~探索者たちの備忘録~   作:アルファ@自己満

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6月ということでif作品です。
妄想全開なのでご注意ください。


【誓った愛はフジの色/ココロに咲くのは愛の華】

「藤先輩」

 

心は前に立ち歩く彼の名を呼ぶ。

藤と呼ばれた男は立ち止まる。

 

「また先輩呼びしているよ。心君」

 

そう言いつつ笑いながら藤は振り返る。

心はキョトン...としていたが、ハッと気づくと恥ずかしそうに咳払いをする。

 

「んんっ...ごめんなさい、傀さん」

 

「ふふっ。君が九頭竜高校を卒業してからもうすぐ1年経つというのに、まだなれないのかい?」

 

「だって...高校生活を終えても、先輩は先輩のままなんですからぁ。それに、先輩呼びのほうが落ち着くんです」

 

「そうか、それは嬉しいね。しかし、その先輩後輩の関係もつい先月変わっているけれど?」

 

薬指に嵌めた「それ」を見せ、傀は意地悪く微笑む。その笑顔に心の顔はすぐさま真っ赤になる。

 

「おや、どうしたんだい心君?顔が真っ赤じゃないか。熱でもあるのかい?」

 

「っ...!顔が赤いのは夏のせいです。からかわないでください!いくら傀さんでも怒りますよぉ?」

 

「ふふっ、すまない。君が感情を出し始めてから、からかうのが楽しくて」

 

「もうぅ...」

 

心は頬を膨らませる。傀はそんな彼女を見て口元を隠し笑う。

高校を出てから、傀はよく笑うようになった。高校時代の傀とは雰囲気が違う。しかし、そんな彼も心は好きだ。

そんな傀が、今は心の隣りにいる。それは、この世界へと帰還した心が、密かに想い描いていた夢であった。

 

「さて、着いたよ」

 

傀が足を止める。たどり着いたのは、一軒の洋館。フランスの貴族、そして二人の恩師でもある高校教師「代理四世」が住まう館だ。

 

「さて、行こうか。『こころ』」

 

「はいぃ、『旦那様』」

 

二人は照れくさそうに笑い、門を潜る。その握りあった手の薬指には、愛を誓いあった指輪が美しく輝いていた。

 

 

「「お久しぶりです。先生」」

 

傀と心は目の前の人物に頭を下げる。

シルクハットを目深に被り、その顔にはペストマスクをつけている。一見すれば危険な香りしかしないこの人物こそ、高校時代の恩師、「代理四世」である。

代理四世は二人に顔を向け、挨拶を返す。

 

「ええ、お久しぶりです。結婚披露宴以来でしょうか?」

 

「はい。お元気そうで良かったです」

 

「そういう君たちも、変わらず元気そうでなによりです」

 

会話が弾む。心地良い時間と空間が彼らを包んでいる。

そうして話題は、高校時代へと遡る。

 

「そういえば、藤君が泣いていた時もありましたね。懐かしい」

 

「せっ...先生!それは...」

 

「まぁ、そうなんですかぁ?」

 

「ええ。心君が意識不明になっていたとき、藤君が今までにないほど取り乱して...私に助けを求めたんですよ」

 

「こ...この話はもうよしましょう!」

 

「えぇ〜?もうちょっと聞きたいですよぉ。さっき私をからかったバツです。大人しくしててくださいねぇ」

 

「ぐっ...くっ」

 

「ふふっ...ではもう少し続きを話しましょうか」

 

 

懐かしむように話す「代理四世」。

顔を赤くしながらも耳を傾ける「藤 傀」。

そして、そんな二人を見ながら、明るく笑う「藤 心」。

 

 

 

そんな彼らは『探索者』。

未知なる存在と相対した、未知を知った者たちである。

きっと、こんな幸せな時間は長くは続かないだろう。だからこそ、二人はこの時間を大切に、そしてそれ以上に、かけがえのない伴侶を守り続け、支え合うのだ。

 

 

薬指に嵌めた、婚約指輪に誓って...

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