Saga of Creatures〜Battle Galaxy~   作:hinoki08

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第六話

「そんでそんで? なんでマチューは、ナイトになりたいと思ったんだべかっ!?」

「オレはもともと自然文明のドリームメイトの国《ワイルド・キングダム》の自警団《森の軍団》で銃撃兵をしていたっチュ!」

 

『えーと、第十車両、なぜか盛大なおむすびパーティーが開かれていますっ! 戦いの後には心通わせ意気投合、同じ釜のご飯を食べる、これもバトルロイヤルの醍醐味なんでしょうか!? 僕アーマロイドだからご飯食べませんし、よくわかりませんけどっ!』

 

「おい、お前らまた実況にいわれてんぞ」と、ベンケイ。

「なんか……ベンケイだっけ、あんたとは気が合いそうな気がするよ」と、フィリッパ。

 

「でもやっぱり銃撃兵に生まれたんなら、銃を究めたいじゃないっチュか! この世で最強の銃と言えばやっぱり魔銃でチュからね!」

「なーるほど、それでナイトになろうとしたんだべな!」

「そうでチュ!」

 チーズ入りのおむすびを食べながら、マチューは目をキラキラ輝かせていた。

「オレだけじゃありまチェん。『爆獣』の名を背負った皆は、みんなそれぞれ理由は違うけど……みんな同じ気持ち、四名家には入れないけどそれでもナイトになりたいって気持ちの下、集まりまチた。この第百回戦国武闘会で勝ち抜いて、オレたちの名前と実力を知らしめて、いずれは本当の五番目の騎士団として認められるのが、オレたちの目標でチュ!」

「おめーら、すっごい熱いやつじゃん!」パワーフォースもその言葉に感動しきっているようだ。

「オイラは応援するぜ、マチュー!」

「えへへ、ありがとうでチュ!」

 それにしても、三人とも小型種族だと言うのに物凄い食欲である。第十車両にもともとあった食料に加え、十八車両から持ち出した食料もすでに底をつきそうな勢いだ。

「まずは、これがすんだら改めてもう一戦だなっ!」

「はいっ! そのためにも今は腹ごしらえでチュ! フィリッパも食べるでチュよっ!」

「ベンケイもだべ! 皆で食べんと美味しくなかんべよっ!」

「だったら少しはお前らも作るの手伝いやがれっ! 結局オレにばっか作らせてんじゃねえかっ!」

「いいんですかね」と、ピロロンが呟く。

「ちゃんとポイントも存在しているのに、みんなでこんなに仲良くなっちゃって……」

「ま、これが成り行きならしょうがねえんじゃねえの」そう発言したのはフィリッパだった。「武闘会はあくまで競い合う場、殺し合いの場じゃないしな」

 

 そうこうしているうちに……山ほどあったおむすびも最後の一つとなった。

「これ、誰が食べるでチュ?」

「……誰だべ?」

「一番少なく食った奴だろ」

「だからそれが誰だべ?」

 三人が神妙な顔になりながら向かい合い、ベンケイが一人「だったらオレだろ、どう考えても……」と呟いたその時だった。

 急に前方車両の扉が開き一人の選手が現れた。

 

「おむすびパーティーしてるってきいた……まだ、ある?」

 それはデスパペットの選手だった。

 ライト級選手の中でも抜きんでて小柄、まん丸くてにたっとした笑みを浮かべた顔は、人形種族らしいと言うか、なんともいえずかわいらしい。

 

「《福腹人形コダマンマ》選手……?」ピロロンがそうつぶやく。ところで、最後の1個とにらめっこしていた三人も、その人形の存在に気が付いたようだった。

 

「あーわりい、もうほとんど喰っちまったんだ」

「あっ、そうでチュ! 皆、最後の一つはこの子にあげまチョう!」マチューがそう言った。

「せっかく来てくれたんでチュ、少しだけでもおもてなしするのが、騎士の心というものでチュ! ねっ! フィリッパ!」

「本当の騎士ならあそこまでガツガツ、ガッつかねーと思うけどな」

「んー、残念だけど、オラも賛成だべっ!」トドロキも同調した。「食えねえのは悲しいことだしなっ!」

「えー……ま、いいぜ」と、パワーフォース。「なんかこいつ、可愛いもんな」

「ほらっ、口開けるべ!」

 トドロキはパクっと開かれたコダマンマの口の中に、ひょいとおむすびを放り込んだ。コダマンマも満面の笑みになり「ありがとう、いただきまーす!」と言ったが……その時だった。

 

「トドロキさん、だめです、彼に食べ物を上げちゃ!」

 ピロロンがそう叫んだ時。コダマンマはすでにごくんとおむすび一つを丸のみにしていた。

 

 

「ああ……」

「ど、どうしたピロロン、なににびっくりしてるべ?」

「おい、お前丸のみにしたのかよ」とパワーフォース。「ダメだぜ、ちゃんと味わって食べなきゃ」

「歯がないんだから仕方がないでチュよ! どうでチュ、おいしかったでチュか?」

「おいしかった……けど……」

 コダマンマは目をグリンと焦点を外して言う。

 

「たりない……もっと、たべたい……」

 

 

「あー、悪い、それはちょっと無理なんだ」

「そ、そうでチュ、あれが最後の1個でチュた……」

 

「だ、だからいいましたのに……」ピロロンが「みんな、急いで防御態勢に入ってください!」と言った。

「コダマンマ選手の食欲に火をつけてしまったんです、私たち!」

「えっ!?」

 

 その言葉に皆が驚いた、その時だった。

 

 

「やだやだやだ! コダマンマ、たべたい! もっともっともーっとたべたいぃぃぃ!!!」

 

 

 コダマンマは急に豹変したかのように駄々じみた大声を出して、その場でしばらくじたばた暴れていたかと思うと……急にひらりと舞い上がり、食堂車内のテーブルに向けてぐわりと大口を開けた。

 そして次の瞬間。コダマンマ体の何倍もあるそのテーブルが、ぐいと丸のみにされた。

 

「えっ!?」

「な、何が、起こってるんでチュか!?」

「皆さん、固まって!」ピロロンの指示通りに、寄り集まる六人。ピロロンは慌てて端末を叩き、「皆さん、これを見てください!」と映像を映し出した。

 

 それは……全大会、第九十九回大会時の映像。

 そこに居るのは、一匹の水文明の大型種族《アースイーター》の選手と……そして、コダマンマだった!

「えっ! あいつ、こんな大型種族と……ってことはあいつ、本選入りできる実力の持ち主なのか!?」

「それだけじゃないんです!」ピロロンは映像を早送りにする。すると出てきたのは……それ以上に、信じられない光景だった。

 そのアースイーターが、コダマンマの前に……『消えた』。それが、なぜかというと……。

『ひーっ! こんなことがあっていいのかっ!? 福腹人形コダマンマ選手、アースイーターの《ハルク・クロウラー》選手を丸のみだぁーっ!』

 そして映像の中のコダマンマも「たべたい……もっと……」とぶつぶつ呟き続けているのであった。

 

「あ、アースイーターを丸のみ……」

「それと……」と、声を震わせるピロロン。「同じ事態が今、起こっています!」

 

 

「おなかすいた! おなかすいたぁぁ!! なんかたべたい! たべさせろぉおおっ!」

 コダマンマは暴走のままに、ありとあらゆるものを飲み込んでいく。そして、それは……トドロキたちに倒されて気絶している、他の選手たちにも及んでいった。

 

「うう、何事……?」

 バチバチと電気を零れさせたままウコンが意識を取り戻した先には、コダマンマの姿。

「なっ!?」

 そして次の瞬間、彼はごくんとコダマンマの腹の中にのみこまれていった。

 

 

「あ、あいつ、なんてことを!」

「おいっ、今すぐ、吐き出すべよっ!」

「危険です、トドロキさんたち!」ピロロンの制止も聞かず、トドロキとパワーフォースはコダマンマに向かっていく。だが。トドロキの斬撃、そしてパワーフォースの炎を、コダマンマはダンスのような軽快な動きで瞬時に避けた。

「なっ……こ、こいつ、速いべっ!」

 身軽さなら自信のあるトドロキすらも驚く、その瞬発力。コダマンマはそのすきに第九車両へと向かっていく。

「あっ、あいつ、どこまで行く気だべ!」

「危険です、深追いは禁物です!」

「何言ってるんでチュか!」飛び出したのはマチューも一緒だった。

「危険だから、追わなくちゃならないんじゃないでチュか! あんなのがいたら、武闘会どころじゃないでチュ!」

 

 

「おなかすいた! おなかすいたぁぁぁぁぁ!!!」

『あわあわ、これはどういったことでしょうか! 福腹人形コダマンマ選手、奇声を上げて列車内を食いつくしながら猛然と先頭車両に向かって驀進中です! 前半車両の皆さんは気を付けてー!』

 

「……煩いジャニねえ。昼寝もできんジャニ」第七車両、一人のサイバーロードがむっくりと起き上がった。

「何か、あったんジャニか」

 

「ひ、ひぃぃぃ」猛然たる勢いでコダマンマに突き進まれた第五車掌。一人の《グランド・デビル》が大量の楯で身を護りながら、身を震わせている。

「なんだよ、あんなのがいるなんて聞いてねーぞ! 行ったか? もう行ったか?」

 

 そして、第一車両。

「な、なんでごじゃるか、お前はー!」予言者キビダンボーラーが急に来たコダマンマの姿に驚いていた。

「おなかすいた……たべもの、ないかぁ……」

「そ、それがしのキビボールは名前こそキビボールだけれども、食べ物ではないでごじゃるよ!」

「たべもの……たべもの、よこせぇぇぇ!!!」

 

 コダマンマは列車内の設備も、倒れた選手たちも無差別にバクバクと丸のみにし続けながら、どんどん向かっていく。急いでキビダンボーラーは第二車両に避難し、無人となった第一車両、そして……。

 

『えっ!? ちょっとまって、福腹人形コダマンマ選手! そ、そっちは選手立ち入り禁止ですよっ!?』

 第一車両も超えた先……すなわちワッショイエクスプレスの機関部へと。

 

「たべもの……たべもの……ここにも、ない……」

 コダマンマは口を開ける。そして……「あるもの」にかぶりついた。

 

『あーっ! やめてくださいコダマンマ選手! それは……!』

 

 その時。

 コダマンマは丸のみのできない「それ」に業を煮やして、「それ」をむしり取った。『メッ……』ワッショイエクスプレスの放送は、選手に向けたものとはならなかった。

 

『メーデー、メーデー! 保安班、聞こえますかーっ!? 選手の暴走により、ブレーキが壊されました!て、停止不可能です! 今すぐ、《アザース》をこちらに派遣して、僕を止めてくださ』

 その放送が途中で途切れたのは、コダマンマに通信機器までも引きちぎられ、丸のみにされてしまったからであった。

「たべもの……ここにも、ない……」

 

『ぜ、全選手の皆様に告ぎます!』

 ワッショイエクスプレスの放送が響く。

『たった今、ブレーキと通信機器が壊されました! コロッセオ・シティにつくまであとおよそ30分! それまでに保安班の助けが来ないと……この僕、世界最速ワッショイエクスプレスがコロッセオ・シティに突っ込む大事故が派生してしまいます―ッ!』

 

 地獄のワッショイ超特急。

 図らずもつけられたその名前が、今、現実のものとなってしまった。

 

 

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