Saga of Creatures〜Battle Galaxy~   作:hinoki08

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第三話

『すごいっ! すごいぜバルガライザー選手! 圧倒的なパワーにスピード! それにそのクロスギアの力も合わさり……シーザー選手なすすべも無きままもはや敗北は目前かっ!?』

「まだまだだ……最後まで、気は抜かない! 行くぞ、私に力を貸してくれ〈竜装ファイナル・バルガアーマー〉!」

 バルガライザーの纏う黒い鎧。それこそが、彼のクロスギア。

 それが携える魔力は、ドラゴンの姿をしたオーラとして顕現し、次々にシーザーに襲い掛かる。バルガライザー自身もその刀で攻め立て、シーザーはその猛攻を受け、防戦一方だ。

 しかしそれでもバルガライザーは気を抜かない。……というよりも彼は、その防戦一方ぶりに半ば不信感を感じていた。

「(こ奴……そもそも今にも死にそうな風体をしておいて、ここまで予選を勝ち残ってきたきたのであろう? 何か、隠し玉があるに違いない……!)」

 だが、シーザーは反撃しない。

 体にぐさりと突き立てられた魔銃を抜くこともなく、バルガライザーの攻撃を「……」と無言のまま受け止め続けている。

「……貴様、いい加減にしないか!」とうとうバルガライザーも、言葉を発した。

「貴様もここまで来たからにはまったくの弱者ではなかろう、なぜ攻撃せん! そこまで私が戦いに値しない存在だと申すか!」

「……」

「……無口な奴め……」

 何を考えているのだか全くわかったものじゃない。バルガライザーは目の前のドラゴンに対してそのような感情を抱く。

 何にしても、もう倒しきってしまおう。彼が何を考えていようが、倒してしまえば問題はないのだ。

 大丈夫。自分は、自分の相棒は、負けない。

 バルガライザーは今一度ファイナル・バルガアーマーに念を込める。とたんにバルガライザー自身よりも巨大な龍のオーラが、その場へ顕現した。

「これで、終いだ……!」

 龍が火を噴き、バルガライザーの刀がシーザー目掛けて襲い掛かる。手ごたえはある。着実に、ダメージは蓄積されている。

 もう少し、あと少し……そしてあと一発。バルガザイラーがそう確信したときのことだった。シーザーがぼそりと、初めて口を開いた。

「そろそろ……です……ね……」

 

 

 ──「良いかシーザー。貴様にはまず、勝ち残ってもらわねばならない。それこそがこの『計画』のもっとも重要なところ」

 ──「何、負けるいわれなどない。そのためにお前をここまで育ててきた。お前の秘術さえあれば……どんな相手にも、敗北など喫する者か」

 

 とたんに、彼の体に刺さった魔銃が地面に受かって煌めいた。

 それは地面のエネルギーを吸収するように、おぞましい赤と黒のオーラを携える。そして……シーザーの体に生えた数本の管から、それと同じ色をした、鎖の形をしたエネルギーがほとばしった。

 あの剣だけではない。彼は……魔銃と一体化しているのか。バルガライザーが瞬時のうちにそれを悟った時のことだった。

 

「《憎悪と》……」

 何が起こったのか、とっさにバルガライザーに分かることはできなかった。

「《怒りの》……」

 だが、ほんの一瞬のうちに……まずは、ドラゴンのオーラが立ち消えた。

 続いて、自分の刃がパキリ、と砕けた。ファイナル・バルガアーマーの力が失われていった。

 ほんの、一瞬のことだった。

「《獄門》」

 そして、彼自身に与えたダメージが全部跳ね返ってくるかのような、圧倒的衝撃波がバルガライザーの身を襲った。

 そしてそれと同時にとどめのように発射される、一発の魔弾。クロスギアも、ドラゴンのオーラも失ったバルガライザーに、それを防ぐ術などとうになかった。

 たった一瞬。ほんの一瞬のうちにすべてを破壊しつくされ、バルガライザーは……地に沈んだ。

 

「……」

「しょ、勝者……邪眼の使徒シーザー選手―っ! なんと初出場のルーキーが、前大会ベスト16を倒すという大番狂わせ! サムライのスーパールーキーがヴァルキリアス・ムサシ選手なら……このシーザー選手こそ、ナイトのスーパールーキーかっ!?」

 ショーすらも、その言葉を言うのに若干戸惑う時間を必要とした。周囲の観客もだ。あれはなんだ? あれも……魔弾のうちだというのだろうか? 

 

「意外に、結構ヒリヒリする戦いしやがるんだな……あのシーザーとやら」

 そんな彼を観客席で見ている姿があった、爆獣のイナバ・ギーゼと、マチュー・スチュアート、そしてヴァルアーサーだった。

「すごい大逆転ッチュ……ただ変なひとってだけじゃないッチュ、実力もさすが邪眼家の家紋を背負っているだけあるッチュね……」

 マチューは開いた口が塞がらないといった様子だ。それを見てヴァルアーサーも「ああ……」という。

「攻撃を全部受けきったのも含めて、おそらく作戦の内だったんだろうな……シーザーさんの試合、イナバの言う通り、見にきておいてよかったかもしれない」

「……しかし、あの呪文……?」イナバは何やら、先ほどの光景に関して考え事をしているようだった。そんな中。マチューは一つのことに気が付いて「チュ?」と声を上げる。

「あれ、シーザーさん……こっちにちょっぴり手を振ってるッチュ?」

「……ばれてたのかよ、おれたちが見に来てること」

 

 

「(……爆獣の……方々……)」

 シーザーはその三人に少しだけ注目しながら、会場を去っていく。そんな彼に「やあ」と声をかける姿があった。

「シーザー選手。見事な逆転劇だったね、見ているこちらまではらはらしたよ」

「……ヴァルキリアス……ムサシ選手……ですか……。ありがとう……ございます」

「君と同じブロックでありながら、このルールでは直接戦えないのが惜しいところだな」ムサシはふっと嘆息する。

「スーパールーキーとして名前まで並べられたというのにね。君といつか当たることを楽しみにしても良いかい?」

「……もちろん。光栄……です……よ……私も……騎士の……端くれ……ですから……」

「そう言ってくれてありがとう! では、私は次の試合だからこれでね……いずれまた」

「はい……」

 救護班に担がれていくバルガライザーのいるコロシアムに向けて、ヴァルキリアス・ムサシは進んでいく。

 強いサムライだ。シーザーも知っている。なればこそ……いつかは戦うさだめかもしれない。なぜならば……。

「(全サムライ、の、オール・デリート……それが……ロマノフ様の、お望み……ロマノフ様が……わたくしに……望まれる……こと……)」

 

 

 

「ヴァルアーサーたち、まだ着かねえのかよ!?」

「どうしてもイナバがうるさかったんだよな、あのシーザーって奴の試合は見ておくべきだって」そう話し合っているのはダキテー・ドラグーンにピーカプ・フィリッパ。

 ここはシャイン・コロシアム。爆獣の大切な仲間の一人であるパンダ・ブーリンの試合が……もう、終わろうとしているところであった。

「仲間の試合を見届けるのとどっちが大事って話だよ! もう、終わっちまうぞ!」

「でも、得体のしれない人ですから……」そう口を出すのはブラッキー。「実際、何人かは見に行ってもよかったのかもしれません……」

「だからって、ヴァルアーサーを連れてく必要は無かったと思うッピけどね……」とパプラ。「リーダーに晴れ舞台を見てもらえないのは、ちょっとブーリンが可哀そうッピ。せめて大一番には間に合うといいッピけど」

 

「魔弾パンダフル・ライフ!」

『あーっと、爆獣の万能魔弾パンダフル・ライフが発動よ! 今度はパンダ・ブーリン選手、自分に向けて撃ったわ!』響く実況の声はメリッサのもの。

 ブーリンはパンダフル・ライフを自分に向けて詠唱し、その体を緑のマナに輝かせていく。そして……近接戦で勝負を決めようとかかってくる相手選手を、真っ向から受け止めた。

「全部できたら……やったぜ、ぶーりん!」

 その声とともに、ブーリンはすさまじい怪力で相手を持ち上げ、ずしん、と地面に落下させる。その鋭い衝撃で……シャイン・コロシアム中が轟いたようだった。

『な、なんていう衝撃! コロシアム全体が揺れたわよ! パンダ・ブーリン選手……ミドル級にも似合わないその怪力! 見事、第五試合を制したわ!』

 

「ブーリン、やったな!」

 その聞き覚えのある声に、爆獣騎士団の一同はほっと一安心する。

「よかった、間に合ったッチュ!」

「マチュー、イナバ、リーダー!」マグヌスグレンオーが振り返った。

「みたみたー!? ブーリンのカッコよさ!」

「なんとか、ギリギリな。……間に合ってなくっても奴の馬鹿力でコロシアムが揺れりゃ、分かると思うぜ」と、イナバ。

「みんな、イナバをあまり責めないでやってくれよ。奴の言う通り、シーザーさんの試合、見る価値のあるものだった……」

 ヴァルアーサーがそう皆をなだめるように言ったときのことだった。そんな彼の声音を、高らかな声が遮る。

『それでは第六試合行きましょう! まずは東コーナー……』

 実況のメリッサのものだ。当然第五試合が終わったのだから、第六試合の実況に入るわけだ。

 だが、しかし。ヴァルアーサーはその声と共に「ん?」と自分で言葉を遮らせた。そして「……」と、彼は一気に無言になる。

「リーダー?」

「ヴァルアーサー?」

「どうしたッピ?」

 

「あの……人……!!」

 

 

 

「ふー、終わった終わった! ラ・ウラ・ギガ63号ちゃん、お疲れ様!」

「お疲れ様です。シャーマン・メリッサ」

 シャイン・コロシアムでの全試合は無事終了し、観客も帰っていった。実況担当だったメリッサもいそいそと帰らんとする。

「さっ! 早くトドロキたちに会いに行こ!」

 しかし、そうしてシャイン・コロシアムを彼女が出ようとした矢先のことだった……バタバタとした足音が聞こえてくる。「あら?」と彼女が振り返ると、そこには。

「爆獣装甲ヴァルアーサー選手?」

 ……と、そのあとを「おい! どうしたヴァルアーサー!」と言いながら追いかけてくる、数名の超獣の姿。

 あんなに急いで、何の用かしら。と彼女は内心首をかしげる。そしてその疑問を、当然口に出す。

「こんにちは。何か、ご用かしら……」

「あっ、あの! あなた、シャーマン・メリッサさん、ですね……」

「はい、そうですけど?」

 次の瞬間だった。

 ヴァルアーサーはメリッサの前に跪き、彼女の手をやにわに握ってこう言った。

 

「ここであなたに会えたのは運命だっ! 俺と、結婚してくださいっ!」

 

 

「……」

「……」

 しばらくの間、その場に沈黙が流れた後。

「いや、テメー初対面の相手に急に何言ってんだヴァルアーサァァァッ!!」

 ピーカプ・フィリッパのハンマー型魔銃の一撃が、ヴァルアーサーの頭を直撃した。

「すまんお嬢さん! なんかこいつ、頭に血が上ってるみたいだ! 俺らの方で処分しとくから!」

「違うフィリッパ話せばわかるんだ! メリッサさん、俺の話を……!」

「あの……えーと、ピーカプ・フィリッパ選手の言う通り、あたしたち、初対面よね? いきなりそういうこと言われても、困るんだけど……」

 当然の反応をする彼女に、ヴァルアーサーは「メ、メリッサ、さん……?」と返す。しかし「それに……」と、殴られた衝撃で離された手を急いで引っ込めながら、二の句はつがせまいとばかりにメリッサは言葉を続けた。

「あなた達……確かナイトになりたいのよね」

「そうですが……」

「あたし、どっちかって言うと……」小さく嘆息するメリッサ。

 

「ナイトって、嫌いなのよね」

 

「め、めりっささん……」

「じゃ、あたし行くところあるから、これでっ!」

 そのまま魔力で浮遊結晶を作り出してそれに飛び乗り、うなだれるヴァルアーサーを置いてメリッサは一人シャイン・コロシアムの外に向かって飛び去っていく。

 

「……」

 またぞろ流れる無言の時間。爆獣騎士団が突然奇行をかましたリーダーにどんな言葉をかけていいものだか迷っていた中、いち早く自分なりにその答えを見つけたのはイナバ・ギーゼだった。

「結構な振られ方したな……ドンマイ」

 彼はそう言ってヴァルアーサーの方にポンと手を置いた。

 

 

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