A Day
学園都市の日常は至って平和だ。
能力者の町だなんだと言われているが、そこにあるのはただの穏やかな日常。
――さま~!それ交換しましょう
――がそんなゲテモノ食うかー!!
「・・・」
「レベル5って言うから、どんなお嬢様かと身構えちゃいましたけど、そんな必要は
なかったですね」
「・・・」
「・・・佐天さん?」
「へ?・・・あぁ、ごめん。ぼーっとしてた」
「全く。連絡が取れなくなって、どんな事件に巻き込まれているのかと思えば、転校とか
言うから驚きました。しかも、私のハッキングを使っても調べられませんでした」
そりゃあそうだ。何せ極秘中の極秘事項だもの。
「初春は変わらないね」
「そうですか?佐天さんは、その・・・何か眠そうですね」
昼夜逆転しているなんて事も言えるわけがない。
「・・・子供が多いなって思ったら、今日は外部からの見学があったんだ」
「そうみたいですね・・・あれ?」
「どうした?」
「あそこの銀行・・・昼間なのに、シャッターが閉まっているみたいです」
彼女の疑問に応えるように――シャッターが爆発した。
「初春」とレベル5の少女にゲテモノクレープを食べさせようとしていた少女・・・初春の上司でもあるツインテール少女がマヌケ面から一転、引き締まった表情に変えた「アンチスキルに応援を。私は制圧に向かいます」
「私は」
「美琴さんは私とお留守番です」と私は声をかけた「話を聞くに、白井さんは美琴さんの
無鉄砲ぶりに頭を悩ませているそうですね?正義感が強いのは良いことですが、時には
信じてあげることも大事ですよ」
「う・・・」
「佐天さんの言う通りです、お姉さま」と白井さん「ここからはジャッジメントの領分です。大人しくしていてください」
「・・・分かったわ」
ジャッジメント二人が動き出すのをぼーっと眺める。
「佐天さん、驚いたりしないのね。感心したわ」
レベル5に褒めて頂けるなんて、今日は良い日だ。
「そうですか?銀行強盗なんて日常茶飯事じゃないですか」
私は、こんなのよりもっと深い闇を―地獄を知っている。
「―君!どこに行ったんですか!?」
物思いにふけっていると、バスガイドのお姉さんが心配そうにあたりを見回す。
「どうかされたんですか?」
「それが、一緒に来た男の子が行方不明になってしまって」
「大変!探すの手伝います」
・・・このレベル5、白井さんに言われたことをもう忘れてしまったのか?
「良いんですか?」
「えぇ・・・佐天さん、行きましょう」
「・・・」
「・・・なに?」
「いえ・・・私はあっちを探すので、美琴さんはあっちを」
「そうね。任せた」
任せないでほしい。というか、巻き込まないでほしい。
「厄介事には首突っ込むなって、ハル君と約束したのにな」
とはいえ、子供が変死体で発見されたら目覚めが悪い・・・諦めて探すことにした。
「おじさん、だれ?」
「良いから来い!」
そのとき、覆面の男が小さい男の子をひっぱっていくのが見えた。
「あのー」
「!」
「あ?」
「面倒くさいの嫌なんで、さっさとその子開放してくれません?」
「んだと?喧嘩売ってんのか?」
「そういうの良いから、放してくださいよ。じゃないと
『喰ウヨ』」
「ひッ」
「ほっ」と、男が怯んだのをみて、私は、男を蹴り飛ばした。
「大丈夫?怪我ない?」
「・・・あ、ありが、とう」
男の子は私に少し怯えているみたいだった。そりゃそうだ。
内に隠している「獣」を「少しだけ」見せたのだ。どんな人間でも何かしら感じる。
そのとき、殺気を感じ、男の子を抱きかかえ飛びのいた。蹴り飛ばしたはずの男だ。
「てめぇ・・・調子に乗りやがって」
「・・・以外に頑丈。まだ意識があったとは」
「ッ・・・死ねぇ――!!!!!!」
仕方ない、使うか・・・とバッグからあるものを取り出そうとして――
「必要ないよ」
聞きなれた・・・頼もしい声が聞こえた。ベルトを装着し、颯爽と現れた彼は一瞬こちらを向いて「・・・ここは僕に任せて」
「・・・ありがとう、ハル君」と私に笑みがこぼれた。
やっぱり・・・私にはもう、こっちの世界が本物だ。
「彼女に危害を加えようとした」
少年は、涙子が去ったのを見て・・・男を睨んだ。
「あ?」
「僕の線引きを超えた・・・アンタを狩る!」
ベルトのアクセラ―グリップを回し、少年は、呟いた。
「アマゾン」
[ΩOMEGA]
瞬間、少年を中心に巨大な爆発音と爆風・・・それが引いた場所に立っていたのは、異形であった。怪人のようでいて、ヒーローのような・・・。
「・・・狩り、開始」
「おやめなさい」
異形へと姿を変えた少年が涙と嘔吐でグチャグチャになった男の顔を掴んで握り潰そうとしている(ようにみえる)のを目撃した白井が声をかける。
「こいつは、僕の獲物だ。邪魔しないでくれるかな?」
「それ以上抵抗するなら、あなたも捕縛させてもらいますが?」
「・・・別に殺す気は無かった。まぁ、気分次第では殺していただろうけどね」
ぱっと少年は男を放し、背を向けた。
「お待ちなさい!あなたを重要参考人として」
「必要ない。それじゃあ」
「そういうやつが一番怪しいんだけど?」と美琴が声を荒げる「ジャッジメントに言えない何かがあるわけ?」
「だったら何?」と異形の目の先で少年が睨んだ「あんまりしつこいと『喰ウゾ』?」
「「ッ」」
「・・・僕たちはただ・・・この街で静かに生きたいだけだ」
少年が去り、初春が白井たちに駆け寄った。
「?・・・いまのは?」
「あなたがきにすることではありませんわ・・・それより、佐天さんは?」
「それが・・・気付いたらいなくなっていて・・・」
「・・・もう良いのか?」
「うん・・・ちょっとは名残惜しいとかあるのかなって思っていたけど、そんなことは、
無かった」涙子があっさりと、それでいて悲しそうにほほ笑んだ「もう、私は、日常に
戻れないみたい」
「・・・」
異形の姿から人間へと戻った少年――騒 ハルカが佐天を抱きしめた。
「!」
「僕が守るよ・・・僕が、君を死なせない」
「・・・うん。ありがとう」