Saga of Creatures〜Battle Galaxy~   作:hinoki08

41 / 42
第十話

「兄者ぁ!」

 会場脇に運ばれたツバメガエシに、コテガエシが駆け寄る。

「だ、大丈夫だ……死んではいないぜ」

 ケホケホとせき込みながら答えるツバメガエシは、最後の仲間……相撲Dr.ウンリュウに声をかける。

「ウンリュウ。やれるだけ場は整えた。あの武器は得体が知れないが……あのガキ自体は、二回も必殺技を出したんだ。立っているのがやっとだろうよ。手早くやってくれ」

「あいわかった! ワシに任せい、ツバメガエシ!」

 丸い体のグレートメカオーが、自信満々に返した。

 

 事実、そのツバメガエシの解析通りであった。

「(参ったべな……二回も轟斬りを出したなんて初めてだべ。体のあっちこっちが痛いべ……)」

 トドロキの体はすでに、悲鳴を上げていた。だが彼はなおのこと、その場にたたずむ。……信玄の方も、交代しろとは言わずにじっと彼を見据え、見守っている。すべてをトドロキに任せたとでもいうように。

 ……懐かしい。信玄は、いつもこうだった。

 普段は思い切り甘やかして可愛がってはくれるけれど、こと、武器を持って戦うとなれば一転して厳しく……そして、一人前のサムライとして扱ってくれる。

 

「三人抜きはさせん! 小僧! 最後の相手はワシだあっ!」

『水文明サムライ連合軍、いよいよ大将相撲Dr.ウンリュウ選手がお出ましだーっ! 相対するトドロキ選手はすでに疲労困憊の様子! さあ、どう出るっ!』

「どう出るもこう出るも……ねーべ」

 体力を温存しておくべきかもしれない。けれどトドロキは……引かない道を選んだ。ぎりぎりまで、戦い続けたい。ジュウベイがまだ戦うことを望んだのだから。

 こいつもツバメガエシ同様、さっさと沈めてやる。自分の限界が訪れるまで……。

 

 だが、試合開始を告げる鐘がなった、その時だった。

 ウンリュウがドシンと四股を踏み鳴らしたのと同時に……メモリー・アクセラー、そしてシャーク・バンカーの残したデータのあぶくが、一斉にウンリュウに飲み込まれていった。

 ウンリュウの体がこれ以上なく、真っ青に輝きだす。

「これだけあれば……十分!」

「何やってるか分かんねーけど……いくらデータを取り入れたって、もう大丈夫だべよっ! オラは、全力でお前をトドロ斬るだけだべ!」

 必殺……と、トドロキは息も絶え絶えの様相で、それでも自分とは真逆にギラギラと燃え盛るジュウベイの刀身を構える。

「轟斬り……!」

「あいにくだが……ワシが取り入れているのはデータではない!」

 

「ウンリュウ殿ォ!」

「俺たちの『クロスギアの力』も使え!」

 時同じくして、会場脇のゴエモンとコロンゾンも動いた。彼らはインビジブル・ジンバオリとスパイラル・エーテルの力をも、コロンゾンの魔力で蒼いあぶくに変換させ、ウンリュウの体に取り込ませる。

 

『おおっ!? これは……? 水文明サムライたちのクロスギアの力が、ウンリュウ選手に集まっていくぜ!』

 そして。トドロキがジュウベイと共に思い切り襲い掛かってきたその時。ウンリュウは初めて動いた。

 その両手を……仲間たちから受け取った蒼いマナの光に煌めかせ、ウンリュウが張り手を繰り出した次の瞬間……会場中が、目を見張った。

 

「ハッケヨ~イ……ノコッタ!! ノコッタ!! ノコッタノコッタノコッタ!!」

 

 それは、ジュウベイの連撃を超える連撃の嵐だった。

 トドロキがくたくたに疲弊していることを差し置いても、まったく比べ物にならない。ジュウベイの攻勢が全く、追いつかない。

 

『な、なんという目にも止まらぬ大連撃! これこそがウンリュウ選手の真の実力かーッ!』

「ワシは、クロスギアの力を感じれば感じるほど強くなるっ! そして……ここまでコテガエシ殿やツバメガエシ殿が、『力』をため込んでいてくれたからこそっ……」

「や……やばい、べ……!」

 トドロキはついに……ふらりと、足をもつれさせた。ジュウベイの連撃が止まる……それを見のがしてくれるウンリュウではなかった。

 

「ワシは最強になれる! ア~、ノコッタッ!」

 

 最期の張り手がトドロキに炸裂した。彼はとうとう、地べたに倒れ伏した。

 

 

『牛若剣士トドロキ選手、これにて戦闘不能! ウンリュウ選手、大将を任されるだけはある! なんという猛攻の嵐だっ! し、しかも……いまだに、その体に宿る蒼い光は尽きてはいないぞっ!』

「当然だァ、ボルベルグ信玄までワシが3人抜きしなきゃならんからなっ!」

 コロンゾンを倒した時点で疲弊していたトドロキとは違い、本当にウンリュウにはまだまだ十分に余力がある模様だ。……これが、水文明サムライ連合軍の作戦であったか。大将のウンリュウが最大限の力を出せるように、それまでのメンバーの戦いを配置していたのだ。

 

「トドロキ!」

 会場脇に持ってこられたトドロキを、信玄は抱き寄せる。

「最後までギブアップしないとは、よくやったぜ。お前のサムライ道、見せてもらった」信玄はボロボロになった息子を見て、快活にそう笑う。

「だへへっ、ありがとうだべ……」

「……」

 それを見て面白くなさそうなのはソウジだ。「信玄兄様」ソウジは立ち上がって言う。

「行ってまいります」

「おう。頑張れよ、ソウジ。お前の実力、見せてもらうぜ」

 

『さてっ! ボルベルグ信玄チーム、次に来るのは副将・電磁勇騎ソウジ選手っ!』

「何がこようと同じことっ! この張り手で吹き飛ばすまで、ゴッチャンです!」

 ウンリュウは息まいて手をぶんぶんと振る。そして試合開始の鐘が鳴ったのと同時に……「ハッケヨイ、ノコッタ! ノコッタ!」と、早くも張り手を空振りさせながら、ソウジに向かって猛然と突進していった。

 

「……《賢弓トライ・スネーク》、ジェネレート」

 時を同じくして、ソウジが自分のクロスギアをジェネレートする。禍々しい魔物の文様をあしらった金の弓に……蒼く光り輝く矢が三本、装備されている。

 

「それがお前の武器か! だが何本矢を放とうと、すべて打倒して見せるわ! ノコッタノコッタ!」

 ……その瞬間だった。

 ソウジのゴーグルの奥が、煌めいた。無機質な赤い瞳。ヒューマノイドのものではなくサイバーロードの瞳だ。

「……解析完了。行け、トライ・スネーク」

 

 不意に、三本の矢が同時に発射された。

 そしてそれは、読んでいるかのように無数に繰り出されるウンリュウの張り手の雨をすり抜ける。だがあの細い矢の3本で、グレートメカオーであるウンリュウの体がどうこうなるものだろうか? 

 ウンリュウの体がソウジに迫る。次の瞬間、小さいソウジの体が張り手の雨に……と、誰もが確信したその時だった。

 ずしん、と妙な音が響いた。

 

『こ……これ、は……?』

 ショーも一瞬、言葉を失った。張り手の雨は、降らなかった。降りようがなかった。

 ウンリュウの両腕が、切断されて地面に落ちたのだ。

 

『ウンリュウ選手の両腕を、一瞬のうちに落としたぞ、ソウジ選手! な、なんというパワー……!』

「パワーじゃない。パワーは必要ない」

 ソウジは冷ややかに、実況の言葉に反論する。

「こいつの構造を解析した。腕を支えるボルトのうちどれが重要な一本かはすぐに読めた。後はそれを打ち落とせばいいだけのこと。ボルト一本破壊するのにさほどのパワーはいらない」

 

『な……』

「なんたる、分析力っ……」

 ショーもウンリュウも、その言葉に息をのんだ。

「さんざんデータデータと小うるさかったが」ソウジは再びトライ・スネークに三本の矢を灯らせながらつぶやく。

「所詮はリキッド・ピープルの浅知恵……これが、サイバーロードの力だ。思い知ったか」

 高慢な言葉、しかしその言葉に恥じぬ戦いぶりを彼はとっくに証明して見せた。

 コテガエシが一戦まるまるかけて、ツバメガエシがリカバリーしたデータ戦術にも迫らん戦いを、彼は一人で、一瞬のうちにやってのけたのだから。

 

『すごいぜ、ソウジ選手っ! この圧倒的な知力こそ、まさにサイバーロードの真骨頂! 知力をそのまま武器にする、それこそが水文明を統べる叡智の種族だぜ!』

「それだけじゃない! それに加えて信玄兄様と同じヒューマノイドの肉体があって……初めて、完璧な戦術が完成する!」

 ソウジは再び、三本の矢を放った。いけない、また攻撃される! ウンリュウは両腕を失った身で何とか、起き上がった。しかし……次の瞬間、思い知る。その動きは、読まれていた。

 トライ・スネークの矢は、ウンリュウの足を支えるボルトをも貫いた。とたんに丸っこいウンリュウの体は自重に耐えられなくなり、ゴロンと地に転がった。

 

 ……水文明のサムライたちは開いた口がふさがらなかった。

 瞬殺だった。

 自分達の全てを賭けた大将、ウンリュウがボルベルグ信玄に行きつくまでもなく……たった一人の副将相手に。

 

 

『これにて、第一試合終了──ッ! まず準決勝にコマを進めるのは、ボルベルグ信玄チームだぜっ!』

 

「ソウジ、すっげえべなっ!」トドロキは目をキラキラ輝かせている。

「ウン、ソウジハ、スゴイ!」

「なるほど……戊辰のやつが言うだけはあるぜ」

「兄様!」いそいそと帰ってきたソウジは、息一つ乱れていない。本当に、エネルギーに満ち溢れていたウンリュウを相手に……余裕の瞬殺だったのだ。

「いかがでしたか……」

 彼が言い終わる前に、ポン、と信玄はソウジの頭に手を置いた。そしてその頭を、わしゃわしゃとかき回す。

「大した実力だな、お前を仲間にしてよかったぜ、ソウジ」

「……! 兄様にそう言って頂けたなら、幸いです!」

 その言葉を聞いて、ソウジもパッと頬を赤らめた。会場はさっそく、第二試合の準備に移っている。

 

 

「……ロマノフ、様……」

 そんな中、フレイム・コロシアムにやってきた影が一つ。彼は魔力で、自分の主と交信している。

「無事……つきました……彼らの……試合は……次、です……。……はい、はい。承知、いたし……ました……しかと……見届け……ます……」

 胸に巨大な剣の魔銃を突き刺されたドラゴン。邪眼の使徒シーザーの姿であった。

 

 

 

 第三試合。

 5人のシノビたちのチームと……爆獣騎士団の戦いは、既に佳境に入っていた。

 

『これにて副将もダウン! 残るは大将、《土隠妖精ユウナギ》選手のみ―ッ! 相対する爆獣騎士団は中堅、爆獣マチュー・スチュアート選手、ユウナギ選手、果たしてここから三人抜きなるかっ……!?』

 試合運びは、全体的に爆獣騎士団の優勢であった。シノビたちも何とかニンジャ・ストライクを駆使して善戦はしたものの……爆獣騎士団の実力が何たることだろう、それを上回っていたのだ。

 会場は謎の魔弾使いたちの、その実力に「いけーっ! シノビなんかやっちまえーっ!」と大盛り上がりだ。だがその空気も意に介さず……落ち着き払った様子で、いよいよシノビたちの大将が歩み出てくる。

 それは一見すると大将にはふさわしそうにない、小柄なスノーフェアリーの少女だった。土隠妖精ユウナギ……彼女は会場脇に追いやられる仲間の方など見向きもせずに「使えないわね」と冷徹な言葉を吐き捨てていた。

「おっ? なんだ!? シノビ軍団の最後、弱っちそうだぞ!」

「このままやっちまえーっ!」会場からはヤジが飛ぶ。

 だが、大将を任されるからにはそれ相応の実力もあるのだろう……コロシアムに立つマチュー・スチュアートはそう判断する。油断は禁物だ。シノビたちがどんな秘術を使ってくるか、分かったものではない。

「……油断はせずに行きまチュよ!」

「どうも」彼女は短く答えた。試合開始を告げる鐘の音。それとともにマチューは「魔弾パンダフル・ライフ……」と詠唱するが……それより先に、ユウナギは印を結んだ。そして彼女の体から、魔力が沸き上がる。

 

「土隠忍法・地還しの術! シノビよ、大地へ還れ!」

 

 すると、信じられない光景が目の前に展開された。

 爆獣騎士団に散々にやられて疲弊していた彼女の味方のシノビたちの体が……急に光り輝きだしたかと思うと、マナの形になって地面に吸収された。

 そしてそのマナは……ユウナギのもとに集まってくる。

『こっ、これは……ユウナギ選手、既に力尽きた仲間たちをマナに変換したぞっ! そ、そしてそれが……彼女自身の力となって集合してくるっ!』

「なんだって!?」会場は沸き立つ。

「マナにされた奴らはどうなるんだよ!」

「ま、まさか……死んじまうんじゃないだろうな!?」

「そんなこと、あなた達には関係ないわ」会場から飛んできたヤジに、ユウナギは相も変わらず冷ややかに返す。

「このあたしの力になれば、どうだって良いもの」

 地還しの術。シノビたちの命をマナに変換する術。だが彼女はそれを、惜しげもなく使って見せた。

「団体戦なんて最初からやりたくなかったわ。これだけの力があれば、あたし一人でも十分よ」

「……っ、仮にも、仲間でチュよ! なんてことするんでチュか!」

「そんなことも、貴方には関係ないわね……さっさと、消えなさい」

 彼女は空中に手をかざす。するとそこにギラリと、マナの色に輝く、雪の結晶のような形の手裏剣が出現した。

 マチューはパンラフル・ライフを緑色の砲弾に変換し、それを迎え撃たんとする。ぶつかり合うマナとマナ。……しかし、だめだ。つい先ほどまで本物の生命の灯であったマナの威力の方が段違いに強い! 

 パンダフル・ライフの砲弾はかき消された。それと同時にユウナギはさらに手裏剣を生成し……マナの手裏剣の雨が、マチュー目掛けて降り注ぐ。

「……チュ、チュウ……」

「このネズミさんは、これで終わりね」ユウナギが手裏剣の手を休めると同時に、マチューはボロボロになって地面に倒れた。

 

『……ユウナギ選手、そして地還しの術、何たるパワー! ユウナギ選手、まさかこれから先一人で戦うつもりか!? ……いや、それほどの自身も裏打ちする実力! マチュー・スチュアート選手、瞬殺されてしまったぞっ!』

 

「ぐずぐずしている暇はないの」ユウナギは疲れた様子一つ見せず、倒れたマチューが会場脇に追いやられていくのを見て、爆獣騎士団の方を向きながら言い放つ。

「早く出てきなさい。大将。相手してあげるから」

 だがその言葉に対して……一つの声が返答する。

「生憎だが……妖精のお嬢さん。うちの大将には、ご執心の妖精がもうすでにいてね」

 

『続いて爆獣チームから出るは、爆獣のナンバー2、副将、爆獣イナバ・ギーゼ選手だっ!』

 

 イナバ・ギーゼはロッド型の魔銃をくるくると回しながら、ガシャン、と重い音を立ててユウナギの前へ降り立つ。

「代わりと言っちゃなんだが、このおれが一緒に遊んであげるぜ」

「……なんでもいいわ。早くなさい」

 試合開始の鐘が鳴り響く。ユウナギは再び、マナの塊となった手裏剣をその魔力によって大量に展開させる。

 そしてイナバの方は……ロッド型魔銃の先端を、ある一点に目がけて合わせた。

 

 

「参っちゃったわ。これもうトドロキの出る第一試合、とっくに終わってるわよね」

 フレイム・コロシアムにいそいそとやってきたのはシャーマン・メリッサだ。ようやく今日の分の仕事を終えたところだ。

「なんか変な展開に巻き込まれちゃったけど……見ないってわけにもいかないものね。……というか、本当に当たるのかしら? 信玄選手とヴァルアーサー選手。当たらないでいてくれたらそれが一番有難いんだけど……」

 そう彼女がぶつぶつ独り言をつぶやいている最中のことであった。ワアア、という歓声が、それをかき消す。何事かと驚いた彼女が慌てて観客席へ浮遊結晶で飛んでいくと、そこには。

 

『試合終了―ッ! 爆獣イナバ・ギーゼ選手、手裏剣の雨を見事にかわし切り、無傷でユウナギ選手を破って見せたぞ! 第一試合に並び第三試合までも、大将の出番無くして試合終了とは! 爆獣チーム、本当に侮れない実力の持ち主だぜ!!』

 

 それは、ウンリュウとソウジの試合に勝るとも劣らない一方的な戦いであった。

 あれほど強烈なパワーを誇っていたユウナギのマナの手裏剣は……素早く動き回るイナバ・ギーゼを貫くことなど、一度もなかった。そして当のイナバの方は、その弾幕の隙をまるで読みでもしたかのように……ただ一発だけ的確に、魔弾を彼女の急所目掛けて放ち、一撃で戦闘不能にしたのだ。

「読み切れたぜ、マナで強化されていないあんたの弱点も、手裏剣の弾道も、すべてマチューとの一戦を見ているだけで」

「な、なんで……」うめくユウナギ。

 イナバはくくっ、と面白そうに笑って言う。「なめてもらっちゃ困るね。……お嬢さん。こいつぁ仲間と共に戦うルール。あんた如きが一人で勝ち抜けを目指すなんざ、百年早いよ」

 

『これにて、爆獣チームの準決勝進出が決定だっ! 続きましては、第一ラウンド最終試合……!』

 ショーが次の試合の準備をと、ラ・ウラ・ギガたちに合図し会場には魔力が動く。会場は高慢なシノビが一人、あっさりと倒れたことになおも沸き返っている。

 だがその中で一人、メリッサは目を見張っていた。イナバの戦いぶりに、ではない。その前に倒れ伏した、一人の妖精の姿に。

 

「……ユウ、ちゃん……?」

 

 

「なかなかの実力ですね……爆獣騎士団」ソウジが試合の様子を見ながら言っていた。

「ああ」と信玄は返す。そして、彼はやにわに「トドロキ」と息子の頭に手を置いた。

「なんだべか?」

「お前、準決勝は休め。体力の回復に専念しろ」

「えっ、なんでだべか!」

「爆獣が、思ったより侮れねえからだ……」信玄の面持ちは真剣そのものだ。その様相に、トドロキも今一度ごくりと唾を飲み込む。

「なに……4人だからって負ける道理はねえよ。イザハヤテももう十分に魔力を蓄えている。ひとまずはオレたち4人に任しとけ。この予選……」

 

 そして始まった第四試合を眺めもせずに、信玄は言い切った。

 

「決勝で当たるのは絶対に、爆獣騎士団だ」

 

 

 フレイム・コロシアムを立去ろうとする影が、「もういいわ、皆、命へ戻りなさい」と言い放つ。ユウナギの声だ。ユウナギがそう命じると同時に、マナに変換されたシノビたちは元の姿に戻っていく。

 だが、その彼女を……必死で追いかける姿があった。

「ユウちゃん!? ねえ。あなた……ユウちゃんでしょ!? あたしよ……シャーマン・メリッサよ!」

 それは、メリッサであった。彼女は息を弾ませ、髪を乱れさせ、その真っ白い頬も真っ赤に染めている。よほど必死に追いかけてきたのだろう。

「ひ、『久しぶり』。……ど、どうして……どうしてこんなところに居るの!? なんで、シノビなんか……」

 ……しかし、ユウナギの方は、冷ややかに返した。

 

「あなた、誰?」

 

「……え?」

「あたし、任務があるの。じゃあね」

 そう言い放つと同時にユウナギは亜空間を作り出し、ぐったりとした仲間たち共々その中に消えていく。……メリッサの制止の声も聞かずに。

 

「な、何……」メリッサは言葉を失っていた。

「誰、ってどういう事よ。あたしよ、メリッサよ。貴女の『友達』だった、メリッサよ……」

 

 

 フレイム・コロシアムから歓声が響いた。第二ラウンド第一試合、勝利したのは……またもや、ボルベルグ信玄チームだ。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。