レベル0の高校生、上条当麻が知り合いのビリビリ中学生を見かけたのは、壮絶な戦いと自身の無力さを思い知らされた数日後の事だった。
あの日、496号にあっけなくやられ、10031号が一方通行に殺されるのを見ている
ことしか出来なかった上条は、失意から、数日部屋に閉じこもっていた。同居する暴食
シスターが心配してくれたが、それで簡単に立ち直れる性格ではない。それでも、補習は、
あるし、担任に泣いて懇願されれば、否応なく、学校に行かないといけない。
そんな補習の帰りに、目から光が消え、絶望というより、諦観の表情を浮かべる御坂美琴に
見て見ぬふりもできず、声をかけた。
「私、バカだ」
とりあえず、近くのカフェに入り、コーヒー(無料)を頼んで、一息ついたところで、話す余裕が出てきたのか、御坂がポツリとそう、呟いた。
「冷静に考えれば分かることだった。研究所を潰したところで、実験が止まるわけがない。
あの子たちの境遇も気持ちも知らないで、ただ『助ける』って正義の味方ぶってた」
「・・・俺も、助けることが出来なかった」
「あはは・・・お互い、完全敗北ってやつだね」
「でも」
「!」
「でも、あいつらが殺されて良いなんて、やっぱりおかしい。間違っている」
「・・・うん、私もそう思う。DNAを無責任に渡しておいて、何言っているんだって感じだけどさ・・・生きて良いんだって、教えてあげたい。でも・・・」
(この臆病者ッ!!)
あの時の彼女の罵倒が頭から離れない。
「でもッ・・・私に・・・戦うことを怖がっている私に、そんな、資格なんて・・・ッ」
「・・・なら」
「なら、一緒に戦おう」
「え?」
「俺も怖い。でも、俺たちが力を合わせて戦ってさ、声を張り上げて、あいつらに生きて
良いんだって、言ってやろうぜ」
「でも」
「人の言葉なんか、気にするな。だって――お前は、あいつらを助けたいって思うだろう?」
「よう、調子はどうだ、檀黎斗」
貴利矢が訪れたのは、学園都市で最も頑丈と言われる、窓の無いビル・・・その地下に
一人の男がいた。
「檀黎斗神だッ!!!!!!!!!!!」
「はいはい・・・そら、頼まれていた、ガシャットのテストプレイのデータだ」
「協力感謝する。あぁ、ガシャットは、くれてやる。もう必要ない」
「必要ない?」
「ようやくデータが揃った。数か月後には、正式なガシャットの制作に取り掛かる予定だ」
「あっそ・・・で?今日、俺を呼んだのは、それだけ」
「あぁ、通常とは違うガシャットのプロト版も作ったから、試してほしいと思ってね」
そう言って、檀黎斗神が取り出したのは、分厚いハンドルのような何かがついたガシャットだった。
「御坂妹から離れろ――三下!!」
10032次実験。10032人目の妹達が殺されそうになっていたところへ、上条当麻が現れた。
「・・・呆れました」と496号「私の話を聞いていなかったのですか?」
「聞いた。あぁ確かに、そいつらは、分かっていない。自分の命の大切さを。失望するのも
無理はない。でも」
「だからって、死んでいいわけないだろう――生きているんだから!!」
「なんのつもり?言ったでしょう?あなたの人助けは、ただの偽善だって」
一方で10032号をかばう美琴に涙子が声をかけた。
「・・・そうね。私は、第一位と戦うのが怖かった。仲間を頼ろうとしなかったのも本当よ。あなたの言う通り、臆病者」
でも、と10032号をぎゅっと抱きしめる。
「だからこそ・・・私は、彼女たちを見捨てない。そう決めたの」
「なら」と涙子がドライバーを装着した「私に殺されても――文句は言えませんよね?」
「・・・上等よ」
「後悔しないでくださいね・・・アマゾンッ!!」
ネオに変身し、まっすぐと美琴に向かってくる。美琴は、ただ構え、迎え撃つ。
「まってください」と10032号「私は、単価18万円で簡単に作れる人形です!そんな
私の為に」
「違う!!」電撃を放出し、ネオをけん制する「あなた達は、私たちと同じ・・・生きて
いる人間よッ」
「!」
「生きる価値はない?意味は無い?そんなのはね、いらないのよ」
「意味なんかなくたって・・・生きて良いんだから!!」
実験は、中止になった。何故なら、学園最強といわれた第一位がただのレベル0に敗れたのだから。
「最初から、実験に協力する気なんて無かったンだろう?」
数か月は絶対安静の第一位、一方通行は、今日退院するらしい佐天に声をかけた。
「胸糞悪い実験だって最初から言っていたでしょう?でもまぁ、イライラしていたのは
本当だし」
「・・・何やっているンだろうな、俺たちはよォ」
「?」
「なンでもねェ」
「佐天さん!!」
病院を出た涙子を待っていたのは、初春に
「・・・」
ところどころに絆創膏を貼り付けてはいるが、至って健康な御坂美琴であった。
「・・・もう一人で解決しようだなんて、馬鹿なことはしないことです」
そう言って、杖をつき、2人には目もくれず、歩き出す。
「アンタは、どうなのよ」
「くだらないことを言うんですねぇ・・・決まっているでしょう」
彼女の歩く先には、ハルカが手を振っていた。
「TeamNeoあってこそ・・・今の私がいるんです」