ストライクウィッチーズ ~蒼空を舞う零の荒鷹~   作:鷹と狼

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第7話 夜間哨戒と悪夢

 

 

 

1944年 8月16日 ブリタニア上空、JU52ので坂本美緒少佐は仏頂面をしていた。

 

 

 

「不機嫌さが顔に出てるわよ、坂本少佐」

 

 

その向かい側にミーナ・ヴィルケ中佐が彼女を見て言う。

 

 

「わざわざ呼び出されて何かと思えば…予算の削減なんて聞かされたんだ。それに、世界初のウィザードである桜井を、動物を見るような目をしていたから。顔にも出るさ」

 

 

そう、二人は桜井洋介を連れてブリタニア上層部に呼び出されたのだ。

その内容は501の予算削減の話だったのだ。洋介は上層部に、501と自身の実績をなだめさせて、ギリギリのところを回避させた。

 

 

「だけど桜井さんのおかげである程度回避したのよ。でも、彼らも焦っているのよ」

 

 

「すいませんミーナ中佐…この俺のために……俺はこの501で帰るべき家です。中佐や坂本少佐が、俺をウィザードとして受け入れなかったら、野垂れ死んでいました」

 

 

「そう言ってくれて助かるぞ桜井、連中が見ているのは自分たちの足元だけだ」

 

 

「戦争屋なんてあんなもの」

 

 

ミーナは話した後、少し表情を変えた。

 

 

「前に桜井さんが言ったみたいにネウロイが現れなかったらあの人達、今頃人間同士で戦い合っていたのでしょうね…」

 

 

「そうだな、…世界大戦となっていたんだろうな…」

 

 

二人はそう言って次の言葉を失う。美緒は洋介と横で外の景色を見ていた芳佳に話かけた。

 

 

「悪かったな桜井、宮藤」

 

 

「いえ…」

 

 

「え…?」

 

 

芳佳は突然話を振られて何のことか分からず驚く。

 

 

「せっかくだからブリタニアの街を見せてやろうと思ったのに」

 

 

「いえ…私は軍にもいろんな人がいるんだなって…」

 

 

「そうですね…、俺も上層部の連中の顔を拝めましたから…ん…?」

 

そう話している途中、ここで別の声が聞こえてくる。

 

 

「~♪」

 

 

それは歌声だった。

 

 

「…あの、何か聞こえませんか?」

 

 

芳佳は美緒に質問した。

 

 

「ん?あぁ、これはサーニャの唄だ。基地に近づいたんだな」

 

 

「私達を迎えに来てくれたのよ」

 

 

「サーニャの唄か…美しい…唄だ…」

 

 

それを聞いて洋介と芳佳は輸送機の外で同行しているサーニャに向かって手を振った。

 

 

「ありがとう」

 

 

サーニャはそれを見て恥ずかしくなったのか、輸送機から離れ、雲に入ってしまった。

 

 

「…ん…?嫌われたか…?」

 

 

「サーニャちゃんってなんか照れ屋さんですよね」

 

 

「うふふ、そんなことないですよ桜井さん。とってもいい子よ。唄も上手でしょ?」

 

 

そう会話している間も、サーニャの唄声が機内に流れる。突然その唄声がピタリと止まった。

 

 

『「あら?」』

 

 

「どうしたサーニャ」

 

 

美緒がサーニャに聞く。

 

 

『「…誰かこっちを見ています」』

 

 

「報告は明確に、あと大きな声で」

 

 

『「すいません」』

 

 

美緒から注意され、サーニャは謝った。サーニャと同様に洋介も何か気配を感じた。

 

 

『「シリウスの方角に所属不明の飛行物体、高速で接近しています」』

 

 

「…ネウロイかしら?」

 

 

『「はい、間違いないと思います通常の航空機の速度ではありません。」』

 

 

すると、洋介も何かの気配を感じた。

 

 

「ん?…少佐、中佐。その近辺に…何かが…」

 

 

「なんですって?」

 

 

それを聞いて、美緒は魔眼で確認するが、彼女の目には何も見えなかった。

 

 

「…私には何も見えないが」

 

 

『「雲海の中です。目標を肉眼で確認できません」』

 

 

「(…頭が…左の傷が痛い…なんだこの気配は…守占島で…)」

 

 

それを聞いて、芳佳は慌てる。

 

 

「ど、どうすればいいんですかぁ?」

 

 

「どうしようもないなぁ」

 

 

「悔しいけど、ストライカーがないから仕方ないわ」

 

 

「そ、そんなぁ…」

 

 

芳佳に対して落ち着いて答える美緒とミーナ。

 

 

「まさかそれを狙って!?」

 

 

「ネウロイがそんな回りくどいことなどしないさ」

 

 

『「目標は依然、高速で近づいています」』

 

 

ミーナが推測するが、美緒が否定した。その間にも、サーニャの報告ではネウロイが接近しているという情報が届いた。

 

 

「サーニャさん、援護が来るまでに時間を稼げればいいわ。交戦は出来るだけ避けて」

 

 

『「はい」』

 

 

サーニャは命令を受けて、フリーガーハマーの安全装置を解除。そしてそのままネウロイのいる方向へ転換した。

 

 

『「目標を引き離します」』

 

 

「無理しないでね」

 

 

「…サーニャちゃんにはネウロイが何処にいるか分かるんですか?」

 

 

芳佳は先程までのサーニャの動きを見て不思議に思い、美緒に質問した。

 

 

「あぁ、あいつには地平線の向こう側にある物だって見えているはずだ」

 

 

「へぇ~」

 

 

説明を聞いて芳佳は関心した様に声を吐く。

 

 

「それで何時も、夜間の哨戒任務に就いて貰ってるのよ」

 

 

「お前と桜井の固有魔法みたいなもんさ。さっき唄を聞いただろ?あれもその魔法の一つだ」

 

 

「唄声でこの輸送機を誘導していたのよ」

 

 

ミーナと美緒が説明する中、サーニャは雲に向けてフリーガーハマーの引き金を引き、2つのロケット弾を発射した。ロケット弾はそのまま真っ直ぐ飛び、雲の中で爆発した。

 

 

「反撃してこない…?」

 

 

サーニャはネウロイからの攻撃がないことに違和感を感じる。その間にも、輸送機はネウロイから遠ざかっていく。

 

 

「サーニャ、もういい。戻ってくれ」

 

 

『「でも、また…」』

 

 

「ありがとう、1人でよく守ってくれたわ」

 

 

ミーナの言葉に、ようやくサーニャも戦闘を終了した。沈着していた洋介も何かの別の気配が無くなり、冷や汗で右手で頭を抱えていた。

 

 

「…一体…何だったんだ…」

 

 

「洋介さん、顔色が…」

 

 

「…大丈夫だ…疲れただけだ…」

 

 

「後で軍医に診てもらったらどうですか?」

 

 

「宮藤の言う通り、軍医に診てもらえ」

 

 

「わかりました…」

 

 

雲の下の雨で基地に帰還後、洋介は輸送機から降りて階段で歩いている時に気を失い、倒れた。

 

 

「洋介さん!!」

 

 

「桜井っ!!」

 

 

「桜井さん!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

洋介は気を失っている間にある夢を見た。

 

そこは終戦後の呉の海軍病院であり、病室と敷地には外地から復員した傷病者がぎっしりすし詰め状態にいる中にいた。

 

 

 

「…ここは…呉海軍病院…この兵達は…あれは?」

 

 

昭和21年、呉の海には海軍の艦艇を輸送艦に改装した空母葛城や翔鳳、駆逐艦雪風の姿があり、次々と復員兵を降ろした。彼らの顔は、日本に帰国して涙を流す者がほとんどだった。

 

洋介は後ろを振り向くと、赤子を背負った看護婦を見つけた。それは洋介の妻である雪と亜弥だった。

 

 

「あれは…?…ゆ…き…雪っ!!……亜弥!!…」

 

 

洋介は妻と娘を呼んでも、顔を振り向くことはなかった。

 

 

「雪っ!!亜弥!!…僕だ!!洋介だ!!帰ってきた…」

 

 

 

その二人は光の中で消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はっ……」

 

 

目が覚めるとそこは自分の部屋のベットであり、外を見ると朝日が昇っていた。

 

 

「…夢か………雪…亜弥…」

 

 

起床ラッパが鳴り響き、洋介は急いで3種軍服を着用して部屋から出て食堂に向かった。

 

食堂のテーブルにはブルーベリーが並んでいた。

 

 

「みなさん、おはようございます!」

 

 

「「おはよう洋介!」桜井!」

 

 

「おはようございます洋介さん!お身体の具合は…?」

 

 

「あぁ、この通りすっきりした…なんだ、このブルーベリーは…?」

 

「私の実家から送られてきたんです。ブルーベリーは目にいいんですよ」

 

 

「へぇ~知らんかったな……甘い~旨い!」

 

 

芳佳、シャーリーとルッキーニがブルーベリーを食した後に、変色した舌を見せあって笑ったり、エイラがペリーヌの口をおっぴろげながらじゃれていた。

 

その時、美緒が洋介の元にきた。

 

 

「元気になったな。いいか?桜井」

 

 

「坂本さん、おかげさまで元気になりました。」

 

 

「はっはっは!それは良かった。昨晩の件で夜間戦闘のシフトを敷いた。主にサーニャを中心に宮藤とエイラ、そして桜井だ。」

 

 

「え、…なぜですか?」

 

 

「昨晩の経験者と同時に正体不明の物体を確認した人材だ、暫く4人で夜間専従班に任命する。サーニャの階級順でお前は2番機だから必ずサポートしろ。」

 

 

「はっ!!…夜間戦闘は久しいな…B-29の夜間迎撃以来…………しかし、黒い色メガネはどこにいったかな…」

 

 

「ん?…黒い色メガネ? 

 

「はい、夜間飛行用のメガネですが…常に持っているのですが、無くしたみたいです。」

 

 

「桜井、探しているのこれか?」

 

 

「あっ、俺の色めがね…トゥルーデ…どこにあったんだ!?」

 

 

トゥルーデが洋介の色めがねを差し出した。

 

その訳は、洋介がこの世界に来て所持物を調査するため、エーリカがこっそり持ち出したからだ。

 

海上訓練の休憩で日光を浴びている時に掛けていた。

 

「あぁ~あ…、サングラスを掛けていればセクシーギャルに、なれたのに…」

 

 

「「 何がセクシーギャルだ… 」」

 

 

エーリカの言葉で二人はため息をした。

 

洋介は夜間に備えて色めがねを着用、美緒が夜間飛行するメンバーに指示を出した。

 

 

「サーニャ、桜井、エイラ、宮藤。お前たちは夜間に備えて寝ろ!」

 

 

「はっ!!では、俺は自分の部屋で寝ますので…」

 

 

「何を言っているんだ桜井…?」

 

 

「え?」

 

 

「わざわざ部屋に戻らずともサーニャたちと一緒の部屋でいいだろ」

 

 

「坂本さん、あなたが上官と言えどもこの命令だけは受けませんぞ、第一に俺はウィザード=男だ!!」

 

 

「そうダゾ少佐、こんな奴と部屋に…」

 

 

洋介と同様にエイラも美緒に反感、しかし

 

 

「…私は構いません…」

 

 

「なっ…なにぃ!?」

 

「さ…サーニャ……「宮藤」芳佳は反対だよな…」」

 

 

「わ、私もいいですけど、……洋介さんは変なことする人じゃありません」

 

 

「(おいおい…)」

 

 

洋介とエイラはショックで落ち込み、ガックリしていた。

 

サーニャと芳佳は賛成していた。サーニャは異世界からきた洋介に少し興味をもっていた。

 

 

「はっはっは!!決まりだな!!まぁ、親睦を深めると思ってだな…」

 

 

「駄目に決まっているでしょ?」

 

 

坂本美緒の後ろにいつの間にかミーナが来ていた、口が笑っていても目が笑っておらず、食堂にいた者は彼女の別の気配を感じた。

 

 

「はい!桜井さんが言った通り男女別になって寝ること。そのあたりはキッチリしてもらいます」

 

 

洋介は安心して自分の部屋に戻って、色めがねを掛けたまま眠りに就いたサーニャは少し残念そうに3人はサーニャの部屋=臨時夜間専従詰め所に戻った。その部屋はカーテンなどで暗く閉ざされていた。

 

 

 

「…なにも部屋の中まで真っ黒にすることないのにね…」

 

 

「暗いのに慣れろッテことダロ」

 

 

「別に…いつもと変わらないけど…」

 

 

「そうなんだ」

 

 

「ナァ…サーニャ…なんでアイツに…」

 

 

「……洋介さんの…いた世界がどんなところなのか…」

 

 

「聞いてみたいんだねサーニャちゃんは、私もある程度は聞いたよ」

 

「私も聞きタイ…どんなノダ?」

 

 

サーニャはぬいぐるみを抱き、エイラは特技のタロットをしながら芳佳の洋介から聞いた話を聞いた。洋介の世界はウィッチどころかネウロイが存在せず、人間同士の戦争、姉弟がいて、既婚者であり産まれたばかりの一人娘がいる。終戦後の戦いでこの世界に来ていた。

 

「アイツにあんなことガ…」

 

 

「…残酷で悲惨なんだね…洋介さんの世界は…」

 

 

エイラは芳佳にタロット占いの結果を出した。それは一番会いたい人に会える答えだが、芳佳の父親は亡くなっていたために悲しげであった。夜間戦闘メンバーの観る夢の結果は不吉な予感であった。

 

すると、芳佳は眼を閉じる前に壁掛けのカレンダーを見た。

 

 

「8月18日…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

芳佳、サーニャ、エイラは同じ夢を見た。そこは時々濃霧に包まれ、島の草原に3人は立っていた。

 

 

「ここは…どこかの島…?」

 

 

「美しい…綺麗な草原…」

 

 

「しかし、…霧に包まれてイル…」

 

 

3人が歩いていると、濃霧から音が鳴り響き、閃光が飛んでいた。

 

 

「あれは!?」

 

 

「…なんダロウ…?」

 

「…ということは…人がいる」

 

 

「行ってみよう!!」

 

 

3人が走って赴くと、そこの現場に兵士が倒れていた。

 

 

「オラーシャ兵!?」

 

 

「怪我が酷い、ネウロイの仕業か?早く回復を宮藤!」

 

 

「はい!」

 

 

「ちょっと待って…この旗…」

 

 

サーニャはある違和感を感じた。負傷したオラーシャ兵が持っていた軍旗は紅く、金色の鍬が左端にあった。

 

 

3人の背後からガチャガチャと金属音が響き、戦車が丘から下ってきた。

 

 

「扶桑軍の戦車だ!!」

 

 

「オォーイ、ここダァ!!負傷…」

 

 

「エイラ、宮藤さん!伏せて!!」

 

 

「キャッ「わゎっ!?」あれ?なんとも無い…赤い丸…?」

 

 

砲弾が3人の直ぐ近くに着弾、擦り傷どころか埃も被っていなかった。

戦車部隊の後ろに歩兵が続々と走っていた。芳佳は片眼を明け、兵士が掲げていた旗は扶桑の新月の旗でなく、赤い丸の旗だった。

 

霧が晴れて、3人は草原を見渡すとネウロイの姿が無く、人間同士が武器を持って戦っていた戦場に居た。

 

 

「な、…なんてところダ…」

 

 

「…なん…で…なんで…人同士が戦っているの…ここは…もしかすると洋介さんがいた世界……」

 

 

「………………」

 

 

サーニャは両軍の兵士の屍の頭をやさしく撫で、涙を流した。

 

 

「…かわいそうな…人たち…」

 

 

3人の真上で敵味方戦闘機の空中戦が交わっていた。その中で見覚えがある機体を見つけた。

 

 

「あの戦闘機…」

 

 

「…機体とマーキング…洋介さん!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

洋介は深く眠りにつき、夢を見ていた。

 

彼の周りには戦友や仲間、上官や部下、特攻隊員が囲んでいた。

 

 

「俺も許嫁がいたのに、なんでお前がのうのうと…」

 

 

「あなたはどうして生きているんだ」

 

 

「少尉、なんで…」

 

 

「この血を染めて被った殺人鬼」

 

 

「…臆したパイロットめ…」

 

 

「…やめろ…やめろやめろ!…やめてくれ…」 

 

 

 

 

「『 おっきろー!! 』」

 

 

 

「…っは…夢か…神崎…中川…熊井さん…大塚さん…竹久さん…野上さん………」

 

 

ルッキーニの声が聞こえ、部屋に眠っていた芳佳たちが目を覚ます。そして全員が食堂に向かう。そこには洋介以外の全員が席についていた。

 

 

「あの、洋介さんは?」

 

 

「えっと、洋介さんは台所で…」

 

 

「はぁ…、終わった終わった~♪」

 

 

芳佳の質問をリーネが説明しかけたとき、ちょうど洋介が台所から出てきた。

 

 

「洋介さん…!?」

 

 

「洋介さん…なにしてたんですか…?」

 

 

「秘密だ。夜間飛行のお楽しみ♪」

 

 

サーニャが洋介に質問した時、いたずらな顔をしながら席についた。

 

そして彼らの目の前にはマリーゴールドのハーブティがあった。全員がそれを飲む。

 

 

「…山椒みたいな匂いだね」

 

 

「確かに、山椒だな…少し懐かしい匂いだ」

 

 

「山椒?」

 

 

芳佳がそう感想するが、リーネは何のことか分からなかった。その時、ルッキーニが芳佳の横に現れた。

 

 

「芳佳、リーネ、洋介、べ~して」

 

 

そうしてルッキーニ達が舌を出すが、別に変色していることはなかった。そして、再び静かに飲んでいた洋介はサーニャと同感であり、サーニャはカップをテーブルに置いた。

 

 

「(…まずい)」

 

 

夜間専従班のサーニャ以下、洋介と芳佳、エイラの4人はハンガーから滑走路を見ていた。滑走路に誘導灯が付くが、芳佳は初めての夜間哨戒のため目が慣れておらず、目の前の光景を見て尊んだ。

 

 

「…震えが止まらない…」

 

 

「何で?」

 

 

「夜の空がこんなに暗いなんて思わなかった」

 

 

「夜間飛行初めてナノカ?」

 

 

「無理ならやめる?」

 

 

「サーニャの言うとおり、今ならやめることもできるがどうする?」

 

 

洋介たち3人は芳佳を心配し提案するが、芳佳は手を目の前にだした。

 

 

「…て、手を繋いでもいい?サーニャちゃんが手を繋いでくれたら、きっと大丈夫だから」

 

 

それを聞いたサーニャの魔導針が緑からピンクに変色。心なしか使い魔の尻尾も揺れている。

 

そしてサーニャが芳佳の右手を繋いだ。それを見て面白くなさそうにしていたエイラが反対側に行き、芳佳の左の手を繋いだ。

 

 

「さっさと行くゾ!」

 

 

その光景を見ていた洋介は微笑み、3人の前に出る。

 

 

「ふふっ、良い仲になるな。それじゃあ先に俺が離陸する。芳佳も慌てず、ゆっくり来ればいい。」

 

 

「はっはい!」

 

 

洋介が先に離陸を仕掛けた時、3人はすぐに離陸する。

 

 

「えっ、ちょっ、心の準備が!?」

 

 

「ははっ、あの2人容赦ねぇ…ととっ///」

 

 

芳佳は心の準備が整っていなかったが、そのことにサーニャとエイラはそのまま離陸してしまう。サーニャはその瞬間に洋介の左手を掴み握った。

 

しかし、その気持ちもすぐに消えた。4人が雲の上まで来た時、芳佳はその光景を見て目を輝かせた。

 

 

「凄いなぁ!私一人じゃ絶対こんなところへ来れなかったよ!」

 

 

芳佳は上空で8の字に飛行しながらはしゃいでいた。

 

 

「ありがとうサーニャちゃん!エイラさん!」

 

 

「…うぉーい、俺は…?」

 

 

忘れられていた洋介が突っ込んだ。

 

 

「あ、ごめんなさい洋介さん…」

 

 

「まぁいい、…夜間飛行…こんな静かで、満天の星夜はラバウル以来だ…日本海軍パイロット名物、梅紫蘇の海苔巻きを食べるか?眠気覚ましに効くぞ」

 

 

「はい、いただきます」

 

 

洋介は図曩に入れていた夜食を取りだし、4人はネウロイが出現しない内に食した。

 

 

「(酸っぱいけど、…美味しい…)あの…洋介さん」

 

 

「ん…なんだい?」

 

 

それまで洋介に口を閉ざしていたサーニャが洋介に話し掛けた。

 

 

「洋介さんがいた世界、…どんな戦いをしてきたのか気になります」

 

 

「…純粋な君にいい話しではないが、いいのか…?」

 

 

「はい…」

 

 

洋介は前にいた世界の話をした。両親が自然災害で亡くなり、姉は赤十字看護婦、弟は戦車兵になってバラバラになった。そして洋介は空に強く憧れ、海軍航空隊に入隊した。

 

1939年に世界大戦が勃発、3年後に練習生時代、練習戦闘機に搭乗した4月当日に初実戦、本土を爆撃したアメリカ=リベリオン爆撃機を1機初撃墜した。この後に撃墜王(エース)の一人になった。

 

4ヶ月後、空母搭乗員となり南太平洋で戦った洋介は多くの敵機を落としたが戦線は徐々に後退、ラバウルで2年駐在しても戦い以外いい思い出もあった。

 

部隊対抗の拳闘大会であるパイロットと準決勝で敗退、釣り勝負で勝ち友人となり。司令官の発案で、凄腕の少数精鋭の部隊を結成した。一時的に本土に帰還して、幼馴染みと結婚した。

 

マリアナ、フィリピンなどの血み泥の激戦で多くの仲間が散って逝った。洋介の従軍看護の姉が沖縄で行方不明、弟はドイツ=カールスラントのベルリンで戦死した。

 

本土軍港の空襲の爆撃で意識不明、1人娘を残して。

 

1945年、8月15日敗戦、戦争が終わった。だが、ロシア=オラーシャが火事場泥行為に侵攻、緊急出撃。それが最後の空中戦となり、このウィッチが戦う世界に来た。

 

それまでに洋介はネウロイと違い、お国の為と言えども多くの人間をこの手で殺してきた。敵のみならず、味方や民間護衛の為に守りきれず見殺しにしてしまった。

 

洋介の話しを最後まで聞いたサーニャは恐ろしく、青ざめた。

 

 

「…と、言うことだ…サーニャ…僕が恐ろしいか…?…さっき握った手は…多くの血で染まっている…」

 

 

「…野蛮で殺人鬼ダな…アンタは」

 

 

エイラは無邪気に洋介を責めた、だがサーニャは

 

 

「…そんなことがないよエイラ…そんなことがないですよ洋介さん、…洋介さんが人を殺しても守るべき命を助けたじゃないですか…この世界に来た時に、少佐と芳佳ちゃんを助けたり、バルクホルン大尉を助けた…」

 

 

「そうですよ、味方を助けたことも人の命を助けたことになりますよ洋介さん!」

 

 

「…サーニャ…芳佳…」

 

 

不思議にも基地に帰投するまでネウロイは出現せず、4人は沈黙していた。サーニャは洋介の顔を覗いた時、片目から一筋の涙が流れていた。

 

帰投後、4人は次の夜間飛行に備えて就寝した。そして、洋介は再び夢を見た。戦争で戦い、散って逝った戦友の一人が洋介の隣にいた。

 

 

 

「…虎雄…」

 

 

「よう洋介、シンガポールの別れ以来の再会だな」

 

 

「…君は…戦死したはずじゃ…」

 

 

「そうらしいな。だが、回りがなんと言おうとも耐えろ!ワシは死んでも、魂は生きている!洋介はどんなことがあっても生きて生きて生きまくれ!!」

 

 

「虎雄!!……夢か…、すげぇ汗…眠気覚ましに川で行水すっか…」

 

 

夕方、洋介は近くの川でサルマタの格好で、身体を水に浸けていた。

 

 

「いい冷たさや…故郷の川を思い出すな~………唄が聞こえる……唄…?」

 

 

 

「オイっ何やってるンダ!?」

 

洋介が後ろを振り向いたら、サウナから出てきて川辺に身体にタオルを巻いた3人がいた。

 

 

「あらら…///」

 

 

「///この野蛮人!///私らノ裸をミンナ!!」

 

 

「わわっ!誤解だ!!…俺が先客やったんや~…」

 

 

「問答無用~!…オイ、その身体のキズ…」

 

 

エイラは洋介に物を投げつけたところ、彼の顔の左目元から脚にかけて幾つか傷痕があるのを見た。

 

 

「洋介さん…そのキズ…どうしたのですか……」

 

 

「…僕が殺した…代償だ…この左目元は、オラーシャからだ…」

 

 

何事がなかったかのように、洋介は慌てながら川辺を去った。

 

 

 

 

食堂のテーブルに湯呑みが置かれていた。その中は

 

 

「…肝油か…これ…」

 

 

洋介にとっては苦手なものであった。

 

 

「はい、ヤツメウナギのビタミンたっぷりで目にいいんですよ」

 

 

エーリカは匂いを嗅ぎ、トゥルーデは引きぎみだった。

 

 

「なんか生臭…」

 

 

「魚の油だからな…栄養があるなら問題ない」

 

 

「はーはは、いかにも宮藤さんらしい野暮ったいチョイスですこと~」

 

 

「いや、持ってきたのは私だが…」

 

 

ペリーヌは馬鹿にするが、芳佳のではなく敬愛する坂本美緒少佐のものだった。

 

 

「あ、ありがたくいただきますわ!!」

 

 

「あ、ちょっと待てペリーヌ!」

 

 

ペリーヌはそのまま肝油をイッキ飲みした。すると顔色が悪くなり、そのショックで眼鏡にヒビが入った。

 

 

「うえ~なにこれ~」

 

 

「エンジンオイルにこんなのをあったな…」

 

 

「ぺっぺっ!不味いゾこれ!」

 

 

ルッキーニは当然の反応をし、エイラは完全に舌が拒絶、サーニャは固まってしまっている。

 

 

「新米の時は無理やり飲まされ往生したものだ」

 

「…ゲホッ…おぇ…お気持ち、お察しします少佐…俺も防空夜間戦闘の出撃前に飲まされました…」

 

 

「もう一杯♪」

 

 

「(ミーナ中佐…あんたの舌はどうなってんねん…)」

 

 

肝油をお代わりするミーナは、隣にいる者は軽く引き、トゥルーデに至って完全に轟沈していた。

 

 

 

 

そして夜がやってきた。夜間飛行で洋介はサーニャとエイラについて聞いた。

 

エイラはスオムスの冬防衛戦争から姉妹共々戦ってきた未来予知が出来る魔女であった。

 

サーニャはウィーンの音楽学校に留学中にオラーシャがネウロイの襲撃を受け、国に残った両親は東側に避難した。

 

オラーシャは日本=扶桑の何十倍の国土があるため、さっき3人で語り合った時に芳佳から助言を貰い、いつか会えると希望を持った。

最初は夜間に怖がっていた芳佳も今は平気で飛んでいる。

 

昨日同様、月光に照らされ、星々が輝く夜空を飛ぶ。

 

 

「ねぇ、聞いて!今日は私の誕生日なの!」

 

 

「え…?」

 

 

「なんで黙ってたんダヨ!」

 

 

「私の誕生日は、今日お父さんの命日でもあるの!なんだかややこしくて、皆に言いそびれちゃった……」

 

 

「馬鹿ダナお前、こう言う時は楽しいことを優先してもいいんダゾ!」

 

 

エイラの言葉で、洋介は納得した。

 

 

「…へ~そうなのか…」

 

 

「ナァ、桜井中尉の誕生日はいつなんだ?」

 

 

「ん…俺の誕生日か…1月12日…まだまだ先だ。…8月18日、…俺の最後の戦いだったな。」

 

 

「そうなのか、…ッタクサーニャといいお前と宮藤といい…変なところで気を使うな」

 

 

「芳佳ちゃん、洋介さん、耳を澄まして…」

 

 

サーニャは頭のアンテナに手を翳す。するとどこからか陽気な音楽が流れてきた。

 

 

「あれって…何か聞こえてきたよ…」

 

 

「これって…ラジオか?」

 

 

「夜になると、空が静まるから…ずっと遠くの山や地平線からの電波も聞こえるようになるの」

 

 

「へぇ〜♪凄い凄い!こんなこと出来るなんて!」

 

 

「うん芳佳ちゃん、夜飛ぶときはいつも聞いているの」

 

 

「ハワイの真珠湾を攻撃した厚木隊長らベテランパイロット達も、こんなんだったんだろうな~…」

 

 

「「 真珠湾…? 」」

 

 

「サーニャ、それは2人だけの秘密じゃなかったのカヨ…」

 

 

「ごめんね、エイラ…ん…!?」

 

 

「ん…これは?」

 

 

洋介の言葉にサーニャと芳佳は首を傾げ、エイラが面白くなさそうな顔をしていた。

 

二人の夜間勤務に出ていた頃に共有した秘密。するとサーニャの魔導針が反応したがそれだけではなかった。

 

 

「これは…声?」

 

「…なんだ…?」

 

 

何かの唸り声のようなのが静かな夜空に響く。その唸り声の音程とリズムに聞き覚えがあった。

 

 

「これは…サーニャちゃんの唄に似ている…」

 

 

「…なんで…」

 

 

「敵だ!!サーニャ…」

 

 

「え!?ネウロイなんですか!?」

 

 

「あぁ…雲の中から来るぞ、散開!!」

 

 

「え…?」

 

 

洋介の反応で雲の中から赤いビームが降ってきた、光はサーニャの左脚を掠めた。

 

 

「サーニャ!!」

 

 

エイラは落下するサーニャを確保した。

 

 

「サーニャちゃん大丈夫!?」

 

 

幸い、左のストライカーは失ったもののサーニャには怪我はなかった。しかし

 

 

「敵はの狙いは、私…皆私から離れて逃げて!」

 

 

サーニャが回避行動をとった時にネウロイのビームは確実にサーニャを狙っていた。

 

 

「駄目だ!!仲間を置いて逃げる訳にはいかない!!」

 

 

「で、でも皆が…」

 

 

「サーニャは一人じゃないダロ!」

 

 

「そうだよ、私たちはチームだよ!サーニャちゃん!」

 

 

洋介は闘志を燃やし、小銃と機銃を構えた。

 

 

「エイラ、芳佳!!俺が囮になる。奴に仕掛けて雲の上に引きずり出す、その瞬間にあいつを倒せ!!サーニャは敵の位置の指示を頼む!!」

 

 

「了解しました!」

 

 

「ワカッタ!」

 

 

「洋介さん、気をつけて」

 

 

「よし、作戦開始!!」

 

 

洋介は爆音を発して分厚い雲の中へと突入した。

 

雲の中は目視で見えず、波導で探しながら感じ、ネウロイのビームを交わしつつ小銃と機銃を撃った。敵の攻撃が止み、位置が分かりにくく見失った。

 

 

「しまった…サーニャ、敵のネウ公位置は!?」

 

 

「洋介さんのいる位置から、2時の方向。距離1500…」

 

 

「了解。…スゥ…」

 

 

洋介は気力を集中させ、サーニャが示した位置に擲弾を向けた。

 

 

「そこっ!!」

 

 

波導で敵を発見、たった1発のロケット弾を放ち命中。そして敵は雲の上へと出てきた。

 

 

「今だ!!エイラ!!」

 

 

「了解!!.. わゎっ!!」

 

 

エイラは自身の機銃とサーニャのフリーガーハマーをネウロイに向けて撃ち放った。

 

洋介は雲の中から出て、敵の背後に付き小銃を構え撃った。ネウロイは最後の力を振り絞り、3人に向けてビームを放ったが、サーニャを背負った芳佳はシールドを張った。

 

 

「私が敵の攻撃をシールドで防ぎます!!」

 

 

「気が利くナ宮藤!!」

 

 

「大丈夫!私たちきっと勝てるよ!!」

 

 

「それがチームだ!!」

 

 

3人はネウロイに立ち向かう。そんな3人を見てサーニャも動いた。サーニャは芳佳の背中に掛けてある機銃を構える。

 

 

「へっ?」

 

 

「なっ?」

 

 

「む?」

 

 

3人はその行動に驚くが、そのままサーニャは引き金を引いた。そしてネウロイに向けて3人の弾丸が飛んでいく。その弾丸を正面から受けたネウロイはコアまで削られ、遂にその姿を欠片に変え撃墜した。

 

 

「よっしゃ!!…これは…?」

 

 

ネウロイが撃墜されたことを切っ掛けに、4人は張り詰めた力を抜いた。しかし、彼らはまだ気になることがあり、そのまま上空を見ていた。

 

 

「…まだ聞こえる」

 

 

「なんで?やっつけたんじゃ…」

 

 

「いや、さっきよりもノイズが無いぞ…」

 

 

3人はこの音が何なのかわからなかった。しかし、サーニャはこの音に心当たりがあるのか理解した。

 

 

「違う…これはお父様のピアノ…」

 

 

そう言ってサーニャは、片足だけになったユニットを再び作動させる。そしてそのまま高度を上げた。

 

 

「…そっか、ラジオだ。この空のどこかから届いているんだ!凄いよ!奇跡だよ!」

 

 

「…そうだな…」

 

 

芳佳はその奇跡とも言えることに驚きはしゃぐ。しかしエイラが首を振った。

 

 

「イヤ、そうでもないかも」

 

 

「「えっ?」」

 

 

「今日はサーニャの誕生日だったんダ」

 

 

「そうなのか…」

 

 

「あぁ、正確には昨日カナ」

 

 

「え…?じゃあ私と一緒…」

 

 

芳佳と洋介はエイラの説明に驚いていた。自分の誕生日がまさかサーニャと同じだなんて

 

思わなかったからだ。2人は言葉を奪われた。

 

 

「サーニャノことが大好きな人なら、誕生日ヲ祝うナンテ当たり前ダロ。世界の何処かにそんな人がいるなら、こんなことだって起きるんだ。奇跡なんかじゃナイ」

 

 

「…エイラさんって優しいね」

 

 

「…そんなんじゃねぇよ、バカ…」

 

 

「ば、ばかって…」

 

 

「…!?」

 

サーニャは上空で、遠くにいる両親に言葉を送っていた。

 

 

「お父様、お母様、サーニャはここにいます…ここにいます」

 

 

そして、芳佳はサーニャに声をかけた。

 

 

「お誕生日おめでとう!サーニャちゃん!」

 

 

「あなたもでしょ」

 

 

「へっ…?」

 

 

「お誕生日おめでとう、芳佳ちゃん」

 

 

「おめでとナ」

 

 

「…あれ?洋介さんは…?」

 

 

全員がめでたい言葉を贈るなか、洋介の姿はなかった。

 

洋介は何かの気配を感じ、単独で探した。たどり着いた空域には黒く渦状のホールがあり、空中停止した。

 

 

「黒いホール…あの時の気配だったんか…この中に潜れば、元の世界に…家族の元へ…雪…亜弥…」

 

 

洋介は考えながら、左手を伸ばしながら近づいた。すると

 

 

「(それで…いいの?)」

 

 

「っ!?…誰だ!!」

 

 

洋介の頭の中に、少年の声が聞こえた。

 

 

「(君がホールに潜れば、元の世界に帰れる…だけどこの世界はいずれ、彼らによって滅んでしまう)」

 

 

「彼ら…ネウロイにか…僕はこの世界に来て…何のために寄越したんだ!?何のために…」

 

 

「(悔いの無い選択を……君の解答は……?)」

 

 

「…僕の解答…」

 

 

「あっ、いたゾ!」

 

 

「洋介さぁ~ん!」

 

 

洋介の後ろにいた芳佳たちが、サーニャの魔導によって探してきた。

 

 

「みんな…(…僕の解答は…)」

 

 

「…黒いホール…ネウロイ!?…洋介さん、離れて!!」

 

 

洋介は鞘から軍刀を抜き構え、サーニャは黒いホールに気付き、芳佳の機銃を構えた。

 

 

「みんな…来るな、近づくな!!」

 

 

「洋介さん!?」

 

 

「アンタナニを!!…刀が…」

 

 

洋介は軍刀に魔力を込め、蒼白い光がでた。

 

 

「…これが…僕の解答…解答だ!!波導斬!!」

 

 

「「「 っ!? 」」」

 

 

洋介は軍刀を振り、黒いホールを断ち斬った。だが、洋介はその頭の中で聞いた少年にあることを説いた。

 

 

「……僕からの質問だ……お前は何者だ……?」

 

 

「……俺はオーディン……この世界での武運を祈るよ、息子よ…………」

 

 

「……息子だと?………オーディン………北欧神話の神か…………」

 

 

東の空から朝日が昇った。

 

 

「「「 洋介さん… 」」中尉…ナニがあったんダヨ?」

 

 

「いいや、ネウ公を落とした。………芳佳、サーニャ。お誕生日おめでとう!」

 

 

「い…いえ」

 

 

「無事で…よかった…」

 

 

洋介は軍服の左胸ポケットから2つ、桜の形をした御守りを取り出した。

 

 

「………僕からのささやかな贈り物だ。受け取ってくれ。」

 

 

「桜の御守り…可愛い~!」

 

 

「これが扶桑の桜…これをもらっていいのですか?」

 

 

「あぁ、3個ある。僕の妻からの贈り物だ、間違えて貰ったが欲で罰が当たる。…いや、…当たったな…この世界に来たことが」

 

 

「「ありがとうございます」大切にします///」

 

 

「いいなぁ、なぁワタシノハ?」

 

 

「いや、…残念ながら2つしか贈り物はない…」

 

 

「なにぃ!サーニャと宮藤にあげても私のは無いダト!?」

 

 

「2人の誕生日だ、…許せ!」

 

 

「グヌヌ…アンタの寄越セ!」

 

 

「おいおい、人の欲張って取ると罰が当たるでエイラ!」

 

 

笑ってごまかす洋介だったが、エイラはムッとして洋介の顔を睨み、洋介の御守りを横取りしようと追いかけながら基地に帰還。

 

基地に帰還後、早速誕生日パーティーが始まった。洋介も楽しみながらソファーに座って眺めていた。するとミーナが来た。

 

 

「どう?桜井さん。楽しんでいますか?」

 

 

「ミーナ中佐、…とても安らかな感じは久しぶりです」

 

 

「…そう言えば桜井さんがこの世界に来て3ヶ月が経つのね…」

 

 

「そうですね。ここに来た日のことが昨日のことに感じますよ。」

 

 

「ふふ…桜井さん。初めてここに来たときは少し固かったけど、今は打ち解けているようで安心したわ…///」

 

 

洋介は唯一世界に帰れる黒いホールを斬ったことは後悔していなかった。

 

 

家族と再会を拒む代わりに、この世界にいる。命ある限りネウロイを最後の1体を討伐するために闘うことを、この世界に骨を埋めることを心に誓った。

 

 

 

 

 

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