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私は驚きのあまり固まってしまった。
まさかトレーナーになってほしいなどと言われるとは思いもしなかった。
「今仕事探してるって言ってたよね?なら、警察官になるまで一時的にトレーナーとして働いたらどうかなって。私が次のトレーナーを見つけるまでの間でもいいからさ。」
「…本気で言ってる?」
「もちろん。私がスタートとかコーナリングが上手になったのはタールのおかげだもん。タールが居なかったらメイクデビューで勝てていなかったかもしれない。教えるのが上手なんだし、トレーナー向いてると思う。頭が良いタールならトレーナーライセンスも取れるでしょ。」
(私がトレーナーか。仕事探しの時は真っ先に選択肢から外した職業だというのに。)
でも、仕事を探しているのは事実だ。
ホントはコンビニとかでバイトすればいいと思っていたけど、パルムの役に立てるならトレーナーになるのもアリかもしれない。
「分かった。私、トレーナーになるよ。」
スマホで調べてみると、トレーナーライセンスの試験は丁度1ヶ月後だ。申込み期限もギリギリ間に合いそう。
ここに向けて頑張っていくことになるだろう。
私の言葉を聞くと、パルムは安心したような表情を見せた。
「よかった〜。てっきり断られるかと思ったよ。あ、そうだ。今日カラオケ行く予定だったんだよね。タールも一緒に行かない?」
「行く!」
レジで会計を済ませて、カフェを出る。
カラオケ屋はすぐ近くにある。
「『Make debut!』がまだ不慣れなところもあるし、他の曲の練習まだしてなかったんだよね。」
なるほど。今日はウイニングライブの練習のために外出していたのか。
そういえば、私は『Make debut!』さえ練習していなかったな。
まあ練習してたとしても歌う機会が無かった訳だけど。
受付を通り、部屋に入る。
ここはドリンクバーが使えるようだ。
「ジュース持ってくるね。先歌ってて。」
「サイダーがいいな。」
「オッケー」
(何歌おうかな。『Make debut!』でいいか。)
迷ってたら時間が勿体ない。
いくら練習していなかったとはいえ、聞いたことは何度もあるし踊ることは出来ずとも歌うだけなら出来るだろう。
タブレットに入力し、数秒後にイントロが流れ始める。
「響けファンファーレ、届けゴールまで、輝く未来を君と見たいからー」
(コレをレース場のライブ会場で歌ったら楽しいだろうな。)
もし、メイクデビューに出ることが出来ていたならと何度考えただろうか。レースに出れていればウイニングライブで歌えただろうか。いや、ボロ負けしてステージに立つことさえ出来なかっただろうか。
(それでもレース出てみたかったな。)
あとはパルムの歌声を聞いたり人気ランキング上位の曲などを適当に歌っていたら、時間はあっという間に過ぎた。
「今日は楽しかった!まさかタールに会えるとは思わなかったよ。」
「私も。久しぶりに会えてよかった。」
「また会おうね。」
「うん。次はトレーナーとしてパルムに会いに行くね。」
「楽しみにしてるよ。バイバイ。」
パルムと別れ、帰路につく。
その途中、今朝行った本屋にまた立ち寄った。
(また参考書買わないといけないからね。今度はトレーナーライセンスのだけど。)
本屋を出て、家に着いた。
部屋着に着替えて、ショルダーバッグから本を取り出す。
高等学校卒業程度認定試験の参考書はとりあえず置いておいて、トレーナーライセンスの参考書を開く。
(流石に難しそう。でも、頑張らなきゃ。)
何がそこまで私を頑張らせようとしてるかといえば、トレーナーになるとはいえ、またパルムと一緒にトレセン学園で過ごすことができると考えたら楽しみでしょうがなかったからだ。