Saga of Creatures〜Battle Galaxy~   作:hinoki08

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第七話

 

「ねえねえ、それにしても……」

 ブルー・コロシアムに集まった超獣たち……その中でも女性の超獣たちが、ひそかに色めき立っていた。

「かっこよくない!?」

「分かる……正直シャイン・コロシアムの方に行けなかったからこっち来たけど、あのイケメンの試合が見られるならラッキーだったかも……」

 

「フッ、私のことで話し合っているようだな、麗しきレディーたち」

 ノーダンディ・ネギオと呼ばれたネギのワイルド・ベジーズが自慢の鬚をくいと撫でながら照れ臭そうに笑った。その横に立つ雪だるまならぬ氷だるまのような選手……暖氷妖精カオルンが呆れたような溜息を吐く。

 ちなみにカオルンの種族は、メリッサと同じくスノーフェアリーである。スノーフェアリーはこの惑星でも類を見ないほど、雌雄によって体のつくりに差異のある種族。女性は人型だが男性はこのように、雪や氷でできた雪だるまのような姿の無機物体をしているのである。

「君には何が見えてるの、ほんと……なんでこんな変なテンションのやつが、僕のパートナー?」

 どう見てもあっちでしょ、あっち。カオルンはそう言いながら、対戦相手の方を指さした。

 

「フッ、見る目はあるじゃねえか、《こっち》の雌共もよ」

 その先に居るのは……不死火フウタ・ドラグーンと呼ばれたティラノ・ドレイクの選手。覆面で顔半分を隠してはいるが、その容貌はなるほど、騒がれるだけのことはある。

「何しろ俺は一族きってのイケメン。泣かせたクノイチは星の数……」

「そんな言葉を言いにここに来たのではないだろう、フウタ」

 もう一人、《威牙忍ヤミカゼ・ドラグーン》と呼ばれたティラノ・ドレイクも、なかなかの美形である。……明らかに周囲の黄色い声はこの二人に注がれているのだが、カオルンの隣に立つ能天気なネギはすっかり自分のダンディさに周囲が酔いしれていると勘違いしている様子であった。

「それにしても」カオルンは当たり前のように話し合う二人のティラノ・ドレイクを見て不思議に思う。

「貴方たち、初対面じゃないんですか……? このルール、パートナーは運営側から選ばれるはずなのに……」

「何……我らは手段を択ばない……ただそれだけさ」

 えっ? とカオルンが言わんとした時だった。

 フウタの体から炎が沸き上がり、カオルンの体を溶かしに、ネギオの体を燃やしにかかる。

「炎は、てめえらにとっちゃ何より効くだろ! 燃やし尽くしてやるぜ、ブサイクども!」

「なんで僕まで、ブサイク呼ばわりなんですかっ! 僕の《暖氷妖精》の異名……甘く見ないでください!」

 カオルンはすっとネギオをかばうように前に立ち、その氷の体をイグルーのように開いてみせた。とたんに、炎はそこに吸い込まれ……カオルンの体を溶かすでも、さりとてその冷気に飲み込まれ失速するでもなく、パアッ、とその中で幻想的に輝き、カオルン自身の力となる。

「面白い力を持っているな、我がパートナー!」ネギオがそれに感嘆した。

「炎は、僕には効きませんよ! この暖かな力、利用させてもらいます! 《フェアリー・ライフ》!」

 カオルンがフェアリー・ライフを詠唱。とたんにコロシアムに植物が沸き上がり、フウタとヤミカゼを襲った。

 ネギオもその中で、自慢のネギブレードを抜く。その鋭い切っ先が、ヤミカゼの体に追い打ちをかける。

「ほう、間抜けな見た目にしてはなかなかの剣裁き……」

「刻まないネギはタダのネギだ。刻んだネギもタダのネギだがな」ネギオはヤミカゼのその賛美に満足したように、キザに片手に持ったグラスを傾けた。「言ってる意味が分かりませんよ」と、カオルンの冷静な突っ込み。

 

『それにしても、この植物まみれになったフィールドは自然文明の二人には有利だ!』

『ノーダンディ・ネギオ選手の剣の乗りも、フェアリー・ライフのマナの力を受けて増大しているわ! この攻撃、受けきれるのかしら、イケメンコンビ!?』

 

「……さて」

 しかし……だ。ヤミカゼとフウタはその猛攻を受けれど、冷静な様子。

「そろそろ遊びは終わりにするか?」

「仕方ねーな……追い詰められてもかっこいい俺にも、もうちょい酔いたかったんだけどよ」

 

 彼らは襲い掛かる植物と斬撃の中、一つ印を結んだ。すると……信じられないことが起こった。

 

「うっ……!?」

「こ、これは……気分が、悪い……」

 

 突然その場に瘴気が立ち込め、カオルンの生やした植物たちが一気に枯れ果て、ネギオとカオルンも膝を折ったのだ。瘴気とはいえ……ヤミカゼ自身から発せられたものではない。

 

「ふん、たわいもない」

「なっ、何が……一体……」

 

『い、一体何が起こったのでしょう!? 誰にも、何もわからない!』

『いや……この状況、この武闘会で何回か似通ったようなことが起こっているぜ!』その場を切り裂いたのは、ショーの実況だった。

『予選第一回戦ルーキークラスDブロックをはじめ……たびたびこの戦国武闘会では、「謎の力」が働いている! ……まさか……今回も、それが起きたというのか!?』

 シャーマン・メリッサちゃん! と、ショーは慌てて告げる。

『今すぐ、先ほどの試合の解析を!』

 

「その必要は無い!」

 だが、ベンチから手を上げる姿があった。第三試合を控えていた……《魔光王機デ・アシス公》だった。

 

『魔光王機デ・アシス公選手……?』

「ほかの者はごまかせれど、この魔光騎士団の私の眼はごまかせぬぞ。たった今、私の目がとらえた。奴らは……何者かを召喚していた!」

 

「ええっ!?」と驚く周囲の観客たち。「な、なんの……」そんな中立ち上がる、ノーダンディ・ネギオの姿。

「何を召喚したのか知らんが……それでも、勝って見せる! これで勝たねば、真のダンディには成れんからな!」

 彼はもう一度ネギブレードを構えなおしフウタとヤミカゼに斬ってかかる。「ヤミカゼ、どうする?」とフウタが聞いた。

「仕方がない。こうなれば……開き直るとするか」

「ああ。『あちら』も……同じ考えらしいしな」

 

 ヤミカゼ・ドラグーンはパチンと指を鳴らした。すると……。

 

「威牙忍法! 弱者退散の術!」

 

 不意に彼らの前に亜空間が開き、そこから一人のダーク・モンスターが飛び出し、その身の瘴気をまき散らした。その瘴気を食らい、今度こそネギオは地面にひれふす。

 

『こっ、これは……』

『《威牙忍ヤミノザンジ》選手ーッ!?』

 

 そう、それは選手登録も済ませている、立派な一人の選手であった。

 それが、なぜか試合に割り込んできていた。どういう事だ。

 

『ショ、ショーさん!』

 その時だ。ショーのもとに、通信が入る。

『俺です、チョッキーです! た、ただいまヘビー級の試合にて、ハプニングが起こりました!』

 

 

 

「貴様……いかな術を使った!」

「この誠道場師範代たる我らの目が、欺けると思うなよ!」

 シャイン・コロシアムでそれ同様の「術」を使った者がいたのだ。それをとらえたのは、誠道場の師範代コンビ……ジオゴクトラと、ボルグゲンパクであった。

 

「貴様ら……エネルギーや能力の顕現ではない! 純然たるよそ者の超獣を、このコロシアムに召喚していたな!?」

「なぜだ、なぜ、この神聖なる戦国武闘会でそのような真似を! 貴様ら……何者だ!」

 

「ふん……ばれては、仕方がないか」

 そう開き直ったように言うのは、一人のポセイディア・ドラゴン。

『あわあわ、ショーさん、こんな時どうしたらいいんすか!』

『もーっ、慌ててどうするの、チョッキー! しっかりしてよ、君がここの責任者なんだよ!』

 チョッキーが、アシスタントを務めるエメラルド・モンスター《JKパーネイチャー》に叱られている間のことだった。そのポセイディア・ドラゴン……《斬隠蒼頭龍バイケン》という選手はふっと、倒れ伏した対戦相手の脇を横切り「貸せ」と、焦るチョッキーからラ・ウラ・ギガごとマイクを奪い去った。

 

「あっ、バイケン選手! 困ります、何を」

 チョッキーが慌てたのもつかの間……次の瞬間、チョッキーを弾き飛ばしたバイケンの放送がコロッセオ・シティ中に響き渡った。

 

『聞け、戦国武闘会の場に立つ者どもよ! 我らの名は影の存在、《シノビ》! 《斬隠》、《光牙》、《土隠》、《不知火》、《威牙》の名を背負いし我らは、この戦国武闘会を制するためやってきた!』

 

『バ、バイケン選手……』

 パーネイチャーの乗るラ・ウラ・ギガに拾われながら、チョッキーは言う。

 

『あっ、あの、他の超獣を召喚する力も、まさか、貴方たちが……』

『そうとも、これこそがシノビの秘儀……《ニンジャ・ストライク》!』バイケンの声が相も変わらずコロッセオ・シティにこだまする。

 

『我らは次元を移動し、仲間を手助けする! 教えてやろうか! 武闘会で起こっていた謎の現象、あれら全ては我々のニンジャ・ストライクによるものよ! 今まではこっそりと行ってはいたが……ばれてしまっては、しょうがない!』

『はっ……』しかし、チョッキーは言う。

 

『反則だよ、そんなの! 何言ってんだーっ!』

 

「そうだそうだ、何言ってんだーっ!」観客も、その言葉に沸き上がった。

「戦国武闘会を何だと思ってんだっ!」

「今すぐ、荷物まとめて帰りやがれーっ!」

 多大なブーイングが飛び交う中、バイケンは涼しい顔だ。

 

『ふん……では、聞こうか。この戦国武闘会とやらの意味は何だ? 戦争をするでもなく、政に関わるでもなく、ただ技を競い合うだけ……そんな平和ボケした戦いに、何の意味がある。教えてやろう。我々は、戦いとは何かを知らしめるため、ここに参った!』

 サムライよ、ナイトよ、聞け! バイケンは卑怯者、と称された存在にも似合わない凛然とした声で言い放つ。

 

『我らを卑怯と罵るならば……止めてみよ! 我らの力を……貴様らのその、平和ボケした「士道」をもってして!』

 

 

 その言葉に、会場の全てが言葉を失っていたときのことだった。「いーんじゃない?」……一つの声がその場に響き渡る。

 

「面白そうじゃん。ねえ実況。ニンジャ・ストライクって力はさ、もうルール上有りってことにしちゃわない? 僕たちそれでも……負ける気とか、全然してないし」

「ひっ!」チョッキーはその姿に震えあがった。

「あ、あなたは……」

 

 

 

『ト、トラブルだ! たった今、審議に入るぜ……観客の皆さん、少々、待ってくれ』

 その様子はブルー・コロシアムにいたショーたちの下へと届く。彼らは何やら、大会運営サイドの他の超獣たちと話し合っている様子であった。

 しかしそんな彼らの話し合いに、次々と……入ってくる声があった。

 

「……ふっ! なるほどな! かような卑怯者どもを、ただの反則負けで終わらせるのは、我々のサムライ道が許さない!」

「運営、早く試合を再開しろ! 騎士の戦いをもって奴らに武闘会とは何かを知らしめるまでは、この魔銃は下せぬ!」

 それはシャイン・コロシアムとブルー・コロシアムのサムライとナイトたち……いや、それにとどまらぬ、武闘会に集まった超獣たちの声であった。選手として参加していた者たちも、観客としてその試合を見ていた者たちも、みんな一様に、シャイン・コロシアムの「その」呼びかけに答えだしたのだ。

 その声を聴いて、ますます混迷を極める運営側の会議。……しかし、程なくしてショーは……実況チーフのみならず武闘会運営チーム最高責任者も務める彼はコホン、と咳ばらいを一つし、ブルー・コロシアムの実況者席で言い放った。……その声は、コロッセオ・シティ全域にアナウンスされる。

 

「たった今、ルール改訂が行われた……《シノビ》のニンジャ・ストライクの使用はルール上、ありとする!」

 勿論このようなことは前代未聞、戦国武闘会を長く愛し続けてきた俺としても本音を言えば許したくない! ショーはスピーチを続ける。

『しかし、だからこそこれには意味があると、我々戦国武闘会運営は判断する! 本当の戦いとは何たるかを今一度見つめなおし、真実はどこにあるのかを是非とも、各々の実力をもって証明してくれたまえ、武闘会の戦士たちよ……!! きっとそこにこそ、戦国武闘会の意義があるはずだ!』

 

 

「そう、来なくては!」

 立ち上がったのは、次の第三試合に出るサムライ、《花風の浪士ムネミツ》だ。

 この第三試合の次のシード枠には、先ほど言われていたシノビの5つの称号……《不知火》を冠せし、《不知火グレンマル》がいる。つまりこの勝負を勝ち抜いたものがまず、シノビと戦うという事。

「生憎だが」

 そして、第三試合のもう片方の選手も立ち上がる。先ほどの、魔光王機デ・アシス公だ。

「シノビを制するのは、ナイトの役目……野蛮なるサムライは、引っ込んでいるがいい」

「ふん、分からんぞ」

 

『それでは、まさかの大波乱となったが……このまま第三試合、行っちまおう! 「花風の浪士ムネミツ選手&《ポッポ・弥太郎・パッピー》選手」VS「魔光王機デ・アシス公選手&《烈空の使徒バグリス》選手」……「決闘」、スタートッ!』

 

「天魔を繋ぐは、我等が魔光!」

 デ・アシスは自分の魔銃に魔弾をチャージし、そしてあらん限りの声で叫び、気合を入れる。「世界よ、光と闇の黄昏に染まれ!」

 

 

 

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