警察官を目指すウマ娘   作:arome

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1.競争ウマ娘時代の私

 

「インジャタール。」

 

トレーナーが私を呼んだ。

トレーニングで疲れた身体を動かし、トレーナーの元へ行く。

トレーナーは厳しい顔をしていた。

 

(何でそんな顔なのだろう。私、トレーナーの癪にさわる事でもしたのだろうか。)

 

トレーナーに声をかける。

 

「トレーナーどう…」

 

トレーナーどうしたの?と聞こうとしたが、その声はトレーナーに打ち消された。

 

「契約破棄だ。今すぐ出てってくれ」

 

(…え?)

 

私は呆然と立ち尽くした。

 

(聞き間違いだよね?そう、そうに決まってる。)

 

「も、もう一回言ってくれるかなトレーナー」

 

自分でも私の声が震えているのが分かる。

 

「だから契約破棄だ!さっさと行け!」

 

(うそ…何でなのトレーナー…嫌だ嫌だ嫌だ!)

 

 

 

 

「あ、夢か…」

 

気づけば全身冷や汗をかいていた。

 

(なんであの頃の夢を見たのだろう)

 

汗を洗い流す為にシャワーを浴びながら、

まだ私がトレセン学園にいた頃を思い出す。

 

 

なんとか合格して入ったトレセン学園。

座学の成績は学年で一位二位を争う程だったが、レースは全然だった。

フォームは意識して走っていたし、スタートやコーナリングは得意だったのにタイムは遅かった。

『レースで勝ちたい』という思いを胸に、日々トレーニングに励んでいた。

 

そをなある日、トレーナーに声を掛けられた。

スタートやコーナリングの技術を買われたのか、スカウトされたのだ。

私は喜んだ。

そのトレーナーは既に何人ものウマ娘をスカウトしており、私はそのチームに入ることになった。

 

(これから私は強くなれる。速く走れるようになる。)

 

そう思っていた。

 

トレーナーから指示されるのは、主にチームメイトとの並走トレーニングだ。

私と並走トレーニングをするのはスタートやコーナリングが苦手な子ばかりだった。

その子達は私との並走トレーニングを続けるうちに、苦手を克服して強くなっていく。

 

(でもこれで私は強くなれるのだろうか)

 

そんなことを考えていた時に言われたのだ。

 

 

「契約破棄だ。出てってくれ」

 

頭が真っ白になった。そんな事を言われるとは考えもしていなかった。

私は理由を訪ねた。納得いかないのだ。

 

「どうしてなの。何でなのか教えてよ!」

 

「…分かった。ただし話したら直ぐに行くんだぞ。お前以外にはメイクデビューが迫っている。こっちも忙しいんだ」

 

(私以外…私はメイクデビューに出走することさえ出来ないのか)

 

辛かった。私は精神的に打ちのめされていた。

立っていられるのが自分でも不思議なくらいだ。

トレーナーは無情にも話を続ける。

 

「最初のうちはお前にも期待していたさ。フォームは綺麗で、スタートやコーナリングが得意な奴は速いに決まっている。そう思っていたんだ。でもお前は遅かった。勿論、こいつらも最初は遅かったさ。が、それはスタートやコーナリングが苦手などという改善点があったから。こいつらはお前との並走トレーニングを重ねて見事に速くなった。でもお前はどうだ。改善点が無いのに遅いというのはお手上げだ。本当は直ぐにでも契約破棄しようと思ったが、苦手克服の道具になってもらった訳だ。で、こいつらの苦手が無くなった今、お前はもう要らない。」

 

「…」

 

(道具?私、そんな風に使われてたんだ。私はトレーナーを信用して、毎日頑張っていたというのに。)

 

悲しい。悔しい。

いろんな感情が押し寄せる。

もはや立っていられなかった。

私はその場で崩れ落ちた。

泣いた。涙が枯れるまで泣き続けていた。

そんな私を尻目に、トレーナーは他の子の指導を再開した。

 

 

その後、トレーナーを失った私はメイクデビューに出走することも出来ず、退学となった。

レースで輝かしい成績を残すウマ娘がいる一方で、多くのウマ娘は一度も勝てず引退していくのが現状なのだ。

しかし、私はレースに出られずに引退…いや、デビューさえ出来なかったので引退と言うのもおかしいだろう。

私の競争ウマ娘としての夢は早々打ち砕かれたのだった。

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