Saga of Creatures〜Battle Galaxy~   作:hinoki08

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第八話

 

「うおおお! とにかく後ろに行きやがれー!」

「おい、早く目覚めろ! 意識のあるやつらは! とっとと後方車両に行くんだ、また食われちまうぞっ!」

 フィリッパがガラクタから急ごしらえした小型ブルドーザーを使って、避難担当組が意識不明の超獣たちを半ば強引に押し出し、意識のある超獣たちには声をかけて回っている。

「ひっ! ひいいぃ! 食われるぅぅぅ!!」

「落ち着け、お前らっ!」彼らをなだめるのは、ベンケイとズルメルの役目になっていた。

「身を、身を護らなきゃ……」

「しょうがねえ、俺の楯で足しにしな!」ズルメルはそう言って、自分の魔力で楯を生成し、彼らに配って回っていた。

「ったく何の意味もねえけど……」

「まっ、落ち着いてくれるんならいいんじゃねえのか」

「おっ、お前ら! お前らも、俺を食いに来たのかよ!」

「冗談じゃねえ、このオレがそんな風に見えっか」

「やられる前にやってやらぁ!」すっかり錯乱した一人の選手がベンケイに襲い掛かった時、ベンケイは「しゃーねえな」と息を吐いた。

 

「《JK兜パッパラ・ベンケイ》……ジェネレート」

 

 

 

「解析完了です!」とカプセルに乗り込んだピロロンが言った。

「あと十五分で……巨大なマナ・プラントとワッショイエクスプレスが交差します! その時点でコダマンマと交戦していなければなりません!」

「コダマンマは今どこにいるべ!?」

「第五車両です!」

「オラたちも向かうべよっ! 足止めしなきゃ、どうにもならんべっ!」

「はいっ!」

 トドロキたちは急いで、コダマンマのいる車両へと向かう。途中に通った車両は本当に何もかもが貪り尽くされて、ひどく殺風景だ。コダマンマはどれだけ暴れたというのだろう。

 やがて……出来れば開きたくもないであろうドア、第六車両と第五車両をつなぐドアが目の前に現れた。だが、彼らに迷っている暇などはない。

 

「やい、コダマンマ!」

「オレたちと十五分だけ、勝負でチュ!」

 

 彼らはバン、とドアを開けた。そこには……ワッショイエクスプレスの設備を全て貪り尽くし、今度は壁紙までも引っぺがして食べているコダマンマの姿があった。

 

「みつけた……たべもの!」

 

 彼にとっては、現れたトドロキたち4人もすでに食べ物としか目に映ってはいない様子であった。

 

『あー、テステス、聞こえるジャニか?』

 その時、車内放送が響き渡る。

『この車両の車内放送をジャックしたジャニね、これでオレの指示もそっちに通るジャニ。お前ら、はっきり言ってそのコダマンマ、お前ら3人合わせたくらいには強いジャニ。計画的にかからんといかんジャニよ。ピロロン、お前のデータで奴をサポートするジャニ。特にマチュー・スチュアートには、絶対に生き残ってもらわんとこの作戦全部水の泡ジャニね』

「はっ、はい……」

 

「あいにくだけど……オラたち、喰いもんなんかじゃねーべ!」

「シールド・リンク……! 喰らえ、ボルシャック・ファイアー!」

 パワーフォースが一気に力をため、火炎放射を放つ。しかしだ。

 コダマンマはぐわりと大口を開き……文字通り、ボルシャック・ファイアーを『喰らった』。

 

「なっ……」

「まずい……おなかも、ふくれない……」

 コダマンマはそう言って、先ほど見せたような身軽な動きで飛びあがる。「コダマ神拳……」と呟きつつ。

 そして、鋭いボディーブローをパワーフォースに向かって放った。

「ぐへっ……」

「たべものが……うごくな……おとなしくしてろ……」

「な、なめんじゃねえぞ!」

 体にまとう楯の方を攻撃するだけの認識がコダマンマになかったのは、パワーフォースにとって何とか幸運なことであった。

「ボルシャック・パンチ!」

 彼は自分の間合いに入ったコダマンマの腹部に、思い切り炎の拳を浴びせる、しかしそれをコダマンマはひらりと、踊るような動作で避けた。

「あ、あいつ……マジで速いな!」

「クッ……速く動く列車の中だから、外からのマナの充填が思うようにいかないでチュ! 周りには物資もないし……」マチューも、魔銃へのマナの充填に苦戦している様子であった。

「マチューはそのマナ・プラントに届くまではピロロンを護るのに集中してくれだべ! コダマンマはオラたちがやる!」

『おい、ルーキーコンビ』その時、テンサイ・ジャニットの声が響いた。

 

『お前らにも分かりやすいように簡単な言葉で言ってやるジャニ。攻めて、攻めて、攻めまくるジャニよ。コダマンマの弱点は……自分を守る術は持たないことジャニ。まともに攻撃を当てれさえすれば、効くはずジャニよ』

「なっ……?」またしても、驚かされたのはピロロンであった。だってそれは今、自分が解析して彼らに伝えようとしていたことなのだから。

 見たところシールド・フォースの能力を使っているわけでもなし、車内モニターがあるとはいえ離れた場所にいてそれでコダマンマの弱点を解析できるこのテンサイ・ジャニットなるサイバーロードは……本当に何者なのだろう? 

「(データによれば、ルーキークラスDブロックの通過者……その際は謎の術でパートナーと思しきスノーフェアリー以外を一切葬り去っています。そしてこの予選内でも、その謎の術をつかって……)」

 しかし、彼のデータはそのくらいだ。

 いずれにしても、今はテンサイ・ジャニットについて解析している時間ではない。トドロキとパワーフォースはその言葉通り、攻めて、攻めて、攻めまくることにした。マチューは来るべき時に向かって、魔銃とそれに込められた魔弾に精神をシンクロさせることに集中している。

 

「ちょこまかうごくな……たべられないじゃないかっ……」

「食われてたまるもんかだべよっ!」

「ちっと落ち着け、コダマンマ!」

 パワーフォースがまたパンチを放たんとする。コダマンマは片手で地面を回り、それをよけるが……。

「その動きはもう見切ったべっ!」

 コダマンマのダンスに目が慣れてきたトドロキが、それを捉えた。ジュウベイの斬撃が、コダマンマの脳天に入る。コダマンマがぐらついた。

「やった! 効いてるべ!」

「このままいくぞ!」

 その一瞬出来た隙を、彼らも見逃している暇はない。彼らは小さなコダマンマの体に、集中砲火を浴びせかけた。

「ぐ……ぐうぅ……コダマンマ、いたい……」

 

 ダメージは確実に、蓄積されているようだ。パワーフォースとトドロキの攻撃の連続は、コダマンマに反撃する隙を与えさせない。

 運が良ければ、このまま倒しきれるか……しかし、彼らがそう思った矢先のことだった。

 

『あーっ! あぶない!』

 その車内放送は、テンサイ・ジャニットのものではなかった。ワッショイエクスプレス自身のものだ。

『せ、線路にエメラルド・モンスターが迷いこんでいるのを発見!』

「えっ!?」

 そう、線路に野生のモンスターが一体、入り込んでしまったのだ。超スピードで動くワッショイエクスプレス、それで脱線事故でも起こせば目も当てられない……。

 

『ぜ、前方七車両、片輪走行を開始いたします! 右に60度傾きまーす!』

 だから、彼はそれを避けた。片輪走行で。

 

 前方七車両、当然、トドロキたちのいる第五車両も含まれている。

 モンスターがようやくワッショイエクスプレスの存在に気が付き、そしてそれにぶつからんとしたとき……ワッショイエクスプレスは自分の体、そして車両を思い切り右に傾けた。

 

「うわっ!」

 それと同時にバランスを崩し、壁にたたきつられるトドロキとパワーフォース。それだけではない。ピロロンのカプセルも壁にたたきつけられ、その衝撃で『楯』が壊れてしまった! 

「ぴ、ピロロンさん!」

「大丈夫です、マチューさん……貴方は自分自身の集中を続けて! 《フォース・アゲイン》!」

 ようやくモンスターも去りがたん、と元に戻った車両で、ピロロンは再びシールド・フォースを展開しようとする。だが、攻撃からのがれたコダマンマは……。

「おまえら……ゆるさない……かわいいコダマンマをボコボコにして……」

 完全に怒り心頭の様子であった。

「ぜったい、たべてやる!!」

 コダマンマは今までより一層速い速度で、トドロキとパワーフォースの方に向かっていった。一方トドロキたちは……目を見合わせ、そしてこくんと頷く。

「わかったべ……ジュウベイの斬撃でよければ、好きなだけ喰らうといいべよっ!」

「オイラの炎もな!」

 あいも変わらず猛攻を続けた……かのようであった。不思議に、テンサイ・ジャニットは何も言わない。

 

「さあ、トドロ斬ってやるべっ!」

 トドロキはジュウベイの刀身に炎を纏わせ、コダマンマに思い切り切りかかる。そしてパワーフォースもボルシャック・パンチを両腕で放つ。

 だが素早さを増したコダマンマはすっとそれをよけた。そして……避けただけではなく、自分の腕をパッチワーク状に縫い合わせる糸を引きちぎって腕を伸ばし……。

 

「……つかまえた」

 思い切り間合いを詰めてきたトドロキとパワーフォースを、びろんと縫い目がはがれリーチが伸びたその腕で二人同時に捕まえた。

 

 そして彼は、大口をあける。

 

「いただき、ます……」

 

 そしてその時……トドロキとパワーフォースは、笑った。

 

「時間ピッタだべなっ!」

「頼んだぜ、マチュー!」

 彼らはコダマンマに抱えられたまま、あえて逃げ出そうとはせず……代わりに彼の開かれた大口を、両腕でグググ、と押し上げ続けた。

 

 そう……十五分が経過し、マナ・プラント地帯に入ったのだ! 

「今です、マチューさん!」

「任せるでチュよっ! 集まれ、大地のマナ! 魔弾パンダフル・ライフ!」

 そして、マチューがそう言った次の瞬間。

 列車の壁を抜けて数多のマナがマチューの魔弾に集まり……そしてそれはそのまま、コダマンマの口の中へと次々に発射された、

 おむすびにオムライス、ケーキにサンドイッチ、いろいろな食べ物の姿になって。

 

「お……」

 

 ぽとん、とコダマンマは両腕を放し、パワーフォースとトドロキを開放する。

 

「おいしーい! もっともっと、ちょうだぁぁぁぁい!!」

 

 次々に発射される魔弾、それを貪り続けるコダマンマ……そんな瞬間が数分続いたあたりのことだった。コダマンマの胴体が、緑色のマナに膨れていく。

 

「はあぁぁぁ、おいしかった。コダマンマ、しあわせ……もうねむい……」

 

 コダマンマはその場にパタン、と倒れて、いびきをかいて眠り始めた。

 

 

「やったべなっ!」

「ああ、すげえ敵だった……」

 パワーフォースとトドロキも、自分たちの決死の作戦が成功して大喜びだ。これでコダマンマは、もう列車到着まで目覚めることもないだろう。

「念のためとどめ刺しとくか」と、パワーフォースが炎を放った。コダマンマはあえなく、眠ったまま幸せに黒焦げ、戦闘不能である。

 

 

『コダマンマはやったジャニか。じゃあ……もう、用はないジャニね。このジャックも終了ジャニ』テンサイ・ジャニットの声。

『じゃあ、さらばジャニ』

 

 さらば? 

 どういう意味だろう? 

 

 ……どうにしても、もう一つ問題がある。

 

『選手の皆さん! い、いよいよ、コロッセオ・シティが見えてきました! 皆さん、覚悟を決めてください! 保安班がいなかったら、僕たちは……!』

 

 そう、ワッショイエクスプレスの暴走を止められる保安班が、治っているかどうか。

 こればかりは、選手たちにはどうにもならない。祈るしかないだけだ。

 

 

 森がだんだん開けてくる。

 計画都市、コロッセオ・シティが目に入る。五色の花火や風船が舞い踊るそのにぎやかな空間を、ワッショイエクスプレスは全速力で駅まで駆けていく。

 そして、その先には……。

 

「はーい、お休みデース! アザース!!」

 ……十台のアザースたちが待機していた。そして彼らは一斉に、ワッショイエクスプレスとその客車たちに麻痺光線を浴びせかける。

 

 ……間に合ったのだ、保安班の救援は。

 

 シュウゥ、と音を立て、ワッショイエクスプレスはコロッセオ・シティのホームに停車した。

 

『皆様、お疲れさまでしたー……予選第二回戦『地獄のワッショイ超特急』これにて終了でーす!』

 

 

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