Saga of Creatures〜Battle Galaxy~   作:hinoki08

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第十話

「……ほーう」

 ブルー・コロシアムの観客席。その片隅で、呟く声が一つ。

「ビワノシンの弱点をね……それが本当なら……なかなか成長したじゃねえか、トドロキ」

 彼は、大柄なヒューマノイドだった。まるで、龍の力をその身に宿しているかのような。

 

 

「弱点? 我らの!?」

「弟よ、慌てるなにございまする!」

 とりあえずも、キッドに空を飛ぶだけの体力回復を許してしまった今となっては、ビワノシン達も離れて1対1の戦いとはいかない。彼らは再び集まり、背中合わせになってそれぞれトドロキとキッドに向かい合う。

「我々は我々の最善を尽くすのみ! そして『誠』の力をあらわにすること! それが我々のサムライ道にございまする!」

 やっ! という掛け声とともに、ビワノシン兄弟は手をつなぎ、フェアリー・アクセラーの翼で上空に舞い上がり、まずはキッドに向かい合った。

「今度こそはそのシールド、粉々に破壊するにございまする!」

 彼らの言葉通り、今やこれだけのパワーを宿したあの刀なら、それも不可能ではないだろう……しかし、その時だ。トドロキの声が、地上からこだまする。

 

「キッド、左に逃げるべっ! そいで……左の、青い方を狙って光線を撃つべよっ! あんまりに沢山いっちゃだめだべ、一極集中で行くべっ!」

 彼はそう、早口でぺらぺらとまくし立てた。

 

「……分かりました!」

 しかしキッドの方も、なぜそんなに彼が分かるのか、と問うている余裕はない。一先ず彼はトドロキの指示通りに従ってみることにした。

 手をつないだビワノシン兄弟が二刀を携え迫りくる。それを……左に。そして……青い弟の方をめがけて、聖霊光を一極集中、レーザー状に飛ばした。

「くっ!」

「お、弟よ!」

 すると、だ。見事に聖霊光は、それを打ち落とさんとしたビワノシン達の斬撃をすり抜けて……代わりに、ビワノシン弟のフェアリー・アクセラーに直撃。バランスを崩した彼らは地上に落下し、慌てて受け身を取って態勢を立て直した。

 

『こ……これは、どういうことだ!? 牛若剣士トドロキ選手のあまりにも具体的すぎるアドバイス、見事に実を結んでいるぞーっ!』

『どうやら弱点が分かったってのは、はったりじゃなかったみたい! ……それにしても、なんで?』

 

「トドロキ! どうして……」

「キッド、シールドの回復は済んだべか!?」

「……ええ、おかげさまで!」

 そうだ。そうこうしている間に、ビワノシンに先手必勝で傷つけられたキッドのシールドも無事に再展開済み。「よかった、じゃ、降りてきてくれだべ!」とトドロキは言う。

「オラ一人であの二人を相手するのはつらかんべ、キッドも近接戦に参加してほしいべよ!」

「……分かりました、任せてください!」

 

「ぬうっ、油断をしたつもりにはないでございまするが……」

「見事に隙をつかれたにございまする……それにしても、なぜ……」

 

 そのビワノシンのうめき声を聞き、トドロキは言う。

「あんたらの攻撃……オラ、『見た』ことがあんべよ」

 

「なんですと!?」

「先ほどの動き……《シシオウ》兄ちゃんの動きにそっくりだったべなっ!」

 そういってトドロキはジュウベイを構えなおし、ビワノシンに果敢に向かっていく。

 慌ててビワノシン二人は息をそろえて、それをガード。それとともに再び刀は振られ、フェアリー・アクセラーの能力によって刀は勢いを増していく……はずであったが。

 防御から一転、攻撃に転じようとした瞬間……トドロキはひょいひょいと、それをかわして見せた。

 

『なぜだ、トドロキ選手!? ビワノシン選手たちの能力は着実に上がっているはずなのに……まるで彼らの力が増せば増すほど、それを見抜く目も上がっているかのようだっ!』

 

「だへへっ、大当たりだべ、ミラクル・ショー!」勝ち誇ったようにトドロキは笑う。

「そうだべ、ビワノシン! あんたらの攻撃、どんどん強くなっていけば行くほど……『先輩』たちのそれにそっくりになっていくべよっ!」

「先輩」? トドロキは、そう言ったろうか。ビワノシン兄弟にとって先輩と言えば、一つしかない。彼らの属する、誠道場の……。

 

「この斬撃の振るい方はっ!」アクロバティックに斬撃をかわしつつ、トドロキは言う。

「ボルグゲンパク師範代の技だべなっ! そっくりだけど、リーチが違うからよけやすかんべ!」

「な……何故、それを!?」ビワノシンはその言葉に、心底驚く。なぜ、自分たちと初対面であるはずの彼が、誠道場のことなどを……。

「キッド!」トドロキはさらにキッドに頼みごとをする。

「さっきと同じレーザー光を、今度は黄色い方のフェアリー・アクセラー目掛けて撃ってくれだべっ! 攻撃は絶対、オラが通させる!」

「分かりました!」

「させはしないでございまする!」

 堂々と相方のクロスギアを破壊する宣言をされて、青い弟の方も、黄色い兄の方も、勿論黙っているはずがない。彼らは太刀筋を変えて攻勢に転じてきたが……。

「今度は」

 またも、トドロキはそれを見抜く。

「ジオゴクトラ師範代の攻撃だべかっ! これも、そっくりだべなっ! でも……パワーが今一つ足りなかんべ、崩しやすいべよっ!」

 ジュウベイの炎が燃え盛り、とうとうビワノシン兄弟の斬撃は押し返された。それだけではない。

 そのすきにキッドが聖霊光を放ち、ビワノシン兄のフェアリー・アクセラーも焼き切れた。これで彼らのパワーアップも、もう打ち止めだ。

 

「ぬうっ……な、なぜ師範代の技までも見抜くでございまするかっ……」

「焦るなでございまする、弟よ! なるほど、これが、我々の弱点と仰いまするか……」

 

 

「そうそう。あいつら『誠』の名を背負うって気概はいいんだが」

 ブルー・コロシアムの観客席で「その」ヒューマノイドは面白そうに呟いた。

「そこで止まっちまってるのが玉に瑕というか、まだまだ未熟なところなんだよなぁ。片方は熟してるように見えるけどよ」

 

 

「なるほど……確かに、師範代や兄弟子たちの猿真似しかできぬは、我らの未熟の致すところ!」

「しかし、我々とてこれで終わりとはいかぬにございまする!」

 彼らは、マナ・エネルギーをため込むだけため込んだ刀をトドロキたちの方に向け、そしてがしり、と手をつなぐ。

「我々の知る……最高の攻撃で行きまする! この技、受けきれるにございまするかっ!?」

 そして彼らは……まるで一体化したかのようにぴったり息を合わせ、トドロキたちに突撃していった。

 

『風来の股旅ビワノシン選手、まさに二人で一人のコンビネーション! 動きそのものが一人の超獣のそれになったかのような身のこなしで、双刀を構え、突撃だぁーっ!』

 

「その二刀流……」

 そしてトドロキも、ジュウベイに精神を集中させる。

 

「《剣誠》師匠の技だべなっ! でも……」

 キッド、頼んだべ! 彼が言うとともに、キッドは「はい!」と言い、レーザーを飛ばす。

 そのレーザーが、マナでできたビワノシン達の刀の刀身を、ほんの少し……的確にえぐった。そしてそのわずかな隙をめがけ、トドロキはジュウベイをつかんで突撃していく。

「あくまでマナの刀、本物の刀じゃなかったのが幸いしたべ! さあ、トドロ斬ってやんべよっ!」

 そして次の瞬間。

 巨大化した刀身は雲散霧消し……二人で一人のように集まっていた彼らの刀は、まとめて弾き飛ばされ、くるくると空中に放物線を描き、ざくり、と地に落ちた。

 

 

 

『勝者、「牛若剣士トドロキ選手&天武の精霊ライトニング・キッド選手」ペアーッ!』

 

 意気揚々と実況が響く。「参りましたにございまする」「御見それいたしましたにございまする」と、ビワノシン達は頭を下げた。

「しかし、あなた……何故、誠道場のことを?」

「あー、オラ、ちっさいころ父ちゃんに連れられて誠道場にはよく遊びに行ってたべ! そん時、兄ちゃんたちや師範代たちに、よく稽古つけてもらってたべよっ!」

「ええっ!?」

 その言葉にさらに驚くビワノシン達。

「あなた、何者にございまするか……?」

「……? 別に、何者でもねーべ」ただトドロキは、その問いの意味が解らない様子であった。

「オラは、オラだべよっ! 牛若剣士トドロキだべっ!」

 

「そうそう」

「彼」は満足そうに笑う。

「それでいいんだぜ、さすがは、オレの息子」

 

 

『さあっ、それでは第二ラウンド第二回戦、いってみよう! まさかのまさか、ニンジャ・ストライクの使い手……「不死火フウタ・ドラグーン選手&威牙忍ヤミカゼ・ドラグーン選手」ペアに対するはっ! 「魔光人形ドンキノフ選手&《アングリーチャージ・ドラグーン》選手」ペアーッ!』

 

 

 

「何でチュって!? リーダー!?」

「ロマノフ様から支援をって言われて……さらにそれを断ってきたぁ!?」

 コロッセオ・シティの片隅で、リーダーの行く末を気にもんでいた爆獣の面々は、魔法陣が現れるとともに無事に帰還してきたヴァルアーサーとイナバの存在を喜ぶのもつかの間……そのどこをとってもまさかの報告に、8人そろって腰を抜かした。

「みんな、すまんな。バカなリーダーで」

「その馬鹿を止められなかったナンバー2で、こっちもすまねえな」

 そういって軽く笑うヴァルアーサーとイナバ。だが、爆獣の面々は……。

 

「ほーんとっ、バカだよっ! 参ったな、本来なら、笑い事じゃねえのによっ!」と、フィリッパ。

「でも、それでこそ……オレたちでチュね!」と、マチュー。

「そうなんだな、気持ちは嬉しいけど……みんなの力で、五番目の騎士団になりたいんだな!」と、爆獣の超人。……とにかくも、ヴァルアーサーのその判断をそしる者は一人としていなかった。

「でもよー。ロマノフ様もすげーよな」とダキテー・ドラグーン。

「本当……気にいらないとか、思わないのかな」とパンダ・ブーリン。

「これが、大物の余裕って奴なのですかね~」と、ブラッキー。

 ……そう和気あいあいと話す彼らを、邪眼の使徒シーザーは「わたくしには……わかり、ません……」と、戸惑ったように眺めていた。

「ロマノフ様の、御誘いは……あなた達に、とって……名誉では……ないのですか……」

「名誉ですよ、でもね」

 ヴァルアーサーはその言葉にやはり真っすぐな声で答える。

「実力をもって騎士として認められるってのは、俺たちの夢ですから。そこだけは、死んでも譲れません。たとえ最高に尊敬する騎士からの御誘いであっても」

「夢……」

 シーザーはパチパチと目を瞬かせて……そして、そのはかなげな声音で告げる。

「わたくし、は……ロマノフ様の……忠実なる魔銃……ロマノフ、様に……仇なす……者は……許しません、本来……で、あれば……しかし……」

 そして、その声音はなんだか……不思議なものであった。

「あなた方は……何故、でしょう……素敵なものに……見え、ます……」

 例えるならば、生まれたばかりのひな鳥のような、純真さすら感じさせるものでもあった。

「わたくしは……ロマノフ様に、仰せつかって……おります……あなた方と……ともに、あれと……」

 また、参ります……その言葉を最後に、邪眼の使徒シーザーはひとまず、立去っていった。

 

「え……あの人、またくるッピか?」

「なんか、不思議な人だねー? みんなもそう思わない? マグはそう思うー!」

「ああ……」

 イナバはその後姿をじっと見つめ、そして神妙な声で言った。

「変な奴だよ」

 

 

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