Saga of Creatures〜Battle Galaxy~   作:hinoki08

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第四話

「うーむ」

 思わず感嘆の声を漏らしたのはヴァルキリアス・ムサシだ。

「シーザー選手も素晴らしかったが……彼もやはり、さすがのパワーだ」

 

『おおっ! すごいぞ! 《緑神龍ディルガベジーダ》選手! 純然たる圧倒的パワーで勝負するファイトスタイルながら……相手の力を抑制する魔力を持った《光神龍ラル・アブゾーバー》選手を前に、なおも頑として引かないその力!』

 

「くっ……」と呻くのは一人のアポロニア・ドラゴン。先ほど名を呼ばれたラル・アブゾーバーだ。

「この私の魔力の前には、ただの力押しなど無力のはず! それなのに……」

「無力だと? 私のパワーを……パワーにかける情熱をなめるな」

 そしてそれに答えるのは、一人のアース・ドラゴン。その角に刻まれた紋は……世界を救った英雄武者・ドラゴンと同じもの。

 

「このクズが! スケールが違うわ!」

 

 彼がそう咆哮すると同時に、4つのエネルギー弾が彼の体から湧き上がる。そしてそれは寄り集まって強大なるたった一つのエネルギー弾となり、ラル・アブゾーバーを直撃した。

 先方も慌ててその魔力をもって防御しようとする。だがそれは……間に合わない。その圧倒的パワーの前に、とうとうアブゾーバーの魔力は押し負けた。

 

 次の瞬間、金色のアポロニア・ドラゴンの鱗がバラバラに砕け、ラル・アブゾーバーは物言わず地に沈んだ。

 

『文句なしっ! 第三試合を制したのは緑神龍ディルガベジーダ選手──ッ! 惑星一のパワー自慢、優勝候補の一角の名や流石だぜーっ!』

「ふん、優勝候補か……悪くはないな」

 ショーの実況を聞き、ディルガベジーダは満足げに笑う。

「全大会ではベスト8こそ逃したものの……今大会ではクズどもを蹴散らし勝ち進んで見せよう! 決勝戦までを……この私の、すべてを圧倒するパワーを持ってな!!」

 そして……と、彼は思う。

「(見せつけるのだ、「兄上」に……武者宗家を捨ててでも歩むの決めた、私の道をな!!)」

 

「あれほどのパワー……まともにぶつかり合っては、私でも勝ち目がないかもしれないな」その傍ら。試合を見ていたヴァルキリアス・ムサシも、一人こそりと楽しそうに笑っている。

「どうやったものだろう……今から、当たるのが楽しみだ!」

 

 

 

「ひえー、どいつもこいつも凄いべなっ!」

「ああ。シノビどもも登場して……ナイトの勢力も活気づいてきやがった」

 コロッセオ・シティの一角。ラジオで各試合の様子を聞いているのはトドロキとベンケイであった。

「にしても、メリッサ姉ちゃんちょっぴり遅いべな」

「確かに。もうシャイン・コロシアムの試合はとっくに終わってるはずだよな」

 ま、ゆっくり待とうぜ。ベンケイがそう言ったときの音だった。

 

「ふがいない……《鍛冶の行商(ブルスミス・マーチャント)》」

「なーに、こんくらい、すぐに直せるさぁ」

 そんな声が後ろから聞こえた。その名前にベンケイは「おっ?」と反応し、首を180度後ろにグルリとむける。

「ブルスミス! おめえも、コロッセオ・シティに来てたのか」

「あー? よく見りゃベンケイじゃねえか! 久しぶりだな!」

 そう答えたのはいくつかのクロスギアの入った大きな箱を背負った、牛のビーストフォーク。そしてその隣には一人のドラゴン。それも……。

「隣にいるのは……流星バルガライザー選手か? ついさっきまでダーク・コロシアムで戦ってた……」

「そうさぁ! 彼にあげたファイナル・バルガアーマーが壊れちまったって言うから、修理してやろうと思ってねぇ!」

「ベンケイ、知り合いだべか?」

「おう。お前のとこに来るまで旅をしてた時、ちっと一緒に旅した仲でな、クロスギアの行商人で、修復職人でもあるんだ」

「坊ちゃんはもう良い相棒がいるみたいだが、壊れたら俺に言いなぁ! ベンケイの知り合いならタダで修理してやるからさぁ!」

 

 ……と、さらにそこに現れる姿がある。

「鍛冶の行商殿! 我々のクロスギアの修繕は終わったにございまするか!?」

「ややっ、兄よ! トドロキ殿もいるにございまする! それにあれは……流星バルガライザー選手にございまする!」

 風来の股旅ビワノシン達だ。彼らはトドロキとベンケイにぴょこりとお辞儀をしたのち、いそいそと鍛冶の行商の下へ向かう。

「おっ、ビワノシンたちまで! フェアリー・アクセラーの修繕だねぇ、すぐに終わったよぉ、ほれっ!」

「ありがとうにございまする!」

「さすがの御手前にございまする!」

「なーに、このくらいお茶の子さいさいだよぉ!!」

 

 カラカラと威勢のいい声で笑う鍛冶の行商。だが彼らの明るさとは裏腹に……流星バルガライザーの方はしょぼくれている。

 無理もない。ただでさえ予選落ちすれば悲しいのも道理だ。しかも前大会ベスト16が初出場のルーキーに負けたのだからなおのことであるだろう。それも……サムライとしての初舞台で、だ。

 

「そう気をおとすなよぉ、バルガライザー」鍛冶の行商は改めて、バルガライザーに向かい合った。

「私は……私は、情けないのだ。そして……誰に対しても申し訳ない」彼は体を震わせながら、鍛冶の行商に向かって語る。

「私をサムライの道に導いてくれた紫電殿にも……クロスギアを与えてくれたあなたにも……そして私の相棒として戦ってくれたファイナル・バルガアーマーにも、申し訳が立たたない。この私が無様に、予選落ちなど……」

「……少なくとも俺に関しては、そう思ってくれなくても良いよぉ。俺は何とも思ってないから。負けなんて、誰にでもあることさぁ」鍛冶の行商はそんな彼を刺激しないようにか、低くも優しい声で告げる。

「それにね、予選落ちは残念だが……俺は少し、嬉しくもあるよぉ。つまり、サムライとしてのあんたが……自分の敗北をクロスギアに対して申し訳ないって思ってくれたこと……敗北をファイナル・バルガアーマーのせいにしねぇでいてくれたことがね」

「鍛冶の行商……」

「俺もこんな生業だから、いっぱい色んなサムライを志す者に会ってきたよぉ。皆、クロスギアへの接し方はそれぞれだった。でも……クロスギアを大事にする奴ほど、どんどん強いサムライになっていく。それだけは変わらねぇよぉ。だから……あんたも、きっと大丈夫だ」

 小さなビーストフォークの手が、大きなドラゴンの体をポンとなでる。しかし不思議に、それは親が子を撫でるかのようで、二人の大きさがまるで逆転してしまったような手つきであった。

「くじけちゃだめだよぉ。あんたのサムライ道は、これから始まったばっかなんだから」

 

「相変わらずだなぁ、ブルスミス」ベンケイが言う。

「なーに。俺だって武闘会で戦いこそしなくたって、こうしてクロスギアに携わる者として、サムライの端くれだからねぇ。一人でも多くの素晴らしいサムライを導くことこそ、武器商人としての俺のサムライ道さぁ」

「トドロキ、今の話はよっく覚えとけよ」ベンケイは言う。

「オレからも断言する。強くなるのは、武器を粗末に扱わない奴だ。自分の負けを、武器のせいにはしねえ奴だ。オレも……おまえとジュウベイには、そんな関係でいて欲しい」

「うん、分かったべ!」

 トドロキは鍛冶の行商が受け取ったファイナル・バルガアーマーと、そして自分のジュウベイを交互に見て……そしてこくり、とうなずいた。

「兄よ……素晴らしいでございまするな」

「弟よ、我々も決して、忘れてはいけないにございまする。今聞いたことを」

 ビワノシン達も、新品同様になったフェアリー・アクセラーをぎゅっとその小さな胸に抱いて、今一度決意を新たにしたようだった。そんな彼ら、若いサムライたちを見て「君たちの前途にも、幸がありそうだねぇ」と、まるで自分自身に幸せが降り注いだかのように鍛冶の行商も笑った。

 

 

 

「ほーんとうに、おんしゃぁ油断しぃぜよ! だからあんなナイト如きに二人がかりで負けるんぜよっ!」

「なんだと!? 貴様に言われる筋合いなどないわ! 貴様こそ、ギリギリの戦いをしていたくせに!」

「なんとでも言うぜよ! 予選落ちがっ!」

 ……と、その時だ。

 突如、響いた巨大すぎる声がある。振り向けば、コロシアムよりも大きいジャイアントの姿。……維新の超人と戊辰の超人が、コロッセオ・シティのど真ん中で言い争いをしているところであった。

「ひ、戊辰兄様(あにさま?)」

「えらいこっちゃでございまする! 維新の超人殿と戊辰兄様は、顔さえ合わせりゃ喧嘩ばっかりでございまする!」

 

「なっ、予選落ち……」

 その言葉を聞いて戊辰の超人の体に、緑色のマナが集まっていく。ただでさえコロシアムよりも巨大な彼の体が、ジャイアントとして本格的なサイズに膨れ上がっていく。

「貴様ぁ! 今一番私に言ってはいけないことを言ったな!」

「事実を言っただけぜよっ! 甘ったれの誠道場門下生にゃあきつすぎたかぜよ!?」

「おのれ……私だけではなく道場に対してまで! そちらこそ景虎の教えをないがしろにする者、里が知れるわ! 今すぐその口塞いでやる!」

「面白い! 武器のねえおんし如き、オレもイナズマ・カブト無しでも十分ぜよっ!」

 売り言葉に買い言葉の応酬、維新の超人までもその体にエネルギーをため込み、巨大化していく。

 コロッセオ・シティの雑踏は突如として始まらんとしたジャイアント同士の場外乱闘にパニックになっている。ある者は逃げようとし、ある者は急いで大会保安班を呼び、またある者は……これを見逃さない手はあろうかとばかりに目を輝かせている。

「な……なんて、迷惑な! 止めなくては!」バルガライザーが慌てて動く。

「我々も、及ばずながら!」

「戊辰兄様、場外乱闘は駄目でございまする! 師匠に叱られるでございまするよーっ!」

 ビワノシン達も飛び出した。だが……彼らより前に一つ、雑踏の中から歩み出でて動く姿があった。

 

 

「おいおい戊辰、久しぶりじゃねえか。相変わらず、やんちゃしてんな」

 

 その声を聞いた瞬間……戊辰の超人も、ぴたりと動きを止めた。それに連動して維新の超人も面喰らったようにその動きを止める。

「気持ちはわかるけど、ここは闘技場じゃないぜ。落ち着けよ。維新の超人。あんたも……オレの顔に免じてここはひとつ、落ち着いてくれねぇか」

 

「……あんたは……」

「こぉら! 維新! 何しているでごわすかっ!」

 そしてようやく、そこにずしんずしんとやってくる、もう一人のジャイアント。新一派の頭領、薩摩の超人だ。

「げっ、薩摩さん!」

「場外乱闘は禁止にごわす! それに、戊辰の超人殿にも失礼にごわす! 戦えなかったのが悔しかったのは分かるでごわすが、言っていいことと悪いことというものがあるにごわす!」

 頭目たる彼にそう詰められては、維新の超人も形無しだ。彼はシュルシュルと縮んでいき、「す、すまなかったぜよ……」と大人しくなる。

「戊辰殿」続いて薩摩は、戊辰の超人に向き合う。

「残念でごわしたな。しかし、相手は天下の天雷騎士団のトップを務める三人のうち二人。その二人を相手にあれだけの戦いをしたのは、さすがのものでごわす」

「い、いや……そういってもらえ光栄だ、薩摩殿」

 戊辰の超人も同様に怒りを収め、体に貯めこんだエネルギーを排出し、コロッセオ・シティをジャイアントが歩くに相応しいサイズに逆戻りしていく。

「一件落着だな、さすがは薩摩の超人」

「なぁに。貴方の声掛けがあればこそ、二人とも頭を冷やしてくれたにごわす」

 薩摩の超人は自分よりはるかに小さな……そのヒューマノイドを見つめていった。

 

「礼を申すにごわす。《信玄》公」

 

「信玄!?」

 バルガライザーが言った。

「まさか……あの《竜将ボルベルグ信玄》かっ!?」

 

「信玄兄様!?」ビワノシン達も声を上げる。

 

 戊辰の超人の足元に立つヒューマノイド……戊辰の超人、そして去っていく維新の超人と薩摩の超人よりは勿論小さい体ながらも、龍の力を携えたかのようなそのたたずまいの威光は決して、巨大な超人たちにも引けを取らない。

 そんな彼は、自分の登場に一気にざわめくコロッセオ・シティの中「ん?」と、ビワノシン達のいる方向に気が付いたようだった。

「お前ら……!」

 

「信玄兄様ー!」

「お久しぶりにございまする! お元気になさっていたでございまするか!?」

 だがそういってビワノシン達が駆け寄ろうとしたのもつかの間、信玄と呼ばれたそのヒューマノイドは彼らの横を素通りした。そしてその向かう先は……。

 

「よう! ひっさしぶりだなあ、トドロキ!!」

「わーい! 父ちゃんっ! 父ちゃんも、コロッセオ・シティにいたんだべなぁ!」

 

 トドロキの下であった。そしてトドロキは、その広げられた胸に、ぴょこんと飛び込んでいく、

 ボルベルグ信玄もそんな彼を、思い切り抱きかかえた。

「あったりまえだぜ、オレを誰だと思ってる! 優勝候補の一角、竜将ボルベルグ信玄! おめーの父ちゃんだぜっ!」

 そう……彼が呼んだ「お前ら」とはビワノシン達のことにあらず。トドロキと……ベンケイのことであった。

「しっかしおめーも初出場にして本当に見事な勝ち上がりっぷりだなぁ! もう天才じゃねえのか!? さっすがはトドロキ! オレの可愛いトドロキ! このまま決勝戦でオレと戦っちゃったりなんかしてなぁ!」

 しばしの間、そこにはぽかんとした空気が流れる。そしてその沈黙は……ビワノシンが破った。

 

「と……父ちゃん!?」

 

「では、まさか、トドロキ殿、あなた……」

 二人は声をそろえて言う。

 

「我らが誠道場の誇り! 道場始まって以来唯一免許皆伝を賜った弟子! ボルベルグ信玄兄様のご子息様でいらっしゃったのでありまするかぁっ!?」

 

 

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