Saga of Creatures〜Battle Galaxy~   作:hinoki08

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第十二話

歓声に沸き返るシャイン・コロシアム。

「ナイト!」「ナイト!」というコールが鳴りやまない。「ぐぬぬ……」と歯噛みするのは、ジオゴクトラとボルグゲンパクのペアだ。

「悔しいが、さすがの実力……」

「はー……つまんない。《ヴィルジニア》ちゃんも、そう思うよねー?」

 そのナイトは魔銃をくるくる回し、余裕ぶった表情で嘆息して見せた。

「僕を止めたいんなら師範代レベルじゃなくて、《剣誠》本人を引っ張ってくるべきじゃないの……前大会ベスト8だからって、悠長に予選免除なんかしてる場合かなー」

 

 

 

「お……おいっ! 何、やってんだよ!」

「何って、決まっておるわいの!」

 第2ラウンド第四回戦……コンコーンは相変わらずシールド・フォース能力で750男と共にパワーフォースの攻撃をやり過ごそうとしていた。

 しかし、それもつかの間。パワーフォースのパートナーでえある土隠風の化身がニンジャ・ストライクを使い、出てきたシノビの選手が光線を放つとともに……750男の動きが止まってしまったのだ。

「儂のこの4つある顔の全てを使っても居場所がつかめないとは、敵ながら天晴じゃわいの」

「しかし、急に出てきた《ライデン》の死角までは、急には見抜けなかったようであるわいの」

「ライデン、ご苦労さまじゃったわいの」

 顔の4つある連凧のような姿の土隠風の化身の4つの口が次々に喋る。ニンジャ・ストライクの使用時間も終わり、その呼び出されたシノビ、《光牙忍ライデン》は亜空間へ立ち返っていく。

「く、くっそ……体が、動かねえ! おいっ、何やってんだ! 早く、おめえだけでも奴らの死角に入れって!」

「そっ……そんなこと、言ったって……ぼ、僕、怖くて腰が抜けちゃった……」

 750男のそばに隠れるようにしながらぶるぶると震えているコンコーン。今の彼のシールドを破壊してとどめを刺すことは、パワーフォースの力をもってすればたやすいことだろう。……しかし。パワーフォースはそれをしなかった。

 それは、なぜか。

 

「オイラ……言ったよな?! ニンジャ・ストライクの力は絶対に使うなって! オイラはそんな勝ち抜け方したくないんだよっ! 正々堂々戦って、1位通過したいんだっ!」

 

「何、言ってるわいの」

「甘いこと言うんじゃないわいの」

「勝った者が勝ちだわいの」

 しかし土隠風の化身はパワーフォースのその叫びを、軽くいなす。

 

「てめー……約束、破ったな!」

「お前さんがいかないんなら、儂がいくわいの」

 

 土隠風の化身は印を結び、空中にふわりと舞い上がった。その勢いで、怒りのままに振るわれたパワーフォースのボルシャック・パンチも空振りする。

「おお怖い。仲間割れはよくないわいの」

「遠慮せずニンジャ・ストライクの力に頼れ。望み通り、1位勝ち抜けさせてやるわいの」

「だからっ……」

 パワーフォースはそれでもなお、叫んだ、

 

「嫌なんだよ、そんな戦い方! オイラ……オイラ、こんな戦いをしに武闘会に来たんじゃねーやい!」

 

「喰らうんだわいの! 土隠忍法……疾風の陣!」

 その叫びは完全に無視され、土隠風の化身は風の力を纏って、コンコーンに突撃していった。「ヒ、ヒエエっ!」コンコーンは涙目になって、頭を庇う。……その時だ。

 

 

「てめーら、どいつもこいつも……俺のダチの試合を、何だと思ってやがんだぁっ!!」

 

 

 誰とて、予測していない影がそこに飛び出し、思い切り土隠風の化身を殴り飛ばした。

 

 

『ア……アングリーチャージ・ドラグーン選手! まさかの乱入だぁーっ!』

 誰もがポカンとあっけにとられていた中に、ショーの実況がこだまし、何が起こったのかを告げた。

 土隠風の化身は殴られた衝撃に戸惑ったまま、宙に舞い上がっている。

「アングリーチャージ……?」

「パワーフォース……! もう……こんな奴と組むの辞めろ! 俺だって、そんな戦いするテメーは見たくない!」

 

『これは意外だったぜ! あの二人のティラノ・ドレイク、親友だったのかーっ!?』

「なんと……」アングリーチャージ・ドラグーンのパートナーであるドンキノフも、その意外な展開に舌を巻いていた。

 コンコーンはびくびくしながらも「な、750男……」とパートナーに話しかけた。

「大丈夫? 体のしびれ……そろそろ、とれた?」

「ま、まあまあだな……お前の腰は?」

「ぼ、僕も大丈夫……いっ、今のうちに……逃げよう!」

 さりげなく750男とともに、彼らの死角に隠れようとするコンコーン。しかし……「てめーもてめーだ」アングリーチャージは言う。

「こそこそ逃げやがって……パワーフォースがどんな思いで、この戦国武闘会に初参加したと思ってやがんだよっ!」

 そう一気に言い放ったと思うと……コンコーンが逃げる暇もなく、アングリーチャージは彼のシールドを一瞬のうちに体当たりで粉砕して見せた。「う、うげぇっ……」と、倒れるコンコーン。

「もういい! 俺が、お前のパートナーになってやる! 一緒に戦おうぜ、パワーフォース!」

 

 だが……パワーフォースは倒れ伏したコンコーンと慌てる750男には構う事もなく、代わりに目の前の親友に向かって告げた。

 

「余計なこと、すんじゃねえよっ!」

 

「なっ!?」

「組むの辞めろってなんだよ! オイラだってシノビと組みたくなんかねえよ! でも……これが、この戦いのルールだろ! それでみんな、公平に戦ってんだ! なのにオイラだけこんなのになっても……オイラ、嬉しくなんてない! それに……」彼はコンコーンの方を指さす。「こんなの、ニンジャ・ストライクと同じだ! オイラ、それだけは……やってほしくなかった!」

 そして。彼は「おい、実況!」とショーとメリッサの方に向かって……言い放った。

 

「失格負け扱いにしろっ! オイラたちペアと……アングリーチャージのペアを!!」

 

 

『な、なんだって、パワーフォース・ドラグーン選手!?』

「言った通りだ! オイラ……こんな戦いをしに来たんじゃない! 助けを呼ばれるなんて、ごめんだっ! それに加担したアングリーチャージだって同罪だっ!」

「冗談じゃないわいの!」土隠風の化身は慌てる。

「パワーフォース!」アングリーチャージも、急いで言った。「俺はただ、お前のために……」

「そっ、それにだ!」

 戦いを終えてベンチに座っていた魔光王機デ・アシス公も発言した。

「仮に貴様と貴様のパートナーと、貴様の友人が卑怯だったとして……何故、アングリーチャージ・ドラグーンのパートナーである、我らが魔光の騎士ドンキノフまでもが失格扱いとならねばならぬのだ! 彼は全く無関係であろう!」

「……っ、それは……」

 しかしそれでも、パワーフォースは言葉を引っ込めない。

「パワーフォース……」その様子に、トドロキも息をのんでいた時のことだった。「カカカカッ!」……意外な笑い声が、その場を引き裂いた。

 

 

「なーに、デ・アシス公! 吾輩は構わんであるぞ、失格負けでも! 確かに我がパートナーがシノビたちと同じく卑怯な真似をしたことには変わらぬ、パートナーである吾輩にも、責任というものがある故な!」

『ドンキノフ選手……?』

「それにである!」

 ドンキノフは愛馬ロシナンテに乗りながら、ゆらゆらと二人のティラノ・ドレイクの方へ歩んでいく。

「最終的に卑怯な真似をしたとはいえ、それは友情のため……美しい友情を、この目で見せてもらったである! 吾輩は誇り高き偉大なる魔光の騎士、素晴らしきものが見れたなら、こんなことで一々勝ち負けなど気にせぬ! パワーフォースとやら! 我がパートナーのしたことが友情故と認め、それだけは許してくれるなら……このドンキノフ、パートナーとともに喜んで失格負けになろうぞ!」

 

「ド……」

 その言葉に、会場は一気に沸き返った。

「ドンキノフ! 漢だぜーっ!」

「さすがは、魔光のナイトーッ!」

「勝手にこんな真似……し……知らんぞ……《ネロ》様にどう思われても……」その傍らで震えるデ・アシス公であった。……それはさておき。パワーフォースはドンキノフの言葉を聞いて、初めて「……」と、静かになった。

 そして……彼は、手を差し出す。

「ごめん。アングリーチャージ。オイラのためにやってくれたことなんだよな……オイラ、言いすぎた」

「ああ……俺も、悪かったな。お前の気持ち、考えなくて……」

 そして、二人のティラノ・ドレイクは握手する。「一件落着であるのぉ!」とドンキノフは楽しそうに笑っていた。

 

「いや、儂は納得していないわいの!」

 上空からやっと降りてきた土隠風の化身が叫ぶ。

「何が反則負けじゃわいの! 儂はそんなこと、認めんわいの!」

『……ルール上、確かにこの場合、両ペアは反則負けだ!』

 そこに来てようやく、ショーも会話に入ってきた。

『ニンジャ・ストライクが認められているのは、あくまでシノビだけ……ほかの選手の乱入は、した側、された側共に反則負けとなる。よって……』

 

 ただいまをもって、パワーフォース・ドラグーン選手&土隠風の化身選手ペア、および魔光人形ドンキノフ選手&アングリーチャージ・ドラグーン選手ペアは、失格負けとなる! ショーの凛然としたアナウンスが、ブルー・コロシアムにこだました。

 

「トドロキ」

 パワーフォースは言う。

「わりーな。お前と戦えなくて……」

「……うん。しかたねーべ」しかし、トドロキも……笑って見せた。「自分を貫くパワーフォース、めちゃめちゃ、かっこよかったべよっ! オラとの戦いは、またいつでもできるべ、心配はなかんべ!」

「……ああ、そうだな!」

 

 

「あのー……」

 そんな中、入ってきた声があった。……コンコーンだ。

「えっと、その両ペアが反則負けってことは……トドロキ選手とライトニング・キッド選手、ムネミツ選手と弥太郎選手、そして僕たちが自動的に上位3ペアってことになりますか?」

『ええ? ……あー、そういえば、そうなるな』

 このルール、通過は上位3ペアだ。本来であれば決勝戦の前に第3位決定戦をやるはずであったのだが……。

 

「じゃっ、じゃあ、僕たちももう降参しまーす! ムネミツ選手たちとは、戦いません!」

 

「……いや、何言ってんだよ、おめえ!?」

「だだだだって! ムネミツ選手、怖いんだもん! 絶対強いじゃん! 無理無理! 僕、戦いたくないっ! 3位で通過できるんだからもういいでしょ、大丈夫じゃん!」

 そういって彼は後は750男の制止も聞かず、ぴゅうとどこから出したかもわからない白旗を振りながら、控室の方へと逃げて行ってしまった。

「……」当のムネミツは言葉を失っている。自分と同じキツネのドリームメイトの逃げる姿に。

「なんか……1周回って嫌いじゃねーな、その逃げることへの躊躇のなさ」

 750男は苦笑いした。

 

 

『えー……ハプニングに告ぐハプニングだが……仕方がない! 750男選手&隠れんぼの達人コンコーン選手ペアの3位通過、並びに棄権を認める!』

 

 と、言うことは。

 

『このまま、準決勝をすっ飛ばして、決勝戦だっ! 決勝戦は「牛若剣士トドロキ選手&天武の精霊ライトニング・キッド選手」VS「花風の浪士ムネミツ選手&ポッポ・弥太郎・パッピー選手」!』

 

 そしてそうアナウンスするショーの隣にいるメリッサが手をパンとならすと同時に、ブルー・コロシアムの中心に集まりやいのやいのとやっていた超獣たちは再びベンチに回収されていく。代わりに連れ出されるのは……名前を呼ばれた、その2ペア。

 

「まさかの展開ですね……トドロキ」

「ドンキノフと戦えなかったのは、ちょっと残念だったべな」

「ええ。でも……彼も立派な心の持ち主という事が分かりました。そんな相手に負けたなら、今一度、悔いはありません」

 

「何やら妙な展開での決勝戦となってしまったが」

 ムネミツもコホン、と咳ばらいをし、気合を入れなおす。

「我らは負けない……1位通過を果たして見せようぞ。行くぞ、我がパートナー!」

「了解だッピ!」

 

『それでは……戦国タッグ・トーナメントfeatライト級、決勝戦!』

 ショーとメリッサのアナウンスが二人そろって響く。

『「決闘」スタートッ!』

 

 

 

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