Saga of Creatures〜Battle Galaxy~   作:hinoki08

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第八話

 

「大変なことになりまチたね!」

 コロッセオ・シティの片隅。ピーカプ・フィリッパ特製の小型モニターをのぞき込みながら、爆獣騎士団たちは言う。

「シノビ……とんでもねえ奴らが出てきたもんだぜ」冷静な声音で言ったのは爆獣のナンバー2、イナバ・ギーゼだ。

「あのテンサイ・ジャニットもシノビだったッチュね、フィリッパ」マチューがワッショイエクスプレスでの激闘を思い出しながら言う。「だからあんなにすごい空間移動術を使えたっチュか……」

「それにしても、ひどい奴らなんだな!」

 体を思い切りかがめて10人が使うモニターを一緒に眺めているのはジャイアントの、爆獣の超人。のんびりした声音ながらも、その声には確かに怒りが見て取れた。

「みんなが真剣に戦ってる武闘会で……こんなのって、無いんだな!」

「そうだッピ!」パプラ・プーラプラもそれに続いた。

「何、大したことはないさ」

 だがその場を凛とした若い声音が一気に引き締める。爆獣のリーダー、ヴァルアーサーの声だ。

「なるようになるさ。俺たちは、今自分にできることを一生懸命やっていればいいだけだ。シノビに当たったら……その時は俺たちの騎士道で、本当の戦いとは何かを教えてやればいいだけのことさ」

「リーダー……!」

「ほかのナイトの皆さんも、サムライのやつらも、きっと同じことを考えてるだろ? 俺たちも同じことをすれば、それでいいはずだ」

「まっ……それにこいつは、むしろチャンスかもしれねえな」イナバが軽く笑って言う。

「シノビたちを制すれば、おれたち爆獣騎士団の実力を知らしめることだってできるだろうからな」

「イナバ、お前ってやつは……そういうとこ、抜け目ないよな」

「くくっ、ヴァルアーサー、あんたがどうにも純粋すぎるんだよ」

 イナバにそう言われて、苦笑するヴァルアーサー。……しかし。そんなやり取りの行われている最中のことであった。

 

 

「……爆獣……騎士団……の……皆様……ですか?」

 

 

 ぼそぼそとした不自然な喋り声が、その場に響いた。それは爆獣の騎士達の頭の上から降ってくる。

 10人が慌ててその声に振り返ると……そこには、一人のドラゴンが立っていた。

 異常な姿だった。ドラゴンは……この惑星で最も強い力を誇る種族。

 なのに、そのドラゴンはなんとも……生命力というか、覇気というべきかの何かが無い。とにかく今にも立ち消えそうな、はかなげな雰囲気すら漂わせていた。その体は鎖で、封印でもされているかのように縛られて……極めつけには胸元にぐさりと、剣の形をした魔銃を突き刺されている。なんとも、異様な風体だ。

 

「そ、そうだが……」

「なんだ、うちに何の用だい、あんた?」うろたえるヴァルアーサーに変わって、聞くイナバ。

 

「申し……遅れました……わたくしは……《邪眼の使徒シーザー》と……申します……」

「邪眼!?」

 その名を聞いてまたぞろ緊張の走る爆獣騎士団の面々。間違いない、このドラゴン今、邪眼の名を名乗ったか? あの四名門の中でも一番の勢力を誇る、邪眼家。そしてヴァルアーサーが破ったアレクセイ候も所属している、あの家門の……。

 

「それは……失礼なことを」

 とりあえずも前に歩み出て、お辞儀をするヴァルアーサー。

「俺がリーダーの爆獣装甲ヴァルアーサーです。何の用でしょう……シーザーさん」

「ヴァルアーサー……さん……わたくしと……来ては、いただけ……ませんか……」

「えっ?」

「我らが主……」

 

 その時彼は、爆獣の面々にとって信じられない名前を出した。

 

「邪眼皇ロマノフⅠ世様が……お会い、したいと……申して、おります……」

 

 

 

『勝者、「花風の浪士ムネミツ選手&ポッポ・弥太郎・パッピー選手」ペアーっ! 見事な試合! 謎の存在シノビが現れてさえもなお、サムライの快進撃はとどまる所を知らずかぁーっ!?』

「くっ……ただものではないな、新一派のサムライ……」

 地面に膝をつきながら、「無念……お許しください、わが主よ……」とうめいたのはデ・アシス公であった。

「まさか、私のシールド・フォースも破られるとは……」続けざまに彼のパートナーであったイニシエート、バグリスもうめく。「あの剣と共に繰り広げられるパワーとスピードの両立、尋常ではない……」

「剣術はサイエンスにあらず」

 ムネミツと呼ばれたそのサムライのドリームメイトはパチン、と自分のクロスギアを鞘に納めてぼそりと一言、自分自身を激励するかのように言う。

「剣術とはアートなり……それが私の、サムライ道」

 

 そして彼は、ぎろりと睨み付ける。自分の次の試合……不知火グレンマルの属するペアを。

「教えてやろうぞ、シノビども。『新』なる精神と……我らのサムライ道を」

 

「あいつ、やる気満々だべな―っ!」

「ええ……花風の浪士ムネミツ選手、『新一派』に属するサムライですね」

 新一派。それはサムライの二大勢力のうちの一つであった。

 一つはサムライの源流、ボルメテウス・武者・ドラゴンの直系の子孫に率いられし『誠道場』。

 そしてもう一つが、自然文明のサムライを中心とした、武者の教えに捕らわれずもっと多大な道を模索しようという思想のもとに集まった『新一派』。

「そしてやる気満々と言えば……次の僕たちの対戦相手とて、そうですよ」ライトニング・キッドが指さした先に居るのは……次のトドロキたちの対戦相手、風来の股旅ビワノシン兄弟である。

「兄よ、やはり『新』は……一筋縄ではいかないにございまする」

「弟よ、だからこそ、見せつけるでございまする。『誠』の力を!」

 

「でも」

 トドロキには、しかしそれ以上に気になる存在がいるようだ。それは……パワーフォース・ドラグーン。

 そのパートナーの名は……《土隠風の化身(カイト・トーテム)》。つまり……シノビだ。

 そして先程から、パワーフォースはベンチで一人、難しい顔をしている。……よっぽど、不本意なのだろう。自分が、シノビなどと組まされたことが。

「パワーフォース、大丈夫だべか……」

 何か、いやな予感がトドロキにはしていた。

 

 

「サムライの快進撃は止まらない、か……」

 あのフェルナンドの圧倒的勝利をもってしても、なお、そう言われるか。「奴」が聞いたら、どんな思いをしたものだか。

 ふっと一つ、どういう感情とも知れぬ息を吐く「彼」のもとに届く声が一つ。

「ロマノフ……様……」

「シーザーか。待ちかねたぞ。……入るが良い」

 彼がそう言い放つとともに、闇文明の奥深く、邪眼家の館のそのまた奥深く、当主の間にあつらえられた禍々しい大扉がギイ、と音を立てて勝手に開いていく。そこに居るのは先ほどのシーザーと……その場の空気に圧倒されているかのように居心地悪げにたたずむヴァルアーサー。そしてその隣にはイナバ・ギーゼの姿もある。

 

 

『それにしても第四試合、混迷を極めているぜっ! 《鋭翼の化身(ブーメラン・トーテム)》選手と《命運の守護者ティオス》選手の息の根ぴったりの猛攻早くも相手ペアを負い詰めたかと思いきや……』

『攻撃が全く当たりません、《隠れんぼの達人コンコーン》選手に! それどころか両者、コンコーン選手を見失っているかのようだわ……こっ、これが「隠れんぼの達人」コンコーン選手のシールド・フォース能力ーッ!?』

 

 

「……ライト級の試合なんて、ご覧になるんですね」

 一番最初に口を開いたのは、イナバであった。フッとロマノフは面白そうに笑って、「シャイン・コロシアムの試合運びなどは、見ずともわかる故……暇つぶしにもならぬでな。何、無粋な真似をしたな」と、鏡に投影していた映像を消した。

「そなたらが、爆獣騎士団か。リーダーの爆獣装甲ヴァルアーサーと、そちらは?」

「……うちのナンバー2です。爆獣イナバ・ギーゼです」

「ヒューマノイドの腹心をドラゴノイドが務めるとは、つくづく時代も変わったものだ」ロマノフは赤い玉座に座りなおし、「ゆるりとせい」と、二人にも椅子をすすめる。

 邪眼皇ロマノフⅠ世。

 ダークロードでありながらドラゴン・ゾンビの血も引くその姿は……ヴァルアーサーたちよりも一回り大きい。座っていても、勝手に見下される。嫌……体格の差など無くとも、そのあふれる威厳はヴァルアーサーたちを圧倒するのに十分だった。

 

「……お初に、お目にかかります。改めまして……爆獣装甲ヴァルアーサーです」

「育ちの悪そうな輩と思っておったが、なかなかどうして礼儀というものをわきまえておるではないか」

 彼は緊張した様子のヴァルアーサーをその仮面の奥底の瞳……邪眼をもって見据えながら、「そう硬くならずとも好い」と言った。

「なにも、アレクセイの一件で貴様を呼び立てたわけではない……あれが貴様に敗北したは、あれの実力不足故。我々はむしろ、貴様らの実力を認めねばゆかぬ立場だ」

「そんな……俺たちには、勿体のないお言葉です」

「我々がまず貴様らに問いたいのはこうだ。貴様ら、『騎士団』を名乗っておる……何ゆえにだ?」

 

 

 

「ぐぬぬ……どこだ! 隠れんぼの達人コンコーン! 750男!」

「この開けたコロシアムの中で……まったく姿が見当たらない!? そんなことなどあるのか!?」

 鋭翼の化身、と呼ばれたミステリー・トーテムは翼をひらめかせ、次々にブーメラン状のバリアを生成。それをパートナーのガーディアン、命運の守護者ティオスも操り、二人そろってコンコーンとパートナーの750男に猛攻を仕掛けようとしていたものの……。なぜか彼らはさっきから、見当違いな方向ばかり攻撃し続けてしまう。

「大したシールド・フォース能力だな、おめえ!」

 ブルー・コロシアム中を駆け回り攻撃をよけ続ける750男は、自分の背に乗ったパートナーのコンコーン……赤くて薄い「シールド」に包まれた彼をそう称賛する。

「『相手の死角が必ずわかる』ってありゃ……マジだったんだな!」

「ぼっ、僕、怖がりだから……どこに隠れたら相手から見つからないか、分かっちゃうんだ」

「とにかくっ! 見つからなきゃ『シールド』が壊れることもねえ!」750男はさらにコンコーンの指示する方向へアクセル全開。

「攻撃は俺に任せな! このまま二人で勝ち抜けだ!」

 

 

 

「理由は……一概には言えません。ただ……俺たちは全員、ナイトを志しました」

 ロマノフの問いかけに、ヴァルアーサーは答える。

 四名家一の当主、戦国武闘会第一回から出場を続ける伝説のナイトのその威光の前にひれ伏しつつも……それでも、心の芯に燃える炎は絶やさぬといった面持ちで。

「何を捨てても、何を失っても、騎士の道こそ自分の生きる道だと信じて……俺たちは集まりました。四名家に入れずとも、それでも騎士になりたいという想いのもとに、俺たちは……自分たちで魔銃を作り魔弾を得て、爆獣騎士団を名乗りました」

「この1000年、貴様らのごとき存在は現れはしなかった」ロマノフは言葉を続ける。「騎士を志す者は居れど……魔弾と魔銃を我々の支持無くして得るなど、絶対に不可能であったはずだからな。まして貴様ら、魔銃はともかく、魔弾に関しては……この千年間我々四名家がいかに研究をこらせど不可能であった、火と自然のマナからできたものを操っておる」

 魔弾、それは、呪文を弾丸化したもの。

 そしてその生成には、実に複雑な魔術体系が絡んでくる。そのため魔弾化できるマナというものは、限られていた。

 闇と、光と、水文明のマナ。魔弾として生成され得るのはこの3つだけであるというのが、常識であったはずなのに……。

「……それは」

 だが、良い。意外にもロマノフは、そう言った。

「我はそこには、微塵の興味もない。1000年かけれど達成できなかったことが達成されたなら、喜ばしいことだ。それ以上に何の感情も持ち合わせはせぬ。ヴァルアーサー。……本題に入ろう」

 

 ロマノフは厳かな声で……ヴァルアーサーとイナバには、思ってもみなかったことを言い放つ。

「貴様ら、我々の支援を受ける気はないか?」

 

 

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