ストライクウィッチーズ ~蒼空を舞う零の荒鷹~   作:鷹と狼

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第59話 プロパガンダ作戦

 

 

ロマーニャ 連合軍司令部

 

 

桜井洋介大尉と桜井亜弥軍曹は、ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケ中佐の護衛に付き添いながら、統合軍司令部に招集を受け赴いた。

 

 

「何とか大和が到着し、マルタのネウロイの襲来を食い止めたようだな」

 

 

「あれが無事だっただけでも、501は再度創設した甲斐があったというものだ」

 

 

「この地域でも戦力強化が目的だと聞いてましたが、それだけではないのですか?」

 

 

「いいかねミーナ中佐、ネウロイとのコンタクトを試みたトライヤヌス作戦は失敗に終わった。最早、共存の道は絶たれたのだ。」

 

 

「我々に残された道は、破滅か殲滅しかない。ウィッチだけに頼った戦力だけに足りないのだよ」

 

 

「そのために大和を…!?」

 

 

「話はここまでだ」

 

 

ミーナによるロマーニャ戦力強化の質問を終えた時だった。

洋介は二人の将軍に、違和感を覚えた。

 

 

「…(連中は何か隠しているな)…」

 

 

 

「…そう言えば中佐、新たな作戦の申請が出ていたようだが」

 

 

「はい、選ばれたウィッチによって、ネウロイを叩きます」

 

 

「我々もその作戦の助けとなるよう、アイディアがあるのだが」

 

 

「え…?」

 

 

「入りたまえ」

 

 

右側の扉が開いた。

 

 

「あ…あなたは…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Ju52輸送機 機内

 

 

洋介と亜弥の向かい席には、司令部から呼び出されたウィッチが、脚を組んで座っていた。

 

 

「…(ハンナ・ユスティーナ・マルセイユ…帝政カールスラント空軍大尉…カールスラント4強のウィッチ……)」

 

 

 

501部隊に配属する、撃墜No.1

 

エーリカ・ハルトマン

 

 

対地上攻撃No.1

 

ハンナ・ウルリーケ・ルーデル

 

 

夜間撃墜No.1

 

ハイデマリー・ヴァルプルガ・シュナウファー

 

 

帝政カールスラント空軍のウィッチの中でエースと呼ばれる4人のうち1人。

 

 

アフリカ戦線の撃墜No.1

 

ハンナ・ユスティーナ・マルセイユ

 

 

 

 

すると 

 

 

「不機嫌そうな雰囲気ね、桜井大尉。」

 

 

洋介が色々と考えている時、ミーナが尋ねた。

 

 

「ん…?すいません中佐…今回も、ネウロイの秘密計画を掴むことが出来ずに…無駄足でした…」

 

 

「いいのよ……上層部も、ネウロイ討伐や利益で頭がいっぱいですから…」

 

 

「…このご時世ですから、仕方ありません…すまん亜弥…こんなところまで来て…」

 

 

「うん…大丈夫…」

 

洋介はミーナに対して苦笑し、亜弥に謝罪する。

 

彼は個人で調査するガリバープロジェクトでは、トライヤヌス作戦以降、一切掴めていなかった。

 

輸送機に搭乗するマルセイユは、洋介の娘の亜弥を睨んでいた。

 

 

「あの…マルセイユ大尉…」

 

 

「ん…?」

 

 

「むす…いや、亜弥を余り睨まないで頂きたいのですが…」

 

 

「睨む…?いや、アフリカ部隊に配属する扶桑のウィッチより可愛いからつい…、すまなかったな」

 

 

「あ…いいんです……」

 

 

「(……思ったより、いい人なのか…?)っ!?」

 

 

マルセイユは亜弥に謝る。すると、洋介は彼女の視線を感じた。

 

 

「新聞で読んで見たが、君は世界初のウィザード、桜井洋介か。ハルトマンに匹敵する撃墜数と聞いている。いつか、私と模擬戦の相手をしてくれないか?」

 

 

マルセイユは微笑みながら、そう述べる

 

 

「いえ、遠慮しときます。俺はネウロイと戦うのみ、見せびらかすために使っているのではありませんので」

 

 

「そうか…それは残念だ」

 

 

 

 

 

 

芳佳とリーネが外で洗濯物を干していると、空からウィッチのステラとウィザードのバッキーが飛来し、二人の元に着陸する。

 

 

「やぁ、芳佳!」

 

 

「はぁーい、リーネ。2日ぶりね~♪」

 

 

「あっ、バッキーさん、ステラさん!」

 

 

「お二人さん、元気ですか!?」

 

 

「あぁ、この通りだ」

 

 

「二人は、何しにここへ…?」

 

 

「実は、フェデリカ隊長が連合軍からの指令により、マルタの作戦に協力の要請を受けたんだ」

 

 

「へぇ~」

 

 

「どこで、ミーナ中佐はどこに…」

 

 

「それが、今連合軍司令部へ…」

 

 

「あ、輸送機だ」

 

 

 

芳佳の言葉で3人は航空機の音が聞こえたので空を見上げた。そこには、青空の中を突っ切るように一機の輸送機が飛行していた。

 

 

「あれはJu52…ミーナ中佐が帰ってきたみたい」

 

 

リーネは輸送機の機種を識別し、連合軍司令部へと出ていたミーナが帰ってきたんだと言った。

 

 

「そうか…ちょうど…っ!?」

 

 

その時だった。基地の上空を飛行していた輸送機から突如、一つの影が離れた。

 

 

「え?」

 

 

芳佳は一瞬、何が輸送機から離れたのかと思い目を凝らす。すると、それは女性の人影ではないか。

 

 

「ええっ!?」

 

 

「飛んだ!?」

 

 

「正気か!?」

 

 

リーネと芳佳、バッキーは突然輸送機から人が飛び降りたのでビックリする。その間にも、飛び降りた女性は使い魔を出すと空中で姿勢を整え、そして何事もなかったかのように地面に着地をした。

 

 

「わー…!」

 

 

「凄い…!」

 

 

「……」

 

 

二人は揃ってその光景に見とれていた。そして目の前に降り立った女性の姿を見る。女性は掛けていたゴーグルを外すと4人の方を向いた。

 

 

「やあ、初めまして子猫ちゃんたち」

 

 

「子猫?」

 

 

「わぁ~…!」

 

 

 

女性からの自己紹介の言葉にリーネは一瞬呆気にとられるが、芳佳は先ほどのダイブとそのルックスから、女性のことを目を輝かせながら見ていた。

 

 

 

「フッ…悪いけど、サインはしない主義なんだ」

 

 

「へ?」

 

 

「はわぁ~!」

 

 

 

突然の告白にリーネはさらにポカンとするが、芳佳はその言葉も女性の決め台詞のように聞こえたのか更に目を輝かせた。

 

 

「ところで君たち…」

 

 

「マルセイユ!」

 

 

「おっ、バッキーとステラ。いつの間に!」

 

 

女性が二人に何かを言おうとしたその時、横から大声が聞こえる。

 

マルセイユと呼ばれた女性が振り向くと、そこには訓練途中であったトゥルーデとエーリカが居た。

 

エーリカはやってきたばかりのバッキーとステラに簡素な挨拶をする

 

しかし、トゥルーデはマルセイユのことを睨みながら続けて言った。

 

 

「何しに来た!お前はアフリカに居るはずだろ!」

 

 

「おっ!ひっさしぶりだなハルトマン!」

 

 

しかし、そんなトゥルーデなど眼中に無いかのように、マルセイユはエーリカの元へ駆け寄った。

 

そしてマルセイユはエーリカに会えたことをまるで心から喜んでいるかのように言った。

 

 

 

「航空学校以来か?…いや違うな、JG52の第四中隊だ!そうだよ!覚えてるか?同じ中隊に居た融通の利かない上官の…えっと、なんて言ったっけ――?」

 

 

「バルクホルンだ!」

 

 

「おー、そうだった」

 

 

マルセイユの露骨な視線にバルクホルンが言う。その言葉を聞きトゥルーデは手を差し出した。

 

 

「久しぶりだな、バルクホルン!元気だったか?」

 

 

「…大いに元気だ!」

 

 

トゥルーデもその手を取り握手を返す。

 

 

 

「あのかっこいい人、バルクホルンさんの友達なのかな?」

 

 

「そ、そうは見えないけど…」

 

 

「リーネと同じ意見ね…」 

 

 

「気のせいかな…オーラが見えるぜ…」

 

 

芳佳は二人の握手する姿を見てそう感想するが、リーネとステラ、バッキーは二人から出ている謎のオーラを感じ、とても仲のいい様子には見えなかった。

 

その様子を見ていたエーリカも、げんなりとした様子だった。

 

 

 

「(ああ…面倒なのが来たな~…)」

 

 

完全に厄介ごとが増えたと言わんばかりの顔をした。

 

そして、滑走路に着陸した輸送機内で洋介は質問した。

 

 

「…ミーナ中佐、彼女昔からなんです…か?」 

 

「JG52に居た頃から、自信家で傲岸不遜な性格だったの。アフリカでだいぶ丸くなったと聞いていたけど…」

 

 

「そうですか…」

 

 

その光景を見てミーナが溜息を一つ零したのだった。

 

 

その後、ミーナにブリーフィングルームに集まるように言われた芳佳達は、本の中に先ほど出会ったマルセイユの写真を見つけた。

 

 

「凄い…本に載ってるんだ」

 

 

「えっと…ハンナ・マルセイユ、カールスラント大尉、第31飛行隊『ストームウィッチーズ』所属で、200機撃墜のスーパーエース…!」

 

 

「200機…凄い!」

 

 

「うん…わたしより多い…」

 

 

芳佳と亜弥はマルセイユの撃墜数を聞いてその数が遠い存在に感じる。

 

 

「200か…確かに凄いが…どこで何が凄いんだ…?」

 

 

洋介は芳佳のうしろからマルセイユの写真を見る。

 

 

「洋介さん、アフリカのネウロイは欧州のネウロイと比べてレベルが違うと、フェデリカ隊長から聞いたわよ」

 

 

「へぇ…そうなんだ…」

 

 

ステラの上官であるフェデリカがアフリカでの経験を語り、洋介は納得する。

 

 

「サインほしいな~」

 

 

「あいつサインはしないよ」

 

 

芳佳の言葉を横で聞いていたシャーリーが言った。

 

 

「え?シャーリーさんマルセイユさんのこと知ってるんですか?」

 

 

「ルッキーニとあたしはここに来る前ちょっとアフリカに居たからな」

 

 

「いた~!」

 

 

シャーリーの言葉に続けてルッキーニが言う。

 

 

「どんな人なんですか?」

 

 

「噂ならいっぱい聞いたけど…あいつの事なら同じカールスラントの連中が詳しいだろ」

 

 

芳佳の言葉にシャーリーはエーリカとトゥルーデの方を向きながら言った。

 

エーリカは机に伏しており、トゥルーデは腕を組みながら黙っていた。

 

 

「そういえば、同じ部隊だったって…」

 

 

「…カールスラントで私とハルトマン、マルセイユは同じ飛行中隊に居た」

 

 

芳佳の言葉に今まで黙っていたトゥルーデが口を開いた。しかし、トゥルーデはどこか不機嫌そうであった。

 

 

「やっぱり!友達なんですね」

 

 

「友達じゃない!あんなチャラチャラしたやつ…」

 

 

芳佳の言葉にトゥルーデは頑なに否定した。

 

その時、今までいなかったミーナと美緒が入って来る。その後ろにはマルセイユも来ていた。

 

 

「静粛に」

 

 

ミーナがそう言って、私語をしていた者たちを黙らせる。そして、美緒が説明を開始した。

 

今回ブリーフィングルームに全員が集められたのは、戦艦大和が停泊する軍港と首都ローマを襲来する塒のマルタ島を占拠しているネウロイを倒すためだ。

 

 

「ここで選ばれたウィッチ二名、ウィザード2名が突入、護衛のネウロイを倒しコアを破壊する。以上だ」

 

 

「…たった4人ですか?」

 

 

美緒が作戦を伝え、最後に重要な部分を強調する形で言った。その言葉に芳佳が聞き返す。

 

 

「この作戦では移動に扶桑の潜水艦2隻を使う。格納、射出できるユニットは二機までだ」

 

 

 

この作戦には潜水空母である扶桑の伊400型潜水艦2隻を投入する。

 

その伊号潜水艦から射出できるのは二機までであり、今回の作戦は海中から敵占拠エリアに侵入するため、それ以上の援軍は送れない。

 

そして、今度はミーナが横のハンナを見ながら説明した。

 

 

「では、突入部隊のウィッチを発表します。まず、今回の作戦の援軍として参加することになった第31飛行隊のハンナ・マルセイユ大尉。第504部隊のバッキー・S・五十嵐大尉」

 

 

「っ!どういうことだ中佐!突入部隊は私とハルトマンのはずだ!」

 

 

 

衝撃の言葉にトゥルーデが立ち上がった。

 

今回の作戦は元々501のトップエース2人、つまりトゥルーデとエーリカ、そして、洋介とバッキーのウィザード2名が突入することになっていたのだ。

 

しかし、ミーナはそんなトゥルーデに言った。

 

 

「上層部からの指示です」

 

 

「なるほど…そういうことか」

 

 

ミーナの言葉を真っ先に理解したバッキー。

 

しかし芳佳はどういうことか分からずバッキーに聞く。

 

 

「バッキーさん、どういうことですか?」

 

 

「ん…つまり、この作戦はプロパガンダの意味があるんだ」

 

 

洋介は芳佳に説明した。

 

アフリカの星と言われる彼女は容姿端麗、世界でただ2人しかいないウィザードを、軍の戦意高揚の広告塔として今回の作戦に参加するのだ。

 

 

「我が501から作戦に参加するのは2人のみ。バルクホルン大尉、桜井大尉、貴方です」

 

 

「「 了か… 」」

 

 

「無理だ」

 

 

そしてミーナが続けて501からの参加メンバーを発表した。

 

しかし今度はマルセイユがキッパリと言った。その言葉にトゥルーデが睨む。

 

 

「バルクホルン、あんたじゃ私のパートナーは務まらない」

 

 

「…何が言いたいんだマルセイユ」

 

 

「言葉通りさ、あんたの力量じゃ私と一緒に戦うのは無理だって言ってるんだ」

 

 

マルセイユは挑発的な態度でトゥルーデに言った。

 

トゥルーデはそんなマルセイユにさらに怒りを燃やすが、マルセイユはどこ吹く風といった様子で今度はエーリカ・ハルトマンを見る。

 

 

「私の力量と釣り合うのは…」

 

 

「何処を見てるんだマルセイユ、カールスラント防衛線の頃から、お前の『上官を上官と思わない』その態度!」

 

 

 

そう言ってトゥルーデはマルセイユの元に歩いていく。既に内部では怒りが爆発したのか、トゥルーデは使い魔を発動、臨戦態勢になっていた。

 

 

「フッ、今は同じ階級だ」

 

 

そう言って、マルセイユも使い魔を出す。そして二人は互いの手を合わせる。

 

 

「不味い!」

 

 

「みんな、伏せろ!」

 

 

バッキーがみんなに叫んだ時、トゥルーデとマルセイユが互いの手を合わせた瞬間、魔力と魔力のぶつかり合い力をぶつけ合う二人の足元には魔方陣。周りには重力場、部屋の中に嵐が発生。

 

耐えられなくなった床が、破片を風に乗せて撒き散らせながらえぐれ、その破片が散乱し飛来する。

 

 

「おっと、危ねぇ!」

 

 

「きゃっ!?」

 

 

「危ない、亜弥!」

 

 

洋介はその破片を何とか避けた。

 

 

「はわぁっ!?」

 

 

「アッチデヤレー!」

 

 

「二人とも!!」

 

 

ミーナが三度目の制止をかけるが、二人は止まらず、亜弥はステラに庇いながら机の下に隠れる。

 

 

「(畜生!埒があかねぇ!)バッキー!」

 

 

「あぁっ!!怪我人が出るぜ!」

 

 

洋介の反応でバッキーが動き、二人は右腰から愛拳銃の十四年式拳銃とM-1911拳銃を抜き取り、銃口を天井へ向け撃ち、二人は魔力を発動。

 

洋介はトゥルーデ、バッキーはマルセイユを羽交い締めしながら抑える。

 

 

『っ!?』

 

 

二人は銃声に驚き、動きが抑えられ。重力場も消え、嵐は収まった。

 

 

「いい加減にしろ二人とも!!味方同士で争ってどうする!お互い誇りあるカールスラント軍人かぁ!?」

 

 

拳銃をホルスターに戻しながら叫ぶ

 

 

「挑発して、喧嘩して、周りに迷惑かけてまるで子供じゃねぇか!それでも国や国民を守る軍人か、ウィッチかぁっ!!この戦局で一番得するのは敵だ、ネウロイだろうがぁっ!!」

 

 

「「……」」

 

 

「洋介さん…?」

 

 

「バッキー」

 

 

いつもと様子が違う洋介に、芳佳は違和感を感じる。

 

すると洋介とバッキーは二人の方を見る。

 

 

「トゥ…いえ、バルクホルン大尉、怒る気持ちはわかるが、もう少し冷静にお願いします」

 

 

「…桜井…すまん」

 

 

「マルセイユ大尉、かつての旧友に会えて嬉しいのかもしれませんが、作戦前に喧嘩っ早いのはご遠慮願いたい」

 

 

 

「……調子に乗りすぎた。すまないな、バッキー大尉」

 

 

マルセイユは口で謝っている。だが、どこか腑に落ちないような顔をしていた。

 

 

「はぁ、とにかく二人ともおだやかにお願いします!」

 

 

「…で、今作戦のマルセイユ大尉のパートナーは誰がやるのかしら?」

 

 

先ほどから黙っていたステラが質問すると

 

 

「じゃ、私がマルセイユのパートナーをやるよ」

 

 

「ハ、ハルトマン…」

 

 

「ハルトマン中尉…」

 

 

今までめんどくさそうな顔をしていたエーリカ・ハルトマンが名乗り出た。

 

彼女も本当は名乗り出たくはなかったのだが、この雰囲気を何とかしたいと思い渋々だが、彼女のパートナーを務めることにしたのだ。

 

それを聞いたマルセイユは

 

 

「…OKだ。ハルトマン」

 

 

そう言い、笑みを浮かべたその後、エーリカとマルセイユは訓練飛行の準備をするため部屋を出るのであった。そして二人が出た後みんなはため息をつく

 

 

「やれやれ…一時はどうなるかと思ったぞ」

 

 

「洋介はともかく、初めて見たな…バッキーが怒るところ」

 

 

美緒やシャーリーたちは先ほどの洋介とバッキーのことを話していた。

 

するとステラは

 

 

「あいつはあれで、かなりの激情家だからね…」

 

 

「激情家?あのバッキーがかステラ?」

 

 

シャーリーはステラにそう訊くと彼女は頷き

 

 

「ええ、現に彼はライバルの戦友であるバルクホルン大尉を馬鹿にされて不機嫌そうだったし、そしてマルセイユ大尉が周りにも迷惑をかけているのを見て怒っていたしね。前に話した通り、あたしとバッキーは洋介さんと敵同士だったわ。フィリピンのマニアで酒飲みとしての付き合いがある。彼らの性格のことは大体わかるわ。それにあいつの言っていたことも大体間違ってはいない」

 

 

 

「え?間違っていないって、何でですか?」

 

 

「ええ、こないだの亜弥の…二人の回想であったでしょ。あぁいう奴は必ず隙ができてしまうわ。特に空中戦ではその自信から出る慢心が一番の命取りになるわ。現にあたしの仲間や友人たちでそう言うやつは必ず敵に撃ち落とされていたからね…」

 

 

 

ステラの友人の日系のマリーを除き、フランス人従軍看護婦のシャルロット。

 

ドイツのアリシアとパウラ。彼女たちがそれぞれの戦場で命が散って逝ったことに、悲しい顔をするのであった。

 

 

 

「ステラさん……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてその後、ハルトマンとマルセイユの共同訓練飛行が始まった。そんな中、ハルトマンとマルセイユは上空に浮かぶ気球の的をMG34やMG42でどんどん撃ち落とす。それを見ているのは芳佳とリーネ、シャーリー。そして美緒とミーナとトゥルーデ、そしてステラだ。

 

 

 

「二人ともすごいですね~」

 

 

 

「二人ともカールスラントのトップエースだからな」

 

 

芳佳がそう呟くとシャーリーがそう述べた。

 

 

「え?じゃあ、今回の作戦って…」

 

 

「そう、部隊の垣根を超えた協力作戦。連合軍上層部が人気取りを考えてマルセイユ大尉をこの作戦に参加させようとしてるの」

 

 

「なるほどつまりこれはプロパガンダってやつね」

 

 

 

リーネの言葉にミーナさんが答えたステラは呆れたようにため息をつく。

 

 

「ああ、だがそれで作戦が成功するなら文句を言う筋合いがないが、今のままでは難しいか…」

 

 

「ああ、あまり息があっていないな…」

 

 

 

坂本少佐の言葉にトゥルーデがそう呟き、上空を見る。

 

上空ではエーリカとマルセイユが平行になって飛んでいたのだが、するとマルセイユはニヤッと笑い、急に減速し、エーリカの後ろに回り込み、MG34をハルトマンに向けた

 

 

「なっ!?」

 

 

「っ!?」

 

 

それを見てミーナたちが驚愕

 

 

「ダダダダダっ!」

 

 

マルセイユがそう言葉を言うと、ハルトマンは一瞬ぽかんとした顔をしていたが、すぐに胸を手で押さえ

 

 

「うわ~や~ら~れ~た~!!」

 

 

「…くっ」

 

 

わざとらしい声を出すエーリカにマルセイユは顔をしかめる。すると

 

 

 

『飛行中止よ!二人とも。直ちに帰投しなさい!』

 

 

ミーナの怒った声が無線から聞こえそれを聞いたマルセイユは

 

 

「はいはい…」

 

 

 

まったく反省の色を見せずそう適当に返事をし、マルセイユは降下し基地に戻る。それを見た芳佳たちは

 

 

「なにかあったのかな?」

 

 

「さあ、良く見えなかったけど」

 

 

そういう中で

 

 

「…あいつは仲間に銃を向けるとは何を考えているんだ!」

 

 

「……」

 

 

バルクホルンは怒り、ステラは何か思うような顔をしているのであった。

 

そして、その後ミーナはマルセイユとエーリカをとある部屋に連れて行く。部屋には何もなくただ二つのベットが置いてあるだけであった。

 

 

「二人は今日から作戦の日までこの部屋で過ごすこと。訓練飛行中に人に銃を向けたマルセイユ大尉は本来なら営倉行きです。しかし残念ながらこの基地にはありません。代わりに二人にはこの部屋で過ごしてもらいます」

 

 

ミーナは厳しい口調で二人に言う。するとエーリカが質問する。

 

 

「ねえ、なんで私もなんだよ」

 

 

不満の声をあげる。

 

 

「いい機会です。二人で過ごして作戦の為にチームワークを養いなさい。わかりましたね」

 

 

「は~い」

 

 

「わかった」

 

 

「いいですか?今度やったら絶対に許しませんよ」

 

 

そう厳しく指導するとミーナはドアを閉める。

そしてエーリカはため息をつきベットに座る

 

 

「ハンナのせいで怒られたんじゃないか」

 

 

ジト目でマルセイユにそういうが彼女は笑いながらベットに寝ころんだ

 

 

「やっぱミーナは怖いな」

 

 

「何気楽に言ってんだよ。ミーナが本気で怒ったらもっと怖いんだぞ」

 

 

エーリカが呆れて言うがハンナはじっと天井を見つめる

 

 

「…ハルトマン。……なぜ戦わないんだ?」

 

 

「え?」

 

 

マルセイユの言葉にエーリカは首をかしげる。

 

 

 

「あの時、さっき私が狙った時だ。お前の腕なら回避も反撃もできたはずだ。なぜおまえは戦わなかったんだ?」

 

 

「ハンナは変わらないな……」

 

 

「変わる必要がない」

 

 

「なんで勝ち負けにこだわるんだよ?」

 

 

エーリカが質問すると、マルセイユは起き上がる

 

 

「戦場では勝つ以外に価値はない。私は常に勝利し続け最強でい続ける。それだけだ」

 

 

「何それ?」

 

 

マルセイユのいきなりの言葉にますますわからんという顔をするハルトマン。

 

 

 

「ハルトマン。お前が私と一緒にいた隊でのお前との勝負は8勝8敗。私と戦って互角だったのはエーリカ、お前だけだ。だから私はこの作戦の間に決着をつけたい。最強のウィッチて呼ばれているお前にな…」

 

 

マルセイユがそう言うとハルトマンは興味なさげにため息をつきベットに倒れた。

 

 

「じゃあ、ハンナの勝ちでいいよ」

 

 

そう呟くと、マルセイユは顔をしかめ立ち上がり

 

 

「またか!前も同じようなセリフで私から逃げた!なぜだ!?」

 

 

真剣な顔でエーリカにそう述べる

 

 

「めんどくさいじゃん……それに」

 

 

「それに?」

 

 

「私は最強じゃないよハンナ。私より強いヤツいるもん、それも二人」

 

 

「なに!?お前よりも強いやつがいるだと!?」

 

 

「うん、その2人と一対一の模擬戦やって全力でやったんだけど結果は完敗。正直言って次元の違いって言うのを見せつけられたよ」

 

 

「なっ!?お前が全力を出して負けた!?本当か!?でもそんな奴いるのか?」

 

 

「それがいるんだよこの基地に…」

 

 

「この基地だと!?誰なんだ?」

 

 

 

「う〜ん…一人はね、洋介だよ。桜井洋介大尉……」

 

 

エーリカが名前を呟く

 

 

「やっぱり、あいつか……じゃあ、もう一人は誰なんだ?」

 

 

「ん?それはね……」

 

 

エーリカがそう言いかけた時、扉からノックがし、一人の女性が入って来た。

 

 

「エーリカいる~?差し入れのお菓子を持ってきたわよ。一応二人分作っといたから、マルセイユ大尉と仲良く分けてね」

 

 

 

「あ、ステラ。ありがとね~」

 

 

 

「いいわよ。じゃあね~」

 

 

ステラは籠いっぱいに入った菓子を置くと部屋を出て行った。それを見たマルセイユは

 

 

 

「……エーリカ。あいつ、ブリーフィングルームにもいたけど。誰なんだ?」

 

 

 

「ああ、ハンナは知らなかったんだね。あれが私の友人のステラ・A・エヴァンス大尉。私と匹敵する一人のウィッチ。もう1人なね…」

 

 

マルセイユが窓から見た空では、洋介とバッキーがユニットを履いて、模擬空戦を実施している。

 

 

「あいつも…バッキー大尉もウィザードだったのか…!?」

 

 

エーリカが紹介するとマルセイユは洋介とバッキーの姿を見て笑みを浮かべた。

 

 

「…あいつが…エーリカより強いと?……ふっ、強いやつが三人…これは面白くなりそうだな」

 

 

 

そう言うとマルセイユは笑みを浮かべた。

 

 

 

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