旅の終わりの、更にその先の物語。   作:しろまち

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キタロー&ハム子視点。


13:死神(3)

 陽が沈み、夜が覆い、影は生まれる。

「オルフェウス」

 冥府よりも暗い深層から生まれ出でたシャドウを断ち切り、赤々とした炎が焼き払う。

 人気の無い暗い場所が少しの間明るくなり、シャドウと炎が消えると同じくしてまた元の暗さへ戻る。後には再び何も無かったかのような静けさが戻った中、溜め息のような呼気が漏れた。

 あれから――小松原を退けてから。シャドウはいまだ出現し、無気力症候群の人々は増えている。

 無意識と有識を融合させるという小松原の企みは阻止した筈なのに。今もシャドウの出現は収束せず、人々の「何処かへ消えてしまいたい」という希死念慮にも近い思いは広がるばかり。

 小松原は退けたが、稀人と呼ばれるペルソナ使い達がまだ居るからだろうか。稀人達の行方は現在、捜索中だという。元々は小松原が出資していた孤児院に居た者達らしく、リバース事件が綾凪市を中心として起こっている事から主な潜伏拠点も綾凪市の何処かなのだろうという予想だ。指示する小松原が居なくなってからもあるのか、リバース事件も今の所は起こっていなかった。

 既に、稀人達の潜伏先は幾つかピックアップが済んでいるという。今はそれらを一カ所ずつ潰している最中で、稀人達が見つかるのも時間の問題――その筈、なのに。

 小松原の企みも、稀人達の行いも。実は、シャドウの出現や人々が無気力症候群となっているのは関係無いのだろうか。小松原や稀人達を止めた所で、「此処」に居るのは何の意味も無く、人々の不安から来る死への衝動は止められないというのか。

 まるで、かつてのあの時のように。12体の大型シャドウを全て倒したら、影時間が終わると信じていた時のようだ。

 イゴールには初日の綾凪市に来た際に会ったきりで、あれから何の音沙汰も無い。勿論、力を司る者とも。

 ベルベットルームの住人らの導きは無く、ただ在るのは自らと魂を代償にして深く沈めた死の化身のみなのだろう。

 剥き出しにしたままの武器を布に巻き直し、周囲に他のシャドウの気配が無い事を確認してから今夜は寝起きしているマンションへ戻る事にする。

『それでいいの?』

 心の奥底、綾時が静かに問う。

 問い掛けて来る意味は分かっている。その上で、何も言わずに口を噤んで自分自身に向けた問い掛けにすら無視をする。

 それで良いのかと問われても、ならばどうしたら良いのか。そんな事を問い返した所で、答えてくれるものなど何処にも居ない。

 まるで迷いの森の中。先の見えない、深い霧のただ中で宛ても無い何かを探すようだ。

 そんな思いこそが、他ならぬ「影」を招くのだと知っていても。

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