Saga of Creatures〜Battle Galaxy~   作:hinoki08

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第七話

「こちら保安班チーフ、《チェレンコ》! ワッショイエクスプレス、何があった、何があった!? ブレーキが壊された……!? 応答せよ、応答せよ!」

 急にかかってきたその緊急通報に、大会運営側のサイバーロード、チェレンコは驚愕していた。

「通信機器もやられたのか……まずい、今、《アザース》はBブロックの試合で出払っているんだ!」

《遊撃鉄人アザース》。

 いまBブロックの試合で選手たちを相手取る、麻痺光線を発する彼らは、それはもともと、保安班のものである。

 何しろ戦国武闘会、平和な世の祭典とは言え武闘会は武闘会だ、血の気の多い選手は多い。乱闘沙汰にでもなった際、相手を瞬時にフリーズさせる麻痺光線を放ってそのいさかいを止めるのが、彼らの本当の役目であった。

 しかし、それが今出払っているばかりか……Bブロックの選手にバッタバッタとなぎ倒されている真っ最中。そんな中、ワッショイエクスプレスが全速力でコロッセオ・シティに突っ込んで来たらどうなるか……。

 チェレンコは、手元のモニターを覗き込む。放映システムだけは大丈夫のようだ。こちらから一方的に、先方の状況を確認することはできるか。

「メーデー! 聞こえるか、救護班チーフ!」

「はい、こちら救護班チーフ《予言者リク》です、チェレンコ、応答をどうぞ」

 チェレンコは慌てて、救護班を務める大型ライトブリンガー、予言者リクへ通信をつないだ。

「ライト級予選Bブロックで破壊されたアザースたちをいますぐ治療したい! 10台は必要だ! どれくらい時間がかかる!?」

「派遣場所は?」

「コロッセオ・シティ駅だ!」

「それでしたら、30分」

 30分。

 チェレンコは最後に放送が入った時点でのワッショイエクスプレスの座標を確認し、そして呟く。

「ギリギリだ……!」

 

 

 

「な……」

 車内放送を聞いて、ベンケイたちも驚いた。

「何つーことだよっ!」

「ほ、本当に地獄への超特急になっちまったじゃねえか!」とフィリッパ。

「慌てないで一先ず、作戦を建てましょう」とピロロンが言う。「仰る通り、あんなのに暴走されたら武闘会どころではありません!」

「あんたのスパイラル・ゲートで奴を列車の外に出すことはできねーのか!?」ベンケイが聞いた。

 スパイラル・ゲートは水文明に古くから伝わる物質転送技術だ。しかし、ピロロンは首を横に振る。

「この列車には、列車外への空間移動技術、および魔術に対抗する結界が貼られています……選手に列車外に出られたら、試合にならないからでしょうね」

「コダマンマを後部車両の方になんとかおびき出して、車両を切っちまったらどうだ?」

「それも同様に不可能でしょう、それができるだけの設備が用意されていません。理由は同じで、それができてしまったら前方車両の選手がやってしまった場合、試合が成立しないからでしょう」

「それに、奴だけどうにかしたって意味がないッチュ!」発言したのはマチューだった。「食べられた人たちも、助けないと!」

「け、けど、そんなことできるのかよ!?」とパワーフォース。

「できるのかよじゃなくって、やらなきゃでチュ! 幸いみんな丸のみにされたんだから、今すぐ吐き出させれば間に合うと思いまチュ!」

「で、でもどうやって……」

 

「ゴチャゴチャ煩いと思ったら……ここだったジャニね。生き残りがたむろしているのは」

 その時、前方車両の扉が開いた、

 出てきたのは。

「き、斬隠テンサイ・ジャニット選手……!」ピロロンが言う。自分と同じ、サイバーロードのその姿に。

「デスパペットが暴走して列車が停止不可能になった? それで、ゴチャゴチャ言ってたジャニか」

「メ……メーデーを出してたから列車の方はきっと大会運営が何とかしてくれるはずだ! ……多分」と、ベンケイが言ったあたりで、同じく前方車両の生き残り、盾を持ったグランド・デビル《封魔ズルメル》と予言者キビダンボーラーも第十車両に集まってきた。

「こっ、ここは安全かっ!?」

「ど、どういうことにごじゃるか! 皆、食べられてしまったでごじゃるっ!」

「そうなんでチュ!」

「早く、いかねーとだべ!」トドロキもその状況に焦りに焦っていた。

「武闘会は殺し合いの場じゃなかんべ! 早くみんなを助けねーと!」

「だから、どうやってコダマンマのお腹の中から選手たちを助け出すっていう話をしてんだよっ!」

「ちょっと待ってくれ、そんな話になってたのか!? 冗談じゃねえぞ、俺たちはもうあいつと鉢合わせなんて御免だからな!」と、ズルメル。

 ギャアギャアうるさい中、その場に響いた声があった。

「……何ジャニ、とりあえず、そのコダマンマってやつに食べられたほかの選手たちを救えばお前らもちっとは落ち着くジャニか? 馬鹿ども」

「ああ、そうだよっ! ひとまず」

「あんまり、いい考えだとも思わないけど、それでお前たちが黙るんならしょうがないジャニね」

 そして、テンサイ・ジャニットはパニックの収まらない第十車両の中、誰にも聞こえないようなほんの小さな勢いで、パチンと指を鳴らす。

 

 すると……その場、何もなかった列車の壁に急遽大きな黒い穴が開き、そこからウコンをはじめとする、コダマンマに食べられた選手たちが大量のがれきと共にドサドサと流れ出てきた。

 

「なっ……!?」

 他の選手たちが驚いて目を見張る中「ほら、多分これで全部ジャニよ」とこともなげにテンサイ・ジャニットは言い放ち、そして黒い門を閉じる。

「あ、あなた、どうやってこれだけの空間移動術を?」

「そんなもん、見てて分からんかジャニ? まあ、サイバーロードって言ってもテンサイとそれ以外には差があるジャニ、しょうがないジャニね」

 驚いたピロロンの言葉を、彼はそうやって軽くいなす。

「お前、放送で聞いてたジャニ。シールド・フォースの力でデータを扱うことができるジャニね?」

「え、ええ……」

「今すぐ、この列車の進行方向を調べるジャニ」

「進行方向……?」

「分からんか? いまコダマンマはたくさん食べたはずなのに急に腹が減ってよりいっそう暴走しているはずジャニ」

 

 

 

 実際、その通りであった。

「な、なんだぁ……きゅうにおながすいたぞおおお! たべもの……もっと、たべものぉぉぉ……」

 周囲の倒れている選手全てを食らいつくしたはずなのに、なぜか急にズドンとした空腹感に襲われたコダマンマは、より一層無人になった車内を食い荒らして暴れまわっている。

 

 

 

「けど、あいつに食わせるもんはもうなにもねえぜ!」

「あったりまえジャニ。そもそも、奴に食い物なんて食わしても本質的には足しにもならんジャニ」

「コ、コダマンマ選手はデスパペット……本来は、無機物種族ですものね」

 

 この惑星にはとかく、多種多様な種族が混在している。

 それらすべてが、食べ物から栄養を補給するとは限らない。光文明の種族やアーマロイド、グレートメカオーなどの機械種族は燃料やマナから直接エネルギーを得て活動する。デスパペットもまた然り、本質的には彼らに食事は必要なく、マナのエネルギーで動く存在なのだ。

「そうジャニ。だから奴を大人しくさせるんなら、大量のマナを奴にぶち込むべきジャニ。この中に、マナの魔術師はいるジャニか」

「オ、オレがそうッチュ!」と、マチューが名乗りでる。

「お前、ここはフィオナの森ジャニ。シールド・フォースの力で、マナが大量に湧き出る地点と列車の進行方向が交わる場所を割り出すジャニ。そのタイミングで大量のマナを呼び出してコダマンマに食わせれば、奴はお腹一杯になって大人しくなると思うジャニ」

「……は、はい……」

 

 ピロロンは驚いていた。

 自分と同じサイバーロードでありながら、データを参照する必要すらなくすらすらと作戦を用立てるその姿に。

「あっ、あの……あなた、誰ですか……たいていのサイバーロードなら私、知ってますけどテンサイ・ジャニットなんて聞いたことも……」

「いいから、やるジャニ」

「はっ、はい!」ピロロンは慌てて、第十車両に放置してあった自分のカプセルに乗り込み、「《フォース・リローデッド》……」とシールド・フォースの範囲を広げる。

「シールド・フォース、セット完了! いつでもいけます!」

「そして集まった他の奴ら!」

 いつの間にやら、完全にその場の指導権を握っていたテンサイ・ジャニットはきびきびとい放つ。

「二班に分かれるジャニよ。一斑はこのネズミと一緒に、『その地点』が来るまでコダマンマと戦って時間稼ぎする役ジャニ。もう一つは、このガラクタどもを後部車両に移動させる係ジャニ」

「おっ、俺は後者で!」いの一番に言ったのはズルメルだった。

「それがしもにごじゃる!」

「しかたねえ、これだけガラクタがあれば、大量に移動させるだけの設備くらい作ることができるか……!」フィリッパもどうやら、そちらに回る気の様子であった。

「倒れてるやつらを放っとくのは、騎士道に反すっからな……マチューの言うみてえに」

「ベンケイ、ベンケイもそっちに回ってくれだべ、みんなを助けるべ」あえて、トドロキがそう言った。

「『ベンケイのクロスギア』なら、きっとこんな時でも役に立ってくれると思うべよ」

「……わかった。けど、無理はすんじゃねえぞ」

 

「決まったジャニか? じゃ、残りのやつら!」当たり前のように指揮を執るテンサイ・ジャニット。

「前方車両へ! コダマンマと戦いに行くジャニ! こいつらをもう一度奴の腹に納めさせたくないんだったら、奴を第十車両から後ろに行かせちゃいかんジャニよ!」

「分かったべっ!」と、トドロキ。

「任せて下さいッチュ!」と、マチュー。

「なんかいけすかねーやつだけど、オイラはやるぜ!」と、パワーフォース。

 

 こうして、暴走するワッショイエクスプレスの中でコダマンマ制圧大作戦が幕を開けた。

 

 

 

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