Saga of Creatures〜Battle Galaxy~   作:hinoki08

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第十三話

「ジュウベイ、ジェネレート!」

「シールド……リンク!」

 まず、トドロキとキッドはさっそくジュウベイに炎を灯らせ、シールドを張って聖霊王の力を顕現させる。ムネミツも、それに全く怯む様子は見せない。

「剣術はサイエンスにあらず。剣術とはアートなり」彼は自分の座右の銘を呟いて気合を入れつつ……バッと、着物をはだけながら一対のクロスギアを抜く。

「炎刃イダテン・アクセラー、ジェネレート!」

 そしてそれと同時に……パートナーの弥太郎はムネミツの合図とともに、他2試合と同じく、まずは高い上空へと飛びあがる。

 

「パートナーよ、まずはあの精霊のシールドからだ! 行くぞ!」

「了解だッピ!」

 

『ムネミツ選手、まずはライトニング・キッド選手のシールドを破りにかかったわっ!』

 メリッサの実況通り、ムネミツは迷い無くキッドのシールド目掛けて、まさに韋駄天のごとき走りで突進していく。しかし……それを、トドロキが見逃すはずもない。

 

「おおっと! キッドのシールドには、届かせんべっ!」

 ジュウベイが思い切り、イダテン・アクセラーと激突する。……何たることだ! 銀色に煌めくその小太刀、対峙してみて初めて分かった……本当にそのサイズにもみ合わないパワーで押してくる。短刀使いであるのはビワノシン達も同じことだったが……これは、それ以上だ。

「ほう……なかなかの火力だな」

 もっともムネミツにとっても、ジュウベイの火力は称賛に値するもののようであった様子。彼は身をひるがえして刀の握り方を変え……さらに素早い速度で、猛攻を仕掛けて来る。

 

『今んとこ、ムネミツ選手が優勢か? トドロキ選手、受けきるのが精いっぱいって感じの様相を呈してきているぜ!』

「安心してください……トドロキ!」

 しかしだ。彼は一人ではない。パートナー……ライトニング・キッドの聖霊光があるのだ。

「僕が遠距離からサポートします! 聖霊光!」

 レーザー状の聖霊光が飛んでくるしかし……その時だ。

 キッドのシールドにダメージが入り、聖霊光はそのタイミングで標準をわずかに外す。その隙に気付かぬムネミツではない。彼はひらりと、レーザーの攻撃をよけた。

 

『ここで、弥太郎選手の火炎弾がライトニング・キッド選手のシールドに炸裂したわ! 遠距離からでもシールドを傷つけるだけの力……遠距離サポートのパートナーという事なら、こっちのペアも負けてないみたい!』

 

「ムネミツ、サポートは僕に任せるッピよ!」

「……あなた方の今までの試合を見るに、あなた方はメインとサポートを完全に分けているようですね!」

 仕方がない! キッドは言い放ち、そしてレーザーの照準を弥太郎に向ける。

「ムネミツ選手は今一度、トドロキに任せます! トドロキ、それでも大丈夫ですか!?」

「おうだべっ!」

「では……行きます!!」

 キッドは翼を広げ、弥太郎のいる上空目掛けて舞上がる。しかしだ。そのタイミングで……弥太郎は自分のクロスギアをジェネレートした。

「〈炎装 ゴウエン・ブレード〉……ジェネレートだッピ!」

 それは炎に包まれた、高下駄のような形のクロスギア。そしてそれが弥太郎の両足に装着されたと同時に……彼の空を舞うスピードが2倍、3倍にも増す。

「くっ……速い!」

「このギアをつけた僕の速さにはかなわないッピよ! あんたの攻撃、すべてよけきって見せるッピ!」

 助太刀だッピ! と、弥太郎はキッドの隙をつき、トドロキにも火の粉を飛ばす。「うわっち!」トドロキはそれをまともに食らってしまった。……と、その隙に一気にムネミツは攻勢を決めてくる。

「貰った!」

 イダテン・アクセラーを構えたムネミツの本気の斬撃が、まともにトドロキを攻撃した。そして、次の瞬間……。

 

『ムッ……ムネミツ選手、小太刀の一撃でトドロキ選手をコロシアムの壁まで吹っ飛ばした―っ! なんというパワーだ!』

 

「トドロキ!」

「次こそ、奴のシールドだ!」

 そしてムネミツは自分もコロシアムの壁目掛けて走っていく。そしてそのまま……壁を足掛かりにしてジャンプ! 

「パートナーよ!」

「了解だッピ!」

 そして息ピッタリに、彼の背中を弥太郎が掴み、彼を超スピードで飛び回らせた。

 

『これは、ナイスコンビネーションだわっ! まさか飛べないムネミツ選手が、上空にいるライトニング・キッド選手を攻撃可能になるなんて! 決勝戦だけあって両ペア、本当に息の合い方が尋常じゃないわ!』

 

 そのあまりのコンビネーションに、観客席もどよめく。しかし、だ。キッドにとっては……。

「フフ……そうやってかかってくるなら、むしろ幸いですよ!」

 弥太郎がどこに飛び回るのだかわかったものではない状況では、光線の照準も合わない。しかし、今確実に、あの小太刀で自分を狙ってくると分かるなら……反撃をするのもまた、容易なことだ! 

 

「喰らいなさい……」

 キッドは光のマナの力を思い切りチャージする。そして……パッと発光する、彼の体。

「聖霊光!」

 衝撃が飛び散り、ムネミツを襲った。小柄なドリームメイトの体は、その衝撃波にのまれ、見えなくなっていく……。

 

「トドロキ!」

 キッドはまず地上に降りて、パートナーの安否を確かめようとした。

「だ、大丈夫だべ、キッド……」

「嗚呼、ものが言えるんですね、良かった……」

 

 しかしだ。トドロキの安全を確認したのもつかの間、キッドは……その彼の声が異常に切羽詰まっていることに気が付かされる。

「キッド! 後ろだべ、後ろ!」

「えっ!?」

 

 そして次の瞬間。

「剣術とは……アートなり」

 聞き覚えのある声が響くとともに、キッドは気付かされた。

 弥太郎の翼を離れたムネミツが、自分の背後を取っている……というよりも、自分の背中に乗っている。

 何故だ? あれほどの攻撃を浴びせたはずの彼が、まったくの無傷。いや……それよりもだ。しまった、反撃が間に合わない! 

 

 ガキン、と音が一発響くとともに、キッドのシールドは、粉々に粉砕された。

 

「かはっ……」

 うめき声をあげて、キッドは地上に落下していく。それと同時にムネミツもひらり、と地上に降り立つ。

 

「な、なぜ……あなたは確実に、やったはずなのに……」

「そうッピね……さすがは、聖霊王の力。結構……やばかったッピよ」

 そういってパタパタと彼の前に現れてきたのは……攻撃を定めていたはずでもないのに、流れ弾を食らったにしては異常に傷ついている、ポッポ・弥太郎・パッピーの姿であった。

 

『何が起こった!? 映像を……巻き戻してみるぜ!』

『こっ、これは……』メリッサが解析機器を見ながら声を上げる。

『聖霊光の攻撃は、全部、弥太郎選手に向かって吸い込まれていたわっ!』

 

「《セイバー》。……そういう力が、あるッピよ」

 弥太郎が飛びながら語る。

「文字通り、何かを護るための力だッピ。僕たちセイバーの能力者は……守るべき相手に向かってきた攻撃を、一身にその身に吸い寄せることができるッピ」

 

 

『……なんと! 今までの試合でもムネミツ選手があらゆる攻撃を食らいながらも無傷だったのは、こういうわけだったのかっ!』

「このトーナメント中その小さな体で、いくつの攻撃を受け止めてきたというの、弥太郎選手! 小さな体に見合わない、ド根性の持ち主過ぎるわっ!」

 

「大したことはないッピ」

 そうだ、その言葉が本当ならば、弥太郎はあらゆる攻撃からムネミツを守り通してきたはず。それをこの決勝戦まで全く顔色も変えずに耐えきってきたという事だ。小さな小鳥の体で……なんという、タフネスだ。それでも彼は、こともなげに言い放つ。

「僕は、セイバーの力を……サムライに捧ぐ事に決めたッピ。それが僕の、サムライ道だッピ!」

 

「パートナーよ。だが、今回ばかりは……ずいぶんと大きな攻撃を受け止めさせてしまった。礼を申そう」

 ムネミツはそう言い、倒れ伏すキッドにとどめをささんと歩み寄る。しかし……。

「キ、キッドには、手を出させんべよっ……」

 壁に叩きつけられていたトドロキが、ようやく復活した。

「ほう……まだ、やれるか」

「いくら来たって大丈夫だッピよ、僕もまだまだ、いけるッピ……」

 

「ジュウベイ、トドロ斬ってやんべよっ!」

『トドロキ選手、再びクロスギアに炎をためて攻撃よっ! ……ムネミツ選手も、小細工一切抜き! 真っ向から受け止めたわっ!』

「はっ!」という掛け声とともに、乱舞するかのように舞い散るムネミツの斬撃。弥太郎のセイバー能力を使わせるまでもないほど、それは確実にトドロキの斬撃を止める。

「すげーべな……お前の剣術、本当に芸術的だべ、隙がなかんべ」

「賛美にあずかり、光栄だな。お礼に今度は……壁では済まさんぞ」

 キッド! と斬撃戦を繰り広げながら、トドロキは言う。

「バリアを張って護るべっ! もう一人の方が、とどめを刺しに来たらあかんべっ!」

「わ、分かりました……」

 キッドは光のバリアを展開。急いで火の粉を出そうとした弥太郎の攻撃は、そのバリアによって防がれた。

「しかし、シールドは完全に壊されてしまいました……修復には相当、時間が……」

「キッド。何も、聖霊王の力だけが全てじゃなかんべ」

 トドロキはキッドの弱気な発言に……苛烈な斬撃戦をしている間とも思えぬ落ち着いた声音で言い放つ。

「『キッドの力』が必要になってくるタイミングが来るかもしれんべ、その時まで……持ちこたえていてほしいべよっ!」

 

「……!」

 その言葉に、キッドは今一度、息をのんだ。

 

 ──「ライトニング・キッド。お前は『聖霊王』におなり」

 ──「この聖霊王を無くした光文明の、希望になってくれ」

 ……ずっと、そう言われてきた。

 そう言われ続けて、この武闘会の門戸を叩いた。

 武闘会に来たのは……より、聖霊王に近しい存在になるためだった。

 ……それが、このサムライは。何という事を、言ってくれるのだろう。

 

「……分かり、ました……」

 

 

「ほう……なかなかに見上げた発言をするではないか。トドロキとやら」

 ガキン、と大きな音を立てて、イダテン・アクセラーから火花が飛び散る。まずい、この力では押し切られる! トドロキは身をひるがえし、バック宙をして間合いを取った。そしてその勢いで……えぐりこむ様に、ムネミツ目掛けて斬りかかる。

 炎の刃が、初めてイダテン・アクセラーの隙をついた。ムネミツに、斬撃が入った! ……しかし。

「忘れたか、我がパートナーの存在……」

 本当に、ムネミツの言った通りだ。

 与えたはずのダメージが、入っていない。キッドの聖霊光を受けた直後だというのに、弥太郎の方も、倒れる気配を見せない。相変わらず炎の高下駄とともに空を飛び回りながら……彼はトドロキにも火の粉の雨を降らせてくる。

「おまえ、タフすぎだべ……」

「ムネミツは守り切るッピよ! 僕のサムライ道にかけて!」

「しかし……私の斬撃を破るとは、貴様もなかなかやるではないか、トドロキ選手! それでは……」

 

 ムネミツはそう言い放ち、すっとトドロキから距離を取り、イダテン・アクセラーを握る手にグイと力を籠め、深く呼吸した。まるで……今一度、クロスギアに英気を養わせるためとでもいうように。

 

「今だからできる我がアート……主らにお見せしよう。頼む、我がパートナーよ!」

「あれをするッピね! 了解だッピ!」

 

 そういうと弥太郎は……ゴウエン・ブレードのジェネレートを解除した。そしてそれは、ムネミツの方へ放り投げられ……。

「炎装ゴウエン・ブレード……ジェネレート!」

 ムネミツは二つのクロスギアを身に着けた。そしてその高下駄の炎が舞い踊るとともに……ギラリ、とイダテン・アクセラーの輝きがさらに上がっていく。

「剣術とは、アートなり!」

 

 ムネムツは炎の高下駄を纏って今一度、思い切りトドロキから間合いを取る。かと思えば……猛スピードで、トドロキに向けて特攻してきた。

「なんの! 受けきって……」

 そして、トドロキがそれを受けきろうとした瞬間。

 今までとはくらべものにもならない速度、それに裏打ちされたパワーが、ジュウベイに一気に襲い掛かってきた。

 トドロキは、それを受けきることができなかった。いや、それどころか……。

 

『おおーっと、トドロキ選手、ムネミツ選手の超スピードの斬撃を前に、弾き飛ばされてしまったーッ! そ……それも、コロシアムの上空にーッ!』

 

 壁では済まさん。

 先程の言葉通り、ムネミツは……トドロキをコロシアムから弾き飛ばす勢いで斬撃を振るって見せたのだ。

 トドロキの小さな体はジュウベイごと、コロシアムから放り出され……。

 

「大丈夫、トドロキ……! 僕が、ついています!」

 

 だが、その時だった。コロシアムの上空が不意に煌めく。

「バリア、展開!」

 

 キッドがコロシアム全体を包み込むように、光のバリアを張ったのだ。トドロキはそれに阻まれて、護られる。

「ありがとうだべ、キッド!」

「なんの……聖霊王の力失くした僕が今できるのは、バリアを操る事だけですから」

「すげーべな、お前のスピード! 正直……めちゃめちゃ、効いたべよっ!」

 そしてトドロキは……思い切りそのバリアを蹴って、自分もジュウベイと共に加速しながらムネミツに向かってくる。

「オラも加速度をつけてやんべ! お互い……勝負だ!」

 

「だめだッピ! ムネミツは僕が守るッピ!」

 弥太郎が再びセイバー能力を発動……しようとした、その時だった。

「申し訳ありませんが、トドロキの邪魔はさせませんよ!」

 

 バリアが、今度は……弥太郎を「護る」ように展開された。

「ピッ!? しまった……!」

 

『こっ、これは……? ライトニング・キッド選手、バリアをあえて敵側に!』

『そ、そうか……これで弥太郎選手を攻撃から守る……すなわち、セイバー能力を発動させないことができるのか! すごいぞ、ライトニング・キッド選手! シールドをの力を失ってなお、ここまでやるとは!』

 

「パートナーよ……! だが、致し方なし!」

 ムネミツはイダテン・アクセラーを構えなおし、ゴウエン・ブレードで自分も加速度を最大限につける。

「行くぞ!」

「いざ! だべっ!」

 

 ブルー・コロシアムの真ん中で、二つの炎の刃がぶつかり合った。

 パワーは互角……かと思われた、その時だった。

 

「さあ、行くべよ……」

「何……!?」

 トドロキは息をすう、と吸い込む。そしてそれに呼応するかのように……ジュウベイの炎が、勢いを増す。

 それは、不思議な色の炎だった。

 あまりにも激しく、すべてを焼き焦がしそうなのに、どこか慈愛すら感じさせるかのような、神秘的な炎……。

 

 

「必殺! 轟斬り!!」

 

 

 彼がそう叫ぶと同時に、ジュウベイは一発、二発……目にも止まらぬ連撃を放つ。

 ムネミツは受けきろうとした。しかし……彼は目を見張る。何事だ。パワーが、格段に違う! 

 その動揺の隙を、トドロキは見逃さなかった。すっと業火に燃えるジュウベイは不意にイダテン・アクセラーの隙をつき……ムネミツを滅多切りにした! 

 

「ムネミツ!」弥太郎が叫んだ。そして……。

「キッド、今だべっ!」

「分かっています……バリア、解除!」

 弥太郎を包んでいたバリアが、突如解除される。セイバーの力によって、そのダメージは自動的に何発も、弥太郎の下へと……! 

 

「ピ……ピイイッ! なんだッピ、これ……今までとは、比べ物、に、ならないッピ……」

 

 何たることか。

 アルカディアスの力の再現まで耐えきるほどのタフネスを誇っていた弥太郎の体にも……ついに限界が訪れた。

 彼はパサリ、と上空から落ちる。そして、ムネミツも……。

「……見事なアート、見せてもらった」

 最後の一発が決まると同時に、彼の手からぽとりと力を失ったイダテン・アクセラーが離れた。それと同時に、ムネミツ自身も、地面に倒れ伏す。

 

 

『これにて決着! ライト級予選第三回戦、戦国タッグ・トーナメントfeatライト級、1位通過は「牛若剣士トドロキ選手&天武の精霊ライトニング・キッド選手」ペアーッ!』

 

 

 




※〈炎装 ゴウエン・ブレード〉は、《ファイアー・ブレード》をサムライ化したオリジナルクロスギアです
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