方へ行き箒にまたがり飛ぼうとする。
そして箒はゆっくりと上がっていくのだが、急に箒の先がボンと爆発した。そして、芳佳は座り込んだ
「どうして…どうして飛べないの…こんなんじゃ誰も守れないよ……」
涙を流していると、誰かの気配がした芳佳は振り向くと
「リーネちゃん…」
「隣いい?」
リーネがそう訊くと芳佳は頷き、彼女は芳佳の隣に座った。するとリーネが口を開く
「奇麗だねアドリア海…前にもこうやって二人で海を見たことがあったね…覚えてる?」
「うん…」
「箒…一緒に直そうか?」
「うん。ありがとうリーネちゃん……」
と、芳佳はそう言う。すると
「奇麗な月だね…」
「え、亜弥ちゃん…?」
「お姉さんたち…こんな時間に何しているの?」
「亜弥ちゃんも…この時間でなにしているの…?」
亜弥は芳佳が気になり様子を伺い、そう訊くと芳佳は今までのことを話した。
「そうなんだ……そんなことが……」
「うん…ねぇ亜弥ちゃん…」
「はい…?」
「もしも…もしも…飛べなくなったらその時はどうの?」
「…そうだね…ストライカーユニットが使えなくなったら…お父さんみたいに飛行機か船に乗るわ…風を体で感じることはできないけど…それでもいい気分だと思う…芳佳お姉ちゃん…」
「なに…?」
「別に、飛べなくなってもほかに誰かを守れないわけじゃないよ…その時は別の道で守る方法を行ければいいよ。お姉ちゃんはお医者さんなんでしょ?だったら衛生部隊とか、やってみなくちゃわからない…諦めてしまったらそこでお終いだよ。あなたの誰かを守りたいって思うことは空が飛べなくなったら消えてしまう物なの?」
「っ!?」
「それにお姉ちゃんは飛べなくなるって…お姉ちゃんは…お姉ちゃんだよ!」
「亜弥ちゃん…うん、ありがとう」
「わたしも箒を治す手伝うよ」
三人は芳佳の箒を直すのであった。
「お姉ちゃん、……ぬちどぅ宝」
「ねぇ、亜弥ちゃん、洋介さんも言ってるけど、その…ぬちどぅ宝ってなに…?」
「ん…なんだっけ…お父さんのお友達から教えてもらったけど……」
亜弥は、父親の洋介や魔女の世界に来る前に沖田進次郎の呟く言葉は知っていたが、意味はまだ分からなかった。
だがこの時この501基地にあるものを運んだ数隻の艦隊が近づいていることに芳佳は気が付かなかったのであった。