Saga of Creatures〜Battle Galaxy~   作:hinoki08

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プロローグ
プロローグ


 

「その惑星」は、宇宙のどこかに存在している。

 

 様々な種族の混在するその星は太古より5つの文明に分かたれていた。

 暗黒の地下世界に潜む、邪悪なる《闇文明》。

 海底に科学文明を築く、狡猾なる《水文明》。

 天に無敵要塞を構える、秩序の僕《光文明》。

 森に生き森と共に死ぬ、心優しき《自然文明》。

 火山の国で戦に生きる、猛々しき《火文明》。

 

 5つの文明はいがみ合い、戦争を繰り返してきた。何度も、何度も。

 そのたび星は傷つき、弱き民は泣いた。森は焼かれ、山は割れ、海は干上がり、空は穢れ、地底は崩れた。

 幾度も、幾度も続いた戦争。様々な恐ろしい存在がそこに現れては、消えていった。

 

 

 

 そして、今日もその星の「ある場所」から、硝煙の匂いが漂ってくる。

 煙が沸き上がる。民達のざわめきの声が聞こえる。

 

 煙の中から出てくる姿がある。金色の飛行物体。光文明の《ガーディアン》……《蒼天の守護者ラ・ウラ・ギガ》だ。

 そしてもう一人……その平らな背中の上に載っている人物がいる。

 彼は、光文明の種族には見えない。生身の人型種族。火文明の《ヒューマノイド》だ。

 民たちはその姿の登場に、場を切り裂くような声を上げた。その声を受け……そのヒューマノイドは告げる。

 それと同時に爆発音が巻き起こる。光と熱が宙に乱舞する。

 

 

 

『レディース・アンド・ジェントルメン! ようこそ、《第百回戦国武闘会》開会式へっ!』

 

 

 

 

 ……五色の花火が舞い踊る中、惑星の民たちはその声とともに、あらん限りの歓声を上げた。

 

 

 

 

「おおー! 《ベンケイ》! 始まったべよ、開会式!!」

「なんでぇ《トドロキ》! てめえばっかりのラジオじゃねえぞ、オレにも聞かせろ!」

 とある緑豊かな山の中、その声を古ぼけたラジオで聞きながら駆ける二つの影があった。

 一人はヒューマノイドの少年、もう一人は赤くてまん丸いフクロウ型の《ドリームメイト》。夢が実体化した、動物の姿を持つ種族だ。

《牛若剣士トドロキ》、そして無二の親友《風来の雲ベンケイ》。それが彼らの名前である。

 

 彼らは今まさに……その『第百回戦国武闘会』に出場するために、「予選会場」に向かう最中であった。

 

「おい、貴様ら!」

 しかしだ。

 そんな彼らの前に立ちはだかる姿がある。

 

「貴様らも、戦国武闘会へ向かう戦士か?」

 自然文明の獣人種族《ビーストフォーク》の戦士と見える。青い体毛を持つ、オオカミの獣人だ。その手には爛々と輝く鎖鎌が握られている。

 

「そうだべよっ!」

「わが名は《青銅の鎖鎌(ブロンズ・チェーン・シックル》! 私も今まさに、戦国武闘会の場に赴かんとしているところ! ちょうどよい、準備運動がてらに、手合わせと行かないかっ!」

「望むところだべっ! オラは、牛若剣士トドロキ! そしてこいつが……」

 トドロキはひょいと、後ろ手にラジオを投げてベンケイに手渡す。ベンケイが「うわっ、あぶねえな」と両の翼でそれを受け取りながら地面に着地すると同時に、トドロキはその腰に差していた刀を抜いた。

 

「相棒の《ジュウベイ》だべ! いくべよジュウベイ……《ジェネレート》!!」

 ジェネレート。

 その掛け声が発せられたと同時に、ジュウベイ、と名づけられたその刀はにわかに炎の色を帯びる。

 その様子を見て「ジェネレート……! それは、《クロスギア》かっ!」と、青銅の鎖鎌も驚いた様子であった。「面白い」彼は言う。

「貴様、その幼さで……いっぱしの《サムライ》かっ! 相手にとって、不足は無し!」

 

 

 

 この惑星、宇宙のどことも知れぬ場所に浮かぶ惑星には、長い間戦争が絶えなかった。

 そして千年前に起こったのが《極神戦争》。世界を収める神々と、その平和を嫌った闇文明との戦いに端を発する世界戦争は、最終的に世界をも滅ぼす不死鳥《暗黒凰ゼロ・フェニックス》をこの世に生み出してしまった。

 しかし、それに対抗したのが、火文明の英雄《ボルメテウス・武者・ドラゴン》と光文明の英雄《龍聖霊ウルフェウス》が合体した、英雄の中の英雄《超聖龍ボルフェウス・ヘヴン》。

 彼の戦い、そして戦いの末の犠牲により、暗黒鳳は撃たれた。

 そしてそれとともに、世界は自分たちの起こした戦争の愚かさを悟り、戦争の終わった世界に現れた《五元神》と共に世界を浄化し、平和な世を築き上げてきた。

 

 

 

『それでは、第九十九回大会優勝者……《邪眼皇ロマノフⅠ世》から、開会の御言葉を頂くとするぜっ! ロマノフⅠ世選手、どうぞっ!』

 ラ・ウラ・ギガの背中に乗ったヒューマノイド……『戦国武闘会』の名物実況者《千舌実況ミラクル・ショー》は、盛り上がりの冷めない歓声の中、コロシアムに現れた一人の超獣にマイクを渡す。

 赤いマントと仮面をつけたその超獣は厳かにマイクを受け取り『……多くの言葉はいらぬ』と発言した。

『史上最大規模の戦国武闘会……第百回戦国武闘会の開会を、今ここに宣言するっ!!』

 その言葉と同時に、会場の《エメラルド・モンスター》、《パオルネイチャー》が雄叫びを上げる。戦国武闘会の恒例行事だ。風を纏いし巨象の雄叫びが、戦国武闘会の始まりを告げる。

 会場は先ほどの花火の勢いもかくやというほどに沸き上がった。

 

 

「あーあ」

 その傍ら、そのロマノフ、と呼ばれた超獣を遠巻きから見つめる影が3つ。

「ぜーんぜん、不機嫌なの隠しきれてないじゃん、ロマノフったら。なんか同じ《ナイト》のボス同士として恥ずかしいかも?」

「ま、無理もねえだろ。前大会、優勝って言ってもあんな形での優勝だったんだからよ」

「えー、どんなの? 僕そこらへん全然興味なかった。誰か教えて?」

「……準決勝で《パーフェクト・ギャラクシー》と《紫電》が激闘の末相打ち。既に準決勝を制していたロマノフが、そのまま繰上りで優勝になった……」

「ははっ、ウケる。そりゃ、不機嫌にもなるねー」

「オレ様にゃわかんねえ感性だな。勝てれば何でもいいじゃねぇか、勝てれば。戦わずに勝てたんだからラッキーなのに何で不機嫌になるかねぇ」

「……貴様らには付き合ってられん」

「あっ、まってよ《ロレンツォ》君ったらー……もう、付き合い悪いなぁ、ねっ、《ビスマルク》?」

「まっ、あんたもあんただけどよ……《ネロ》」

 

 

 

 

 その、平和を取り戻した世界でいつしか始まったのが、この戦国武闘会。

 戦いのなくなった世界にも、武を究めたい者たちは現れる。しかし、戦争を失い、その愚かさを知った世界では、もう力に渇望するが故の戦争は起こらなかった。

 代わりに起こったのが、腕比べの武闘大会であった。始めは各地で、小規模に。それがだんだん噂に噂を呼び、世界中の強者がお互いの存在を求めて集まりあい、いつしか世界規模の『戦国武闘会』へと発展していったのだ。

 

 そこに在るのは、残酷な戦乱に非ず。

 戦えるものは己の威信をかけ、ライバルたちと武を競い合う。戦えない者たちも悲劇にむせび泣くことなく、名勝負の連続にお互いに熱狂し合う。

 そう、戦争で国力を決する野蛮な時代は過ぎ去り、エンターテイメントで勝負を決める熱き時代が到来した! 

 

 

 

「ふん、なかなかやるではないか! その年で、ずいぶんと鍛錬を積んでいると見える!」

「にへへっ、兄ちゃんの鎖鎌裁きこそ! もたもたしてっと、首かっ切られちまいそうでヒリヒリすんべよっ!」

 

 

 その戦国時代の中現れたのが、先の時代の英雄ボルメテウス・武者・ドラゴンの意思を引き継ぐ者たち……《サムライ》であった。

 誰よりも強い英雄でありながら平和を愛した武者の意をくみ、部の道を究め互いに研鑽し合いながらも、決して愚かしい戦争にその力を使うことなき武闘派集団……それがサムライ。

 そしてそんな彼らの相棒こそ……。

 

「さあ、ジュウベイ! こっから本気だ! トドロ斬ってやるべよっ!」

 

《クロスギア》。《魔導具》とも呼ばれる特殊な武器である。

 魔導の力を秘めたるその武器は、《ジェネレート》し持ち主と共鳴することで、最大限の力を発揮する。

 サムライたちは自ら相方に選んだそのクロスギアと共に戦国武闘会の舞台を駆け、チャンピオンを目指す者たちだ。

 

 

 そして長きにわたり続いた戦国武闘会も、今年、極神戦争終結千年を迎えるミレニアムの年に、ちょうど第百回目が開催される運びとなった。

 いまや世界中に、この大会に熱狂しないものなどいない。戦士でも、戦士でなくても、すべての超獣という超獣がその時、武闘会への情熱に胸を膨らませていた。

 

 

「師匠。始まりました」

 火文明の某所。《誠道場》という看板を掲げた《城》の中で、大勢のサムライたちに傅かれる龍が一人。

「いよいよか……第百回戦国武闘会、空前絶後の大規模大会と聞いている」

 良いか! と、彼は言う。彼こそは、この『道場』を率いる……《武者・ドラゴン》の直系の子孫。

「敵は自分自身と思え、特別なことは何もいらぬ! ただ日々の鍛錬の結果を出し、各々の『サムライ道』を貫くが良い!」

「御意に、師匠!」

 

 

「始まったぜよっ! 第百回、戦国武闘会!」

 自然文明の大山脈の間。山をも凌駕する巨人たちも、その大会の様子を魔力を用いて雲に投影させて眺めていた。

「《ナイト》が音頭を取るっちゅうのが、ちっと気に食わんが……」

「そげなことを言うもんでなか」

 若い《超人》をいさめるように、年かさの超人が穏やかな声で言う。

「おいどんたちは、ただ自分にできることを貫けばいいだけのことでごわす」

 

 

 光文明の本拠地、《シルヴァー・グローリー》でも、超獣たちは見ていた。

「ついにこの時が来たか」

「《聖帝》様! 今大会は、貴方様も出場されるとか……!」

「無論だ。光文明の威信を……お前たち《精霊》にばかり背負わせるのは、『仮にも』光の主たるものの名折れ。私こそが……この戦国武闘会に、光の華を咲かせてみせよう」

 

 

 地下世界の闇文明。《邪眼家》の邸宅で、数名の超獣たちが話し合っている。

 彼らの当主たるロマノフⅠ世の開会の言葉を聞きながら、彼らは禍々しいデザインのグラスに赤黒い酒を注ぐ。

「……計画は?」

「現時点で、問題なし。必ずや……当主の望みを」

「……全サムライの、オール・デリート……! 邪眼の支配する世界の幕開けに……!」

 第百回戦国武闘会に、乾杯。その声と共に、赤黒い酒が《騎士》たちの喉を滑り下りていく。

 

 

 水文明の海底。

「……」

 一人の、不思議な超獣がモニター越しにその開会式を眺めていた。

 人型の美女のような風貌をしているものの、その下半身はどこか不気味に、不安定に揺らめいている。

「……行きましょう」

 彼女は誰に言うでもなく、そうつぶやいた。

 

 

 そして、世界のどことも知れぬ場所。

 とある赤い龍も一人、その開会の言葉を聞いていた。

「ふふっ、ロマノフ……なんとも、お前らしい!」

 彼は、サムライのようであった。

 彼はその手にクロスギアを握りしめ、不敵に笑う。

 

「さあ向かおう、我らの舞台へ!!」

 

 

 

 

「大した腕前だ、坊主!」

 そんな中、山奥での決闘にもようやく決着がついたようだった。お互いボロボロになってその場にごろんと寝ころびながら、青銅の鎖鎌とトドロキは笑いあう。

「にへへっ、そっちこそ! オラ、まだ武闘会にたどり着いてもねーのに、すっごく楽しかったべよーっ!」

「全ての生命が覇を競う、それこそが戦国武闘会だ!」青銅の鎖鎌は起き上がり、トドロキも抱き起す。

「きっとこれ以上に素晴らしい戦いがいくらでも、私のことも、君のことも待ち受けていることだろう! 武闘会で再び出会った暁には……また、全力の勝負を頼むぞ!」

「勿論だべっ!」

 

 トドロキはジュウベイを鞘に納めると、満面の笑顔で答えた。

「何度だって、オラとジュウベイは、負けんべよっ!」

 

 

 

「……ところで」

 青銅の鎖鎌は言った。

「君たち、どこへ向かってるんだ?」

「えーっと、オラたちの予選会場に向かってる途中だったべが……なんかよくわからんくなっちまったし開会式も始まっちまったから、適当に走ってたべっ!」

「なんだそうか! 実は私もだ! 水文明の闘技場に集まれと言われたが、そこへの道がさっぱりわからん!」

 はっはっは、と笑いあう二人に、ベンケイが言った。

 

 

「てめーら、戦国武闘会で戦う事すら無理じゃねーのか!!」

 

 

 

 

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