Saga of Creatures〜Battle Galaxy~ 作:hinoki08
途中通った第十一、十二車両を勝ち抜くのは、実に楽なことだった。
車両を防衛しようとする生き残りたちも、ピロロンのデータの前に弱点はすべて丸裸、トドロキがそれをなぎ倒していくのみだ。
第十二車両をトドロキが制したときのことだった。
「あら、『彼』も順調に勝ち進んでいますね。十四車両も通り抜けてしまったようです」ピロロンが言う。
「ピロロン、そいつってどんな奴なんだべ?」
「《パワーフォース・ドラグーン》選手です」ピロロンは端末をトドロキの方に向ける。そこに映っているのは、幼いティラノ・ドレイクだ。
「あなたと同じく、ルーキークラス予選を勝ち抜いた選手です。彼はBブロックでした」
「へーっ、強いんだべな……!」
「はい。彼もシールド・フォース能力の持ち主です」
その力は……とピロロンが言いかけた矢先のことだった。
やにわに爆音が響き、十二車両と十三車両の間の壁が焼き切れる。
十三車両、一等客車。
「あははっ! どーだぃ、オイラの炎は!」
「お、おのれ……」
そこに居たのは噂をすれば、パワーフォース・ドラグーン。もう一人彼と対峙しているのは、竜人種族だがティラノ・ドレイクではない。さらに古い歴史のある、ドラゴンと同じルーツを持つといわれている竜人《ドラゴノイド》の選手だ。
「貴様らごとき、新参者の種族に……《ボルシャック》様の炎の力を使いこなされてなるものかっ!」
「そんな御託は、オイラに勝ってから言いな!」
パワーフォース・ドラグーンはその口から炎を吐き出す。ドラゴノイドの戦士はそれを受けきろうとし、果敢にかかっていったものの……。
「あれ、足りねえ!? じゃあ、もいっちょダメ押し!」
続いて吐き出された、さらに火力を増した炎に包まれて、咆哮をあげながらあえなくその場に倒れてしまった。
「やりぃ、この車両もオイラが全滅! 次行くぞ、次!」
って、あれ? と彼はトドロキたちに気が付く。
『パワーフォース・ドラグーン選手が第十四車両に続いて第十三車両も制覇―っ! すごいです、おっとここで……破竹の勢いで進むルーキー二人が、いよいよご対面となりましたーっ!』
「なーんだ、お前らもオイラと戦いに来たんだ! いいぜ、やってやる!」
「話が早くて、助かるべよっ!」
「トドロキさん、彼の力もシールド・フォースの力です」ピロロンがデータを話す。
「彼の体にまとわれる炎こそが、彼の『シールド』です。彼はその力を使って、彼自身が生まれ育った《ボルシャック渓谷》の伝説の英雄ドラゴン《ボルシャック・ドラゴン》が操った炎を再現することができます」
「えっ、お前何? なんでオイラのことそんなに知ってるの、気持ち悪……」
パワーフォース・ドラグーンは一瞬はそれに怯んだ様子であったが、「まっ、いっか!」とすぐ開きなおった。
「全部ばれてたって、全部ボルシャック・ファイアーで焼き尽くしてやればいいだけのことだもんね! シールド・リンク!」
とたんに彼の周囲に赤い炎が沸き起こる。彼自身の体も、一層赤く輝いていく。
「まずは、その青い方からやっちゃってやる! サイバーロードがカプセルにも乗らないなんて、すげー自信だなっ!」
彼はピロロンに向かって「ボルシャック・ファイアー!」と炎を吐き出した。しかし。
「おっと、ピロロンには火の粉一粒、届かせねーべよ! ジュウベイ、ジェネレート!」
ジュウベイの刀身にも炎が宿り、相手の炎を相殺せんとする。炎と炎のぶつかり合いだ。当然、ピロロンの虚弱な体に余波が届いてもしょうがなさそうなものだが……。
「シールド・リンク……! トドロキさん、右へ攻撃を受け流してください」
「あいよっ!」
「今度は、少し前方へ……彼の炎の隙も、そこへ生まれるはずです」
ピロロンが指示する方向に動いてみると、ピロロン自身には少しのダメージもいかない。
彼女はどう動けば自分にダメージが来ないかという事も解析可能であるようだ。
「な、なんだそいつ! ずりーぞ!」
「だへへっ、オラの頼れる相棒だべっ!」
トドロキは、すっかりピロロンのことを信頼している様子だ。
「だったら、これはどうだっ!?」
パワーフォースは口ではなく、その拳に炎を宿した。そして……近接戦へと持ち込んだ。
炎のパンチが、両腕でジュウベイを握っているが故に隙のできたトドロキの胴体めがけて降りおろされる。しかし、ピロロンはそれも読み切っている。
「トドロキさん、ジャンプです!」
「了解だべっ!」
ひらりと跳ね上がって、それをかわすトドロキ。彼は列車の壁を蹴って、その勢いで返す刀でパワーフォースにジュウベイの斬撃を一発浴びせる。
「ぐっ!」
受け身を取ったパワーフォースだが、その勢いで客車にたたきつけられた。
『おっとパワーフォース・ドラグーン選手、ここに来て初めて引けを取りましたーっ! 牛若剣士トドロキ選手とピロロン選手の力と知力のコンビネーション、ここにきて依然負けなしとなるかっ!?』
「冗談じゃないぜっ! これでも村じゃ最強のオイラだ、こんくらいで負けるかよっ!」
「おっ、そう来なくっちゃなっ! こっちも燃えてきたべよ!」
「トドロキさん、冷静になって私の指示に従ってくださいね!」
パワーフォースはさらに火力を高める。その拳の炎が、より一層純粋な火のマナの色へと輝いた。
「ボルシャック・パンチ!」
そう叫ぶとともに彼は超火力の拳で特攻してくる。トドロキはピロロンに指示される方向へひょいとそれをかわそうとしたが……。
「……なんてな、オイラの弱点を、オイラ自身が分からないとでも思うのかよ!」
なんとパワーフォースも、その方向に向かってジャンプ。「し、しまったべ!」とトドロキは慌てて、ジュウベイの刀身でそれを受けきろうとするも……。
「危ない、トドロキさん! 違います、受けきろうとしないで! 火力では、貴方が負けてます!」
その声が届いた時にはもう遅かった。彼は炎の拳をもろに喰らい、客車の壁にたたきつけられる。
「……ちっくしょー、熱いべなっ……」
「これ喰らって倒れないとかやるじゃん、ヒューマノイドにしちゃタフだな」
パワーフォースはすうと息を吸い込む、火炎放射の準備だ!
「見たとこ……そっちの青いのを包んでいるそれも《シールド》だなっ!? まずは、そっちから焼き払ってやるよ! そうすりゃ、いちいち指示も出せねえだろっ!」
彼の口からピロロンに向かって火炎が発射された……その時だ。
「……」
ピロロンも不測の事態に、慌てて解析を出してトドロキに指示を出そうとした。しかし、そうする必要すらなかった。
急にふわりとトドロキが、無機質さすら感じさせる勢いで宙を舞い、その炎を払った。
そしてその顔からは……表情が消えている。まるで動脈の超人と争ったときと同じように、ヒューマノイドというよりも、ヒューマノイドの形をした肉塊のような雰囲気を携え、なおかつジュウベイを爛々と炎の色に光らせて、彼はパワーフォースの前に立ちはだかった。
「なっ……お前、なんだ? 雰囲気が変わったぞ?」
「……」
トドロキは何も答えない。ピロロンすらも、その事態に驚いていた。
「一体、何事……?」彼女は自分を包む膜にあらわれる文字列を見て……そして絶句した。それが指し示す意味は……エラー。
「解析が不可能……何が起こっているんですか?」
「……」
無言のままトドロキは、すっとジュウベイを真上に掲げた。パワーフォースも臨戦態勢に入る。何が起こっていようと、これは武闘会だ。戦わなくてはならない。
「と、トドロキさん!」それはピロロンとて一緒だ。ともかくも、彼にサポートしてもらわなくては、彼女の身も危ないのだから。
「シールド・フォース能力者全員の弱点は、その『楯』です! 先程も申しました通り、彼の楯は彼の身を包む赤い炎そのもの! それを薙ぎ払って下さい!」
「……」
「き、聞こえてます……?」
その時。トドロキの背中から不意に、翼のように炎のオーラが巻き上がった。
彼は宙を舞い、そして……パワーフォースの体を包む炎に向かって、ジュウベイの刃を一振りする。
すると……爆風が巻き起こり、パワーフォースの炎は四方八方に分散した!
「い、いけねえ!」
パワーフォースもこれには驚きだ。実体のない「炎」の楯が、両断された。
トドロキはさらにジュウベイを二振り、三振り。とうとう、パワーフォースの体を包む炎がすべて吹き飛ばされ、第十三車両の壁を黒く焼き焦がした。
それと同時に、パワーフォースはまるで自分自身が攻撃されたかのように「ぐっ……!」と膝をつく。
これこそが、シールド・フォースの能力者の弱点。シールドは彼らの命にも同じ、それが削られれば、当然本体にもダメージが入る。
だが、パワーフォースとてそれで諦めるような戦士ではない。「シールド、再リンク……!」と、彼は再び炎の楯を展開しようとした。
しかし、その時であった。
「……あり? オラ、何してたべ?」
急に、トドロキが先ほどと同じような様子に戻った。しかも……目の前の事態に戸惑っているかのようだ。
当然、そこには隙が生まれる。それを見逃すパワーフォース・ドラグーンではなかった。
そしてそれは、トドロキとて同様だ。少しの間意識がとんではいたが……気が付いたらパワーフォース・ドラグーンが大ダメージを受けて地に膝をついている。ピロロンに教えられるまでもなく、絶好のチャンスだ!
「トドロキさん! は、早く! シールドが再展開されます!」
「うん、いくべよっ!」
「も、もう遅いぜ……!」パワーフォースは強がったような声を出し、シールドを展開。とたんに彼の弱った拳にまた炎が灯る。
「ボルシャック・パンチ!」
「ジュウベイ! 轟けッ!!」
炎の拳と、炎の斬撃がぶつかり合った。そして、その結果……。
両者吹き飛ばされ、互いに一等客車の丸焦げになったソファに沈んだ。
「お……お前、強いな!」
「だへへっ、そっちこそ!」
むくりと起き上がりながら、パワーフォース・ドラグーンが言った言葉は……トドロキにとって意外な文句だった。
「気に入ったぜ! お前とはこんな列車の中よりコロッセオ・シティで戦いたいっ! お前たち、協力してんだろ!? オイラも仲間に入れてくれよ!」
「ほんとか!? いいべよっ!」
「ちょ、ちょっと、トドロキさん!」ピロロンが慌てて中に入った。「それだとパワーフォース・ドラグーン選手を倒したことになりません、私たちのポイントにつながりませんよ!」
「ポイントなんかどうでもよかんべ! 武を通じてみんな仲良くなるのがサムライの道だって、オラ、『父ちゃん』からそう教わった!」
「おっ、話が分かるじゃねえか!」
「ま……まあ、トドロキさんがいいというなら、止めませんけど……」
「このまま、奥の車両に向かおうぜっ!」
ぴょこんと跳ね上がり、パワーフォースは言う。
「実況が言ってたんだ、奥の車両で、すげえ面白いやつらが防衛戦してるって! オイラたちで破りに行こうじゃんか!」