あの黒マントと決闘して数日後、プロパガンダの協力に赴いたハンナ・ユスティーナ・マルセイユは本来の任地であるアフリカに帰隊。
もう一人のウィザード、バッキー・S・五十嵐、ステラ・A・エヴァンスの任務が終わり、504基地に戻った。
早朝
501基地の中庭にて、ウィザードの桜井洋介は上半身衣服を脱ぎ、腰に軍刀の鷹狼を身に付けながら地中海の海と風を感じながら石畳の上に座り、黙々と心身を鍛えていた。
「…………」
静寂の時に遠くから二人のウィッチ、洋介の娘たる桜井亜弥、戦友の宮藤芳佳が目の当たりにする。
「洋介さん、今日も凄く集中しているね……」
「…う…うん…」
芳佳の言葉で、亜弥は浮かない顔をしていた。
「亜弥ちゃん…?」
「芳佳お姉ちゃん……この時のお父さん…夜のお父さんと全然違うんだよ…」
「そ…そうなんだ…」
親子二人で寝泊まる部屋で、時々洋介は夢で魘されていた。
ある時はうわ言でかつての戦友の名前、自身が殺した敵に許しを乞うように嘆いていた。
「お父さん……あの戦争が終わっても、お父さんの戦争が終わっていないんだね……」
「…亜弥ちゃん………洋介さん…わたしの魔法力で……必ず洋介さんを治してみせる!さて、もうすぐ朝ご飯だから呼びに行こう!」
「…うん…!」
二人は修行する洋介を呼びに向かい、朝食を誘った。
「お父さ~ん!」
「洋介さーん!」
「……おっと、亜弥…芳佳…」
「「もうすぐ朝ごはんだよ~!!」」
「…そうだな…とりあえず食事や………ん…?」
洋介は修行を中断、二人に同意して食堂へ歩いた。その道中で芳佳と亜弥は洋介の手を繋いだ。
食堂
「桜井!」
「ん、トゥルーデ。」
洋介は食堂で負傷していたトゥルーデと再会。
「このあいだの敵、黒マントに受けた傷は大丈夫か…?」
「あぁ、宮藤の治癒魔法で回復して貰った。その…また桜井に借りを作ってしまったな…///……また黒マントが来襲したら私も全力を尽くす。」
「…そうか…だがトゥルーデ、何度も言うがネウロイだろうが、妹のクリスさんのために戦って生きるんだ。」
「……桜井…あぁ…」
洋介の言葉で、トゥルーデは改めて決意を胸にする。
朝食は扶桑の鯵の干物、受け取った洋介は席に座り、口にした時
「あ……アァ~!!」
同じテーブルに座り、タロットで占っていたエイラが叫んだ。
「どうしたんだエイラ?」
タロットカードを引いたエイラはどことなく身体が震え、カードを握りしめた。
「よ…よよ…洋介大尉……再びアイツ…黒マントのヤツが来るゾ…」
「黒マントが…そうか…」
昨日、執務室
「…そう…美緒やトゥルーデを襲った敵が…黒マントが…例の…」
「…恐らく僕と亜弥、バッキーとステラをこの世界に転移させたネウロイのガリバープロジェクトにてです」
洋介が戦った相手がネウロイの秘密計画、ガリバープロジェクトの転移者であった。
だが、以前のオラーシャで見つけた亜弥と違い、完全にネウロイの支配に堕ちた。
「…また黒マントが襲来したら、私も…!?」
ミーナも黒マント討伐を洋介に呟こうとした時、洋介は右手で制止した。
「ミーナ中佐、黒マントの件で僕が討伐します。」
「っ!?…そんな桜井大尉、私も美緒とトゥルーデも軍人としての覚悟が…」
「ミーナ中佐たちが軍人と言えども、汚させたくありません。汚れるのは僕だけで充分です。あの忌まわしい戦争で百数十人の敵、人間を殺しています。」
「「……」」
ミーナと美緒は、洋介の言葉に絶句した。
かつての洋介は、ウィッチの世界に来る前は異世界の戦争で戦った戦闘機のエースパイロット。
戦空でいくつもの敵戦闘機や爆撃機を墜とし、地上に降り立ち、小銃と軍刀の鷹狼で敵兵を斬り倒したのであった。
洋介は再び滑走路にて、剣術の鍛錬を行いながら父の言葉を思い出していた。
道場
「洋介、本当の強さは剣の腕ではない。全てを優しく、慈しむ心だ。」
「…慈しむ心……」
「力には善も悪もない、ただ力があるだけだ。だが愛する者を護る心だけが善なる力となりて、横縞なる心を絶つことができる」
「…はい…お父さん……」
昔の洋介は竹刀を右に置き、父親の佐助から剣術に関しての心得を聞くも、どことなく聞き流しつつ、あることを質問した。
「ねぇお父さん」
「ん…?」
「お父さんの言う、あいしているのことばは……?」
「いい質問だ、お父さんは昔、友人たちと欧州に行った時に学んだ」
「おうしゅう…?」
「あぁ、お父さんは陸軍の軍人。それに戦闘機と言う飛行機のパイロットやったからな!」
「…え…ひこうきのパイロット……?」
昔の洋介はどことなくまだ理解できておらず、聞いた言葉を心の中に刻んでいた。
「……っは…夢か…」
洋介は、花が植えられている花壇の側にある木に背もたれして、眠っていた。
「…思い出した。………お父さん…あなたも…あの欧州大戦で戦ったのですね……」
洋介は思い出した。父親の佐助は陸軍の軍人で、欧州で戦争が勃発した時代に、義勇軍兵士として欧州に派遣された。
当時は新兵器である飛行機のパイロットになり、仲間たちと共に空を掛けて戦った。
そして戦争が終わり、共に戦った仲間たちは欧州で解散、日本の東京や高知、鹿児島などに帰還、それぞれの家庭を築いた。
別の仲間たちは再び欧州へ、あるいは新天地アメリカへ渡り、家庭を築いた。
「…異世界と云えども…僕は…お父さんと勇介に続き、欧州へ赴いたんやな…」
親子兄弟で欧州の地へ踏まれていることに染々している時だった。
「…っ!?…これは…敵だ…っ!!ミーナ中佐、坂本さんっ!!」
洋介は急いで自身の上官たるミーナと美緒に報告した。
「えぇ、桜井さん。この間の黒マントを含め、複数のネウロイがこの基地に向かっています。全ウィッチを持って迎撃します!!」
「了解!はっはっは!!、あの黒マントと刃を交えられる」
「了解!(あの黒マントが…)」
ミーナも自身の魔力でも把握し、全ウィッチに出動命令を下した。
美緒は所持する刀、『烈風丸』で黒マントの敵と刃を交えることに自信満々で溢れ、洋介は次こそ、とどめを刺すことに、拳を握りしめた。
ミーナの指示に従ったウィッチたちは格納庫でストライカーユニットを履いて、大空へ飛んだ。
「みんな、以前の黒マントを警戒、油断しないで!」
「「「「 了解!! 」」」」
ミーナの言葉で、13人のウィッチとウィザードがネウロイと交戦する空域に突入した。
「黒マントめ、この間の私たちとは違うぞ!」
「見くびるなよ、黒マントっ!!」
ダダダダダダダダッ
主力ウィッチたるトゥルーデやエーリカたちは機銃を黒マントに向けて発砲するも、放たれた弾丸はマントにより跳ね返えられた。
「わわっ!?」
「奴のマントがシールドの役割に…!」
「……なら、私と烈風斬でっ!!」
美緒は鞘から烈風斬を抜き、黒マントに向けた。
ガキイイィィン ガキイイィィン
「…………」
「……ぐ……な…なんて力だ…」
美緒は烈風斬で黒マントに挑むも、激しい剣術により手こずっていた。
ガキイイィィン
「坂本さんっ!」
「少佐っ!!」
「美緒っ!!」
芳佳やミーナたちは美緒の援護に向かうも、他の球体型ネウロイの攻撃に遮られた。
「チクショウーっ!!」
「エイラ」
「(…あいつの殺気は、僕に向けられている……)」
洋介が黒マントの敵を追いかけた先は、ウィッチたちが水泳トレーニングをしている砂浜の海岸だった。
「いるのは分かっている、出てこい!」
ゆっくり着陸、ユニットを脱いだ同時に潮風が舞い、小波が漂う中で洋介が叫ぶ時だった。
ヒュッ 「はっ!?」 バァン バァン カキイィン カキイィン
洋介は反応し、2本の短剣を拳銃で弾き飛ばした。
「……はぁ…はぁ…なっ!?」
それでも波状が続き、黒マントが乗ってきた黒い球体がビームを放ち、四式小銃で返り討ちに撃墜した。
ゆっくりと背後から、黒マントの者が現れた。
「何故だ、お前は人間なのにネウロイに味方するなんて、操られているのがわからんのか!?僕はネウロイの計画でこの世界にきた、ネウロイの侵略で脅えて暮らす人々や、奪われた国と暮らしを取り戻すために戦って命を落としている者たちの心の痛みが、例えお前が人間でも、ネウロイに味方する以上、僕は許さない!!」
洋介は黒マントに呟き、四式小銃を置いて、鞘から鷹狼を抜刀し構えた。
対して、黒マントも腰の刃を鞘から抜き、構えた。
「…そうか…てやあぁぁぁ…!!」
ダダダダダダダダ パキイィィン
ミーナたちウィッチたちは最後の球体型ネウロイを撃墜した。
「烈風斬っ!!」 スパアアァァン
「…はぁ…はぁ…」
烈風斬を構えた美緒もネウロイを斬り、撃墜するにも、息が荒かった。
「美緒、大丈夫!?」
「大丈夫だミーナ、私はまだまだ戦える!」
「ミーナ、少佐!ネウロイはあらかじめ殲滅したぞ!」
「えぇ、トゥルーデ!」
「っ…!?別方向からネウロイの一群が襲来!」
「なにっ!?」
トゥルーデがミーナと美緒にネウロイ殲滅を報告すると、サーニャの魔導針が反応。再びネウロイが襲来する。
芳佳と亜弥がミーナと美緒の元に訪ねてきた。
「ミーナ隊長、坂本さん!」
「お願い!お父さんの元へ行かせて下さい!!」
「なにっ!?そうか!」
「……宮藤さん、亜弥さん。至急、桜井さんの元へ」
「「 は、はいっ!! 」」
二人は洋介の元へ飛んだ。
「桜井大尉が黒マントを討伐するまで、我々はネウロイの迎撃を続行します!!」
「「「 了解!! 」」」
ミーナたちは、洋介が黒マントを討伐するまで、襲来したネウロイを迎撃するのであった。
海岸
ガキイィィィン ガキイィィィン 「…はぁ…はぁ……スウゥゥゥ」
洋介は以前の闘いで、黒マントの動きを見抜き、互角で剣を交える時。
「…そこっ…!」 スッ 「しまった……」
洋介は手にしていた軍刀『鷹狼』を叩き落とされ、黒マントは刃を振り翳した。
「…………」 バシッ
「ぐ…ぬぬぬぅぅ…」
瞬時に魔法力を込めた両手で、シールドを晒した。
「お父さーんっ!!」
「洋介さんっ!!」
「…………」
「今だ、てやっ!!」 ゲシッ
芳佳と亜弥が飛来した時、黒マントは硬直する。
洋介はそのスキを狙い、シールドを解除して右足で黒マントの腹部を蹴り倒した。
「「まただ…あの人はなんで…洋介さん(お父さん)の名前を聞いて……?」」
芳佳と亜弥が黒マントに疑惑すると、洋介は再び鷹狼を拾い、一方的に斬撃を与えた。
「てやあぁぁぁー!!」 ガキイィィィン ガキイィィィン
スパアァァン
洋介の刃捌きで、相手の右肩部の黒マントが斬られた。その右肩に傷があることを、遠くから亜弥は目の当たりにした。
「…あっ…あの傷は…まさかそんなことはあるハズはない……」
「どうしたの亜弥ちゃん!?」
芳佳が尋ねると、亜弥は震えながら洋介にインカムで叫んだ。
「お父さんっ!!その人は斬ってはダメよっ!!」
洋介が戦う黒マント、正体は何者かっ!?