人生n週目の里香ちゃんは、今世では憂太と結ばれることを諦めたはずだった 作:しらたま大福
憂太と里香が呪術高専へと戻って数日経ったとある日の朝。
禪院真希は里香の部屋の前に立っていた。朝があまり得意じゃないと言ってた里香のために真希は任務が入っていない日は毎朝メッセージアプリで起床の確認をしている。今朝もいつものようにメッセージアプリに、メッセージを送ると……今朝は何も反応がなかった。
スタンプ爆撃をかましても、鬼電話を入れても、何をしても彼女からの返信は一切無い。あ、これは確実に寝入ってるなと真希は察した。
全く世話が焼けるなと思いながらも、真希は里香の部屋へとやってきた。
「おーい、里香。いい加減に起きろ、遅刻すんぞ」
トントンと扉をノックし、少し大きめの声で呼びかけても何も反応がない。反応のない現状に、真希の中の不安という言葉がどんどんと大きくなっていく。無いとは思うが、もしも里香が誘拐されていたり、部屋の中で倒れたりしていたら一大事だ。
「……里香、悪い冗談はやめてくれ。これ以上反応がないなら――私はこの扉をぶち破る」
だから、彼女からこれ以上返答がないのであるならば――真希は扉をぶち破って中に入る心に決めた。扉の修理代がどうとか一瞬頭をよぎったが、人命よりも大事なことはない。
「最後の忠告だ。10秒以内に起きなければ、私はこの扉をぶち破る」
真希はゆっくりとカウントを始めた。減っていく数字に、物音が一切しない部屋。「0」まで数えた瞬間、真希は蹴り飛ばす体制へと入った。
「――行くぞ」
ドゴン、と言う鈍い音が廊下に響いた。真希の蹴りで呆気なく飛ばされた扉。それを乗り越えて踊るように部屋の中に飛び込んだ真希が目にしたのは――。
「おい、里香――!!」
「……すぅ」
布団の中で丸まって寝息を立てる里香の姿だった。気持ちよさそうにスヤスヤと眠る姿は、完全にいつもの里香だった。そんな姿に、真希の肩から力が抜けた。
「……ったく、寝てるだけかよ。心配させんじゃねえよ」
小さく寝息を立てる里香。その姿は誰がどう見てもただ寝ているだけだった。そんな里香の態度に、真希は大きくため息をついた。
「おーきーろー、もう朝だぞ」
「すぅ……、すぅ」
「意外と寝汚ねえやつだな」
中々起きる様子のない里香の体を揺さぶる。真希のフィジカルによって結構な勢いでぐわんぐわんと視界がゆれているはずだ。
「おい、朝だぞ」
普通だったら、誰しもこの衝撃に目を覚ますだろう。だがしかし――。
「……すぅ」
祈本里香が、真希の声に応えてその目を開くことは無かった。