Saga of Creatures〜Battle Galaxy~ 作:hinoki08
「オラオラー! パワーフォース・ドラグーンと!」
「牛若剣士トドロキのお通りだべっ! 道を開けるべよーっ!」
「二人とも、油断しすぎないでくださいね……それと、もう少しゆっくり進んでいただけませんか? 私サイバーロードですから、走るのは苦手で……!」
パワーフォース・ドラグーンの言う「面白いやつら」がいるのは全二十車両の中でもかなり後部。ピロロンのデータによれば彼らは確かにそこに留まり、防衛戦を行っている。
「でも……不思議な相手ですよ、油断は禁物です」
「ピロロン、そいつら……」
「爆獣マチュー・スチュアート選手と爆獣工師ピーカプ・フィリッパ選手ですね。現在は、第十八車両に移動したようです。おそらく、貨物室内のマナを使い果たした結果、別車両の貨物室に補充に向かったのかと」
彼らは途中の第十六車両で一休みしているところだった。「本格的な戦いに入る前に、彼らのデータを確認してください」とピロロンは言う。
「知ってるぜ、実況が言ってたもん。やつら……魔弾を使えるんだろ? ナイトでもないのに」
「それってすごいことなんだべか?」
「すごいという話ではありません。はっきり言って……『不可能』に近いです」ピロロンは神妙な顔で、端末を叩いている。
「魔弾も、魔銃も、ナイトの極秘の技術によってつくられています。魔光、天雷、氷牙、邪眼、どの派閥にも属さない彼らが魔銃を持ち、魔弾を使うことが……まず貴族たちに『許される』はずがありません。それなのに……」
彼女はくるりと端末の画面を二人の方向へ向けた。
そこに映し出されるのは……ライト級J、L、Pブロック、ミドル級D,Iブロック、ヘビー級Eブロックの試合の様子。
どれも、勝利を収めた超獣たちは、一様に魔弾を操りある名を名乗っている……《爆獣》と。
「火、自然の魔弾使いの戦士たちは、この予選に参加している二名も含めて全部で十名……このミドル級Dブロックを勝ち抜けたヴァルアーサー選手が自ら名乗りました、自分達こそ《爆獣騎士団》であると」
「へ―ッ、四名家はオラでも知ってっけど、そんな騎士団あったんだべかあ?」
「ねえからすげえんだろ!」
「ええ。ありませんし、ありませんから異常事態なのです。ナイトは家門を何よりも重んじます。断言しますが、ただのよそ者の徒党集団に魔弾と魔銃の技術を託すことは絶対にありませんでしょう。有り得るとすれば……。薄い可能性ではありますが……」
ピロロンは難しい顔をして言う。
「彼らに、一から魔弾と魔銃を作り出す技術があるという事です」
「確かピーカプ・フィリッパってやつはマシン・イーターなんだよな」パワーフォースが言う。
「奴らだったら、魔銃くらい作れてもおかしくはないんじゃねえの?」
「そうかも知れませんが、魔弾は……」
「とにかくよお!」パワーフォースは立ち上がる。
「爆獣騎士団だか何だか知らねえけど、面白そうじゃん!? あり得るはずのねえ、5番目の騎士団なんて! オイラたちの相手にちょうどいいと思わねえかっ!?」
「思うべよ! 騎士団ってことはナイトだべ!? オラもサムライだ、ナイトと聞きゃあ腕がうずくべよっ!」
「彼らはデータが十分ではありませんが……まあ、いいでしょう。あなた方はデータからしても、このまま止まっていてはくれないでしょうしね」ピロロンもあきれたように言って、端末を閉じた。
「向かいましょう、第十八車両へ」
『ハイハーイ! 途中経過をお知らせいたします! 第一車両予言者キビダンボーラー選手がついにただ一人の生き残りに! 同じく第五車両《封魔ズルメル》選手も! 第七車両斬隠テンサイ・ジャニット選手、第十車両風来の雲ベンケイ選手に大きな動きはなく、自分たちの車両を防衛している様子です! おっと、ここで大きな動きが! 第十八車両にて……謎の魔弾使い爆獣の二名と快進撃を続けるルーキーコンビが鉢合わせとなりましたーっ!』
第十八車両、十七車両と同じく貨物室の扉を開けた先にいたのは……銃剣を携えたネズミのドリームメイトに小さなマシン・イーター。
「フィリッパ、来たみたいッチュ」
「おいでなすったか、実況の言ってた、ルーキーコンビ!」
彼らも、トドロキたちが来ることはワッショイエクスプレスの実況により先刻承知の上であったようだ。
「ようっ! こんにちはだべ! おめーらだべか、爆獣騎士団ってのは!?」
「ええ、そうでチュ!」ネズミのドリームメイトはえへんと誇り高そうに胸を張る。
「オレの名は《爆獣マチュー・スチュアート》! そしてこっちが!」
「爆獣のメカニック担当、《爆獣工師ピーカプ・フィリッパ》だぜ」
「オラは牛若剣士トドロキ!」
「パワーフォース・ドラグーンだぜっ!」
「えっと……私も名乗らなければいけません?」
ぼそりと呟かれたピロロンの言葉には誰も反応せず、そのマチュー、と呼ばれたドリームメイトは言った。
「仮にも、騎士団として呼んでもらえるなんて光栄でチュね! しかもみたところ、サムライに!」
「だって、ナイトとサムライはライバルだべ!? だからオラたちも、ライバルだべよっ!」
「『ナイト』……!!」
その言葉を聞いて急に、マチューの眼には大粒の涙が浮かんだ。
「フィリッパ、聞いたッチュかぁ? あの子、オレたちのことナイトだって!」
「わーった、わーったよ、お前が感動したのは! だからナイトらしく今は戦うんだ、なッ!?」
「そ、そうでチたっ!」
「な、なんなんですか、これ……?」
端で見ていたピロロンもあきれ顔だ。しかし彼女は冷静にシールド・フォースをセット。
「トドロキさん、彼の攻撃はマナを多種多様な攻撃へと変換するものです。マナの源となっている周囲の物資を焼き払えば、効率的に勝利へと向かえます」
「おっ、痛いとこついてくるじゃねえか、姉ちゃん」フィリッパは言った。
「まっ……それが『可能なら』の話だけどよ!」
フィリッパはそう言って、手元のスイッチを押す。とたんに……貨物室の周囲一体に、魔銃が展開された。
「一斉発射ぁ!」
フィリッパがそう言うと共に、狭い貨物室内がたちまち炎の弾幕の雨となる。トドロキとパワーフォースは慌てて、それらを打ち落としにかかった。
ジュウベイを一振りした感覚でもわかる。実体がない。これは実弾ではない『呪文を弾丸化した』魔弾そのものだ。あちらこちらに飛び散る赤い羽薬莢も、それを証明している。
「慌てないでください! それぞれの威力は大変に弱いです! この魔弾はあくまで攪乱用とみていいでしょう!」
「そういちいちネタバラシされちゃあ、こっちも詰まんねーよ姉ちゃん。ほどほどに頼むぜ!」
フィリッパはそう言って、自らのハンマー型の武器を持ち上げた。そしてそれに宿る赤いマナの色。あれが彼の魔銃らしい。
「見たところシールド・フォースの能力者かっ! 撃ち抜かせてもらうぜ、その膜!!」
フィリッパの魔銃から、魔弾が発射される。しかしパワーフォースの炎が、それをかき消した。
「わりーけど、あいつには居てもらわなくちゃオイラたちも困るから!」
「……オレの相手はお前だな」
「フィリッパ、もう一人の方はオレに任せろっチュ!」
マチューが飛び出て、トドロキに向かい合う。彼はその銃剣をガチャン、とトドロキの方に向ける。
「物資を枯らされる前に、ありったけのマナで倒してやるっチュよ! 《魔弾パンダフル・ライフ》!」
そして、彼が唱えたのと時同じくして。
貨物室の物資から大量のマナが沸き上がり……それが彼の魔銃に一斉に吸い込まれ、見事なエメラルド色に輝く。
「喰らえっチュ! 特大の魔弾を!」
そしてそう彼が言ったのと同時に……文字通り、大砲サイズの魔弾が現れ、トドロキに向かって飛んできた。
「危ない、トドロキさん、よけてください! 斬撃で弾けるパワーではありません!」
「わ、分かったべっ!」
トドロキはジャンプして、特大の魔弾をよける。魔弾はそのまま第十七車両まで飛んでいき、後ろからは膨大な破砕音が聞こえた。
あれに巻き込まれていたらと思えば、ヒヤッとする。
「すごい身軽さでチュね。でも……これなら、どうっチュか!?」
彼は再び魔弾パンダフル・ライフと唱える。すると、今度は大量のマナが分散され……狭い車内に降り注いでいた攪乱用の弾幕が緑色に変わっていき、それぞれの威力を増した!
「うわっ!」
思わず、トドロキも何発か喰らってしまう。ピロロンは慌てて弾幕の隙をつき、そこに移動、「トドロキさん、パワーフォースさん!」と発言した。
「魔弾を強化している魔力の源は彼の銃剣です! 魔弾を打ち落とすよりも、そこに集中砲火をお願いします!」
「わ、分かったべよっ!」
「へえ、やる気だっチュか! なら……」
マチューは再び、貨物室のマナを充填。そして緑色に輝き始めた魔銃から……あえて、砲撃は放たなかった。
「近接戦も、受けて立つっチュ!」
「おもしれー、そう来なくっちゃだべよっ!」
トドロキはジュウベイの火力を増し、マチューに斬りかかっていく。マチューはそれを……銃剣を持っているのとは逆の方向に握られた盾で、防ぐ。なかなかの反射神経だ。
「魔弾パンダフル・ライフ!」
彼がそう唱えると同時に、緑色のマナは今度は刃の姿となって顕現する。彼はそれで、ジュウベイに真っ向から斬り掛かった。
赤と、緑のオーラがぶつかり合い、斬撃の火花が飛び散る。
「今の内です、パワーフォースさん!」
一方、フィリッパと対戦していたパワーフォースに、そのタイミングでピロロンが声をかけた。
「マナの使い手であるマチュー選手が集中しているうちに、物資を枯らしにかかってください!」
「おうっ、分かったぜ!」
「させはしねーって……言ってんだろ!」フィリッパがハンマー型魔銃をマナの色に煌めかせ、振り下ろす。しかしパワーフォースは……。
「シールド・リンク!」
とたんにボルシャックの炎をその身にまとわせ、そのハンマーの砲撃を弾く。そして息を吸い込み、貨物室の貨物に対して火炎放射を発した。
「特に奥の方の物資が、新鮮な自然文明の物資です! そこを集中的にお願いします!」
「ああ、分かったぜっ!」
「だから……」マチューは言う。
「その前に、マナを全部使ってやるっチュよっ!」
彼はガキン、と斬撃一発を放つとともにトドロキから距離を置き、再び物資たちからマナを充填。またぞろ、特大の魔弾を作り出しにかかった。
しかしだ。その時、間抜けな音がその間を切り裂いた。
グウ、という、複数名の腹の虫だった。
「……今の、誰のだ?」
「オレのだっチュ……」
「オイラも……戦いが始まってから、なんも食ってないから……」
「オラも、戦いまくってまた腹減ってきたべ……」
「……」
その場にしばしの沈黙が入る。
「みんな、第十車両まで戻んねーべか?」とトドロキが言うまでの間。
「みんな、一時休戦だべっ! 第十車両まで戻れば、食いもんがあるべよ! ベンケイがおむすび作ってくれるべっ!」
「それ、ほんとかっ!?」とパワーフォース。
「わーい! オレ、チーズいりがいいでチュ!」
「オイラ、梅干し!」
「いや、乗り気かよ、おめえらっ! ……しょーがねえな、もう戦いって雰囲気じゃねえもんな……」
「……なんなら皆さんで、この物資第十車両まで運んでいきましょうか」完全に呆れた様子のピロロンがそう言った。
「物資の中身、自然文明の食糧みたいですから……完全に焼き払う前で、かえって良かったですね」