人生n週目の里香ちゃんは、今世では憂太と結ばれることを諦めたはずだった   作:しらたま大福

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新しい先生

 

 さらに憂太と夏油先生との特訓開始から一週間。私はというと――。

 

「……やっぱり、できない」

 

 呪力を使った攻撃ができないでいた。

 

「どうして……こんなにも出来ないのだろうか」

「里香ちゃんは僕並か、それ以上に呪力があるはずなのに……変だなぁ」

 

 夏油先生と憂太曰く、私の呪力は普通の呪術師よりかなり量は多いらしい。でも――何度やっても、その豊富な呪力は使えない。瞬発力、状況判断、その他諸々は何とかなったけど……どうしても、呪力が伴った攻撃だけは出来ない。このままでは、呪霊を祓うことなど無理だ。

 

「うーん……ここまで来ると才能が無いとかいうより、そういう天与呪縛なんじゃないのかなって思い始めてきたね」

「確かに、普通だったらここまで全く出来ないのもおかしい話だ」

「……天与呪縛?」

 

 初めて聞くワードに首を傾げる。そうすれば、夏油先生は「そういえばまだ説明してなかったね」と言って説明をしてくれた。

 

「あぁ、天与呪縛というのは、生まれながらにして、強力な力を得る代わりに何かを強制的に犠牲にしてしまう現象だ。例えば、生まれながらにして一般人並みの呪力しか持たない代わりに、人間離れをした身体能力を得たりすることががあるよ」

「ちなみに、それは里香ちゃんも知ってる真希さんだよ」

「真希ちゃんが……?」

 

 意外とその天与呪縛を受けた人がいて驚いた。

 

「そう、真希さんが眼鏡を掛けているのは呪霊が見えないから」

「天与呪縛って、色々あるんですね」

「そうだね」

「とりあえず、キミのその体質は一旦置いておこう。呪力が使えなくても呪霊を祓う方法はいくらでもあるからね」

 

 そう言った夏油先生は、私たちを連れて森の少し奥へと歩みを進め始めた。その後ろ姿について行く最中、夏油先生はこう説明した。

 

「そんなわけで、今日から里香と相性のいい呪具を探そうと思う」

「呪具ですか?」

「呪具と言っても、色々な種類があるからね。呪具はどうなものか覚えてるかい?」

「はい先生、予め呪力が籠っている武器です」

「正解だよ」

 

 一応座学的なことも少しずつやってたし、分からないことがあったら憂太は優しく教えてくれたのでそこら辺は知っている。

 

「そして、今回は特別講師を用意したよ」

「と、特別講師?」

「そう、私よりも呪具の扱いに詳しい暇人を引っ張り出して来たよ」

「暇人??」

 

「はい、こっちが高専の非常勤講師の伏黒甚爾先生だよ」

 

 夏油先生が紹介したその人は――ピッチピチのTシャツに、ダボダボのズボンを履いたムキムキマッチョな男性だった。切り株に腰掛けながら、ポリポリと頭をかくその様子は……どう見ても「やる気がありません」と堂々と書かれていた。

 

「だりい」

「えっと……やる気なさそうですが、大丈夫ですか?」

「伏黒先生、こう見えても肉弾戦がとっても強いし、武器の扱いもすごいよ! 僕も色々教えて貰ったし」

「そうなんだ……」

 

 憂太がそう言うんったら、それが正しいんだよな。とりあえず、これからお世話になるんだったら挨拶はしないといけないよな……。

 コミュ障が発動する最中、わたしはおずおずと伏黒先生の前へと立ち挨拶をした。

 

「伏黒先生、初めまして祈本里香っていいます」

「あー、伏黒だ」

「ちなみに、伏黒先生はキミの後輩である恵君のお父さんだよ」

 

 ニュッと現れた夏油先生がそう告げる。その言葉にまじまじと顔を伺えば――確かにこの間会った恵君にめちゃくちゃそっくりだった。

 

「……言われて見ればそっくり」

 

 遺伝子ってすごい。

 

「あー? アイツは嫁似だよ」

「本人はそう主張しているけど、満場一致でパパ似だよ」

 

 カラカラと笑う夏油先生。ふと、横から視線を感じたためにそちらへ視線を向けると……じっと伏黒先生がこちらを見ていた。

 

「……お前」

「え、なんですか?」

「……いや、なんでもねえ。まぁ、とりあえず良かったな」

「……な、何がです?」

「覚えてねえなら、気にすんな」

 

 そうやって途中でやっぱり良いやって言われるのが、一番モヤモヤして気になるんだよな……。話す気がないのなら、そんな風に話しかけるのやめてもらいたい。5分ぐらい何を言いたかったのか気になるから(5分しか持たないのはご愛嬌ということで)

 

「さて、給料分ぐらいは仕事してやるよ。――覚悟しろ」

「……ひぇ」

 

 修行第二弾のスタートのゴングが鳴り響いた。

 

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