Saga of Creatures〜Battle Galaxy~ 作:hinoki08
ライトニング・キッドの体から光のマナが発生する。そしてそれはバリアの姿となり……トドロキとキッドを包み込んだ。
突然、止んだ風にトドロキが目を見張る。「さあ、トドロキ!」キッドは言った。
「今のうちに、ジェネレートをお願いします!」
「あっ、あいよっ! ジュウベイ、ジェネレート!」
ようやくジェネレートをするだけの余裕も湧いてきて、トドロキはジュウベイに念を込める。とたんにジュウベイの刀身に、炎が宿った。
『キャーッ! 牛若剣士トドロキ選手、ようやくサムライの本領を発揮よーっ!』
『メリッサちゃん、ほんと、実況は中立に頼むな!?』
「さあ、行くべっ! 風さえも切ってやるべよ、ジュウベイ!」
「その意気です!」
「なぁにを、小癪な真似をするにごじゃるか!」余裕ぶって言ったのはキビダンボーラーだ。
「然らば、そのバリアごと吹き飛ばして見せるにごじゃる! ほれほれっ!」
キビダンボーラーはまたしてもハタフリ・ハフリーズをひと降り。しかし……それより早く、キッドがバリアを解除する。
バリアごと吹き飛ばされるよりも、こちらの方がダメージが少ないと判断したが故だ。そしてトドロキも、バリアから出て、ひょいと飛び出す。
「こっちのジェネレートも完了だべ! キビボールなんかにゃ負けんべよーっ!」
彼は縦横無尽に飛び回る犬、猿、雉の文様の描かれたキビボールのうち、まず自分にとびかかってきた犬のキビボールから打ち落としにかかった。
ガツン、と鋭い音が響く。さすがは、このレベルの風に押されているだけのことはある。
しかし……それに負ける、ジュウベイの火力ではない。
「はっ!」
トドロキが気合を入れると同時に、キビボールは弾道をそれて、見当違いの方向へ。「このままトドロ斬ってやんべっ、キビダンボーラー、ヒゲマロ!」と、トドロキは荒れ狂う向かい風の中、二人に向かって突撃していく。
「ヒゲマロ殿」
「うむ……了解におじゃる」
二人がそう言葉を交わしたその次の瞬間、ヒゲマロはエアロ・フウゲツの持ち方を変えた。そして……それとともに怪しげな舞を踊りだす。
「な、なんだべかっ? でも、何でもいいべっ! このまま斬ってやるだけだべよっ!」
「生憎にごじゃるが!」キビランボーラーはまたぞろハタフリ・ハフリーズを構えなおす。
「ヒゲマロ殿の舞の邪魔は、させぬにごじゃるっ!」
ばさり、とそれが振り下ろされると同時に、今までよりも一段階強い暴風が巻き起こり、トドロキの小さな体は宙に浮いた。「わわっ!」と焦る彼に、「危ない!」と空を飛び助けにかかったライトニング・キッド。
「くっ……うまく、飛べませんね、この強風の中では……」
それでも、トドロキ……その脳天をめがけて飛んできたキビボールの攻撃を、何とか躱すことはできた。「トドロキ、いったん地上に降りましょう」とキッドが言いかけた……その時だった。
「うう……なんだべ……頭が、ぼーっとするべ……」
「ト、トドロキ……?」
『あっと、これはどうしたことかしら!? 牛若剣士トドロキ選手……攻撃をよけたはずなのに、頭を抱えて苦しんでいるわ!』
どういう事だろう? その疑問の答えに……キッドは気が付く。
「あの舞……闇文明の呪術ですね」
「ホッホッホ、ご名答よ、小さな精霊!」
長い髭をゆらゆらと揺らしながら、「これが麿のエアロ・フウゲツの力よ! 麿とその扇が繰り出す呪いは、相手の頭脳に直接作用するのでおじゃる! その童とて、戦いに挑むからには考えるだけの脳というものがあるでおじゃろう、それを奪い取るが、エアロ・フウゲツの力!」
「そしてその呪いを、それがしのハタフリ・ハフリーズの力で防御! これこそが、それがしらの戦術にごじゃるっ!」
「どんどん、行くでおじゃる!」
ヒゲマロは再び暴風の中、ゆらりゆらりと舞を踊りだす。トドロキは一層頭を抱えて「ぐぐぐうっ……」とうめいた。
『なんと! ダークロードの呪いを、ライトブリンガーが守る! 本当にこのペア、昨日が初対面の光と闇の支配種族なのかって程、息がぴったりだぜ!』
「まいったべ……なんか頭が痛いだけじゃなくって、どうすればいいのかもわからねーべ……」
「トドロキ……君は今は、頭を空っぽにしてください。とにかくリラックスをして!」キッドは言う。「君には僕というパートナーがいますから!」
「おお、そちらも意気投合しているようで何よりであるのお、小さな精霊!」ヒゲマロは言う。
「しかし、それが必ずしも報われるとは限らぬにおじゃる! 麿の舞で、そなたの電子頭脳も蝕んで見せようぞ!」
「はたして……そう、うまくいきますかね?」
キッドは再びバリアを展開、その中にトドロキをかくまい……そして、自らの胸に手を当てた。
「シールド……リンク!」
『あーっと! 出たわ、シールド・フォースの力―ッ!』
『天武の精霊ライトニング・キッド選手はシールド・フォース能力の持ち主! 予選第一回戦ルーキークラスでも、遺憾なくその力を発揮し『刺客』を倒した実力者だぜ! そしてその能力は……!』
とたんに、その場に光が満ちる。
そして、異変が起きるまでにそう時間はかからなかった。
「ん……なんだべ? 何か、楽になってきたべ」
「トドロキ。僕から離れないでくださいね。僕の『アルカディアス』の力の再現は……まだ、完璧なものではないので」
そういっている間にも、キッドの体の周囲には光のシ―ルドが満ち溢れ、そしてそれは……キッドの体に膨大な光のエネルギーを送り込む。「はっ!」と、キッドが翼を一振りすると……ハタフリ・ハフリーズの風が押し戻され、キビボールはキビダンボーラー達に向かって飛んでいった。
「うおっ!」
「危ないにごじゃるヒゲマロ殿! これっぬしら、主を襲うとは何事にごじゃるかっ!」
『出たでたーっ! さすがのパワーだぜ、天武の精霊ライトニング・キッド選手の力、「アルカディアス」の再現は!』
聖霊王アルカディアス。
それは、光文明の歴史に名を残す英雄。その膨大な力の前では、光以外の魔力などすべて無に帰ったという。
そして……聖霊王のいないこの時代、その力を再現せんと作り出されたのが、この天武の精霊ライトニング・キッドであった。
「先ほども言ったように、僕の力はまだ未完成。聖霊王には程遠いです。ですが……」キッドは言う。
「このくらいの闇の魔力から君を守ってあげるだけのことなら、できますよ……!」
「なんと! シルヴァー・グローリーではそのような者が作り出されていたのでごじゃるか!? 驚きにごじゃる!?」
『知らなかったの!? キビダンボーラー選手! ライトブリンガーなのに!』
「それがし、地上を気ままに旅する生活が長い故……」
「しかし……これは、分が悪いにおじゃる」
ヒゲマロが言う。「麿の魔力が確かに、疎外されておるでおじゃる……」
「ヒゲマロ殿……心配召さるな! それがしも光文明の端くれ、アルカディアスのことならば知っているでごじゃる!」
キビダンボーラーは再び、キビボールたちをセット。そしてハタフリ・ハフリーズを構えなおす。
「アルカディアスの力は、同じ光文明には及ばぬ! つまり、それがしという光の力の前には、妨害手段は持たぬでごじゃるっ!」
「そうですね、確かにご名答ですよっ、キビダンボーラー選手! ですが……」
再び振り下ろされたハタフリ・ハフリーズ。その暴風に乗ってトドロキ・キッドペア目掛けて最高速度で飛んでいく、3つのキビボール。
しかしその強烈な向かい風をもものともせず……光のシールドを纏ったライトニング・キッドは、果敢にキビダンボーラーに立ち向かって飛んでいく。その小さな背中に、トドロキを乗せて。
「僕にも、光文明ではないパートナーがいますからねっ!」
「ありがとうだべ、キッド! キッドにこうして乗っていると、頭がすっきりすんべっ!」
「キビボールよ、奴のシールドを粉砕するでごじゃるっ!」
「そうは……させねーべ!」
トドロキはキッドの背中の上で立ち上がり、ジュウベイの火力を充填。ガキン、と強い金属音を響かせ、まずは犬のキビボールを打ち落とした。続いて、猿のキビボールを、これまた見当違いの方向へと吹き飛ばす。そして最後に真っすぐ、こちら目掛けてやってきた雉のキビボールを、正面からとらえ……。
『あーっと、これはすごいぜ、トドロキ選手! キビボールを真っ向から両断だーっ!』
すぱりと、ハタフリ・ハフリーズの逆風を逆に利用し、見事二つに叩き割って見せた。
「なっ!」
「キビダンボーラー殿! 危ないにおじゃるっ!」
ヒゲマロもエアロ・フウゲツでの呪いをやめ、接近戦用の武器である三又の刀を抜いた。
「ぬうっ! 戻れ、犬と猿のキビボール! 聖霊王の力にも、打ち勝って見せるにごじゃるっ!」
しかしだ。
ヒゲマロが切りかかろうとした瞬間……すなわち、その呪いの舞が解けた瞬間を狙ってトドロキは飛び出してきた。キビダンボーラーもキビボールたちを操るのに忙しく、ハタフリ・ハフリーズでの防御をないがしろにしていた。絶好の機会だった。
先程吹き飛ばした犬と猿のキビボールの軌道上にトドロキは立ち、そして……。
『おおーっと! これはナイスプレイだ!』
『キビダンボーラー選手のもとに戻ろうとする勢いを利用して、トドロキ選手……残る二つのキビボールも、真っ二つにしたわ!!』
そう。キビダンボーラーが戻れと命じたその勢いとジュウベイの火力により、キビボールは2つとも真っ二つ。これでもう、ライトニング・キッドのシールドを破壊出来はすまい。
「ありがとう、トドロキ! さあっ、行きますよ……」
キッドは自分の体に思い切り光のマナをため込み……そして、それを弾けさせた。
「『聖霊光』!!」
「ま、負けた……」
「無念におじゃる……麿たちも、まだまだ……」
その一撃で、勝負はついた。二人ともその光をまともに食らい、地面にダウンしてしまったのだ。
『決まりましたーっ! 第一試合勝者は「牛若剣士トドロキ選手&天武の精霊ライトニング・キッド選手」ペアーッ!』
「いい試合でした」キッドはまずキビダンボーラーを助け起こしてから、そう言った。
「シルヴァー・グローリーを捨ててサムライになっている変わり者の予言者の噂、僕も聞いてましたよ。……楽しそうになさっていて、何よりです」
「それがしも、そなたのような面白い存在がいるなら、たまにはシルヴァー・グローリーに戻っても良いかのお」6つに分かれてしまったキビボールを拾い集めながら、キビダンボーラーは笑う。
「その際には麿も一緒に連れて行ってはくれんかの、キビダンボーラー殿」と、ヒゲマロ。「そなたと行く道中は、面白そうにおじゃる」
「ダークロードがシルヴァー・グローリーに旅すんだべかぁ!?」世間知らずのトドロキすら、それが当たり前のことでないということくらいは理解している。「あんたたち……本当に自由だべなぁ」
「勿論よ、それが麿らのサムライ道!」
『それでは、第二試合を始めます!』
アナウンスが響くとともに、トドロキたちはふわりと魔力によって浮かびあがり……会場わきのベンチへ。
『第二試合……「《不死火フウタ・ドラグーン》選手&《威牙忍ヤミカゼ・ドラグーン》選手」VS「《暖氷妖精カオルン》選手&《ノーダンディ・ネギオ》選手」! 「決闘」、スタートッ!』