Saga of Creatures〜Battle Galaxy~   作:hinoki08

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第五話

 

 ライト級予選第三回戦Cブロック。『戦国タッグ・トーナメントfeatライト級』。

 ライト級の選手24名、計12ペアによって行われるトーナメント戦、それが、トドロキの次の予選内容であった。通過は上位3ペア、計6名だ。

 シード枠の片方は、二回戦のA~Dブロックの1位から選ばれるらしい。

「って、ことは……」

 トドロキはつぶやいた。

「パワーフォースと、早くも戦えるんだべな―っ!? これは楽しみだべっ!」

 パワーフォース・ドラグーンは確か1位通過扱いとなっていたはずだ。という事は、確実にこのブロックに配属されているはず。

「ハハッ、見てください、トドロキ。パワーフォース・ドラグーン選手と戦うんなら、決勝戦になっちゃいますよ」

「だったら、決勝にいきゃいいだけだべっ! あいつも強いから、きっと勝ち上がってくんべよっ!」

 ブルー・コロシアム、選手控室。

 ライトニング・キッドは困ったように笑いながら、トドロキにトーナメント表を見せていた。

「それにしても、でっけえ控室だべな―」

「ヘビー級の選手すらも使いますからね……僕たちには少々、大きすぎますよね」

 ドラゴンや精霊すらも入れるそのサイズの部屋の天井を見上げ、トドロキとキッドはそうつぶやく。

「僕たちの試合は第1試合ですから、すぐですよ」

「うんっ! オラとジュウベイは準備大丈夫だべっ! お前もいいべかっ!?」

「僕も、問題ありません」

 天武の精霊ライトニング・キッド。

 聞けば、光文明はシルヴァー・グローリーからやってきたエンジェル・コマンドの少年戦士であるらしい。古の聖霊王、《聖霊王アルカディアス》をモデルに、近年開発された身であるとか。

 その力に恥じず、予選第一回戦はルーキークラス予選を難なく突破。しかし、続く第二回戦では……。

「恥ずかしながら、3位でしたよ。……君がパワーフォース・ドラグーン選手と戦いたいのと同様、僕も1位のドンキノフ選手には……ぜひともリベンジをしたいですね。光文明の名に懸けて」

「恥ずかしくなんかなかんべ! キッドも、そのドンキノフってやつも、全力で戦ったってことだべ!? だったらいいんだべ!」

「フフッ、ありがとうございます、トドロキ。君は優しいですね」

 

 この試合の妙は、大会運営側から指定された、ほぼ初対面に近いパートナーとどれだけ息を合わせられるかということ。

 しかしその点において、トドロキ・キッドペアは何ら問題はなさそうだ。二人とも会ったばかりから一夜明けて、友達同然のように明るく語り合っている。

 

 そうこうしているうちに、いよいよ待ちに待ったアナウンスが響いた。

 

 

『お待たせいたしました。ライト級予選第三回戦Cブロック「戦国タッグ・トーナメントfeatライト級」間もなく開始いたします。全選手、闘技場へお集まりください』

「おっ! 出番だべなっ!」

「ええ、行きましょう!」

 

 

 トドロキとキッドは手を取り合い、だっと走りながら闘技場へかけていく。そこで彼らを待ち受けていたのは……。

 

 武闘会の華コロシアムを埋め尽くす大勢の観客……と景気良くいきたいところではあったが、実のところ、観客は多少まばらなものであった。

「あり? ……なんか人、少なくねーべか?」

「ははは……実は、全く同じ時間で同じ内容のルールの試合を、シャイン・コロシアムでヘビー級がやってるんですよ。こっちと違ってあちらは、パートナーが自由に選べるみたいですけど……」キッドが苦笑しながら言う。

「ただでさえヘビー級の試合の方が迫力があって人気が出るのに、そこには超ド級のスター選手が出るみたいですから……あっちはコロシアムから人があふれてる始末らしいですよ」

 それでも、と彼は言い足した。

「こっちにも、超特級のスターが来てますよ」

「えっ?」

 トドロキが首をかしげた、その時だった。『レディース・アンド・ジェントルメン!!』と実況の声が響く。

 

『ようこそ、ライト級予選Cブロックへっ! 実況はこの俺、千舌実況ミラクル・ショーが務めさせていただくぜっ!』

『アシスタントはこの私、雪溶妖精シャーマン・メリッサでーす!』

 

「ミッ……」トドロキは目を見張った。「ミラクル・ショー! 本物だべかぁっ!!」

 

 ミラクル・ショー。彼は戦国武闘会一の名物実況者だ。

 第一回戦でトドロキの試合の実況を務めたチョッキーも、彼の弟子。彼のまるで舌が千枚あるかのごとき熱い実況が、幾度武闘会を熱く湧かせてきたかは計り知れない。

 その彼に実況を務めてもらえるとは……武闘会に立つものとして、なんだか一人前と認められたような気分だ。

 

「おーい、トドロキィ!」

 観客席から、ベンケイも手を振っている。

「頑張りやがれよーっ!」

「ベンケイ! うん、オラ、頑張るべーっ!」

 大声で返事するトドロキに『おおっ、早くも元気がいいぜ、牛若剣士トドロキ選手!』とショーは告げた。

『トドロキー!』ラ・ウラ・ギガの上からメリッサも告げる。

『あたしも見てるからね、忘れないでねーっ!』

「おうだべっ!」

『ちょ、ちょっと、メリッサちゃん!』ショーは慌てて言う。『困るなあ、実況は中立にやってもらわねーと!』

『あっ、すみませーん、てへっ』

 

「あーっ、トドロキ! お前もいたんだな!」

 会場に集まった24名の中から、またもトドロキに手を振る姿がある。パワーフォース・ドラグーンだ。

「こんなに早く、お前との再戦が叶って嬉しいぞ! 絶対、決勝で戦おうなっ!」

「勿論だべっ!」

 彼の隣には、不思議な風貌をしたミステリー・トーテム。……呪術師によって彫刻された霊木に魂が宿った種族だが……どうやら彼が、パワーフォース・ドラグーンのパートナーであるようだ。

 

「決勝、か……」

 その声を聴いて、一人のキツネのドリームメイトがぼそり。

「生憎だがそうはさせん……『新』の精神を見せつけて、この私こそが1位通過をして見せるからな」

「僕も手伝うッピ」そして彼のパートナーと思しきファイアー・バードも呟く。「ドラゴンだけじゃなくサムライにもこの献身を捧げることが……僕のサムライ道ッピ」

 

「おおっ、そこに居るの、誰かと思いきやあのライトニング・キッドではないかっ!」

 ドンキノフも、キッドの存在に気が付いたようだ。

「吾輩へのリベンジを狙っておるのか? カカッ、無駄なことよ! もう一度、魔光の神髄をそなたに見せつけてやろうぞ!」

「無駄かどうかは……分かりませんよ!」

「おうおう、元気の良きことよ! これぞ戦士のあるべき姿! カカカッ!」

「しっかしよお……」不服そうにつぶやいたのは、一人の闇文明のティラノ・ドレイク。どうやら彼が、ドンキノフのパートナーであるようだ。「こんなマヌケそうなやつ、大丈夫なのか、本当に? おかげでシード枠になれたけどよ……」

 

『おおっ、みんな、元気がよくって何よりだぜ! それでは誰も彼も戦いたくってうずうずしているだろうし……さっそく、開会しちまおうぜっ!』

『第一試合、「牛若剣士トドロキ選手&天武の精霊ライトニング・キッド選手」……VS! 「予言者キビダンボーラー選手&《邪戦将ヒゲマロ》選手──っ!」』

 メリッサのアナウンスと共にショーがパチンと指を鳴らすと、たちまちのうちにブルー・コロシアムに仕組まれた魔術が作動し、それ以外の選手たちが一斉にコロシアムの隅のベンチへと追いやられる。そして会場の中央へと残ったのはトドロキにキッド、そして、ワッショイエクスプレスでも乗り合わせたあのライトブリンガー、予言者キビダンボーラーと……彼の傍らに立つ、一人の長い髭を蓄えたダークロードのサムライであった。

 

 ライトブリンガーに、ダークロード。その組み合わせにはたと、会場に緊張が走る。『おっと、しかしこれは、面白い組みあわせとなったぜ! 同じサムライでありながら……ライトブリンガーとダークロードとは!』と続いたショーの実況も、その組み合わせの異常さを証明している。

 いかんせんその両種族は、旧世界から連綿と光文明の闇文明の支配階級を為してきた種族だ。光と、闇。古来よりいがみ合ってきた、その両文明の。

 大丈夫なのだろうか、そんな種族同士のチームなど……と、誰もが緊張していたときのことだった。

 

「おおっ! みやれ、ヒゲマロ殿! あの童が、昨日言うた勇気ある童にごじゃる!」

「なんと、キビダンボーラー殿! そのようなものとすぐに戦えるとは、麿たちも光栄におじゃるのお!」

「おお、それがしの言わんとしていた台詞を! まったくヒゲマロ殿とは、気が合うにごじゃるのお!」

「お互い目指すサムライ道も似たようなものにおじゃる、当然でおじゃらんか、ほっほっほ!」

 ……その場の空気を引き裂いたのは、仲良さげに話し合うキビダンボーラーとヒゲマロ本人たちであった。

 

『……どうやら心配事は杞憂なようね、皆さん』メリッサもその様子にびっくりしたように言う。

『仲良く手を取り合ってタッグ戦に向かうライトブリンガーとダークロード! これもまた、平和な戦国時代の象徴かもしれねえな! ライトブリンガーに手はねえけど!』

「童! ワッショイエクスプレスでは世話になったのお、礼を申すにごじゃる!」続けてキビダンボーラーは、トドロキにもひと挨拶。

「あの時には見せられなかったそれがしの実力、しかと見届けるにごじゃるよっ! 今回はこの頼れる相方ヒゲマロ殿も一緒にごじゃるからなっ!」

「おうっ! 頼んだべ、キビダンボーラー! オラも全力で行くべっ!」

 

『両ペア、準備は万端のようだっ! それではさっそく……』

 ショーがブルー・コロシアムの鐘を打ち鳴らす。そして、メリッサと彼は声を合わせて言った。

 

『「決闘」、スタートッ!』

 

 

「お腰につけたキビボール……」キビダンボーラーがキビボールをセットする。

「今日も元気にストライク!」

 一番先に動いたのはキビダンボーラーであった。彼は3つのキビボールを放り投げ、トドロキとキッドに猛攻を仕掛ける。

 

『おおーっと出た出た、キビダンボーラー選手のお得意、キビボールでの猛攻戦術! 第二回戦では狭い客車内で猛然たる活躍を見せたが、コロシアムではどう出るかな!?』

 その通り。コロシアムでは、あの良く揺れる狭い客車内のような戦いはできないだろうかと思われたが……。

 

「なんの! それがしの武器は、キビボールだけにごじゃらん!」

 キビダンボーラーは、またもや腰に付けたものを取りだす。そしてそれは……。

「《天扇ハタフリ・ハフリーズ》! ジェネレートにごじゃるっ!」

 それこそが、彼のクロスギア。彼がジェネレートすると同時に、それは巨大な扇となった。

 キビダンボーラーはそれを一振り……と同時に、会場には爆風が巻き起こる! 

 

「うわっ!」

 ジュウベイをジェネレートしようとしていたトドロキも、思わずその勢いにのまれた。

「さあ、キビボールよ、風にのれぃ! 奴らをどんどん痛めつけるにごじゃるっ!」

「それだけではないでおじゃるぞ!」

 続いてヒゲマロも……自分のクロスギアを取り上げた。彼はすっと、踊るような優雅な動きで「それ」に念を込める。

「《邪扇エアロ・フウゲツ》……ジェネレートにおじゃる!」

 それは禍々しい闇文明の文様が描かれた、ハタフリ・ハフリーズとはまた違った小ぶりな扇のクロスギア。

 それはハタフリ・ハフリーズの巻き起こす豪快な風とはまた違った……繊細、かつ邪悪な風を、その場に発生させた。

 二つの風が混ざり合い、それに乗るキビボールたちは縦横無尽に飛び交い、まったく軌道が読めない。それだけではない。風の勢いにのまれ、トドロキはジュウベイのジェネレートもままならない。

 ジェネレートしようと思ったそのつかの間、ガツン、ガツンとキビボールの猛攻が襲い掛かってくるのだ。

「そらそら、どうしたにごじゃるかっ! しっかりせぇ、若きサムライ!」

「ほっほっほ、これぞ麿らのサムライ道! 身分などに縛られず、風のごとく自由に! 風は麿らにとって、何よりの味方におじゃる!」

 

『これは……ナイスコンビネーションだ、キビダンボーラー選手にヒゲマロ選手! それこそ、ライトブリンガーとダークロードがこれほどのコンビネーションを見せつけるとは! トドロキ選手にライトニング・キッド選手、防戦一方どころか防戦をする余裕もない! 一方的に攻められてるぞーっ!』

「なんですって……聞き捨てなりませんね」

 しかし。その巻き起こる二重の暴風とキビボールの猛攻の中、ライトニング・キッドは不敵に笑った。

 

「見せようではないですか……楯の力を!」

 

 




トーナメント表は以下となります

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