Saga of Creatures〜Battle Galaxy~   作:hinoki08

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第九話

 

「……それは、どういう意味でしょう」

「言葉通りの意味だ。このロマノフが、この邪眼家が……貴様らの後ろ盾についてやってもいいと言っておる」

 見ろ。彼はそう言い放ち、鏡に映像を投影した。

 維新の超人に、キヨマサ・コムソー。ベンケイに、ヴァルキリアス・ムサシ。そして、先ほどのムネミツ。

「サムライたちの快進撃がとどまる所を知らぬのは、否定のしようになき事実。我々『騎士』にも……同じほどに輝く実力者が、多ければ多いほどよい」

 ロマノフは玉座の上から、感情の読み取れない声でヴァルアーサーに告げる。

「貴様らの戦いぶりは気に入った。貴様らには……支援に値するだけの実力があると、我は判断する」

 どうだ? と、彼の言葉は続いていく。

「貴様らにとて、悪い話ではないはずだ。魔弾、魔銃の支援は勿論のこと……金銭的にも、一切の不自由はさせぬ。そして何より……この邪眼の後ろ盾をもってすれば、貴様らを我らが邪眼、魔光、天雷、氷牙に連なる5つ目の名門とする事とて、不可能ではない。こう言っては何だが……魔光、天雷、氷牙の者どもが、貴様らを認め、歓迎しておるとは思えぬ。下手をすれば貴様らは、奴らに始末されるとも知れぬ。だが、我々という後ろ盾さえあれば……その問題はすぐに消え去る。ヴァルアーサー、貴様とて爆獣を、五番目の騎士団としたかろう?」

 

 その言葉を聞いてヴァルアーザーはバイザーの奥の目を見開き、絶句している様子だった。まあ、無理はない、とロマノフも思う。いきなりこう言われてすぐに食いつく余裕があるほど、この目の前の青年は賤しくもなければ、老獪でもなかろう。

 だから少しの間沈黙が流れても、ロマノフが一切動揺するところではなかった。「……ありがたいお話しです。俺たちのような下賤のものに目をかけていただき、感謝の言葉もございません」ヴァルアーサーが漸く口を開く。

 だが、次の一言は……ロマノフを少しばかり、ほんの針の先ほどの少しばかりだが……それでも、動揺させた。

「ですが……そのお話は、お断りさせて頂きたく思います」

 

「ほう……それはまた、何故だ」

 無論のこと、ロマノフも大物中の大物。その言葉には動揺の色などは一切浮かばない。だがヴァルアーサーの方も……彼の言葉に臆せず、礼は失せぬ態度のまま、返答した。

「俺たちはある者は自己の力を高めるため、ある者は自己がより良き存在へなるため、騎士の道を志し、戦国武闘会へと参加しました。俺たちのような未熟者であればこそ、今は他者の力を借りるわけにはいかないのです。それがたとえ……誰よりも尊敬している貴方様のありがたきお言葉であっても、です。俺たちは自分たちの力で、自分たちを磨き上げてゆきたいのです」

 たとえ、魔光、天雷、氷牙に睨まれていたとしても……いや、だからこそ、と、彼の言葉は続く。

「貴方様という後ろ盾ではなく、実力をもってして証明しなくてはならないのです。俺たちも、一人一人の『騎士』であると」

「……ヴァルアーサー」それに静かに返答するロマノフ。

「機会を逃す戦士は、大成せぬぞ」

「お言葉を返すようですが」ヴァルアーサーも静かに言い返した。

「大成したくて、騎士を志したのではございません」

「……」ふっ、と、小さな笑い声がその場に響いたような気がした。

「貴様の方はどうなのだ、イナバ・ギーゼとか言ったな」ロマノフはイナバの方に視線をやり、そう問う。

「貴様は奴の腹心として、このヴァルアーサーの意見を正しいと思うのか?」

「ああ……そうですね、思いますよ」

「それはまた、なぜだ?」

「もしそのお言葉を聞いたのがおれだったら、身も世もなく飛びついていたでしょうけれど」と、イナバもイナバで、ロマノフに全く臆せずに言い放つ。

「そんなおれがトップだったら、あとの8人は絶対におれについてなんて来てないでしょうからね」

「……この邪眼の支援よりも、そのヴァルアーサーの判断の方が、チームにとって価値があるとみなすか」

「ええ」と即答するイナバ。

「損得が分からないナンバー2なんざ居ない方がましですが……みなを束ねるリーダーの意向を無視するナンバー2は、なおのこと居ない方がましですからね」

 その言葉を聞いた次の瞬間。

 フハハ、と今度こそロマノフは、声をあげて笑った。

 

「貴様らはどうやら、大成する方の戦士のようだ……面白い。余計に気に入ったぞ、爆獣騎士団」

 シーザー。ロマノフはじっと部屋の隅でやり取りを聞いていた、邪眼の使徒の名前を呼ぶ。

「用は済んだ。丁重に送り返すが良い」

「……承知……致し……ました……」

 シーザーはそう言って、多少面食らっている様子のヴァルアーサーたちに帰ることを促す。ヴァルアーサーとイナバは「失礼いたしました……」とお辞儀をし、当主の間から出ていった。

 

 

「これは本当に……どういった風の吹き回しかな、Ⅰ世」

 程なくして、当主の間の扉が再び開く。ヴァルアーサーたちの去ったそこに現れるのは、ロマノフに連なる邪眼家の四天王。

 

「あんなチンピラ風情を、支援ですと?」

 そう言うのはロマノフの息子にして、当主以外にただ一人《邪眼皇》を名乗ることを許された存在……《邪眼皇アレクサンドルⅢ世》。

 

「確かに、妙な魔弾は使うが……我らのレベルに達していると、本気で思っているのか?」

 そう問いかけるのは邪眼一族の一番家老、《大邪眼バルクライ王》。

 

「全くだ、Ⅰ世。お前の判断に従うとは言ったが……さすがにこればかりは、計り知れない」

 ロマノフⅡ世も、二人の言葉に続いた。

 

 だが、ロマノフ自身は少しもうろたえる様子を見せない。それどころか、くく、と余裕ぶった表情を浮かべ「では」と彼らに問いかける。

「この我の判断に逆らってみるか? この邪眼家で最も重要なのは、我の判断……あのドラゴノイドの方が、主従とは何たるか理解しておったぞ」

 そして、「お前はどうだ?」と彼は、最後の一人に問いかける。その最後の一人……禍々しき雰囲気を纏ったデーモン・コマンドは「そうですね……」と考えた。

 

「現状の情報ではなかなか……悪くないのではないですか、目の付け所としては。まあ……真に役に立つか否かは、奴らのこれからの実力次第ではありますが」

「なかなか話が分かるではないか……《ザビ・ミラ》」

 ロマノフは笑い、そのデーモン・コマンド《邪眼の祈祷師ザビ・ミラⅣ世》を褒めた。

 

 

 

『これにて決着! ライト級Cブロック、第二ラウンドへ赴く4ペアが決定したぞーっ!』

 ヘドロまみれになってあえなく地面に沈んで動かなくなった鋭翼の化身とティオスが、会場の魔力によって回収されていく。

 

 第二ラウンドはそれぞれ、シード枠との戦いとなる。第一回戦目は引き続き、トドロキ・キッドペアと……。

 

『風来の股旅ビワノシン兄弟選手ペア! 早速闘技場へっ!』

 

 会場のヘドロも一瞬で清められ、きれいになったブルー・コロシアムへふわりと持ち上げられるトドロキとキッド。その前に立つのは……。

「兄よ、行くでございまする!」

「弟よ、相手は片やあのアルカディアスの再現体、油断は禁物にございまするぞ!」

 予選第二回戦、キューティ・プリンセス争奪合戦を、まさかの方法で1位通過した枇杷のワイルド・ベジーズのサムライ、風来の股旅ビワノシン。

 

『いやー、あの勝ち抜け方は俺も意外だった!』その場に居合わせたショーも、彼らのことを紹介しつつ言う。

『あの際はあのような形での通過になったが……今回は彼らのサムライとしての戦いが、存分にみられることだろう!』

 

「そういって下さり、光栄でございまするな」

 黄色く食べごろに熟れた兄の頬がぽっと赤く熟す。

「あの二人は、兄弟なんだべか?」

「ええ。二人で一人の『風来の股旅ビワノシン』……特別にペア扱いで、このブロックにいるそうです」

「お二方! こと……そちらの、サムライの方!」

 ビシリと、ビワノシン達は二人そろって形よくお辞儀をした。

「ぜひとも戦士同士、サムライ同士、良き研鑽を積みましょうぞ!」

「あったりまえだべ! オラも負けんべ!」

『トドロキ選手にビワノシン選手、どっちも若きサムライ! って感じ! やる気満々ね!』メリッサがアナウンスすると共に……鐘を打ち鳴らす。ショーとメリッサは、声を合わせて言った。

 

『「決闘」、スタートッ!』

 

「行きまする!」

「先手必勝にございまする!」

 ビワノシン兄弟は果物を食べる楊枝のような形の短刀を抜き、素早くトドロキとキッドに向かって襲い掛かってくる。だがトドロキとキッドとて……先手必勝を狙うのは同じこと。

「ジュウベイ、ジェネレート!」

「シールド……リンク!」

 

『おおっと! トドロキ選手にライトニング・キッド選手、序盤から早くもやる気満々に出せるカードを切ってきたぜ!』

 

「手早くいきましょう!」

 キッドはその体に光のマナをチャージする。そして……聖霊光を放たんとした。

 

「兄よ、光の攻撃が来まする!」

「弟よ、よけるにございまする!」

 

「聖霊光!」

 そしてキッドがそう叫ぶ……ほんの、寸前の事だった。

 

「《覇翼フェアリー・アクセラー》、ジェネレートにございまするっ!」

 

 カッ、とその場に光が差した……かのように思えた。しかし、その光は地上にいるはずのビワノシンを貫くことはなかった。

「えっ……!?」

 キッドが驚いて彼らを探す。彼らは、地上にいない。

 では、一体どこに? 

「キッド、あぶねーべ! 上だべ、上!」

「上!?」

 キッドが気が付いた時……。

「まずは、一刀!」

「続いて、二刀!」

 キッドの体にまとわれた光のシールド目掛けて……「上空」からビワノシンが降ってきて、刀の斬撃をシールドに浴びせかけた。

「くっ……」

 シールド・フォース能力者の弱点を突かれて、ぐらつくキッド。慌てて上空を見れば、ビワノシン兄弟は手をつないでそれぞれ右翼、左翼のような翼型のクロスギアで空を飛んでいた。

 あれが、彼らのクロスギアか。

 

「貴方たち、飛べるのですね……」

「それだけではないでございまするぞ! フェアリー・アクセラーの力は!」

 ビワノシンが力をこめると同時に、地面からマナが沸き上がり……それは彼らの体と、そしてその短刀に注力されていく。

「キッド、シールドの力を失くしちゃならねーべ!」トドロキがキッドをかばうように前に出た。

「ここはオラに任せるべ! 行くべよっ! ジュウベイ!」

「弟よ、任せたでございまする!」

「受けて、立ちまする!」

 ビワノシン達も再び地上に降り立ち、青い弟の方がジュウベイの斬撃を受け止めた。ジュウベイとは全くリーチの差があるとは思えないほどに鋭く響く斬撃。……敵も、なかなかの使い手のようだ。

 ガツン、ガツンと刃と刃がぶつかり合う。そのすきにビワノシンの兄は……キッドの方へ向かっていった。

「させはしません……体勢を立て直すまでは!」

 キッドは光のマナの力を使って、バリアを生成。自分の体を包み込んだ。しかし、ビワノシンの兄は……それにも構わず、短刀をバリアに向かって突き立てる。

 ……何回でも振り下ろされる斬撃。しかし……そのうち、変化が見られ始めた。

 

『これは……どういったことかしら!? ビワノシン選手たちの短刀……まるで振るえば振るうほど、威力を増していっているみたいよ!』

 

 そうなのだ。やればやるほど……トドロキも、キッドのバリアも、押され気味になっていく。

 小さなはずの短刀が、明らかに力を増している。緑色のマナに包まれて、その小さなはずのリーチもなんのそのといった勢いで猛攻を続けてくる。

 これこそが彼らの纏う覇翼フェアリー・アクセラーの真骨頂。

「フェアリー・アクセラーはただ飛ぶための道具ではないにございまする!」

「武器を振るえば振るうだけ……使い手に力を与える存在にございまする!」

 

 戦いが長引けば長引くだけ、ビワノシンを強化させるという事か。然らば早く勝負を決めたいところだが……と、キッドは焦る。その時だ。

 バリン、と音が響き、とうとうキッドのバリアが破壊された。いけない、この上、シールドまで破壊されることが有ってはだめだ。

 キッドは翼を広げ空へ飛びあがる。なんとしても、アルカディアスの力のもととなっているシールドは死守せねばならない。先ほどの先手必勝の二撃で加えられたダメージは、まだ完全に回復し切ってはいないのだ。

 

「弟よ、飛んで逃げましたぞ!」

「兄よ、こちらも早く、決着をつけまする!」

 フェアリー・アクセラーは右翼と左翼だ。ビワノシン達は二人で一人の超獣らしく、二人そろわなくては飛べない。ビワノシンの兄の方だけでは、キッドを上空まで追いかけることは不可能だ。

「そうはさせません! 上空から、トドロキを援護させてもらいますよ!」

 キッドは飛びながらトドロキとビワノシン弟の方に向かって、聖霊光を放つ。しかしだ。

「その程度の光線ならば……すでにかき消せるでございまする!」

 ビワノシン兄が刀を一振りした。すると……大量のマナが集まりそれは緑色の大剣になっていく。

 そして言葉通りそれは聖霊光を……一刀両断した! 

「なっ……!」

『こっ、これは……すごいわ、ビワノシン選手! 仮にもあの伝説の聖霊王アルカディアスの力を再現したパワーを、不完全な状態とは言え一撃よ!』

 コンディションがまだ抜群ではないとはいえ、聖霊光をかき消されるとは……キッドがさらに焦り、早くシールドを再構成せねばとしたときのことだった。

 

「キッド」

 急に、トドロキの声が響く。何か……真剣な様相。

 先程から強化され続けるビワノシン弟と、互角の斬撃戦を繰り広げながら……彼は上空のキッドに向かって言う。

 

「落ち着くべ。オラ……分かっちまったかも知れねーべ、こいつらの弱点!」

 

 

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