「お父さんっ!!その人は斬ってはダメよっ!!」
「な…なんだって…!?」
「…そ…その人の…その人の肩の傷を見て…!!」
「…肩の傷…そ、そんな…まさか…」
亜弥の言葉で、黒マントの肩を目の当たりに
し、身体が震えた。
洋介がまだ幼少時代、3姉弟が山の中を散策している時に、運悪く熊に遭遇した。
熊の襲撃から逃げている時、岸壁に挟まれた。姉の志帆は洋介と勇介を抱きしめながら、熊に背を向け守っていた。
「…お姉ちゃん…勇介……うああぁぁぁ-!!」
「洋介っ!!」
洋介は志帆の腕から出て、地面に落ちていた木の棒を拾い、熊に向けた。
「お姉ちゃんと勇介は、僕が守るっ!!」
木の棒で洋介は熊の顔面を強打、熊は肩手で顔を抑えた。
「…やったっ…あぁ…」
熊の目付きが変わり、左手の鋭利な爪で洋介を切り裂こうとした時、洋介は恐怖で瞼を閉じた。
バシュッ 「……あ…あぁ…」
瞼を開けると目の前で父、桜井佐助が洋介を庇い、腰に身に付けた刀を鞘から抜き、熊を切り倒した。
「…お父さん…お父さん……っ!!」
「……洋介…うおぉぉぉっ!!」
スパアァァァン
佐助は熊を切り倒し、洋介は父に近づいた。
「…お父さんっ!…お父さん…ごめん…僕はお父さんみたいに、お姉ちゃんと勇介を守りたかったんだ!」
「…う…洋介、お前と志帆、勇介が助かって良かった……」
「…お父さん…っ!?…お父さんその傷……う…うぅ…」
佐助は大丈夫だと言い張ると、洋介は佐助の肩を目の当たりにした。
洋介を庇った時、熊の爪で切り裂かれたのであった。
「……うっ…泣くな洋介、この傷はどうってことはねぇ……」
「お父さん…うぅ…うわあぁぁぁ~……」
洋介は泣きながら、父に謝罪した。
「……お…お父さん…」
海岸 上空ー
「…お…おじいちゃん……」
洋介の父は、亜弥からして見れば、まだ顔が知らない祖父であった。
「…え…?…おじいちゃん!?…つまり洋介さんのお父さん!?…だけど亜弥ちゃん、洋介さんのお父さんは、洋介さんたちの世界の戦争が始まる前の洪水で亡くなったんじゃ…」
「…うん…わたしのお母さんと叔母さんに何回も聞いた…けど、おじいちゃんはお父さんとバッキーさん、ステラお姉ちゃんと同じ様に、ネウロイの秘密計画に巻き込まれたんじゃ……」
「え…!?ひどい…ひど過ぎるよ…!!…、せっかくお父さんと再会したのに…」
父親の言葉で、芳佳は人一倍怒りを感じた。
そして『鷹狼』を構えた洋介は、娘である亜弥の言葉で震えていた。
「お…父さん…そんな……あの洪水で死んだんじゃ……くそっ……!!」
カキイィィン カキイィィン
「父さん、僕だっ…洋介だ…洋介やっ!!父さんは操られているんや!!」
洋介は刀を交えながら、黒マントの男。洋介の父親、桜井佐助に対し、名前を呼び続けた。
「…よ…よう…す……け…」
洋介の名前に反応、佐助の動きが鈍くなった機会を見つけ、そしてー
「…スウゥゥ…はあぁぁ……父さん、鷹斬りっ!!」
洋介は魔法力を込めた『鷹狼』を握り、佐助の黒マスクを紙一重に斬り外した。
「………………」 ドサッ
「…父…さん……父さん…!!」
洋介は倒れた佐助に赴き、倒れた身体を仰向けにし、そして上空で待機していた芳佳と亜弥も駆けつけた。
「…父さん、しっかりしてくれ!!」
「おじいちゃん!…芳佳お姉さん、治癒魔法をお願い…!」
「うん!」
亜弥の応えに、芳佳は佐助に両手を翳し、治癒魔法を架けた。
芳佳の固有魔法で、傷付いた斬傷を書き消し、佐助を回復させた。
「う……ぅぅ…ここは…?」
「ここはロマーニャ…いや、イタリアだ…!」
「……イタリア…?」
佐助の意識を取り戻し、上半身が立ち上がりながら口を聞いた。
「父さん…僕だ…洋介や……」
「…父さん…?…洋介…?…お前、洋介か…!?」
「あぁ、僕は父さんの息子の洋介です……」
「そうか、…大きくなったな…」
「……父さん…うぅぅ…」
二人はこの場で、異世界での父子と再会し、お互いに抱きしめながら涙を流した。
その場に居た芳佳と亜弥も涙を流し、そして亜弥も佐助の近くを訪れた。
「…あ…あの…お…おじいちゃん…!」
「…え…おじいちゃん…?」
「うん、わたしは桜井洋介の娘、桜井亜弥ですっ!!」
「…亜弥…?…洋介の娘…そうか、俺の孫かっ!?」
「うん、おじいちゃんっ!!///」
佐助は息子の洋介に娘、孫が居たことに驚き、孫の亜弥は祖父に抱き付き、そして佐助も笑みを浮かべながら孫である亜弥の頭を撫でた。
「そうか、俺に孫ができたのか…そちらのお嬢さんが、洋介の女房か…?」
「……っ!?…ち…違います!…だけど…そう…なれたら……///」
佐助は視線を芳佳に移し、洋介の女房かとの質問で彼女は誤解だと述べつつも、まんざらでもなく、赤面していた。
そして佐助は、洋介の右腹部に傷を負っていることに気づいた。
「あ、洋介…その傷…」
「大丈夫や、この傷はどうってことはねぇ」
洋介は佐助に対し、大丈夫だと言い張った。
「桜井さんっ!!」
「桜井~!!」
「宮藤~!!」
「亜弥~!!」
「洋介~!!…あれ、そいつは…」
「もしかして、黒マントっ!?」
「確かに黒マントの敵ダ!洋介大尉、離レロ!!」
ネウロイの子機と奮闘していたミーナたちウィッチーズが洋介の元に集まると、ルッキーニとエイラの反応でウィッチたちは銃口を佐助に向けた。
「みんな、ちょっと待って!!違うよっ!!」
「何が違うんだ、宮藤!!」
「芳佳お姉さんの言う通り、この人はわたしのおじいさん、桜井洋介のお父さんです!!」
「「 え…えぇ〜!! 」」
「なんだって!?」
「桜井さんのお父様っ!」
「あの人は亜弥のおじいちゃん!洋介のパパ!?」
ミーナは寡黙に着陸し、親子に近づいた。
「ミーナ中佐……」
「……魂消たものを脚に履いているんだな洋介、…あなたは…?」
「…桜井洋介大尉の上官であるミーナ・ディートリング・ヴィルケ中佐です。あなたの事情はわかっていますが、拘束させて頂きます。」
「っ!?ミーナ中佐!」
「ですが…」
「…わかっておるお嬢さん、洋介。中佐、よろしくお願いいたします…」
佐助は芳佳と息子の洋介を制止させ、ミーナの言葉を理解し、両手を差し出した。
その時
「っ!?皆、伏せろっ!!」
「「「 えっ!? 」」」
「総員、この場所から散開し離脱!!」
ヒュウウゥゥゥゥ ドカアァァァン
「ぎゃあぁぁっ!!」
「サーニャ、逃げ…ああぁぁ-っ!!」
佐助の言葉で耳を傾けた時、洋介とウィッチたちが居る場所の上空から無数の砲弾が落下、ミーナの指示でウィッチたちは離脱、遅れたルッキーニはシールドを貼って防ぐにも別の場所に落下した砲弾の爆発に巻き込まれ、サーニャを庇おうとしたエイラは未来予知で回避するも、次々と炸裂する砲弾の爆発に巻き込まれて負傷する。
「ルッキーニっ!!」
「エイラっ!!」
「「ルッキーニちゃんっ!!」」
「エイラっ!!」
「みんな、くそっ!!」
「…洋介!今すぐこの攻撃の発射地点を探れ!!」
「っ!?父さん、だけど父さんは俺みたいな魔術師じゃねぇっ!」
洋介は父親の佐助の側でシールドを貼って護りつつ、先ほどの魔法力が弱まりつつあった。
「このままじゃ我々や洋介の仲間たちが全滅する!誰がやらねば誰がやる!今すぐ選択しろ!!」
「…っ!?…父さん…父さん、やられるなよ…っ!!」 ギュイイィィィン
「お父さんっ!!」
被害を少しでも防ぐ為に洋介と亜弥の親子はユニットで飛び立ち、砲弾の発射地点を特定。
二人はロケット弾付きの機銃を発射地点である内陸の岸壁に構えた。
「「これ以上、被害を増やしてたまるかっ!!」」 バシュッ
シュウゥゥゥ ドカアァァァン
放たれた2発のロケット弾は発射地点に向けて着弾。
着弾したものの、手応えがなかった。
「はぁ…はぁ…」
「…くっ外したか…父さん…っ!!」
洋介は着弾地の海岸に着陸、父親である佐助の元へ訪れた。
「…はぁ…洋介…無事だったか…」
「あぁ父さん、この部隊は魔女の部隊。僕と亜弥も、魔術師と魔女なんだ。」
「そうか、頼もしいな…たのも…」 バタッ
「……父さん…父さん…っ!!その背中っ!?」
「おじいちゃんっ!!芳佳お姉ちゃんお願いっ!」
佐助の息が荒くなり、彼の背中には砲弾の破片が刺さっていた。
亜弥は緊急で、芳佳をインカムで呼び寄せた。
『「…え…そんな、ごめん亜弥ちゃん、今みんなが負傷して、治癒で手が離せない……」』
先ほどの砲撃で半分のウィッチが負傷したため、手が一杯であった。
「…そんな…父さん…頑張ってくれ…生きてくれ!」
「おじいちゃんっ!!お願い!」
「…う…洋介…亜弥…俺の……ような敵……が……いた……ら…まよ…わず……戦え……救う……んだ…………」
「…父さん、まだ言いたいことがあるんだ!」
「…おじいちゃん!!おじいちゃんっ!!わたしもまだまだたくさんお話ししたいのっ!!」
「…ここ……ろ……も…やせ…………」
洋介の父、亜弥の祖父である桜井佐助は二人に囲まれながら、その場で息を引き取った。
「…お…父さん…お父さん…!!…僕らがいる場所は異世界なんだ…!!それに、再び戦争が始まって…勇介はドイツの首都ベルリンで死んだ……」
「おじいちゃんっ!!おじいちゃんの娘、志帆おばさんは元気だよっ……」
ギュイイィィィィン 「洋介さん!亜弥ちゃんっ!!」
「桜井っ!亜弥っ!お前たちの親は……」
芳佳とトゥルーデがストライカーで駆けつけ、佐助の容態を呟いた時、二人は目元に涙を流し、首を横に振った。
「そ…そんな…」
「っ!?…なん…で……そんな…」
洋介は父、佐助の亡骸を背負い、亜弥も祖父の背中を抑えた。そのタイミングでミーナと美緒が二人の元に訪れた。
「……桜井さん…亜弥さん……」
「…桜井…亜弥……すまない…お前たちの親族を……」
「……ミーナ中佐…坂本さん……あとで基地の空き地で荼毘、火葬の許可を下さい…」
洋介は自身の上官に荼毘の許可を求めた。
「…桜井さん…」
「……桜井………わかった…」
「「 ありがとうございます 」」
洋介と亜弥が、ミーナと美緒に礼を述べた時、芳佳が赴いた。
「洋介さん、亜弥ちゃん…」
「芳佳……」
「…あの…わたしにも手伝わせて…」
「よ、芳佳お姉ちゃん……」
「…芳佳……そうか、わかった。」
「ありがとうございます。」
洋介は芳佳の言葉に理解する。
芳佳の父、宮藤一郎博士はブリタニアでストライカー研究の最中、ネウロイの襲撃を受けて殉職した。
芳佳の実家に父親の死亡通知の知らせが届いたにも関わらず、葬儀すら出来ず、彼女として未練が続いた。
洋介の父、亜弥の祖父の桜井佐助が息を引き取った時、縁もゆかりもないが他人事と思えず、芳佳の心としての葬儀を行おうとしていた。
基地 空地
洋介と亜弥、芳佳は一旦佐助の遺体を空地に置き、整備員から木製のベニヤ板を貰って空地へ赴く時だった。
「トゥルーデ、ハルトマン…」
「シャーリーさん、ルッキーニちゃん。」
「エイラさん、サーニャお姉ちゃん…」
6人のウィッチたちがベニヤ板を持って、待機していた。
「……洋介」
「…桜井……私達も手伝わせてくれ」
「…みんな、ありがとう。」
洋介はその場でお辞儀する。
短い時間でありながら棺が完成し、洋介は佐助の遺体を棺に入れ、そしてリーネとペリーヌが数種類の花を持参する。
「…洋介さん、間に合った。」
「桜井さん、これは以前のお買い物で購入した種が成長した花です。これをお供えして下さいまし。」
「リーネ、ペリーヌ。ありがとう……」
洋介は二人に感謝を述べ、10人のウィッチたちはそれぞれの花を棺に入れ供えた。
花を供え終えた後、洋介と亜弥は棺の蓋を持ち、佐助の顔を最後に眺めた。
「…………お父さん……」
「…おじいちゃん………」
静かに蓋を閉じた。
棺を油に染み込ませた薪の束の上に載せ、洋介はマッチに火をつけ、松明に火を移し、火葬した。
棺全体が燃える中、ウィッチたちは手を合わせ、冥福を祈った。
芳佳以外のウィッチたちが、洋介の父親であり、祖父であった佐助と会話したいと思った時、坂本美緒とミーナが火葬に赴いた。
「「桜井」さん。」
「坂本さん、ミーナ中佐…。」
「桜井、わたしたちは本部にネウロイ襲来の報告が長くなってしまった。遅れて大変申し訳ない。」
「坂本さん、…いえ、この場に…出席、冥福を祈ってくれることに、大変感謝していますよ。」
美緒が謝罪するものの、洋介は感謝を伝えた。
「…あの…桜井さん、ごめんなさい…ごめんなさい…!」
ミーナは申し訳なさそうに謝罪する。彼女の行動一つで、数少ない肉親の命を奪ってしまったことを許しても許し切れない罪悪感を持っていた。
「……ミーナ中佐、……許します。」
「っ…桜井さん……」
「ミーナ中佐は軍人、いや…人としても、僕の父がネウロイの一角として行動を許すまいと思っていたことは仕方ありません…父がネウロイから解放した時、中佐は父の両手を枷の代用として縄を結ぶつもりでしたが、それを結ばずに逝ったことは、まだ幸せです。」
「…桜井さん……」
洋介はミーナの罪悪感を犯さず、無論に許した。
「(…お父さん、僕はあなたから色々と剣術について教えて欲しかった……また親子として酒を飲みたかったよ…あの世で勇介と再会、僕と亜弥を見守って下さい……)」
洋介は手を合わせ、涙ながら呟いた。
「(…おじいちゃん……短い時だったけど…おじいちゃんに会えて良かった……もう少し…おじいちゃんとお話ししたかった…)」
亜弥も手を合わせながら、心の中で呟いた。
数時間掛けて火葬の火が収まり、盛られた灰の中から骨を取り出し、扶桑式の方法で、長箸で骨を拾い、2つの骨壺に納めた。
「……必ずや…この世界の日本……扶桑の地に納めます…」
「(…洋介さん…もう一つの骨壺…何に…)」
もう一つの骨壺で、芳佳が何に使うかは気になるのであった。
読者の皆様方、良いお年を