旅の終わりの、更にその先の物語。 作:しろまち
ビッグバン・チャレンジを終えた帰り道、慎は湊と美奈子と共に歩く。めぐみと拓郎は寮住まいなので、帰りは別々だ。
陽は既に暮れ始め、今の空を染める夕焼けもあっという間に夜空の色へと変わるだろう。
「やっぱり有里達のアレ、凄かったよな。見てるだけで腹一杯になりそうだった」
あんなのがあるという事は、多分他の店舗でも実施している上にクリアした者も居るという事なのだろう。まだまだ知らない世界が存在するらしい、知る必要があるかどうかはともかく。
「写真には撮ったけど、洵や守本にも見せたかったな」
今日、洵は叶鳴達と一緒に居る。どんな用事かは洵に訊かなかったので分からないが、以前に叶鳴が出たスピーチコンテストの事なのかもしれない。あの時、洵はスピーチコンテストの応援へ行かなかったが、後から興味を持ったか気になったかしたのだろう。コンテスト当日に付いて行かなかった手前、慎達の前では訊き辛かったのかもしれないと思うと、洵が帰って来てもそれについてはあまり訊かない方が良いかもしれない。
叶鳴の方にこっそりと尋ねてみよう。そんな風に慎が思いながら家を目指して歩いていると、不意に携帯電話が鳴った。
ポケットから携帯電話を取り出して、液晶画面に映る着信相手を見る。映子だ。どうしたのだろう、と思いながら少し電話に出るか迷っていると、隣を歩いている湊と美奈子が通話に出るよう促して来たので慎は電話に出る事にした。
「もしもし? 映子姉ちゃん?」
ノイズの混じらない映子の声が聞こえて来る。疑問と少しの胸のざわめきを抑えつつ慎が受話口から聞こえる映子の言葉に耳を傾けると、そこから聞いたのはにわかには信じられない事だった。
「……洵と、守本が連れて行かれた……? それに、兄貴が怪我したって……」
稀人達が、洵と叶鳴を連れ去った。それを助けようとした諒がペルソナによる攻撃を受け、負傷したのだという。
諒は今、病院に居る。映子は慎よりも先に連絡を受けて、病院に既に着いているという。慎も病院に来て欲しい、という映子からの言葉に了承を返して通話を終了させるものの、慎の頭は混乱と不安でひしめいていた。
どうして、洵と守本が。それに、怪我をしたという諒は無事なのか。
じわじわと胸中を蝕む恐れにどうしたらいい、と彷徨った視線は、傍に佇んだ湊と美奈子を見る。
「行こう」
「急ごう」
見つめ返す瞳は力強く、けれども険しく。それに少しだけ気が強く持ち直されて、慎は湊と美奈子と共に病院へと急いだ。