Saga of Creatures〜Battle Galaxy~   作:hinoki08

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第六話

 

「きゃ! また出た!」と、メリッサは驚く。

「?」と、イザハヤテが首をかしげる。

「あり! マチュー! それに爆獣騎士団の皆じゃないべかっ!」と、トドロキが驚いた。

 

「ワッショイエクスプレス以来だべなぁ! 皆、予選勝ち抜いてんべ!?」

「予選は勝ち抜いてまチュが、今はそれどころじゃないんでチュ!」

「メリッサさんっ! なんでわかってくれないんですかっ! 俺と貴方のこの出会いは運命なんですっ! とにかく聞いてくれれば……」

「だからそんなこと言われても困るのよ、あたし……!」

「あ、あと何発ぶん殴ったら止まるんだ、こいつ……いい加減オレ疲れて来た……」

「代われ、フィリッパ。おれが次行く。ヴァルアーサー。しつけ―男は……」イナバ・ギーゼがロッド型の魔銃を横に持ち替え、それをグイとヴァルアーサーの首元に、くびきのようにひっかけた。

「モテねえぞ」

 そうやって首を絞められて、ようやくぐえっ、という嗚咽と共にヴァルアーサーの言葉も止まった。「な……何がどうなってんべ、メリッサ姉ちゃん?」とトドロキは言う。

「あたしにも訳が分かんないのよ。ヴァルアーサー選手が勝手にあたしに一目惚れして、結婚してくれって迫ってきて……」

 

「……あ“?」

 結婚。メリッサと。

 その言葉に一人、引っかかる存在があった。

 

「おい、若造……」

 ソウジを置いて、信玄が一人立ちあがる。……ギラギラと殺意全開の様相で。

「てめぇ、確か謎の魔弾使いの選手だったな……? このボルベルグ信玄の息子の嫁さんに粉ひっかけようたぁ、いい度胸じゃねえか。褒めてやるぜ」

「竜将ボルベルグ信玄……? い、いやそれより……」けほけほとせき込みながら、ヴァルアーサーは立ち上がり……そして一瞬のうちに、信玄にも負けないような勢いで言った。

「嫁さんだぁ!? メリッサさんが!?」

 

「……あっ、やばいッピ」と、パプラ・プーラプラが言う。

「あいつ……元ヤンモードに入っちまった」とダキテー・ドラグーン。

「もとはと言えば火文明のスラムをうろついてた身だからなぁ……素が出ると、ああなんだよな」

 

 

「ざっけんじゃねーぞ、ボルベルグ信玄だか何だか知らねーが、メリッサさんは俺の運命の人だ!」

「はーっ、何言ってやがらぁ若造、十年早いんだよ、出直してこいっ! そっちこそあの子が迷惑がってんのが分からねーのか!?」

「いや、あたしはどっちも迷惑がってたけど?」というメリッサの呟きは、頭に血の上り切った二人には残念ながら届かない。

「大体なんだよ息子の嫁って! 息子ってそこに居るトドロキとかいうガキのことか!? 十年早いのはそっちの方だろが!」

「全くだ」と、ぼそりとベンケイが呟く。

「トドロキに立派な嫁さん見つけてやるのはオレの夢なんだよ! てめぇみたいなどこの馬の骨ともしれねー奴にトドロキの幸せを奪われてたまるかっ!」

「なにがトドロキの幸せだよ、あんたが勝手に言ってるだけじゃねえのか!?」

「おめーはおめーで勝手だけどな」と、フィリッパもぼそり。

 

 

「もうだめだ、やっとられん」フィリッパはとうとうさじを投げた。

「場外乱闘になってないだけマシでチュ。口論で済んでるうちは、気のすむまでやらせときまチョう。……メリッサさん、ご迷惑をおかけしまチュ」

「今日は厄日だわ」メリッサはこめかみを抑える。

「やー、それにしてもみんな、久しぶりだべな―! 10人もいといて皆予選を勝ち抜いてるんだべ? すごいべなー」

 能天気なトドロキも、もう二人のこと等一切気にしない体で爆獣騎士団の皆に話しかけた。

「マグたち、みんな揃って本選入り目指してるから!」同じく呑気なマグヌスグレンオーも、リーダーと見知らぬサムライの口論のこと等一切気に掛けずえへんと鼻を鳴らす。

「次はチーム戦なんだよ! 10人中、5人しか出られないけど!」

「へーっ! それってもしかして、オラたちと同じブロックってことだべ!?」

「トドロキ君もなんだー! マグはチームに入ってないけど、きっとマグの仲間たち、負けないよ!」

「するってえと」とイナバ。「ここにいるやつら……風来の股旅ビワノシンと戊辰の超人は予選落ちしてるから……後に残った5人が、ボルベルグ信玄のチームってわけかい」

「なんかチビ多いな、優勝候補の自信って奴かよ?」

「いや、油断は禁物でチュよ、ダキテー」

「うわっ! パラサイトワームもいるじゃないですか! し、しかも『白種』!?」ブラッキ──がイザハヤテの方を見て驚く。

「誠道場にはそのような方も所属なされていたのですか!? すごいです~」

「『白種』? それは驚くようなことなのでございまするか?」ビワノシン達も、彼らに話しかけた。……もうどうやら爆獣騎士団一行も、誠道場の一行も、完全に信玄とヴァルアーサーの口論を止めることを諦めた様子だ。

「すごいなんてもんじゃありませんよ~。パラワイトワームは大昔は白い体をしていたといわれていましてねぇ、今でも何万分の一かの確率で、先祖がえりをした白い体の個体が生まれるんですぅ。パラサイトワーム好きのダークロードにとっては、垂涎の存在らしいですよぉ」

「へぇっ! しかしあなた、闇文明の種族でもないのに詳しいでございまするなぁ」

「えへへ~、実は、魔光騎士団のヴィルジニア卿様のことを調べているうちに知ったのです~。魔光の当主ネロ・グリフィス様は、館が百は建つほどの大金を傾けてヴィルジニア様を手に入れられて、ご寵愛なさっているそうですよ~」

「ひええ、うちは、とてもじゃないけれどそんなお金はないでありまする……貴族はさすがにございまする」

「イザハヤテはそこらに迷っていただけでありまするからな……お前、すごい存在でありましたのですな」

「ウン、イザハヤテ、スゴイ!」

「ひええ! 言葉まで喋るのですか!? 当代最強のワームと目されるヴィルジニア様すら、自分の力一つでは喋れないのに!」

「イザハヤテは言葉をしゃべるだけじゃないでございまする。とてもいい子にございまする!」

 イナバが面白そうににやにや笑って、「くくっ、本当にいい子だなぁ、イザハヤテちゃんとやら」とイザハヤテの方に向かって手を差し伸べた。

「ほらっ、お手!」

 ……しかしだ。イザハヤテの方はそう自分に差し出された手にがぶりと噛みつく。「痛ぁ!」イナバは悲鳴を上げた。

「全然、いい子じゃないじゃねーか!」

「そりゃ、イナバが失礼だからッチュよ」

「オマエ……キライ……」

「だ、大丈夫でございまするか!? すみませんでございまする、普段は大人しいのでございまするが……」

 

 

 

「こうやって話し合っててもきりがねえな、オッサン! ちょうどいいぜ!」

 完全に自分たちを無視したやり取りが行われている傍ら、ヴァルアーサーは輝く参加者証を取り出す。

「もう噂に高いぜ、あんた、Aブロック配属なんだろ! 奇遇だな、俺もAブロックだ! 無論、爆獣騎士団のやつらと一緒に戦うつもりだぜ!」

「ほおー……そこで決着つけようってか!? 若造! 合点だ! ここは武闘会、戦いの場を用意されたんなら、そこで白黒ハッキリつけようじゃねえか!」

「はっ! 優勝候補だからって俺たちの魔弾を甘く見んじゃねえぞ! 俺たちが勝ったらメリッサさんからは手ェ引けよ!」

 

「いや、待ってってば! もう別に因縁持とうが戦おうが勝手だけど、あんたらの勝敗にあたし、なんにも関係するつもりはないからね! そこだけは覚えといて!!」

 最後の最後に、メリッサは思い切りそう叫んだ。

 

「……おい、お前」

 そんな色々とてんやわんやな中だ、ソウジはトドロキにぼそりと、声をかけた。

「なんだべかっ!? ソウジ!」

「お前……信玄兄様の子供だって本当なのか?」

「うん、ほんとだべよっ! ソウジ、父ちゃんのこと大好きなんだべな? オラとも仲良くなろうべ!」

 ……しかしだ。

 そういって差し伸べられたトドロキの手をソウジはパンと弾き飛ばす。

「え?」

「……お前みたいなやつに、信玄兄様の仲間なんて本来は相応しくない!」

 ソウジはゴーグル越しに、トドロキを睨み付けてぴしゃりと告げる。

「いいか! お前を仲間にしたのは信玄兄様にとってお前が息子だからだ! 本来兄様はもっといい仲間を引き入れられたはずなのに、お前は息子ってだけで……実質、お前なんて足手まといみたいなもんだ! 僕は、そんなお前のことなんて認めないぞ! 仲良くなんて、誰がするか!」

「ソ、ソウジ……」

「せいぜい、僕とイザハヤテ、兄様の足を引っ張らないようにすることだな」

 そういって彼はふんと後ろを振り返ってしまった。

「な、なんだべ……」

「なんてこたねーよ」ベンケイが一つ、ため息をつく。「妬いてやがんだよ、あのソウジとかいうガキ、お前に」

「やきもちだべか? オラに? なんで?」

「信玄の息子なんて、ひっくり返ったって自分にはなれない立場にいるお前がうらやましいんだよ」

「?」

「……ま、その重みがわからねえお前は、教育が成功したってことなのかねぇ」

 

 

「信玄兄様!」

 ソウジは業を煮やしたかのように信玄をヴァルアーサーから引きはがした。

「話していてもキリがありません。僕たちの実力でこの小煩い騎士もどき共を黙らせましょう。作戦会議の再開です」

「おお! ちょうどそんな話になってたとこだぜ! ソウジ! いい策を練ってくれよ!」

 それでようやく、信玄とヴァルアーサーの不毛な言い争いも終わる。一人残ったヴァルアーサーも「メリッサさん! 俺は負けませんからね! イナバ、俺たちもするぞ、作戦会議!」と、完全に自分を放って無駄話をしていた爆獣騎士団の面々にようやく声をかける。

「やれやれだぜ……ま、せいぜいいい案を練ってやるよ、リーダーのためにな」

「覚えておけよ、トドロキとやら!」最後にヴァルアーサーはトドロキの方まで振り返って、ぎろりと一つ睨み付ける。

「君のようなガキに、メリッサさんは渡さん!」

「別に、オラのもんでもないけど……わ、わかったべ……」

 

「トドロキ、なんかおめえ……」

 話し合うソウジと信玄、話し合いながら去っていく爆獣騎士団を交互に見比べて、ベンケイはつぶやいた。

「今日一日で、ずいぶん敵を作っちまってんな」

「今日は、トドロキにとっても厄日かしらね……」

 ポンポン、と音を立てて、メリッサはトドロキの頭を撫でた。

 

 

 

 

 後日。

 コロッセオ・シティはフレイム・コロシアム。

 

『皆さん、お待たせーっ! 今日この試合を待っていた人も多いんじゃないか!? ライト・ミドル級Aブロック、「戦国ドリームチーム大合戦」、ようやく幕開けだっ! 実況はこのオレ、ミラクル・ショーがお送りするぜーっ!!』

 

 コロシアムに響くミラクル・ショーの声。そして、トドロキの第三回戦とは裏腹に多数の超獣に埋め尽くされたフレイム・コロシアム。……さすがに、優勝候補の一角たる信玄の出る試合だ。無名選手だらけのライト級のトーナメントとは比べ物にならない。

 コロシアムの中心には8組のチームが勢ぞろいしている。今から彼らでトーナメントを行っていくのだが……。

「はっ! 逃げずにやってきて偉いぜ、若造! 褒めてやらぁ! せいぜい本気でやってやるよ!」

「誰が逃げるかよ、オッサン! コテンパンにのしてやらぁ、こちとら最高の魔弾を用意してきたんだぜ!」

 

『……それにしてもなぜかボルベルグ信玄選手とヴァルアーサー選手、既に一触即発の様相だぜ、なんで? ヴァルアーサー選手に至っては性格まで変わっちまってねーか?』

 事の顛末を知らないショーはぽかんとしている。だがしかし、彼も司会進行のプロだ。それしきではひるまない。

 

『なんにしても、戦国武闘会の戦士として闘志抜群なのはいいことだ、このまま行っちまおう! まずは……第一試合! 片や早くも皆さんのお目当てだろう、優勝候補の一角! 竜将ボルベルグ信玄選手率いるチームだっ!』

 

 他の選手たちが魔力によって会場脇に押しやられ、トドロキたちのチームはフレイム・コロシアムの中心にそのまま残る。

 

『先鋒、風来の雲ベンケイ! 次鋒、貴星虫イザハヤテ! 中堅、牛若剣士トドロキ! 副将、電磁勇騎ソウジ! 大将、竜将ボルベルグ信玄!! 相対するは……』

 

 

「兄者……意外なチームだな、チビが3人に、パラサイトワームが一匹……!」

「あいや、これは意外や意外ッ! もっとイカツイのがぞろぞろやってくると思っていたっ!」

「ふん……なめられたもんだぜ」

「いや、お前ら、油断するなよ! 信玄だって立派なサムライだ、勝算あってこそのあの面子だろうよ!」

「ツバメガエシ殿の言う通り! 我ら水文明サムライ連合軍も全力で行こう、ゴッチャンです!」

 

『アクア・ツバメガエシ選手率いるチーム! 先鋒、アクア・コテガエシ! 次鋒《歌舞伎ロイド・ゴエモン》! 中堅《封魔ラセツ・コロンゾン》! 副将アクア・ツバメガエシ! 大将《相撲Dr,ウンリュウ》!!』

 

 そう。トドロキたちの前に現れたのは……水文明のサムライ5人衆。

 

「さあ、まずは私からゆくぞ。兄者、見ていてくれ」

「ふん、チビだからって、なめんじゃねーぞ」

 

 先鋒二人がまずは、歩み出る。

 

『それではライト・ミドル級予選第四回戦Aブロック第一試合……「決闘」スタートッ!』

 

 

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