Saga of Creatures〜Battle Galaxy~ 作:hinoki08
ライト級タッグ・トーナメント。第2ラウンド第二試合は、早くも決着の時が来ていた。
最初のうちはまばらのように見えた観客席も、「その」雄姿に沸き返っている。
「ドンキノフ! やれーっ!」
「さすが魔光家のナイト──ッ!」
「シノビの卑怯者、とっととくたばりやがれーっ!」
「カカカッ! これぞ偉大なる吾輩に相応しき戦場! 我らが魔光大帝も、さぞお喜びになる事であろう!」
ニンジャ・ストライクを発動させ、仲間を呼んだフウタとヤミカゼ……だがその仲間ごと、ドンキノフの「ナイト・マジック」によって繰り出される二連攻撃が破ってみせたのだ。
それだけではない。
「くっ、ならば!」
ヤミカゼがパートナーのフウタ自身に術をかけ、その身に呪いを纏わせた。しかし……アングリーチャージ・ドラグーンはそれを全く恐れずに受け止めた。
「俺はなあ! 今、燃えに燃えてんだよ……てめえらへの、怒りの炎になぁ!」
呪いに身を蝕まれながらも、いや、蝕まれれば蝕まれるほどに勢いを増すかのごとき、アングリーチャ-ジの猛攻。そのすきに「おい、チビ人形!」と彼は言う。
「やれ!」
「無論である! 魔弾 デュアル・ザンジバル!」
ドンキノフもドンキノフで一切の躊躇もなく、デュアル・サンジバルの茨を沸き上がらせ、パートナーごとフウタと、ヤミカゼを襲う。
「ぐ、ぐぬぬ……茨にのまれてもカッコいいぜ、俺……」
「馬鹿な……我々が呪いの力で負けるなど……」
『勝者、「魔光人形ドンキノフ&アングリーチャージ・ドラグーン」ペアーっ! ニンジャ・ストライクの力、見事に破って見せたぞーっ!』
「無茶な戦いをするであるのぉ、しかしそれでこそ、吾輩のパートナーに相応しいというもの!」
ドンキノフは魔弾の魔力を解除し、呪いの茨の中からアングリーチャージを助け起こす。
「ほれ、次の試合はあのライトニング・キッドが雪辱戦を仕掛けてくるぞ! 吾輩のパートナーとして、まだまだ戦ってもらわなくては困るである!」
「言われなくとも……そのつもりだよ!」
「トドロキ! どうやら……僕の雪辱戦はかないそうですね!」
「わーっ、次はナイトとの戦いだべかぁ! 楽しみになってきたべ!」
「さすがだな、魔光家のナイト。しかし……」
そして、続く第三試合。花風の浪士ムネミツはゆらりと、パートナーの弥太郎を連れて立ち上がる。
「シノビどもの秘密は……我々こそが暴いて見せよう」
『第2ラウンド、第三回戦! 「不知火グレンマル選手&《封魔アルバラム》選手」VS! 「花風の浪士ムネミツ選手&ポッポ・弥太郎・パッピー選手」! 「決闘」スタートッ!」
ショーとメリッサの声とともに、「いざ!」と、ムネミツはその腰に携えた一対の武器を抜く。
「《炎刃イダテン・アクセラー》……ジェネレート!」
「なんだい、そんなちっぽけな奴!」
しかし、そのすらりと抜かれた刀身……小太刀と言って良いそれにグレンマルはひるむことなく、寧ろ挑発して見せた。続けて彼はパートナーであるアルバラムに「おい」と一言。
「お前みたいに物分かりいいのがパートナーで、ほんとに助かったぜ。守りは、お前に任せたかんな!」
「くくっ……もちろん!」
封魔アルバラム。グレンマルと共にパートナーになった彼だが……その彼の心中や、こうだった。「(むしろ、ラッキーかもしれねえ)」と。
「(シノビってのが何考えてるかは知ったこっちゃねぇけど……とにかく強いのは間違いねえんだから、こいつのサポートに徹して安全に勝ち抜け通過だ!)」
ムネミツは素早い動きでグレンマル目掛けて特攻を仕掛けていく。だがそれを……グレンマルはひょい、とアルバラムの背後に隠れるようによけた。
「シノビ、何してんだーっ!」
「パートナーを盾かなんかだと思ってんじゃねえだろうなーッ!」
「(盾でいいんだよ、俺は別に!)」アルバラムは飛んできた観客からのヤジに、声には出さねどひそかに反論した。
ともかくもだ。ムネミツの斬撃はそのままアルバラムを直撃。「チッ」と彼は舌打ちする。
「結構、やるじゃねえか。そんなちっぽけな刀で。けど……こいつは、どうだ!?」
シールド・リンク! と彼は叫ぶ。とたんに彼の周囲に、闇のマナの色をしたシールドが展開された。彼も、シールド・フォース能力の持ち主だ。
その能力は、身体強化。たちまちのうちにアルバラムの全身の筋肉は膨れ上がっていく。
『封魔アルバラム選手、シールド・フォースの力で物凄いムキムキ! これじゃライト級じゃなくて、ミドル級相当だわ!』
「なるほど……これは、なかなかの力」
ムネミツも、先ほどとは打って変わって頑丈になったアルバラムに斬撃を仕掛けながら、その硬さを称賛した。
ムネミツがシールドを攻撃しようとしても、その巨大化した体格で小柄なキツネのドリームメイトの体では妨害されてしまう。
パートナーの弥太郎も、上空を飛びながら火の粉を吐いてシールドを壊そうとするが……やはり、攻撃はなかなか通らない。アルバラムのシールド自体、なかなか頑丈だ。
「ケッ、俺は戦うのはちょっと自信がないが、防御力にはいささかばかり自信があってね!」アルバラムは息まいた。
「このパワーでパートナーを護ってやるぜ!」
「ほう……卑怯者の輩とは言えどパートナー、護るべき者は護るときたか? それとも……」
しかし……ムネミツもムネミツで、静かに問う。
「その卑怯さを借りてでも、この戦いを勝ち抜きたいと思ったか?」
「……っ、ぜ、前者に決まってんだろ、そんなもん!」
「そうか。ならば貴様は……尊敬に値する戦士だな」
ならば敬意を払わねばなるまい。
そう言うと共に、ふいにムネミツは刀を持ちかえ……そしてイダテン・アクセラーの刃がギラリ、と激しく輝いた。それと同時に……。
『こ、これは……何が起こった!? 花風の浪士ムネミツ選手、先ほどとは比べ物にならないスピードだ! 封魔アルバラム選手のシールド防衛も、追いついてはいないぞーっ!』
ムネミツの攻撃スピードが、一気に増した。
着実に削られていくアルバラムのシールドと、それを死守せんとする彼自身の体。「くっ……」彼はだんだん被弾していく自分の体のダメージに耐えながら、後ろで何事かをやっているグレンマルに対して内心業を煮やし始めた。
「(とっととやれよ! 何やってんだ!)」
「わりーな、ニンジャ・ストライクったって、準備が必要なんだよ! でも……もうすぐだ」
グレンマルの体は火のマナにあふれかえっている。そして、そのマナが集まり……突如としてそこには、亜空間が生まれる。ニンジャ・ストライクだ!
「出てきて、父ちゃん!」
「呼んだか、我が息子よおっ!」
そして亜空間から、超巨大なフレイム・モンスターが現れる。
『ニンジャ・ストライク! 助っ人登場だっ! やってきたのは《轟火シシガミグレンオー》選手―ッ!』
「不知火忍法……」彼はその前足で印を結ぶ。
「焦熱地獄!」
とたんにコロシアム中が火の海となり、ムネミツを襲った。だが、彼は……倒れなかった。
「なんと、これで倒れないとは……」
「(お……おい!)アルバラムも焦る。「(なんだよ、お前ら強いんじゃねーのか? 俺、そろそろ限界だぞ!)」
「アルバラム」
その時。ごうごうと炎が沸き起こる煩い中で、こそりとグレンマルはアルバラムに耳打ちした。
「やられた振りして、あいつからクロスギアを奪い取れ。あのギアが……奴を強化してる」
「わ、わかった……」
そして、次の斬撃が飛んできた瞬間。アルバラムはわざと、完全破壊された振りをしてシールドを解いた。
『アルバラム選手、ここにきてダウンかっ!?』
実況も騙されているようだ。大丈夫、まだ、問題ない……小さく縮んでいく自分の姿。ムネミツはその後ろのグレンマルに向かって進んでいく……いまだ!
「もらった!」
アルバラムは素早く動き、彼の手からイダテン・アクセラーを奪い取った。とたんに炎は、ムネミツに襲い掛かり、彼を焼き尽くす……。
はずであった。
その瞬間、上空がキラリ、と輝いた。
「なっ……?」
「……やはりか」
『何が起きたのかしら? ムネミツ選手、一瞬炎にのまれたかと思いきや……まったくの無傷だわーっ!』
それだけではない。
「なっ、しまった……」
シシガミグレンオーはなぜか……そんなタイミングで亜空間に吸い込まれるようにして帰っていく。
「見破ったり。ニンジャ・ストライクの弱点」ムネミツは声高々に言う。
「貴様らの仲間が数瞬しか現れないのは、何も我らの目を欺くためだけではなかったのだな。その亜空間の力で味方のもとに馳せ参ずるには……時間の限界があるようだ」
『かっ……』
ショーが思わず、感嘆する。
『花風の浪士ムネミツ選手、まさかのまさか! ニンジャ・ストライクの弱点を誰よりも早く見破ったーっ!』
「それだけではない」彼は言う。
「貴様がやはり……とるに足らない卑怯者であることも見破った」
「……っ、だから、どうした!」
アルバラムは再びシールドを生成。体を膨れ上がらせていく。
「勝ちゃいいんだよ、勝ちゃ! サムライのくせにクロスギアをみすみす取られるザコが、かっこつけてんじゃねえ!」
「……愚かな」
しかしだ。
アルバラムがシールドを張りなおしている間に彼は動き……その蹴りで、シールドを粉砕する。
そのショックで、思わずアルバラムは本気でうめき……その手から外れたイダテン・アクセラーは、待ってましたとばかりにムネミツの手中に納まった。
「貴様と、シノビどもの手口を見破るために一芝居うっただけだ。貴様の汚い手などに、わが魔導具を触れさせたくなどなかったわ」
そして次の瞬間。イダテン・アクセラーは再び煌めき……一瞬のうちにアルバラムを、そして……その後ろで慌てて反撃しようとしていたグレンマルを切り捨てた。
『勝者、「花風の浪士ムネミツ選手&ポッポ・弥太郎・パッピー選手」ペアーッ!』
「ムネミツ!」
ところでだ。
戦いの間中ずっと空を飛んでいたムネミツのパートナー……弥太郎が、地上に降りてきて言う。
「どうだッピか? 僕、『お役に立てた』ッピ?」
「ああ……『勿論』だ」
ただ飛んでたまに火の粉を飛ばしていただけのはずの彼に、ムネミツは告げる。『それにしても……』とメリッサが実況した。
『第一ラウンド、第二ラウンド共にポッポ・弥太郎・パッピー選手の戦闘力はいまだ不明……いったいどんな隠し玉が待ち構えているのかしら、このペアには?』
『何はともあれ、第四試合、このままいってみようっ!』
シシガミの業火で黒焦げになったスタジアムも、魔力の力で綺麗になっていく。それと同時にショーは告げる。
『第四試合! 「750男選手&隠れんぼの達人コンコーン選手」VS「パワーフォース・ドラグーン選手&土隠風の化身選手」!』
『「決闘」スタートッ!』