「よう、沈利チャン、おっひさー」
「九条貴利矢・・・ようやく乗り心地の良い場所を見つけたって訳か?」
「ま、TeamNeoの人間は良い奴らだからな。とりあえずは、あいつらの道筋に乗って
やろうかなって」
「そうか・・・で?やけに自信満々だったが、大丈夫なのか、オタクのリーダーは?」
「何だ、信用してないってか?」
「信用なんてするかよ。この裏世界に『信じる』なんて言葉ほど甘っちょろいものはねぇ・・・私が聞いているのは」
「問題ないよ」と貴利矢「寧ろ、心配なのは、御坂美琴の方だ。涙子チャン、うっかり
殺さないと良いんだけど」
「はァッ!!」
美琴の操る砂鉄の剣が涙子にせまる・・・しかし、剣は簡単に弾かれた。
「ッ・・・!?」
「そんなオモチャで、私は殺せませんよ?」
[Brade,Roading…]
ベルトに注射器を再注入。腕から機械的な剣をはやした。
「なに、それ・・・」
「薬液を注入して、細胞を変異させているんです。人体に影響はないものなので、安心です」
「そういう問題じゃない。そんな自分の体をボロボロにしてまで、こんなことに加担しないといけないの?」
「だから、好きでこんなことをしているんじゃないんですって。まァ、所詮、美琴さんは、裏の事情も怖さも知らないお嬢様だから、無理もないか」
「・・・なに、喧嘩売っているの?」
「売っているんですよ。何も知らない、箱入りお嬢様?」
「このッ・・・!」
「というか、『助けなきゃ』って言いますけど、彼女たちは、あなたに『助け』なんか
求めたんですか?」
「なんですって?!」
「自分に宿っている命がどれほど尊いものなのか、生きていることがどれほど素晴らしい事なのか、そんなことも分からない人たちに『助けてあげる』って言ったところで、向こうからすれば迷惑極まりないだけですよ?」
「ッ!?」
「あなたのやっていることはただの偽善です。それが、レベル5であることの使命感から
なのか、幼かったとはいえ、自身の過ちで生み出してしまった、生命に対する責任感から
なのか、他人である私には、分からないことですが・・・助けただけでは、助けたことには、
なりません」
「ッ・・・うるさいッ!!!!」
コインを弾き、彼女の最大必殺技である超電磁砲が放たれたが――
「ましてや、第一位が怖いから、死にたくないから、それでも、彼女たちを救おうとして
いる姿勢をみせなきゃと、学生生活に支障をきたし、後輩や友達に助けを求めず、無意味な破壊活動を繰り返すだけのあなたに・・・彼女達を救うことなんかできない」
「なッ!?」
彼女の最大の攻撃は、彼女の纏う装甲に傷一つつけることが出来なかった。
「私は、あなたのような、自分勝手な人間が一番、嫌いです。とっとと、失せろ!この
臆病者ッ!!」
「あがッ・・・!?」
「幻想殺しといえど、ただの化け物相手には、無力な学生ですね」
「げほげほ・・・おまえ、なんで、こんなことに手を貸している・・・仲間が殺されて
いるんだぞ!!」
「仲間・・・はたして、彼女たちは、仲間といえる存在なのでしょうか?」
「なッ!?」
変身を解いた496号が、ちらりと、10031号を見る。
「邪魔が入りましたが、496号が抑えてくれるので問題ありません、一方通行。予定時刻より5分ほど遅れましたが、始めましょう」と10031号が実験開始を促した。
「なッ、バカ、早くにげ」
「逃げませんよ」
「え・・・?」
「彼女たちは、逃げない。私もそうでしたから」
「どう、して?」
「知らないからです。死ぬことの恐怖も、死にたくないという感情も。だって自分たちは、
単価18万円。ボタン一つで作れる、ただの人形だ・・・生きる意味なんて無いんだって
本気で思っているからです」
「・・・」
「バカバカしい、愚かにもほどがある・・・ただ一言、『死にたくない』って言えば良い
だけなのに、それが分からない」
「お前・・・」
「・・・帰ってください、上条当麻。あなたのような素晴らしい人間に救われる価値は、
あの人形にはない。その拳は、本当に助けを求めている人達のために使うべきです」
「終わったの?」
廃工場でひとり夜空を見上げる涙子に声をかけたのは、ハルカであった。
「・・・うん」
「本当に、あんな終わり方で良かったの?」
「・・・」
「・・・僕は、涙子がそばにいれば、それでいいんだ」
「!」
「TeamNeoも学園都市も関係ない。君が笑っていてくれるだけで、楽しいって
おもっていてくれるだけで、僕は満たされる・・・幸せだって、思えるんだ」
「・・・そう」
「うん・・・だから、君がどう変わっていこうと・・・君がいる限り、僕は、君を愛し
続ける。それが僕の本当の線引きだから」
「・・・ッ・・・うんッ」
ハルカは、涙子をそっと抱きしめた。彼女は、そのぬくもりを感じ—―
ただ、泣いた。