ストライクウィッチーズ ~蒼空を舞う零の荒鷹~   作:鷹と狼

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第66話 定められた運命

 

 

ある日の夕方、ロマーニャ近くに接近した中型ネウロイを討伐すべく、洋介とウィッチたちは出動し迎撃をしていた。

機銃が飛び交う中ネウロイの装甲がはがれコアが見える。

 

「烈風っーーー斬!!」

 

 

 

美緒の愛刀烈風丸から放たれた大きな波動はその中型ネウロイをコアごと真っ二つにし、撃破したのだった。

 

 

 

「やったー!坂本さん!!」

 

 

 

「やりましたわね少佐!!」

 

 

 

「ああ」

 

 

 

宮藤芳佳とペリーヌは喜んでいた。彼女はその声を聞いてそう返事をする。

 

 

 

「……おっと!」

 

 

 

急に美緒のストライカーが急に止まったが、すぐに動き出した。

 

 

 

「少佐、大丈夫ですか?」

 

 

 

「ああ、大丈夫だ。心配ない」

 

 

 

美緒はそう言うが、ミーナは深刻そうな顔で彼女を見るのであった。

 

 

そして洋介も美緒の違和感に気付きじっと見ている。

すると美緒の背中に差してある烈風丸から何やら怪しい邪気を感じた。

 

 

 

「……」

 

 

 

「どうしたの?洋介さん?」

 

 

 

「え?」

 

 

 

洋介の隣を飛んでいた芳佳がそう訊く。

 

 

 

「あぁ、いやなんでもない。多分気のせいだ!」

 

 

 

「?」

 

 

 

洋介はそう言い、芳佳は首をかしげる。

あの刀から感じる気配、普通の刀から出ない何か恐ろしい感じがした。

 

 

みんなとともに基地へと帰るのであった。

 

 

 

「(今の感じは……もはや魔法力が限界なのか……)」

 

 

 

美緒はそう感じながら、飛ぶのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして翌日の早朝、娘の亜弥がまだ眠っている時、洋介は昨日のネウロイとの戦いの後、軍刀の鷹狼の刃を研いでいた。

 

 

 

 

「よし、こんなものやな。いつもネウロイの戦いで助かるゼ…」

 

 

 

 

鷹狼の手入れを終え、軍刀を帯刀し、いつものように基地の周りを散歩していた。

この世界に来て半年以上、いろんなことがあった。まず元の世界で洋介は、北方領土の戦いの最中、基地に帰投する途中、濃霧に突入し、この世界に来ていた。

 

 

そしてその世界で洋介は、芳佳たちウィッチたちと出会い、今に至っていた。

 

 

初めて芳佳たちと出会い、運命に導かれるかの様に、成長した娘の亜弥と再会した時のことを、昨日のことのことのように思えた。

 

 

 

「…赤ん坊だったあの娘がまさか…この年齢で再会するとは…色々と翻弄するゼョ…」

 

 

 

そう呟き、空を見上げながら洋介は歩く。すると

 

 

 

「あれ?あれは芳佳?」

 

 

 

基地の石机に芳佳が座っていた。

しかもその顔は何やら申告しそうでしょんぼりしたような顔であった。洋介は芳佳の傍に赴いた。

 

 

 

「芳佳、どうしたんだ?」

 

 

 

「あ…洋介さん」

 

 

 

「そんな浮かない顔をして、何かあったのか?」

 

 

 

「実は……」

 

 

洋介がそう訊くと、芳佳はその理由を話す。

 

 

 

 

数時間前

 

 

 

「坂本さん。宮藤です!ミーナ中佐から伝言です!」

 

 

 

芳佳はミーナの伝言を伝えるため坂本さんの部屋へ訪れ、いくら呼んでも返事がなく、不思議に思った芳佳はドアに手をかけるとその扉が開く。

 

 

 

「あ、あれ?開いている?」

 

 

 

芳佳がそう呟き恐る恐る、その部屋に入るとその部屋には美緒の姿はなかった。

 

 

その部屋には布団以外何も飾られてなくあるとすれば掛け軸くらいだ

 

 

 

「いない…まだ訓練中なのかな?」

 

 

 

辺りを確認していると、ふっとあるものが目に留まる。

 

 

 

「烈風丸……」

 

 

 

そこにあったのは、美緒の愛刀である烈風丸であった。

芳佳は前に聞いた美緒の言葉を思い出し、そうあれは前に芳佳がスランプになった時の朝のことだ。

 

 

 

『私が会得したいのは烈風斬を超える烈風斬…真・烈風斬だ』

 

 

 

『真烈風斬?』

 

 

 

『ああ、古より扶桑皇国に伝わる秘奥義だ。これを極めることが出来れば、どんなネウロイが来ようとも一撃で粉砕できる』

 

 

 

そんな言葉を思い出しつつ芳佳はその刀に吸い寄せられるように近づき、ゆっくりとその刀を手にし、鞘を外す。すると烈風丸の奇麗な刀身が見え、そして烈風丸が光りだし魔力があふれ出す。

 

 

 

「これが烈風丸……」

 

 

 

それを目の当たりにした芳佳がそう呟く。すると彼女の意識がだんだんと薄れていき、何かを吸い取られていくかのように、そして芳佳が意識を失いそうになって倒れそうになる。

 

 

 

「宮藤!!」

 

 

 

そこへ美緒がやってきて、芳佳を支える

 

 

 

「宮藤、しっかりしろ!!」

 

 

 

美緒は芳佳の体をゆすると、芳佳は目を開ける。

 

 

 

「さ……坂本さん……」

 

 

 

「良かった…立てるか?」

 

 

 

「は、はい」

 

 

 

「そうか…よかった……」

 

 

 

 

美緒は安心したようにそう言うと、烈風丸を取り鞘に納める。

 

 

 

「あ、あの…坂本さん。その刀は…?」

 

 

 

「馬鹿者っ!!」

 

 

 

「っ!?」

 

 

 

いきなりの怒声に、芳佳は体をびくっと震わせる。

 

 

 

「二度とこの刀に触るんじゃない!わかったか!!」

 

 

 

「は、はい……ごめんなさい」

 

 

 

怒り心頭の顔に、芳佳はそう返事をするのであった。

 

 

 

「それと、最近は桜井と亜弥の剣術の特訓、止めるんだ!!」

 

 

 

「そ…そんな……はい…」 

 

 

 

 

更に、洋介と亜弥との剣術を止める様に言い渡された。

 

 

「……なるほど。そう言うことがあったのか…」

 

 

 

「はい」

 

 

 

洋介は芳佳の言葉を聞いてそう頷く。

 

 

 

「今思えば、私、坂本さんにすごい失礼なことしちゃったと思っています。聞けば刀って扶桑の軍人にとって魂のような物。それを勝手に触られていい気分にならないと思っています。」

 

 

 

深く反省してそう言う芳佳、刀は武士または軍人にとって象徴であり魂のような物。それを勝手に触られていい顔をする人はいない。

 

 

現に洋介も幼少の時に、弟の勇介と共に鷹狼と狼虎を手に触れようとした時に、父の佐助から拳骨を喰らわされたことが屡々あった。

 

 

 

「そうか……で、坂本さんは今どこに?」

 

 

 

「あ、はい。数分前にミーナ中佐と一緒に司令部に行きました。なんでも重要な会議があるとか……」

 

 

 

「重要な会議か…ミーナ中佐もウィッチの会議に戻ったばかりなのに、……とうとう決戦かな…」

 

 

 

二人が司令部に招集され、ヴェネチア奪還作戦が始まるのか、洋介はそう思っている。

 

 

 

「ねぇ…洋介さん」

 

 

 

「ん?何だ?」

 

 

 

「その左腰の軍刀なんですが、いつも見る度に刃はかなり古いものですがそれは……」

 

 

 

芳佳は洋介の腰に帯刀する軍刀、鷹狼を見る。

 

 

 

「…あぁ、これは父さんが、大事にしていた軍刀だ。呉で姉さんと再会、兄弟刀の狼虎と共に、弟の勇介と受け取った。桜井家の先祖代々から受け継がれている刀、まぁ簡単に言えばこれは家宝でも、お父さんや顔の知らん叔父、じいちゃん達の形見でもある…」

 

 

 

 

「…洋介さんのお父さんたち…」

 

 

 

 

洋介の愛用している軍刀は、父の佐助が愛用していたものであり、家に代々伝わる家宝でもあった。

 

 

洋介の一族は武士の家系であり、明治に突入して、桜井の兄弟たちは陸海軍に志願、刀と共に西南の役を始め、日清と日露、欧州大戦、洋介と弟の勇介は第2次欧州と大東亜の戦いに従軍。

 

 

刃には桐の家紋が刻まれていた。

 

 

 

「洋介さんの弟さん…いや、洋介さんのお父さんやおじいちゃんたちも…?」

 

 

 

「……まぁな…父さんから微かに聞いたが、戦死した。…さらに勇介も………」

 

 

 

「…洋介さん…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1943年 ラバウル航空隊

 

 

 

「…はぁ……はぁ…ふぅ…隊長は凄いなぁ……」

 

 

 

洋介は下士官(飛行兵曹長)時代、ラバウル六勇士の隊長である厚木十三中尉と剣術のトレーニングを交えていた。

 

 

 

 

「…桜井……お前も、中々の腕だな。」

 

 

 

 

「いえ、……俺は幼少から、父から剣術を叩き教えられました。」

 

 

 

 

「そうか、俺もだ。俺の親父やじいさんも剣術を心得ている。この軍刀たる鬼無双も、戦国時代から戦い、今日まで至っている。」

 

 

 

「…戦国時代から…俺の刀はどこかで、隊長の刀と敵対、もしくは共に戦ってきたのかも知れないですね…」

 

 

 

 

「ふ、…そうだな……」

 

 

 

 

洋介の記憶で、隊長の厚木十三と刀に関して語り合った。

二人はラバウル六勇士で数少ない、軍刀を所持するサムライであった。

 

 

 

 

 

 

 

「あ、あの……洋介さん。大丈夫ですか?」

 

 

 

「え?ああ、大丈夫だよ。ま、とにかくそう言うことだ。話はそれたが芳佳。坂本さんに悪いことをし反省したならそれでいいよ。次から気をつければいい。」

 

 

 

「はい。ありがとうございます洋介さん。すみません相談に乗ってくれて……」

 

 

 

「別に俺も暇していたからな。…さて、俺はそろそろ行くよ。じゃあ、芳佳また。」

 

 

 

「あ、はい」

 

 

 

洋介は芳佳と別れるのであった。

 

 

 

 

 

 

そして一人残された芳佳は一人ぶらぶらと歩いていると

 

 

 

「あ、芳佳ちゃん!」

 

 

 

「お!宮藤発見!!」

 

 

 

「あれ?リーネちゃんにシャーリーさん?それにルッキーニちゃんも!?」

 

 

 

「丁度良かったよ。お前を探していたんだ」

 

 

 

「え?」

 

 

 

「ま、いいから気こっちに来なよ」

 

 

 

シャーリーは芳佳の手を握り、何処かへと連れて行くのであった。

 

 

 

 

 

501露天風呂場

 

 

 

「「 そぉ〜れー!! 」」

 

 

 

シャーリーとルッキーニが勢い良く飛び込み水しぶきが上がる。

 

 

そしてその風呂場には洋介を除き501のウィッチメンバーが全員いた。

 

 

 

「な、なんでこんな朝早くからみんなでお風呂に入っているんですか?」

 

 

 

芳佳が不思議そうに質問する。

 

 

 

「バルクホルン大尉が今のうちに英気を養っておけですって。」

 

 

ペリーヌの言葉にトゥルーデが頷いた。

 

 

 

「ああ、もしかしたら今までとは違う戦いになるかもしれないからな」

 

 

 

「え?それってどういう……」

 

 

 

「ミーナと少佐が司令部に行っただろ。そこで最終作戦が発動されるらしいよ。怖い、怖い~」

 

 

 

犬かきしながら泳ぐエーリカがそう呟く。

 

 

 

「最終作戦って……」

 

 

 

「ああ、ヴェネチア上空にいるネウロイの巣に向けて……最終攻撃を仕掛ける!」

 

 

 

トゥルーデは真剣な目でそう言う。その中で髪を洗っていた亜弥は震える。

 

 

 

「……とうとう…とうとう決戦が…」 

 

 

 

亜弥にとっては三度目の決戦が近づいていた。

 

 

以前は極寒のオラーシャ帝国にて、対グリゴーリ戦ことフレイヤー作戦。

 

 

ヴェネツィアにて、ネウロイとのコンタクトを試みたトライヤヌス作戦。

 

 

以前に展開していたネウロイの巣以上に、強大なネウロイが巣に居座り、命懸けで回収した人型ネウロイの命を奪ったネウロイが、許せなかった。

 

 

 

 

「…今度こそ…あのネウロイの仇を討ってやる…」

 

 

 

 

一方、一人別の浴場(ドラム缶風呂)に入っていた洋介は、肩を湯につかりながら地中海と空を眺め、先ほどの芳佳の言葉を思い出していた。

 

 

 

「(坂本さんの刀か…芳佳の話を聞いてもやっぱりなんか怪しい…それにあの刀から発するあの禍々しい気もそして芳佳の『吸い取られる感覚』も……坂本さんが帰ってきたら、詳しく聞いてみるか。嫌な予感が……)」

 

 

 

 

洋介がドラム缶風呂から出て、タオルで頭の髪と身体を拭き、衣類を身に付けた時だった。

 

 

 

 

「…っ!?誰だ…!!」

 

 

 

 

洋介は傍に置いていた鷹狼を鞘から抜き、刃を向けた。

 

 

 

 

「……気のせいか……」

 

 

 

 

確認したところ、周囲には音と形の影すら存在せず、静寂だった。

最後に略帽を被り、その場を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

連合軍上層部

 

 

 

 

 

「どういうことです!?」

 

 

 

「将軍、それでは今回の作戦にウィッチは必要ないというのですか?」

 

 

 

 

洋介と芳佳たちが朝風呂を堪能している頃、ミーナと美緒は上層部の会議室に出席。

目の前の机にはロマーニャ軍の将官クラスの軍人が座っていた。

 

 

今回の作戦会議の内容は、今回のヴェネチア奪回作戦について、そして作戦内容は『今回のウィッチ隊は作戦には参加せず、後方に下がる』ということだ。

 

 

 

「そうではない。だが、ネウロイの巣を破壊する主力はウィッチではないということだ。それにこの前のマルタ作戦でも話したようにネウロイとのコンタクトを試みたトライヤヌス作戦はネウロイの攻撃のため失敗に終わり人類と唯一共存できる可能性のあった人型ネウロイも貴殿らの書類に書かれていたネウロイによってほとんどがいなくなってしまった。もはや共存の道は不可能に近い。もはや残された道は破滅か戦うかの二択なのだ。」

 

 

 

 

「そして今回の作戦の相手はヴェネチアを占領するネウロイの巣。巣が相手とならば話は別だよ。君たち501統合戦闘航空団とて直接ネウロイの巣を倒したわけではあるまい?」

 

 

 

 

その言葉で二人は黙ってしまう。

かつてガリアでの戦いで、ネウロイの巣を直接倒したわけではなく。空母赤城と同化したウォーロックを倒したのと同時に巣が消滅したため、彼女らは巣の本隊と戦ったことは一度もないのだ。

 

 

 

「確かにそうですが……しかし!」

 

 

 

「ミーナ中佐。もうこれは決定した事なのだよ。そうだな杉田艦長?」

 

 

 

「え?」

 

 

 

上層部の将軍の一角がそう述べ、ドアの方を向く。ミーナたちがそこを見るとそこには大和艦長である杉田艦長がいた。

 

 

 

「はい、ヴェネチア上空のネウロイの巣は、我が扶桑海軍の戦艦大和が撃破します。」

 

 

 

「艦長!たとえ大和であっても通常兵器です!空にあるネウロイの巣を撃破することはできません!!」

 

 

 

美緒がそう真実味に述べる。

 

 

 

 

「通常兵器ではないのだよ坂本少佐。あれは…戦艦大和は我々の決戦兵器なのだよ」

 

 

 

「決戦兵器だと?」

 

 

 

杉田艦長の言葉で、美緒が驚愕する。

 

 

 

 

「その通りです。我が桑海軍ではガリアでのウォーロック事件を研究した結果、より安定度の高いコア・コントロールシステムを開発しました。10分と限られた時間内だが、暴走を抑えつつネウロイ化が可能です。」

 

 

 

杉田艦長の言葉で、ふたりは驚愕する。

 

 

 

「大和をネウロイ化にですって!?」

 

 

 

 

「血迷ったか……」

 

 

 

二人は上層部の将軍たちを睨む。

 

 

 

「ネウロイ化の利点として、自動自己修復機能がある。それに、ネウロイを支配下に置き潰せるとなれば、迅速に作戦を進めることができるだろう。ネウロイを倒せるのはネウロイだけだ。」

 

 

 

 

「ウィッチに不可能はありません!!私の真烈風斬やみんなのチームワークさえあればたとえネウロイの巣であっても勝てます!!」

 

 

 

美緒の決意に満ちた声で述べる。

 

 

 

 

「坂本少佐。君は本来、既に現役を引退していてもおかしくない年齢ではないのか?」

 

 

 

 

「「 っ!? 」」

 

 

 

「気持ちはわからんでもない。だが、この作戦が失敗したらもはや我々はロマーニャを明け渡す以外しか選択しかないのだよ。そうなれば当然501もこのままの状態ではいられない。わかるかね?」

 

 

 

 

「しかし!そこを……!!」

 

 

 

 

「坂本少佐、さっきも言った通りこれはもう決定したことだ。」

 

 

 

 

「少々お待ちください!」

 

 

 

 

「高野長官?」

 

 

 

「高野長官!!」

 

 

 

 

上層部の一人が会議を終わらせようとした時、一人の扶桑海軍大将、高野五十六が出席し、呼び止めた。

 

 

 

「私はこの作戦に異議を唱える気はありません。彼女たちウィッチーズとロマーニャで唯一無二のウィザードたちは、これまでに大きな戦果を挙げ、ネウロイからの侵略を獅子奮迅の活躍で防いでいます。それを戦艦の護衛だけでは不充分、彼女らにチャンスをあげたはどうですか?」

 

 

 

 

「チャンスですと高野長官?どういうことですか。まさかオペレーション・マルスを中止しろとそう言いたいのですかね?」

 

 

 

 

 

「いいえ、予定通り大和はネウロイ化させ巣を破壊しますが、その前に少しだけ厄介なことがあるのです。」

 

 

 

 

「厄介な事?」

 

 

 

 

「ええ、この前、我が扶桑海軍の戦艦大和を襲撃する人型ネウロイと交戦、未だに撃墜に至っておりません。」

 

 

 

 

「それがどうしたというのかね?人型ネウロイとは言え所詮を止めたって、脅威にはならん。」

 

 

 

ロマーニャの将軍たちは、人型の情報を伝えているものの、鼻で笑うロマーニャの将軍たち、すると高野は首を横に振り、進言する。

 

 

 

 

 

「問題はそこではありません。情報統制で発表されていませんが、扶桑の連合艦隊旗艦の戦艦大和を襲撃以降、度々施設に襲来、人型は未だ撃墜に至っていません。」

 

 

 

「なんだと!?」

 

 

 

 

 

「これがその時の報告書と資料です。」

 

 

 

高野はその報告書を渡し、将軍たちが内容を見る。

 

 

 

 

「まさかこんなことが…」

 

 

 

「あなたたちがどう思おうとこの資料は確かです。ヴェネチアには強力な人型ネウロイがいる可能性が高い。もしオペレーション・マルスで連合軍が全滅させられるのは自明の理。そこで私が考えたのが彼女らには大和を護衛しつつ、人型ネウロイを討伐してもらい、その巣にいる子ネウロイたちの殲滅をすることです。多少きついかもしれないが、こうでもしなければ艦隊は全滅する。これでもウィッチを参加させないと言いますかな?」

 

 

 

 

 

高野の言葉に、他の上層部の将軍たちは沈黙する。

 

 

この戦局でヴェネツィアの人型ネウロイ

 

 

 

 

「なるほど。確かに貴殿が言うようにこの報告書が本当だとするのなら、ウィッチの力が必要だな。高野長官の意見を受け入れましょう。明日10:00にオペレーション・マルスを発動する。501統合戦闘航空団は敵ネウロイに突入する大和の護衛及び、巣を護衛する強力な人型ネウロイを討伐せよ。以上で会議を終わる。」

 

 

 

新たなる命令を下し、上層部の人たちは立ち上がり敬礼する。 

 

 

 

「了解しました。」

 

 

 

 

ミーナは返礼するが、美緒は複雑そうなそんな顔をするのであった。

 

 

 

 

二人が501基地にて、早速今回の作戦の話が始まる。そしてミーナが作戦を解説する。

 

 

 

 

 

「持てるすべての戦力でネウロイの巣を叩き、一気に決着をつけるこれがオペレーション・マルスの内容よ。」

 

 

 

 

 

「ちょっと待てミーナ!?戦艦をネウロイ化させて巣を叩くってどういう意味だ!それに今回の作戦で私たちが主力ではないって!?」

 

 

 

 

彼女が提示する作戦内容で、トゥルーデは反論する。

 

 

 

「そのまんまの通りよバルクホルン大尉。私たちの任務は巣を直接叩くのではなく、その巣を倒す艦隊の護衛が今作戦でのウィッチの任務よ。」

 

 

 

 

 

「もし作戦が失敗したらどうなるんだミーナ中佐?撤退する気じゃないでしょうな?」

 

 

 

 

 

洋介は鋭い視線でミーナに質問する。

 

 

 

 

 

「その通りよ桜井さん、もしこの作戦が失敗したらロマーニャ全土はネウロイに明け渡すことになったわ。そしてそれと同時に501航空団も解散することになります」

 

 

 

 

 

『っ!?』

 

 

 

 

 

ミーナの言葉に全員が驚いた。

 

 

 

 

「……解散……」

 

 

 

 

洋介は解散の言葉に、敏感になっていた。

 

 

かつての敏腕特殊部隊、ラバウル六勇士もアメリカによる飛び石作戦と戦況の悪化で、ラバウルからトラック諸島に移動、現地で解散命令を指示された。

 

 

そして終戦後、この世界に転移して、ストライクウィッチーズに転任、ウィザードとして戦うにもブリタニアのウォーロック事件にて、解散する。

 

洋介にとって、三度も解散した身であった。

 

 

 

「501が解散!?そんな馬鹿な話があるか!!ミーナ。そんな命令に納得して帰って来たのか!?」

 

 

 

 

 

トゥルーデが怒り心頭する。

 

 

 

 

 

「納得するわけないじゃないの!!」

 

 

 

 

 

ミーナが一喝し、談話室の空気が凍りつく。

 

 

 

「私だってこんな作戦納得できるわけないじゃないの…でもこれ以上防衛線を維持し、消耗戦を続けられるだけの余力は連合にはないのよ」

 

 

 

 

 

拳を握って声を絞り出すミーナから、悔しさと無力感が見て取れた。

 

 

ネウロイ出現から現在に至るまで連合軍はもはや消耗戦の状態で、何とか膠着しながら持ちこたえている状態。

 

 

ここでヴェネチアのネウロイと決着をつけなければ、ロマーニャを明け渡すしかない。

 

 

 

 

「う……うわぁーーーーーーーーーーーんっ!!!!」

 

 

 

 

 

ミーナの言葉を聞いてルッキーニは大泣きする。

 

 

自分の故郷が無くなってしまうかもしれない時、隣にいたシャーリーがルッキーニを抱きしめた。

 

 

 

 

 

「大丈夫心配するなルッキーニ。ルッキーニの故郷をあいつらに明け渡してたまるか。」

 

 

 

頭を撫でて励ます。

 

 

 

 

 

「そうだよ!ルッキーニさんの故郷を奪わせない!亜弥ももう一度ルッキーニさんと一緒にあの街に行きたいから!だからネウロイなんかに渡すわけにはいかない!!」

 

 

 

「…グスン…亜弥……」

 

 

 

 

「……亜弥の言う通りだ。あの奇麗な街を破壊されてたまるか。要は奴らを倒して勝てばいい。」

 

 

 

 

 

 

「ソウダナ、大尉の言う通り勝てばいいんだ!」

 

 

 

「うん……勝とうね!」

 

 

 

「ですわね」

 

 

 

「うん。勝とう」

 

 

 

 

「うん、絶対に勝つよ!」

 

 

 

 

 

一人一人、みんなは前向きに進言する。

 

 

 

 

「そう言うことだよトゥルーデ。何弱気になっているのさ~」

 

 

 

「…ち…違うっ!!私は例え、最後の一人になってでも戦う!!」

 

 

 

 

エーリカの言葉で、トゥルーデは勢いを保ち、ミーナの言葉で、みんなの士気はかなり高まる。

 

 

 

 

「一人になんてさせないわ。」

 

 

 

 

「「 えっ!? 」」

 

 

 

 

「私たち13人で、ストライクウィッチーズよ!」

 

 

 

 

洋介もネウロイにルッキーニの故郷を明け渡すわけにはいかない、何が何でも、あの場所を守り、そして、この世界のドイツのベルリンへ向かうことを胸に秘めて決意する。

 

 

 

 

「みんな士気が高まっているのはいいことだが、作戦が始まる前に問題が起きた。その巣には巣を守る無数のネウロイの他に、以前の亜弥と504のバッキーとステラが交戦した人型ネウロイが現れる可能性があるということだ。今回の私たちの任務は護衛とともにその人型ネウロイを倒すことだ!」

 

 

 

美緒の言葉にみんなは不安な顔になる。

 

 

 

「人型ネウロイって…あいつ…か?」

 

 

 

 

洋介が反応し、ミーナが首を横に振る。

 

 

 

「いえ、まだはっきりしたことはわかりませんが、とにかく今回の相手は強敵です。皆さん護衛はかなり厳しいものになると思われますが、気を引き締めて取り掛かるように!!」

 

 

 

 

「了解!!」

 

 

 

新たなる作戦で、みんなは返事をする。

 

 

 

 

「そうです!13人いれば絶対勝てます!)」

 

 

 

芳佳は敬愛する美緒の方へ顔を向けるが、彼女はどこか浮かない顔をする。

 

 

 

 

 

「……13人か……」

 

 

 

 

 

どこか寂しげな声を出すのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第504基地

 

 

 

 

 

 

「明日は連合軍による、『オペレーション・マルス』が発動する通達を受けました。」

 

 

 

 

「オペレーション・マルス…ここまできたのね…」

 

 

 

 

「……とうとう、ヴェネツィアでの決戦か!」

 

 

 

 

フェデリカの言葉で、フェルは決戦で興奮、バッキーは右手の拳で左手のひらを叩く。

 

 

 

 

「ヴェネツィアの決戦ってことは、フェデリカ隊長、あたしたち504も参加するのですか!?」 

 

 

 

 

ステラはオペレーション・マルスに参加するのか質問する。

 

 

 

 

「そう、わたしたちも参戦したいのは山々だけど、以前の様に不足な箇所が幾つもあり、参入できません。」

 

 

 

 

「…そんな……」

 

 

 

 

バッキーは手を握りしめた。

以前のトライヤヌス作戦にて、ドミニカとジェーン。アンジー、パティ。中島錦と諏訪天姫は504に復帰したものの、物資はまだ不足気味であった。

 

 

 

 

「くそっ!まだまだ足りないと言うのか!」

 

 

 

 

バッキーは悔しそうに呟く。

ウィッチーズと共に初めて参加したトライヤヌス作戦にて、いい所まで進めたものの、新しいネウロイの軍勢に圧され、惨敗に終わった。

 

 

 

 

「…バッキー……」

 

 

 

 

ステラも同意見だった。

この世界にて、まだストライカーユニットを十分に使いこなせず、訓練地へ赴いた。

訓練中であり、ヴェネツィアの作戦に従事せず、悔やんでいた。

 

 

 

 

「今作戦で連合軍と501部隊が発動する中で、私たち504は警戒態勢のまま、待機します。」

 

 

 

 

竹井醇子大尉の言葉で、バッキーやフェルたちは静まり、

 

 

 

 

「…竹井大尉……」

 

 

 

 

「「「 了解っ!! 」」」

 

 

 

 

「了解っ!!」

 

 

 

 

バッキーたち11人は、上官の醇子とフェデリカ隊長に敬礼し、その場を解散した。

 

 

 

 

そして、醇子は滑走路へ赴き、夕暮れの空を見上げた。

 

 

 

「……美緒……絶対に、生きて帰るのよ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夜 501基地

 

 

 

 

 

その後、501ウィッチーズは明日の作戦のため眠っていた。

 

 

その中に、格納庫に置いてあるストライカーユニットに近づく影があった。その陰の正体は坂本美緒少佐であった。

 

 

美緒はユニットを吐き、魔法力を注ぐ

 

 

 

 

 

「今夜だ…今夜中に真烈風斬を完成させなければ…まだ戦える…ちゃんと回れる!!」

 

 

 

 

 

彼女は滑走路から発進する。

身体がふらつき不安定ながらだんだんと上昇し始めるが、滑走路の出口で一つの影が彼女の行く道を阻むかのように立っていた。

 

 

 

「なっ!?」

 

 

 

美緒はその人影を避けようとしたが、その瞬間バランスを崩し、地面に倒れてしまう。

 

 

 

 

 

「ぐ…ミーナ…知っていたのか?」

 

 

 

 

 

「いつかこうなることはわかっていたわ。」

 

 

 

 

 

「そうか…」

 

 

 

 

 

ミーナの言葉に、美緒は暗い顔をしてしゃがみ込む。

 

 

 

 

 

 

「烈風丸……まさに諸刃の刃ね。戦場で戦える力と引き換えに大量の魔法力を消費すること……あなたの烈風丸はあなたの魔法力を…ウィッチとしての寿命を吸い尽くそうとしているのよ……」

 

 

 

 

 

ミーナが嘆き呟く。

美緒の所持する烈風丸は、美緒が魔力を込めて打ったまさに諸刃の剣ともいえる妖刀。

烈風斬という強力な必殺技を放てる代わりに、その代償として魔法力を失うという。すると今まで晴れていた夜空にいきなり雲がかかり、そして雨が降り始める。

そんな中、美緒は烈風丸を手に取り立ち上がった。

 

 

 

 

 

「まだだ……まだ私は戦える!!」

 

 

 

 

そう言い烈風丸に魔法力を注ぐと、一瞬刀身が淡い輝きを放つ。

 

 

 

 

「……なっ……!!」

 

 

 

 

しかし、それもあっという間に消えてしまった。それを見た美緒は一瞬顔を強張らせたがすぐにまた魔法を注ごうとする。

だが、淡い魔法力が消えてしまった。

 

 

 

「やめて美緒!もうやめて!!」

 

 

 

 

 

「いや、まだだ!私は必ず真烈風斬を完成させる!!」

 

 

 

 

 

「だめよ!わからないの?もう無理なのよ!!」

 

 

 

 

 

「頼む!一度だけ!一撃だけでもいい!!私に真烈風斬を撃たせてくれ!!…私を……私を13人の仲間にさせてくれえっっっっ!!!……頼む…ミーナ!」

 

 

 

 

 

「…美緒……」

 

 

 

 

 

涙を流しながらそう懇願し泣き崩れる美緒をミーナが抱きしめる。

そして彼女は大粒の涙を流し大泣きし、その姿はもうあの凛々しく刀を振るうウィッチ、海軍少佐である坂本美緒の姿ではなく一人の女性、坂本美緒の姿であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そんな…坂本さん……」

 

 

 

 

 

坂本美緒が泣いている時、柱の後ろで芳佳は今の話を聞いて深刻そうな顔をしていた。

彼女は夜目が覚め今朝のことを思い出し、美緒に謝りに行こうと彼女の部屋を訪ねてたがその部屋にはだれもいなく、芳佳は格納庫の方へ立ち寄るとそこに芳佳の姿がありそして今の話を聞いてしまった。

 

 

だがその話を聞いてしまったのは芳佳だけではなかった。

 

 

 

 

 

「(……あの刀はそういうこどだったのか……)」

 

 

 

 

 

滑走路の扉の裏で、洋介がその話を聞いていた。

 

 

洋介は今作戦の話を聞いた後、いつものように、零式64型ストライカーの整備をしようと立ち寄り、そこへ芳佳と同じく美緒とミーナの姿を見てそのまま立ち聞きしていたのだ。

 

 

 

 

「(坂本さんには時間が残されていない…いつ烈風丸に残りの魔力を吸い尽くされるか……厚木隊長………」

 

 

 

 

 

 

洋介の脳裏に、かつて敬愛する上官、厚木十三を思い浮かべた。

 

 

フィリピンのマバラカット基地にて、厚木十三の階級が大尉から少佐に昇進。

更に沖田進次郎を含む3人は内地に帰還することに決まった。

 

 

だが洋介と進次郎の愛機が特攻隊用の航空機に駐機されることになり、二人は輸送機に乗ることになった。

 

 

 

「すまん…お前たち、エースパイロットは輸送機に搭乗することになった。すまん…」

 

 

 

十三は洋介と進次郎に謝罪した。

 

 

 

「なぁに、気にせんで下さい隊長!」

 

 

 

「そうですよ、隊長。しかし、隊長自ら護衛に駆って出るなんて…」

 

 

 

「はっはっは!俺も、少佐になっても戦闘機乗りだ。戦闘機があればそれに乗り、敵がくれば敵と戦う。ただ、それだけだ!」

 

 

 

十三はかつて、ラバウル基地から本土に転属した上官である天沼俊介大佐から昇進の電文が送られた。

 

 

 

「お前たちは俺の大事な仲間だ。俺も日本に帰投するまで、愛する柚子と…あ…新たなる命も…///」

 

 

 

「「 え…? 」」

 

 

 

「…いや、なんでも…///」

 

 

 

二人の前で、十三は珍しく赤面した。その時直に話したのが最後になってしまった。

 

 

この後、アメリカ海軍のエース、ランスロー・W・アイリッシュとの決闘にて、ルソン島の空に散って逝った。

皮肉にも、去年結婚したばかりの柚子と、産まれたばかりの娘、成美は8月6日の広島に落とされた原子爆弾により、行方不明になった。

 

 

洋介が静かに部屋に戻ると、娘の亜弥が目覚め、窓の雨景色を眺めていた。

 

 

 

 

「…お父さん……」

 

 

 

 

「亜弥か…どうしたんだ…?」

 

 

 

 

「…雨が気になって……」

 

 

 

 

「そうか、僕もだ。明日のヴェネツィアの決戦が気になってな……」

 

 

 

 

「……そうなんだ……」

 

 

 

 

「朝は早いから、ゆっくり眠り。」

 

 

 

 

「…うん……」

 

 

 

 

亜弥は洋介の言うことを聞き、ベッドで横になった。

 

 

 

 

「ねぇ、お父さん。」

 

 

 

 

「ん…なんだ…?」

 

 

 

 

「子守り歌を歌ってほしい。」

 

 

 

 

「ん…子守り歌…そうだな……」

 

 

 

 

亜弥の言葉で、洋介は躊躇った。だが娘に対し、父親らしい振る舞いをしていなかった為に、子守り歌を歌うことにした。

 

 

 

 

洋介と亜弥の親子が歌ったのは、『椰子の実』や『故郷の唄』、『我は海の子』。

呉やラバウル、トラック諸島やフィリピンを懐かしんだ。

 

 

だが、ある歌を歌っていた。ペテルブルグで洋介が一人で歌った歌と、ラバウル六勇士の内で、厚木十三がラバウルからトラック、最後までフィリピンで歌った歌を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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